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収穫祭と訪問客
ワクテカ:late summer night
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少し先の未来を想像して、暗い表情となったエドガー兄さん。
だが、俺はそれどころではない。
「……ねぇ、学園に行ったらもっと謝るってどういうこと?」
「どういうことも何も、今、お前に言われたんだぞ。誠実にしろって。確かに思い返してみれば、不誠実だったしな」
「いや、そうじゃなくて。いや、そうなんだけど、何? エドガー兄さんって多くの令嬢と婚約してるの!? ハーレム王なのッ!?」
聞いてない!
っというか、何それ、ずるいというか、不公平というかッ。
やっぱり、顔なのかッ!? エドガー兄さんのそのワイルドなイケメンにやられるのかッ!?
前世も含めてモテたためしがないため、俺は思わず嫉妬の獣に成り下がり始める。
と、エドガー兄さんは呆れた表情をした。
「何言ってんだ。俺は婚約もしてねぇし、ハーレムとか望んでねぇよ」
「ふんっ。そんなこと言っている人こそ、いざとなったら選べないで両方ともとかいうんだよ!」
「言わねぇわッ! っつか、それこそ不誠実だろ!」
「……それはどうだろ? 一応、エレガント王国は一夫多妻を禁じているわけじゃないし、エルフの国だと一妻多夫が多いらしいし。まぁ、そこらへんは誠実、不誠実というよりは文化とかじゃない?」
「いや、違ぇだろ」
「そう?」
エドガー兄さんのジト目のツッコミに俺は首をかしげる。
愛が一つだけなら、自分の伴侶と子供に向ける愛は両立しないだろうし、恋だってたった一人だけに恋するっていうのも、ぶっちゃけ人間として不自然に感じるんだよな。
っというか、何かに強く情熱やら想いやらを注いだりする点では、人に限らなければ趣味とか、仕事とかも同じような気がするし。
結局は、文化だったり、互いが納得するかどうかだけだと思うんだが。
まぁ、だけど、これは価値観の違いかな。なんで、俺がこんな価値観を持っているか、考えたこともなかったけど……
そんな俺の思考を読んだのか、エドガー兄さんは溜息を吐いた。
「まぁ、いいや」
「いや、よくないよ。それで婚約してないなら、何で学園に行って謝らなきゃいけないの? もしかして、小さい頃にノリで口約束しまくったの?」
「してねぇよ。流石に令嬢相手にそんな迂闊なことするか! 問題になるだろうが! ただでさえユリシアの暴力沙汰で問題になってるのに!」
「まぁ、だよね」
俺は頷き、それから話すまで寝かさないという意志をエドガー兄さんにぶつける。
「で?」
エドガー兄さんは話さないと駄目か、と項垂れた後、少しだけそっぽを向きながら話し始める。
「……いや、な。ほら、婚約はしてねぇが、そういう話はかなり持ち上がったし、申し込まれたことも多いんだ。ほら、お前にも生誕祭の時に令嬢たちとそんな感じにならなかったか?」
「なってないよ」
即答。
俺、生誕祭に出たとき、顔つなぎとかそういうのはあったけど、婚約の話は一切なかった。
っというか、皆、俺の顔を見た後、ロイス父さんとアテナ母さんの顔を二度見くらいして、それから困ったような顔をしてたんだけど。
大人たちはまだマシだったが、同年代の子たちは露骨に表情に出してたしな。
クソッ!
「そ、そうか。それは、なんか、すまん」
「すまんとかじゃないんだけど。っというか、生誕祭に出たとき、俺はそういう話はなかったけど、俺と一緒に行って、しかも主役でもないライン兄さんもそういう話あったらしいんだけど」
「…………なんというか、あれだ。たぶん、タイミングが悪かったんだ。ほ、ほら、生誕祭の時にドルック商会を支援している話を父さんたちが話したから、そっちに気を取られたんじゃないか? たぶんそうだ!」
「だったら、猶更、縁繋ぎのために俺にそういう話が来ると思うんだけど」
「うっ」
エドガー兄さんはバツの悪そうな顔をする。
「エドガー兄さんって案外フォローが苦手なんだね」
「面目ない」
エドガー兄さんの情けない表情を見て、俺は満足する。
俺がそういう話を貰わなかったのには、たぶん他の理由があるだろうし、心当たりがあるから、気にしてない。
……気にしてないのだ。
ただ、ちょっとムカついただけなのだ。
だから、俺は首を横に振った。
「いや、いいよ。それで、婚約話がどうしたって?」
「ほら、ちょうど二年前くらいにも大量の手紙の返事を書いてただろ。あの時もだが、まぁ適当に返したんだ」
「つまり、婚約話を断ったときにどうせ縁繋ぎだろうと高を括って、社交辞令的に返したのは悪かったと。誠意がなかったから、学園に会ったらそのことで謝ろうと思ったんだね」
「ああ」
「なるほど。分かったよ」
あれだな。エドガー兄さんって、かなり実直だな。アホじゃないし、普通に賢いんだけど、根が素直なんだよな。
なんか、貴族としてやっていけるか心配になるぞ。
けど、これくらい素直な方が人間味があっていいと思うし、汚い部分は学園で学べばいいしな。
そういう人間関係の察し方や考え方を学ぶためにも学園はあるんだし。
なので、俺は訂正しない。まぁ、実際、中には本気の娘もいただろうし、そういう意味では訂正しない方がいい。
「はぁ」
と、そう思っていたら、エドガー兄さんが更に溜息を吐いた。
「そう何度も溜息を吐いてたら、幸せが逃げるよ。それに、自分が蒔いた種なんだし、自分で刈り取らなきゃいけないんだよ?」
「分かってるって。だが、な。あいつにも頭を下げるとなるとな……」
「あいつ?」
エドガー兄さんのとても苦々しい表情を見て、俺は首をかしげる。
逆にエドガー兄さんは俺が首を傾げたことに、首を傾げた。
「あん? お前、あいつに会ってないのか?」
「え、誰?」
「誰って……いや、まぁ、お前が分からないなら――」
あいつ、あいつ。
そういえば、さっきのエドガー兄さんの表情、どっかで見たことあるんだよな。
そうそう、あれも一昨年のこんな時期で、確か令嬢たちからの手紙を沢山返していた時……
あ、確か前にもエドガー兄さんって中等学園に行きたくないって言ってたよな。あの時言ってた理由は確か……
「――あ、例の人」
「チッ」
そうそう。
生誕祭に行くときに、ライン兄さんがそのことでエドガー兄さんを揶揄ってたわ。
あ、でも、結局、俺、その人のこと知らないんだよな。
……そういえば、ライン兄さん、生誕祭の日におかしなことを言っていたよな。ルーシー・バールクについてエドガー兄さんに押し付けられるとかどうとか……
もしかして、
「ルーシー・バールク?」
「……さぁ、どうだか?」
俺がそういった瞬間、エドガー兄さんは少しだけ目を見開いた。それから、わざとらしく肩を竦める。
五年近くエドガー兄さんの弟をやっているのだ。癖くらい分かる。
「違うんだ」
まぁ、彼女は今年、中等学園に入学するわけじゃないしな。
「けど、かなり近いんだね」
「ノーコメントで」
エドガー兄さんはそっぽを向いた。表情を見せないつもりだろう。
にしてもルーシー・バールクが違うとなると誰だ。
中等学園ってことを考慮すれば、歳はエドガー兄さんと同じか、二つ上まで。
それでルーシー・バールクと関係があるとすれば、それなりに爵位の高くてなおかつ、ルーシー・バールクの派閥の者……
となると、かなり限られるが……
「オホークツ侯爵令嬢? ニュージラン侯爵令嬢? ジーン伯爵令嬢? プリトレン辺境伯令嬢? ……これも違うか」
エドガー兄さんはだんまり。
それから俺は思いつく限りの令嬢を上げたのだが、エドガー兄さんがそれらしい反応をしない。
「え~、俺が覚えている限りの派閥の娘たちを上げたけど、違うの? 男爵令嬢や子爵令嬢も上げたのに……」
俺は頭を悩ませる。
明日、ライン兄さんに聞けばいいかもしれないが、それはそれでつまらないし、プライドが許さない。
と、エドガー兄さんが立ち上がった。
「もういいだろ! かなり話し込んだし、眠くなった。それに母さんにバレると怖い」
「あ、ちょ、逃げないでよ!」
確かにかなり話し込んだしな。もうそろそろ寝ないと、明日、酷いことになる。
そう思って、俺はスタスタと屋敷に戻るエドガー兄さんの後をついていく。
っというか、母さんにバレるって。エドガー兄さんってアテナ母さんをかなり恐れれるよね。
まぁ、かなり怒られたと思うし、そういうところは子供っぽくて可愛いと思うが、おっとりしている感じの人が苦手なのかな?
と、エドガー兄さんって可愛いなと思ったとき、
「あ」
突如として、閃いてしまった。
俺は恐る恐るエドガー兄さんに尋ねる。
「ねぇ、普通に考えると貴族社会的にありえないし、問題になるかもしれないけど、もしかしてさ……」
「……なんだよ」
「ハティア王女殿下だったりする? ルーシー・バールク派閥って、彼女のための派閥だし」
スタスタと歩いていたエドガー兄さんが足を止めた。
それから数秒黙り込んだ後、エドガー兄さんはポツリと言った。
「……違うぞ」
確信した。ハティア王女殿下だ。
「え、マジでッ!!?? エドガー兄さんはなんて返事したの!? そういえば、ライン兄さん婚姻話にまで進むとか言ってたけど、あれってどういうことッ!?」
めっちゃ楽しい。
驚きもあるが、それ以上にものすごく面白そう!
ニヨニヨが止まらない。
「おい、ひっつくなや! っつか、違うって言ってんだろ!」
「さっきまでノーコメントだったのに、やけに否定するじゃん!」
「ッ。お前の言葉が流石に不敬だから、きつく言っただけだ!」
「嘘だ。嘘だ! それで直接そういう話が上がったの!? それとも、向こうがそれとなくにおわせてきたの!? っというか、エドガー兄さんはハティア王女殿下のことが好きな――」
いや、ワクテカ。wktk。
エドガー兄さんの少し頬が赤く染まった表情とか、うん、楽しい!
そう、楽しすぎたんだ。
だから、
「あなたたち、こんな夜中に何騒いでいるのかしら? しかも、屋敷の外で?」
「「あ」」
俺の声が大きすぎたか。
アテナ母さんがいつの間にか俺たちの前にいた。
鬼だった。
Φ
アテナ母さんにしこたま怒られた俺とエドガー兄さんは、眠たい目をこすりならがら就寝した。
そして、その日の朝にエドガー兄さんは家を発った。
だが、俺はそれどころではない。
「……ねぇ、学園に行ったらもっと謝るってどういうこと?」
「どういうことも何も、今、お前に言われたんだぞ。誠実にしろって。確かに思い返してみれば、不誠実だったしな」
「いや、そうじゃなくて。いや、そうなんだけど、何? エドガー兄さんって多くの令嬢と婚約してるの!? ハーレム王なのッ!?」
聞いてない!
っというか、何それ、ずるいというか、不公平というかッ。
やっぱり、顔なのかッ!? エドガー兄さんのそのワイルドなイケメンにやられるのかッ!?
前世も含めてモテたためしがないため、俺は思わず嫉妬の獣に成り下がり始める。
と、エドガー兄さんは呆れた表情をした。
「何言ってんだ。俺は婚約もしてねぇし、ハーレムとか望んでねぇよ」
「ふんっ。そんなこと言っている人こそ、いざとなったら選べないで両方ともとかいうんだよ!」
「言わねぇわッ! っつか、それこそ不誠実だろ!」
「……それはどうだろ? 一応、エレガント王国は一夫多妻を禁じているわけじゃないし、エルフの国だと一妻多夫が多いらしいし。まぁ、そこらへんは誠実、不誠実というよりは文化とかじゃない?」
「いや、違ぇだろ」
「そう?」
エドガー兄さんのジト目のツッコミに俺は首をかしげる。
愛が一つだけなら、自分の伴侶と子供に向ける愛は両立しないだろうし、恋だってたった一人だけに恋するっていうのも、ぶっちゃけ人間として不自然に感じるんだよな。
っというか、何かに強く情熱やら想いやらを注いだりする点では、人に限らなければ趣味とか、仕事とかも同じような気がするし。
結局は、文化だったり、互いが納得するかどうかだけだと思うんだが。
まぁ、だけど、これは価値観の違いかな。なんで、俺がこんな価値観を持っているか、考えたこともなかったけど……
そんな俺の思考を読んだのか、エドガー兄さんは溜息を吐いた。
「まぁ、いいや」
「いや、よくないよ。それで婚約してないなら、何で学園に行って謝らなきゃいけないの? もしかして、小さい頃にノリで口約束しまくったの?」
「してねぇよ。流石に令嬢相手にそんな迂闊なことするか! 問題になるだろうが! ただでさえユリシアの暴力沙汰で問題になってるのに!」
「まぁ、だよね」
俺は頷き、それから話すまで寝かさないという意志をエドガー兄さんにぶつける。
「で?」
エドガー兄さんは話さないと駄目か、と項垂れた後、少しだけそっぽを向きながら話し始める。
「……いや、な。ほら、婚約はしてねぇが、そういう話はかなり持ち上がったし、申し込まれたことも多いんだ。ほら、お前にも生誕祭の時に令嬢たちとそんな感じにならなかったか?」
「なってないよ」
即答。
俺、生誕祭に出たとき、顔つなぎとかそういうのはあったけど、婚約の話は一切なかった。
っというか、皆、俺の顔を見た後、ロイス父さんとアテナ母さんの顔を二度見くらいして、それから困ったような顔をしてたんだけど。
大人たちはまだマシだったが、同年代の子たちは露骨に表情に出してたしな。
クソッ!
「そ、そうか。それは、なんか、すまん」
「すまんとかじゃないんだけど。っというか、生誕祭に出たとき、俺はそういう話はなかったけど、俺と一緒に行って、しかも主役でもないライン兄さんもそういう話あったらしいんだけど」
「…………なんというか、あれだ。たぶん、タイミングが悪かったんだ。ほ、ほら、生誕祭の時にドルック商会を支援している話を父さんたちが話したから、そっちに気を取られたんじゃないか? たぶんそうだ!」
「だったら、猶更、縁繋ぎのために俺にそういう話が来ると思うんだけど」
「うっ」
エドガー兄さんはバツの悪そうな顔をする。
「エドガー兄さんって案外フォローが苦手なんだね」
「面目ない」
エドガー兄さんの情けない表情を見て、俺は満足する。
俺がそういう話を貰わなかったのには、たぶん他の理由があるだろうし、心当たりがあるから、気にしてない。
……気にしてないのだ。
ただ、ちょっとムカついただけなのだ。
だから、俺は首を横に振った。
「いや、いいよ。それで、婚約話がどうしたって?」
「ほら、ちょうど二年前くらいにも大量の手紙の返事を書いてただろ。あの時もだが、まぁ適当に返したんだ」
「つまり、婚約話を断ったときにどうせ縁繋ぎだろうと高を括って、社交辞令的に返したのは悪かったと。誠意がなかったから、学園に会ったらそのことで謝ろうと思ったんだね」
「ああ」
「なるほど。分かったよ」
あれだな。エドガー兄さんって、かなり実直だな。アホじゃないし、普通に賢いんだけど、根が素直なんだよな。
なんか、貴族としてやっていけるか心配になるぞ。
けど、これくらい素直な方が人間味があっていいと思うし、汚い部分は学園で学べばいいしな。
そういう人間関係の察し方や考え方を学ぶためにも学園はあるんだし。
なので、俺は訂正しない。まぁ、実際、中には本気の娘もいただろうし、そういう意味では訂正しない方がいい。
「はぁ」
と、そう思っていたら、エドガー兄さんが更に溜息を吐いた。
「そう何度も溜息を吐いてたら、幸せが逃げるよ。それに、自分が蒔いた種なんだし、自分で刈り取らなきゃいけないんだよ?」
「分かってるって。だが、な。あいつにも頭を下げるとなるとな……」
「あいつ?」
エドガー兄さんのとても苦々しい表情を見て、俺は首をかしげる。
逆にエドガー兄さんは俺が首を傾げたことに、首を傾げた。
「あん? お前、あいつに会ってないのか?」
「え、誰?」
「誰って……いや、まぁ、お前が分からないなら――」
あいつ、あいつ。
そういえば、さっきのエドガー兄さんの表情、どっかで見たことあるんだよな。
そうそう、あれも一昨年のこんな時期で、確か令嬢たちからの手紙を沢山返していた時……
あ、確か前にもエドガー兄さんって中等学園に行きたくないって言ってたよな。あの時言ってた理由は確か……
「――あ、例の人」
「チッ」
そうそう。
生誕祭に行くときに、ライン兄さんがそのことでエドガー兄さんを揶揄ってたわ。
あ、でも、結局、俺、その人のこと知らないんだよな。
……そういえば、ライン兄さん、生誕祭の日におかしなことを言っていたよな。ルーシー・バールクについてエドガー兄さんに押し付けられるとかどうとか……
もしかして、
「ルーシー・バールク?」
「……さぁ、どうだか?」
俺がそういった瞬間、エドガー兄さんは少しだけ目を見開いた。それから、わざとらしく肩を竦める。
五年近くエドガー兄さんの弟をやっているのだ。癖くらい分かる。
「違うんだ」
まぁ、彼女は今年、中等学園に入学するわけじゃないしな。
「けど、かなり近いんだね」
「ノーコメントで」
エドガー兄さんはそっぽを向いた。表情を見せないつもりだろう。
にしてもルーシー・バールクが違うとなると誰だ。
中等学園ってことを考慮すれば、歳はエドガー兄さんと同じか、二つ上まで。
それでルーシー・バールクと関係があるとすれば、それなりに爵位の高くてなおかつ、ルーシー・バールクの派閥の者……
となると、かなり限られるが……
「オホークツ侯爵令嬢? ニュージラン侯爵令嬢? ジーン伯爵令嬢? プリトレン辺境伯令嬢? ……これも違うか」
エドガー兄さんはだんまり。
それから俺は思いつく限りの令嬢を上げたのだが、エドガー兄さんがそれらしい反応をしない。
「え~、俺が覚えている限りの派閥の娘たちを上げたけど、違うの? 男爵令嬢や子爵令嬢も上げたのに……」
俺は頭を悩ませる。
明日、ライン兄さんに聞けばいいかもしれないが、それはそれでつまらないし、プライドが許さない。
と、エドガー兄さんが立ち上がった。
「もういいだろ! かなり話し込んだし、眠くなった。それに母さんにバレると怖い」
「あ、ちょ、逃げないでよ!」
確かにかなり話し込んだしな。もうそろそろ寝ないと、明日、酷いことになる。
そう思って、俺はスタスタと屋敷に戻るエドガー兄さんの後をついていく。
っというか、母さんにバレるって。エドガー兄さんってアテナ母さんをかなり恐れれるよね。
まぁ、かなり怒られたと思うし、そういうところは子供っぽくて可愛いと思うが、おっとりしている感じの人が苦手なのかな?
と、エドガー兄さんって可愛いなと思ったとき、
「あ」
突如として、閃いてしまった。
俺は恐る恐るエドガー兄さんに尋ねる。
「ねぇ、普通に考えると貴族社会的にありえないし、問題になるかもしれないけど、もしかしてさ……」
「……なんだよ」
「ハティア王女殿下だったりする? ルーシー・バールク派閥って、彼女のための派閥だし」
スタスタと歩いていたエドガー兄さんが足を止めた。
それから数秒黙り込んだ後、エドガー兄さんはポツリと言った。
「……違うぞ」
確信した。ハティア王女殿下だ。
「え、マジでッ!!?? エドガー兄さんはなんて返事したの!? そういえば、ライン兄さん婚姻話にまで進むとか言ってたけど、あれってどういうことッ!?」
めっちゃ楽しい。
驚きもあるが、それ以上にものすごく面白そう!
ニヨニヨが止まらない。
「おい、ひっつくなや! っつか、違うって言ってんだろ!」
「さっきまでノーコメントだったのに、やけに否定するじゃん!」
「ッ。お前の言葉が流石に不敬だから、きつく言っただけだ!」
「嘘だ。嘘だ! それで直接そういう話が上がったの!? それとも、向こうがそれとなくにおわせてきたの!? っというか、エドガー兄さんはハティア王女殿下のことが好きな――」
いや、ワクテカ。wktk。
エドガー兄さんの少し頬が赤く染まった表情とか、うん、楽しい!
そう、楽しすぎたんだ。
だから、
「あなたたち、こんな夜中に何騒いでいるのかしら? しかも、屋敷の外で?」
「「あ」」
俺の声が大きすぎたか。
アテナ母さんがいつの間にか俺たちの前にいた。
鬼だった。
Φ
アテナ母さんにしこたま怒られた俺とエドガー兄さんは、眠たい目をこすりならがら就寝した。
そして、その日の朝にエドガー兄さんは家を発った。
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