異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい

文字の大きさ
上 下
51 / 147
魔法薬の調合

10

しおりを挟む
 魔力水の量は減ってしまったが、おそらくこれが本来魔法薬に必要な魔力水だと判断して、奏はアロエを最初と同じようにカットし、三種類目の魔力水の中に入れていく。いろいろな方法を試してみたのだが、どの方法でも効果は今の所変わりがないので、ひとまず皮を剥いて小さく切るだけにしておく。
 ぽちゃぽちゃと音をたてながら鍋の中に入っていったアロエは、火にかけていないにも関わらず魔力水にうっすらと青色を移していった。

(それにしても、なんでアロエを入れたら青色になるんだろ?)
 
 鍋をコンロに戻して再度火を入れる。くるくると鍋の中を混ぜながら奏は考えていると、しだいにアロエは無くなっていって、沸騰するころには青色の液体だけになっていた。最初に作った【不思議な魔法薬】とは違い、今度はしっかりと色がついている。ただ、ファルマーが置いていってくれた【中級治癒魔法薬】の色よりも濃く、鮮やかな色になっている気がする。
 沸騰している状態からさらに煮詰め、色の変化が落ち着いてきた段階で火を止める。鍋から別の容器へと移し、氷水を張ったボウルを使って冷ましておく。
 奏はその間にもう一つ大きな鍋を取り出すと、三種類目の魔力水を量産するために必要な材料をまとめた。

(魔力水だけで三種類あるのって、どれがどれのことかわからないとやりにくいな……)

 奏は最初に作った、魔石の粉末を混ぜたものを【下位魔力水】、【下位魔力水】にウルタナ草を混ぜて沸騰するまで火を入れたものを【中位魔力水】、【中位魔力水】を鍋の半分くらいの量まで煮詰めたものを【上位魔力水】と名づけることにした。
 この家にはタイマーもなければ時計もない、どのくらいの時間煮詰めたらいいのかわからないため、火の側から離れられない。奏は大きな鍋の中に、樽の中にあった【下位魔力水】を最初に使った鍋を使って移していく。大きな鍋には小さい鍋に比べて大体十杯分の量が入ったので、最初に使ったウルタナ草の約十倍、二鉢分を加える。
 それから火にかけると、大きい鍋なのに小さい鍋と変わらない感覚で表面がふつふつし始めた。どうやら鍋自体も■■■■■・■■■■■■■■が作ったものの特別製であった。

【不鍋】
 破壊不可が付与された鍋。変形せず、すぐに火が巡る仕様になっている。■■■■■・■■■■■■■■の奥さんの希望で制作した。

 それでも魔力水が濃縮されるまでまだ時間がかかるので、奏は冷えた魔法薬を叡智の書で確認してみる。

【治癒魔法薬(傷・火傷)】
 患部にふりかけることで症状を改善する効果がある。

「で、できたぁぁ……!!」

 出来上がった魔法薬はクリアブルーのような綺麗な青色へと変化していた。ファルマーのくれた魔法薬とはまた別物ができてしまったのだが、奏が今まで生成した中では一番の出来だとわかる。瓶に移すと約二本分くらいしか完成しなかったが、それは今後増やしていけばいい。
 完成品を見た奏は急に身体の力が抜けてしまい、椅子に座り込む。外を見るとすでに日も落ちてあたりは真っ暗になっていたので、今日はここまでにして残りは明日続きを始めることにした。鍋の火を落とし、蓋をしておき、奏は着替えも忘れて布団へと飛び込む。

「つ、疲れた……もう残りは今度……」

 そう呟いた奏は深い眠りへと落ちていった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...