異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい

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■■■■■・■■■■■■■■が残したもの

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 魔石とその粉末を水に沈めた次の日。
 奏はいつもと同じような時間帯に目を覚ました。時計というものはこの家にはない。基本的に外の明かりで判断しているが、それ以外は奏の体内時計で判断するしかない。それでは何をするにも効率が悪いとはいえ、時計を作ろうと思ってもすぐにはできないし、その知識すらない。頑張ってできるとしたら日時計だろうが、それも難しいだろう。
 なので奏は太陽の上がりそうな時間に目を覚まし、日が沈んだら寝るという生活を送っていた。
 おかげで睡眠時間は伸びて、日本にいた時よりも肌艶が良くなったくらいだった。

(というより、ここにはスマホとか、娯楽が一切なのよね……)

 結論から言えば今までやることがないのだ。
 手荷物は転移の際においてきてしまったし、読んでいた途中の本も置き去りのまま。あの後の展開だけは気にはなるけれど、もう確認のしようがない。
 朝起きて簡単に身支度を済ませる。着替えの心配こそ最初の頃はしていたのだが、寝室の棚を開くとそこには数十着の服が常備されていたようで、奏は毎日清潔な服に着替えることができた。使用した洋服は洗濯機(?)の中へと忘れずに投入する。
 朝食は、この家でとれた野菜たちがメインで、保冷庫の中からトマトを取り出して水で軽く洗い、そのまま齧り付く。
 一人だと朝起きてすぐに調理するのは面倒で、ついそのまま食べてしまう。調味料のようなものもないので、焼いたり湯がいたりと素材の味をそのまま味わっているような食生活を送っている。
 【万能鉢】で育てている野菜や花、魔石には水を一回もあげたことがない。水を与えなくても育つし、そのままでも当分枯れることがなかったからだ。毎日のチェックで万能鉢の底の方に嵌め込んだ魔石がなくなっていることがあるので、魔石が中の植物に栄養をあげているのだというのがなんとなくわかる。魔石のなくなっているものがあれば補充してあげるのを忘れないようにしている。
 最近見比べてわかってきたのだが、魔石がなくなっているものは心なしか葉っぱに元気がないのだ。下を向いているというか、見ただけで生気が感じられなくなる。最初はなんでかわからなかくて、水をあげたりしていたのだが元気になることはなかった。最終的に魔石がなくなっていることに気づいて、はめ込んでからはいつものように元気になったのだ。
 
(今日は枯れてる子はいないわね……)

 魔道具で楽に育成できているとはいえ、気を抜くことはできない。奏は毎朝のチェックは欠かさずに行っている。
 
(それじゃあ昨日の成果は……)

 奏は最後に魔石を粉末にしたビーカーの確認を行った。魔石をそのまま入れた水の方には変化もなく、叡智の書で触ってもただの水のままだった。しかし、グラム毎に入れた方には変化があったのだ。

【魔力水】
 魔力が水に溶け込んだ状態のもの。魔力が均一に込められている。

 叡智の書には簡単にだけど魔力水の項目が追加されている。ビーカーの中に入れた魔石の粉末は、ほとんど水に溶け込んでいた。

「すごい……ちゃんとできてる! もっと時間がかかるかもしれないと思ったのに……」

 完全に溶けきっているのは五十グラムまで入れていたビーカーまでだったのだが、それよりも量が少ない方は溶けきってはいるが魔力水の表示は出てこないままで、多く入っているものにはまだ粉末が残っていた。

「メモリが日本のものと一緒と仮定して……だいたい四倍の水が丁度いいのかな……?」

 奏は全ての試作品が魔力水になるように調整しながら粉末と水を足していく。一番大きい容器ではそんなに大量に作ることはできないのだが、武器類が入っていた樽があったので、それにまとめて混ぜ合わせる。樽だけならまだ五個ぐらいあったはずだ。
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