異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ

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旅行

急遽王都へ:spring break

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 先のエドガー兄さんの一件で、俺たち、マキーナルト家の面々は急遽、王都に向かっていた。お付きとして、レモンとアランがつきてきている。

 とはいっても、赤ん坊のブラウを連れていけないのでアテナ母さんは家でお留守番である。

「俺もブラウのお世話するからお留守番がいい」
「駄目よ。私だって家にいたいのにいかなくちゃいけないんだもの。アンタも道連れだわ」
「だね。僕だって春のアダド森林で動植物の研究をしたかったのに行くんだから。一人だけ自由なのは許さないよ」

 ロイス父さんは「セオは余計問題を起こしそうだし……」と言って、俺の同行を強制しなかったのだが、ユリシア姉さんとライン兄さんが許してくれなかった。

 首根っこ捕まれて同行を強制させられたのだ。

「あっ、セオ! また私を狙い撃ちしたわね!」
「いや、だって一番近いところにいるし」

 移動時間が暇なので、俺たちは馬車の上で、サイコロを振ってマス目を移動して相手の帽子を取って陣地へと持ち帰るボードゲーム、いわゆるコピ〇トで遊んでいた。

 自分の帽子を全て失ったユリシア姉さんはつまらなそうにため息を吐き、ひっくり返って馬車の下に顔を出す。
 
「父さん。あとどれくらいで王都につくの?」
「急いでるから、あと一日ってところだよ」

 馬車の中で仕事をしていたロイス父さんがそう答えた。

 ロイス父さんも大変だよな。

 春になって、領地の色々な事業が活発化しはじめた途端、王都に向かう必要がでてきちゃったからなぁ。

 なので、山積みの書類仕事の一部を馬車の中で処理しているというわけだ。レモンも同様である。アランは御者をしている。

「王都についたらなにする?」
「なにするって、王城に向かうんでしょ。はぁ、ホント憂鬱だわ」
「そういえば、久しぶりに王都に行くんだっけ。ユリシア姉さん」
「そうよ。もうかれこれ、五年近く行ってないんだったかしら」

 幼い頃に暴力沙汰、もとい決闘を起こしまくったユリシア姉さんは、色々あって王都には行っていない。

「あ、いや、騎士団の訓練に参加しに行ったわね。確か」
「それ、いつの話?」
「いつだったかしら……エドガーが学校見学に行ったとき? っというか、ホントエドのやつずるいわ! 勝手に冒険に行って!」

 ぷんすかと頬を膨らませるユリシア姉さん。ライン兄さんがジト目を向けた。

「それよりユリ姉。問題起こさないでよ」
「今回はお茶会とかないから問題ないわよ」
「それフラグ」
「というか、ユリ姉の年齢的にお茶会とか避けられないと思うんだけど」
「……っるさいわね。行かないったら行かないわよ。父さん! 今の内にいっておくけど、絶対に行かないからね!」
「アハハハ……」

 ロイス父さんの苦笑いが聞こえてくる。

「ったく。なんで、あんなナメクジみたいなジメジメしたところにいかなくちゃならないのよ。裏で何考えてんのか分からないし、皆笑顔が気持ち悪いし。あ、でも、騎士団にはやっぱり行きたいわね」
「冒険したいって言っているわりには、意外と騎士とかに憧れてるんだね」
「そりゃあ、人を守るってカッコいいじゃない!」

 ユリシア姉さんは目をキラキラと輝かせる。

 そうえいば、ユリシア姉さんって勧善懲悪ものの絵本とか好きだよな。戦いとかも好きだから、それで騎士って感じなのかな?

「あ、そういえば、王都といえばヂュエルさんがいる――」
「セオッ!」
「うおっ」

 拳が俺の頬をかすめた。

「その名前を出すなって前に言わなかったかしら?」

 顔の火傷痕に触れながら、ユリシア姉さんが鬼の形相をしていた。いや、ニッコリとは笑っている。ただ、目が笑っていなかった。

 おっとり系のアテナ母さんと元気系のユリシア姉さんって似てないところ多いよなと思うけど、こういう怒り方はかなり似ているんだよなぁ。

 しかも、最近、どんどんと似てきているような……

 とまぁ、現実逃避をしたわけだが、目の前でにっこりと怒っているユリシア姉さんが大人しくなるわけもなく。

「もう一度いうわよ、セオ。ヂュエ……アイツの事で余計な真似をするんじゃないわよ。いい? 分かった?」
「わ、分かってるって。で、でも、俺が何かしなくても向こうは会いにくると思うんだけど」
「……なんでよ」
「だって、ヂュエル――」
「セオ。名前」

 拳がまた頬をかすめた。

「だって、あの人も学園に通ってるんでしょ? しかも、エドガー兄さんの同級生。今回の件で色々と関りがあるじゃ。それに、向こうだってユリ姉に会いたいんじゃないかな」
「……ふんっ」

 ユリシア姉さんは不貞腐れたように馬車の上で寝転がった。俺とライン兄さんに背を向ける。

「どう思う?」
「さぁ。ユリ姉の考えている事はさっぱり」
「だよね」

 年頃の女の子の情緒はよく分からんものである。


 Φ


 翌日。
 
 王都の近くで馬車が止まった。

 ヂュエルさんと数人の貴族が待ち構えていた。

「お久しぶりです、ロイス様」
「収穫祭以来だね、ヂュエルくん。その節は娘が随分とお世話になったね」
「あ、アハハハ……」

 ロイス父さんの微笑みに、頬を引きつらせるヂュエルさん。チラリとこちら、正確にはユリシア姉さんを見てくる。

「ふんっ」

 ヂュエルさんの視線に気がついたユリシア姉さんは、分かりやすくそっぽを向いた。とても不機嫌そうだ。

「これから王城だったね」
「はい。私は先の件でも関りがあったもので、同行するようにと」
「そうか。苦労をかけたね」

 今回は俺たちが王都に入った事を他の貴族に知られたくはないのだとか。

 なので、ヂュエルさんや数人の貴族の馬車に乗り換えて王都に入り、そのまま王城に向かうこととなる。

 そして俺たちは王都へと入り、王城へと向かった。
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