二月のお祀り

六道イオリ/剣崎月

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吉川大育

第24話・荷物を指定の場所に届けるだけ

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 スマホを新しいものに買い替えた。
 本当はタブレットも欲しかったが、バイト生活じゃあ簡単に買えない。

「ノース・フェイスのリュックサック、買いに行こうかな」

 そう思っていたけれど、数日後、家の電気がつかなくなった。

「あー電気代払うの忘れてた」

 郵便受けから抜いて、床に放置していた郵便物のなかに、電気会社から送られてきた通知を二通見つけた。
 翌日、ノース・フェイスのリュックサックを買おうと考えていた金で、滞納していた電気代を支払った。

 無駄使いしてないのに、いっつもこうだ。

 真面目にアルバイトしているのに、まったく生活に余裕がない。こんなに苦労しているのに!

通知:1件
荷物を指定の場所に届けるだけで20万円

 そう書かれていた通知をタップした――

**********

 スマホに送られてきていたバイトは、本当に簡単だった。
 ネットニュースで見かけた「身分証明書を取り上げられる」ようなことはなかった。
 あの通知をタップすると、QRコードに日付と時間、そして住所が書かれていて「ここで、マリークヮントのバッグを受け取る」と書かれ、受け取るバッグに関しては、丁寧に画像が貼られていた。
 三駅ほど離れていたが、二日後でバイト前の時間だったので行ってみた。時間前に目的地に到着すると、マリークヮントのバッグを持ったスーツ姿の男性が立っていた。

 その男性に近づき、QRコードを見せる。

「少し待ってくれ」

 男性は自分のスマホを取り出し、QRコードを読み取り、

「目的地はここだ」

 男性は最新のiPhoneに画面に目的地を表示し――その画面をカメラで映した。

「交通費は実費で払う。最寄り駅は?」

 駅名を告げると、荷物を受け取るためにかかった電車代と、荷物を届ける場所まで、そしてそこから最寄り駅までの電車代として三千円渡された。

「それじゃあ、よろしく。そして、やる気があったらまた連絡して」

 男性は俺に背を向けて駅出口へと向かった。

 仕事は簡単だった。バッグの中に女性の写真があり、駅でその女性に中身が詰まったバッグを渡すだけ。
 目的の駅に到着して、駅構内のタリーズ前に立ってスマホを見ている女性。
 QRコードを見せると、女性はリーダーで読み取る。

「ありがとう」

 女性に続いてタリーズに入店して、

「好きなものを注文して」

 言われたので、季節限定の品を注文して、男性が座っている席へと向かう。
 とくに会話はなく、飲み終わると男性が長財布を差し出した。

「確認してくれ」

 安っぽい長財布を開くと、一万円札が。数を数えると、書かれていた通り二十万円入っていた。

「またバイトするつもりはある?」
「それは……まあ……」
「じゃあ、Instagram教えてくれる?」

 Telegramをインストールして欲しいなんて言われたら、警戒したけれど、Instagramなら……もしかしたら、闇バイトの中でも軽いほうなのかもしれない。
 おれはInstagramを教えて、長財布を持って席を立つ。

 翌日、俺はiPadを購入した。

**********

通知:1件 sacrificed to Cthulhu.

 二回目のバイトの誘いが来たのは、いつものようにチェーンのファミレスで夕食を食べているとき。
 InstagramのDMで。
 今回も前回同様、バッグを人に届ける仕事。料金は前回と同じく二十万円で日付は三日後。
 引き受けないはずがない。

 次は何を買おうか考えながら、仕事をすると返信した。
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