異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど！〜

烈風という名の冒険者パーティ

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「はぁ～……。どうしようかしら……」

　誤って彼女を……江西奏をこの世界に召喚してしまった管理者、ミランダは虚空を眺めながら一人つぶやいていた。あれから、ルール違反ギリギリではあるがこの世界を、というよりも奏の様子をちょくちょく見ていたミランダ。幸い、奏が誤って召喚されたことを知っているのは同じ管理者であるアデリフィだけ。彼女とは古くからの付き合いもあり、なんでも相談してきた仲だ。彼女は六番目の少年……勇者を召喚した管理者でもある。

「……またため息なんかついて、少しはシャンとしたら？」

「アディ……」

「今度は何があったのよ」

　アデリフィは心配そうな様子……ではなく、面倒くさそうにミランダに声をかける。

「あの間違って召喚された子がいたでしょ？　あの子、あの世界には存在しない植物を育ててるみたいなの」

「……別にそれくらいだったらいいじゃない？」

「それだけじゃなくて……【叡智の書】の所有者にも選ばれたみたいで……」

「……紛失していたはずの【叡智の書】が、なんでギフトハウスにあるのよ！」

「そんなの私にもわからないもん……。それに、【叡智の書】の所有者だから、ギフトハウスのアイテムも使い放題なのよ」

「……唯一の救いは、勇者ではないことで能力値が低いことでしょうね。装備関係は持てないでしょうし、悪用するような人柄ではないのでしょう？」

「それは大丈夫みたい」

　ミランダの視線の先には、庭の植物に水を上げている奏の姿が映っていた。

「こちらから強い干渉はできないし、私もやることがあるからあまり手伝えないのよね」

「これであの子が死んだりしたら、私も処罰されるのかしら……」

「多分されるでしょうね」

「そんなぁ～」

　ミランダはアデリフィにしがみつく。もはやいつもの光景なので、アデリフィは少し呆れる程度だったが、ミランダは気づかないふりをして甘えた。

「……わかったわ。私の方でも何かできないか調べてあげる。それまでまた様子見ときましょ？　私の子が神殿に来たら神託として話してみるから」

「うん……」

　アデリフィが助けてくれるとわかり、しがみついていた手を離す。よく見ると目元にうっすらと涙が溜まっているようだった。こんなミランダを見るのは久しぶりなアデリフィは、なんとかできないか考える。

「ちなみに、今ギフトハウスは『幻惑の森』にあるままなの？」

「そう……。なんとか安全な場所に移してあげたいんだけど」

「……私たちは大きな干渉事態ができないから、どうしようもないわけね」

「どうしよう……」

　ミランダとアデリフィは勇者ではない……間違って呼んでしまった少女、奏の様子を見守る。
　まだ他の管理者には気づかれていない……はずである。
　管理者としての仕事をしつつ、奏が無事であることを祈る二人だった。