異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい

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深海の魔女

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 それから数日が経ち、【上位魔力水】が樽数個分出来上がる頃、奏はこの家で順風満帆な生活を送っていた。毎日の日課に加え、外に出れるようになったからだ。
 今までは外から聞こえてくる魔物の声が恐ろしく、できるだけ出ないようにしていたがファルマーが来て、それから外に畑もできた。柵のおかげで外での活動も安心してできるとわかり、外での作業が増えたことで魔物の声にも慣れた奏は、今まで運動不足だった分を取り返すようにたまに外を走ったりしている。
 決して食べ過ぎて太ったわけではない。
 断じて違うと思いたい。
 ……。
 
 月日が経つと果実樹にも花が咲き、リンゴや蜜柑には立派な実が実っている。奏は時折収穫してはジュースにしたりと色々加工するようになった。
 パンとお茶を作るために育てている麦も成長たが、今では収穫してしまった。麦から小麦粉を作るのに苦労している。麦茶も苦味が強くてまだ飲めたものではなかった。ただ、緑茶の葉は乾燥させてお湯を注ぐとしっかり緑色になり、それなりの味を楽しめる。
 今日も奏が外で作業をしている時、柵の向こうから魔物の声とは違う、人の声が聞こえてきた。奏は声のする方を向くと柵のすぐそばで数人の人影が見えた。人影はそこから何かを叫んでいるようだった。

「すみませーん! ちょっと入れてもらえないでしょうかー!」

 奏は柵の方へと近づくと、そこにはファルマーと同じようなフードを被った女の子や、鎧を纏った人が合わせて四人いた。

「ど、どうしたんですか?」

「魔物から逃げていたらこの家を見つけて、しばらく休ませてもらえませんか!?」

「あなたに危害を加えないと約束します。ですので、どうかお願いします」

「わ、わかりました。入り口はこっちです!」

 よく見ると怪我をしている人もいて、奏は慌てて入り口近くまで移動すると、彼女たちは誘導に従ってついてきてくれた。彼女たちを柵の内側へ招き入れる。彼女たちも柵の内側に入るとこれ以上魔物が襲ってこないことがわかり、全員腰を落として座り込んだ。息も絶え絶えで、中には倒れ込んでいる人もいた。
 フードを被った女の子の他に、大きな盾を持っている女性や大剣を投げ出して寝転んでいる女性に、弓を持っている髪の長い女性……。ここにいる四人は全員女性だった。走ってきたようで全員が息を切らしているため、なんだか話しかけづらい……。
 切羽詰まった様子だったのでつい入れてしまったのだが、怪我をしているのだがらしょうがないと奏は判断した。

「す、すいません、助かりました……」

「み、みなさん大丈夫ですか……?」

 奏は座り込んでいる彼女たちの様子を見ると、至る所に傷があるものの、見えるところに大きな傷はなさそうだった。
 柵の向こうからは今でも魔物の唸り声が響く。改めて奏はここは危険な場所なのだと理解することになった。
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