異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい

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柵の向こう側

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 男の方を無視しながら、ペトリスは倉庫の中を見渡す。
 倉庫の中には、いくつかの籠に収穫された野菜が種類ごとに収められていた。ペトリスはひとつずつ手に取ってみるけど、心惹かれるような感情が湧かなかった。まだ植えられている状態の野菜を引っこ抜いてもそれは変わらなかった。
 そこにおいてあった野菜を見ていたが、姿形は確かに奏のところで見たものに似ていたが、どれも痩せていて惹かれるような匂いをしていなかった。ペトリスは一つ口の中に入れてみるが、やはり味が薄く、美味しいと思えなかった。

「ねぇ~オヤサイってぇ、ここにあるものしかないのぉ?」

「そ、そうです!」

「……やっぱりダメだなぁ。あの場所に行かなきゃ味わえないのかぁ」

 男はそれからも出してくれと叫び続けた。しかしペトリスはもう男に用はなく、手を握りしめるだけで男を黙らせてしまった。
 
「あそこのオヤサイは美味しかったなぁ……美しかったしぃ、良い匂いもしていたなぁ~」

 ペトリスが悩んでいると、遠くの方から誰かの叫び声が聞こえてくる。声の方を振り向くと、目の前に急に矢が飛んできて、見えない壁に阻まれて地面に突き刺さった。
 
「今度はなぁにぃ~? 動くとお腹が減っちゃうからぁあんまりないんだけどぉ?」

 弓矢はそれからもペトリスの近くに放たれていた。当てる気はないのか、すぐそばを通過するものもあるけど、そのうちのいくつかはペトリスに到達する前に何かに阻まれて落ちていく。火の魔法も飛んできているけど、ペトリスは気にする様子はない。

(近づいてくるのはぁ……一人? 後ろの方にいる四人の方から矢とか飛んできてるみたちだけどぉ、こっちに来る気配はないぃ? 武装してるしぃ、冒険者なのかもぉ? ……めんどくさいなぁ)

 ペトリスは奪った野菜を齧りながら、向かってくる男の方を睨みつける。
 ここから狙い撃つのは簡単だけど、ただでさえイライラしているペトリスは、これから来る相手を一瞬で潰そうとは思わなかった。
 この村で見つけた畑は、幻惑の森で見たものよりも生気を感じられないし、育てられていた野菜も比べられないほど味が薄く思えた。
 もしかしたらここよりも大きな国に行けばあるかもしれないが、今までいろんな所を食べ歩いてきたけど、あれほど強い野菜の匂いを嗅いだことは無い。
 幻惑の森の中にあるあの場所を、ただの人間が知ってるはずもないだろう。

「ママさんの所以外にもオヤサイあると思ったけどぉ……アテが外れちゃったなぁ。まさかこんなにもちがうなんてぇ……。こんなことならぁ、いくつかのオヤサイを大事に残しとけば良かったなぁ」

 すでにペトリスの周りには人の姿はなく、村に数人隠れていた村人も、ペトリスが倉庫を物色している際に逃げ出したようで、冒険者がいる方向へと向かって走っていく、小さな後ろ姿がいくつか見えていた。

「はぁ~あ、どうしよぉかなぁ。まぁ別に逃げてく人はどうでもいいしぃ、ここに用はもう無いけどぉ……あの人たちだけは潰しちゃおっかなぁ。美味しいオヤサイのことぉ、早くお友達にも教えてあげないとだしねぇ」
 
 ペトリスは魔法や矢を飛ばしてきた冒険者を見つめながら小さく呟いた。
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みんなの感想(8件)

山川海
2025.02.22 山川海

おすすめから来ました♪
優しいお話から魔女が出てきてドキドキハラハラ〜続きがとても気になります。
ぜひ更新よろしくお願いいたします。

解除
shimashima
2022.09.02 shimashima

検討を祈る→健闘を祈る

2022.09.03 はくまい

ありがとうございます!

解除
ひろ44
2022.05.03 ひろ44

楽しく読ませていただいています。

ようやく出てきた魔女たちの実態。
完全に悪の魔女もいれば、善政(?)を布く魔女もいるようで、十把一絡げに『魔女を討伐せい』、と勇者召喚するってどういうことなんでしょうね?
神的には「魔女」という存在自体が許せない、というところでしょうか。魔女は魔神を崇めているようですし

まあ、そんなことは奏ちゃんにはカンケーネーヨとフローな(ふわふわとした?)日々を過ごしてください

2022.05.04 はくまい

ありがとうございます!

今後も更新できるように頑張りますね!

解除

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