243 / 316
収穫祭と訪問客
ワクテカ:late summer night
しおりを挟む
少し先の未来を想像して、暗い表情となったエドガー兄さん。
だが、俺はそれどころではない。
「……ねぇ、学園に行ったらもっと謝るってどういうこと?」
「どういうことも何も、今、お前に言われたんだぞ。誠実にしろって。確かに思い返してみれば、不誠実だったしな」
「いや、そうじゃなくて。いや、そうなんだけど、何? エドガー兄さんって多くの令嬢と婚約してるの!? ハーレム王なのッ!?」
聞いてない!
っというか、何それ、ずるいというか、不公平というかッ。
やっぱり、顔なのかッ!? エドガー兄さんのそのワイルドなイケメンにやられるのかッ!?
前世も含めてモテたためしがないため、俺は思わず嫉妬の獣に成り下がり始める。
と、エドガー兄さんは呆れた表情をした。
「何言ってんだ。俺は婚約もしてねぇし、ハーレムとか望んでねぇよ」
「ふんっ。そんなこと言っている人こそ、いざとなったら選べないで両方ともとかいうんだよ!」
「言わねぇわッ! っつか、それこそ不誠実だろ!」
「……それはどうだろ? 一応、エレガント王国は一夫多妻を禁じているわけじゃないし、エルフの国だと一妻多夫が多いらしいし。まぁ、そこらへんは誠実、不誠実というよりは文化とかじゃない?」
「いや、違ぇだろ」
「そう?」
エドガー兄さんのジト目のツッコミに俺は首をかしげる。
愛が一つだけなら、自分の伴侶と子供に向ける愛は両立しないだろうし、恋だってたった一人だけに恋するっていうのも、ぶっちゃけ人間として不自然に感じるんだよな。
っというか、何かに強く情熱やら想いやらを注いだりする点では、人に限らなければ趣味とか、仕事とかも同じような気がするし。
結局は、文化だったり、互いが納得するかどうかだけだと思うんだが。
まぁ、だけど、これは価値観の違いかな。なんで、俺がこんな価値観を持っているか、考えたこともなかったけど……
そんな俺の思考を読んだのか、エドガー兄さんは溜息を吐いた。
「まぁ、いいや」
「いや、よくないよ。それで婚約してないなら、何で学園に行って謝らなきゃいけないの? もしかして、小さい頃にノリで口約束しまくったの?」
「してねぇよ。流石に令嬢相手にそんな迂闊なことするか! 問題になるだろうが! ただでさえユリシアの暴力沙汰で問題になってるのに!」
「まぁ、だよね」
俺は頷き、それから話すまで寝かさないという意志をエドガー兄さんにぶつける。
「で?」
エドガー兄さんは話さないと駄目か、と項垂れた後、少しだけそっぽを向きながら話し始める。
「……いや、な。ほら、婚約はしてねぇが、そういう話はかなり持ち上がったし、申し込まれたことも多いんだ。ほら、お前にも生誕祭の時に令嬢たちとそんな感じにならなかったか?」
「なってないよ」
即答。
俺、生誕祭に出たとき、顔つなぎとかそういうのはあったけど、婚約の話は一切なかった。
っというか、皆、俺の顔を見た後、ロイス父さんとアテナ母さんの顔を二度見くらいして、それから困ったような顔をしてたんだけど。
大人たちはまだマシだったが、同年代の子たちは露骨に表情に出してたしな。
クソッ!
「そ、そうか。それは、なんか、すまん」
「すまんとかじゃないんだけど。っというか、生誕祭に出たとき、俺はそういう話はなかったけど、俺と一緒に行って、しかも主役でもないライン兄さんもそういう話あったらしいんだけど」
「…………なんというか、あれだ。たぶん、タイミングが悪かったんだ。ほ、ほら、生誕祭の時にドルック商会を支援している話を父さんたちが話したから、そっちに気を取られたんじゃないか? たぶんそうだ!」
「だったら、猶更、縁繋ぎのために俺にそういう話が来ると思うんだけど」
「うっ」
エドガー兄さんはバツの悪そうな顔をする。
「エドガー兄さんって案外フォローが苦手なんだね」
「面目ない」
エドガー兄さんの情けない表情を見て、俺は満足する。
俺がそういう話を貰わなかったのには、たぶん他の理由があるだろうし、心当たりがあるから、気にしてない。
……気にしてないのだ。
ただ、ちょっとムカついただけなのだ。
だから、俺は首を横に振った。
「いや、いいよ。それで、婚約話がどうしたって?」
「ほら、ちょうど二年前くらいにも大量の手紙の返事を書いてただろ。あの時もだが、まぁ適当に返したんだ」
「つまり、婚約話を断ったときにどうせ縁繋ぎだろうと高を括って、社交辞令的に返したのは悪かったと。誠意がなかったから、学園に会ったらそのことで謝ろうと思ったんだね」
「ああ」
「なるほど。分かったよ」
あれだな。エドガー兄さんって、かなり実直だな。アホじゃないし、普通に賢いんだけど、根が素直なんだよな。
なんか、貴族としてやっていけるか心配になるぞ。
けど、これくらい素直な方が人間味があっていいと思うし、汚い部分は学園で学べばいいしな。
そういう人間関係の察し方や考え方を学ぶためにも学園はあるんだし。
なので、俺は訂正しない。まぁ、実際、中には本気の娘もいただろうし、そういう意味では訂正しない方がいい。
「はぁ」
と、そう思っていたら、エドガー兄さんが更に溜息を吐いた。
「そう何度も溜息を吐いてたら、幸せが逃げるよ。それに、自分が蒔いた種なんだし、自分で刈り取らなきゃいけないんだよ?」
「分かってるって。だが、な。あいつにも頭を下げるとなるとな……」
「あいつ?」
エドガー兄さんのとても苦々しい表情を見て、俺は首をかしげる。
逆にエドガー兄さんは俺が首を傾げたことに、首を傾げた。
「あん? お前、あいつに会ってないのか?」
「え、誰?」
「誰って……いや、まぁ、お前が分からないなら――」
あいつ、あいつ。
そういえば、さっきのエドガー兄さんの表情、どっかで見たことあるんだよな。
そうそう、あれも一昨年のこんな時期で、確か令嬢たちからの手紙を沢山返していた時……
あ、確か前にもエドガー兄さんって中等学園に行きたくないって言ってたよな。あの時言ってた理由は確か……
「――あ、例の人」
「チッ」
そうそう。
生誕祭に行くときに、ライン兄さんがそのことでエドガー兄さんを揶揄ってたわ。
あ、でも、結局、俺、その人のこと知らないんだよな。
……そういえば、ライン兄さん、生誕祭の日におかしなことを言っていたよな。ルーシー・バールクについてエドガー兄さんに押し付けられるとかどうとか……
もしかして、
「ルーシー・バールク?」
「……さぁ、どうだか?」
俺がそういった瞬間、エドガー兄さんは少しだけ目を見開いた。それから、わざとらしく肩を竦める。
五年近くエドガー兄さんの弟をやっているのだ。癖くらい分かる。
「違うんだ」
まぁ、彼女は今年、中等学園に入学するわけじゃないしな。
「けど、かなり近いんだね」
「ノーコメントで」
エドガー兄さんはそっぽを向いた。表情を見せないつもりだろう。
にしてもルーシー・バールクが違うとなると誰だ。
中等学園ってことを考慮すれば、歳はエドガー兄さんと同じか、二つ上まで。
それでルーシー・バールクと関係があるとすれば、それなりに爵位の高くてなおかつ、ルーシー・バールクの派閥の者……
となると、かなり限られるが……
「オホークツ侯爵令嬢? ニュージラン侯爵令嬢? ジーン伯爵令嬢? プリトレン辺境伯令嬢? ……これも違うか」
エドガー兄さんはだんまり。
それから俺は思いつく限りの令嬢を上げたのだが、エドガー兄さんがそれらしい反応をしない。
「え~、俺が覚えている限りの派閥の娘たちを上げたけど、違うの? 男爵令嬢や子爵令嬢も上げたのに……」
俺は頭を悩ませる。
明日、ライン兄さんに聞けばいいかもしれないが、それはそれでつまらないし、プライドが許さない。
と、エドガー兄さんが立ち上がった。
「もういいだろ! かなり話し込んだし、眠くなった。それに母さんにバレると怖い」
「あ、ちょ、逃げないでよ!」
確かにかなり話し込んだしな。もうそろそろ寝ないと、明日、酷いことになる。
そう思って、俺はスタスタと屋敷に戻るエドガー兄さんの後をついていく。
っというか、母さんにバレるって。エドガー兄さんってアテナ母さんをかなり恐れれるよね。
まぁ、かなり怒られたと思うし、そういうところは子供っぽくて可愛いと思うが、おっとりしている感じの人が苦手なのかな?
と、エドガー兄さんって可愛いなと思ったとき、
「あ」
突如として、閃いてしまった。
俺は恐る恐るエドガー兄さんに尋ねる。
「ねぇ、普通に考えると貴族社会的にありえないし、問題になるかもしれないけど、もしかしてさ……」
「……なんだよ」
「ハティア王女殿下だったりする? ルーシー・バールク派閥って、彼女のための派閥だし」
スタスタと歩いていたエドガー兄さんが足を止めた。
それから数秒黙り込んだ後、エドガー兄さんはポツリと言った。
「……違うぞ」
確信した。ハティア王女殿下だ。
「え、マジでッ!!?? エドガー兄さんはなんて返事したの!? そういえば、ライン兄さん婚姻話にまで進むとか言ってたけど、あれってどういうことッ!?」
めっちゃ楽しい。
驚きもあるが、それ以上にものすごく面白そう!
ニヨニヨが止まらない。
「おい、ひっつくなや! っつか、違うって言ってんだろ!」
「さっきまでノーコメントだったのに、やけに否定するじゃん!」
「ッ。お前の言葉が流石に不敬だから、きつく言っただけだ!」
「嘘だ。嘘だ! それで直接そういう話が上がったの!? それとも、向こうがそれとなくにおわせてきたの!? っというか、エドガー兄さんはハティア王女殿下のことが好きな――」
いや、ワクテカ。wktk。
エドガー兄さんの少し頬が赤く染まった表情とか、うん、楽しい!
そう、楽しすぎたんだ。
だから、
「あなたたち、こんな夜中に何騒いでいるのかしら? しかも、屋敷の外で?」
「「あ」」
俺の声が大きすぎたか。
アテナ母さんがいつの間にか俺たちの前にいた。
鬼だった。
Φ
アテナ母さんにしこたま怒られた俺とエドガー兄さんは、眠たい目をこすりならがら就寝した。
そして、その日の朝にエドガー兄さんは家を発った。
だが、俺はそれどころではない。
「……ねぇ、学園に行ったらもっと謝るってどういうこと?」
「どういうことも何も、今、お前に言われたんだぞ。誠実にしろって。確かに思い返してみれば、不誠実だったしな」
「いや、そうじゃなくて。いや、そうなんだけど、何? エドガー兄さんって多くの令嬢と婚約してるの!? ハーレム王なのッ!?」
聞いてない!
っというか、何それ、ずるいというか、不公平というかッ。
やっぱり、顔なのかッ!? エドガー兄さんのそのワイルドなイケメンにやられるのかッ!?
前世も含めてモテたためしがないため、俺は思わず嫉妬の獣に成り下がり始める。
と、エドガー兄さんは呆れた表情をした。
「何言ってんだ。俺は婚約もしてねぇし、ハーレムとか望んでねぇよ」
「ふんっ。そんなこと言っている人こそ、いざとなったら選べないで両方ともとかいうんだよ!」
「言わねぇわッ! っつか、それこそ不誠実だろ!」
「……それはどうだろ? 一応、エレガント王国は一夫多妻を禁じているわけじゃないし、エルフの国だと一妻多夫が多いらしいし。まぁ、そこらへんは誠実、不誠実というよりは文化とかじゃない?」
「いや、違ぇだろ」
「そう?」
エドガー兄さんのジト目のツッコミに俺は首をかしげる。
愛が一つだけなら、自分の伴侶と子供に向ける愛は両立しないだろうし、恋だってたった一人だけに恋するっていうのも、ぶっちゃけ人間として不自然に感じるんだよな。
っというか、何かに強く情熱やら想いやらを注いだりする点では、人に限らなければ趣味とか、仕事とかも同じような気がするし。
結局は、文化だったり、互いが納得するかどうかだけだと思うんだが。
まぁ、だけど、これは価値観の違いかな。なんで、俺がこんな価値観を持っているか、考えたこともなかったけど……
そんな俺の思考を読んだのか、エドガー兄さんは溜息を吐いた。
「まぁ、いいや」
「いや、よくないよ。それで婚約してないなら、何で学園に行って謝らなきゃいけないの? もしかして、小さい頃にノリで口約束しまくったの?」
「してねぇよ。流石に令嬢相手にそんな迂闊なことするか! 問題になるだろうが! ただでさえユリシアの暴力沙汰で問題になってるのに!」
「まぁ、だよね」
俺は頷き、それから話すまで寝かさないという意志をエドガー兄さんにぶつける。
「で?」
エドガー兄さんは話さないと駄目か、と項垂れた後、少しだけそっぽを向きながら話し始める。
「……いや、な。ほら、婚約はしてねぇが、そういう話はかなり持ち上がったし、申し込まれたことも多いんだ。ほら、お前にも生誕祭の時に令嬢たちとそんな感じにならなかったか?」
「なってないよ」
即答。
俺、生誕祭に出たとき、顔つなぎとかそういうのはあったけど、婚約の話は一切なかった。
っというか、皆、俺の顔を見た後、ロイス父さんとアテナ母さんの顔を二度見くらいして、それから困ったような顔をしてたんだけど。
大人たちはまだマシだったが、同年代の子たちは露骨に表情に出してたしな。
クソッ!
「そ、そうか。それは、なんか、すまん」
「すまんとかじゃないんだけど。っというか、生誕祭に出たとき、俺はそういう話はなかったけど、俺と一緒に行って、しかも主役でもないライン兄さんもそういう話あったらしいんだけど」
「…………なんというか、あれだ。たぶん、タイミングが悪かったんだ。ほ、ほら、生誕祭の時にドルック商会を支援している話を父さんたちが話したから、そっちに気を取られたんじゃないか? たぶんそうだ!」
「だったら、猶更、縁繋ぎのために俺にそういう話が来ると思うんだけど」
「うっ」
エドガー兄さんはバツの悪そうな顔をする。
「エドガー兄さんって案外フォローが苦手なんだね」
「面目ない」
エドガー兄さんの情けない表情を見て、俺は満足する。
俺がそういう話を貰わなかったのには、たぶん他の理由があるだろうし、心当たりがあるから、気にしてない。
……気にしてないのだ。
ただ、ちょっとムカついただけなのだ。
だから、俺は首を横に振った。
「いや、いいよ。それで、婚約話がどうしたって?」
「ほら、ちょうど二年前くらいにも大量の手紙の返事を書いてただろ。あの時もだが、まぁ適当に返したんだ」
「つまり、婚約話を断ったときにどうせ縁繋ぎだろうと高を括って、社交辞令的に返したのは悪かったと。誠意がなかったから、学園に会ったらそのことで謝ろうと思ったんだね」
「ああ」
「なるほど。分かったよ」
あれだな。エドガー兄さんって、かなり実直だな。アホじゃないし、普通に賢いんだけど、根が素直なんだよな。
なんか、貴族としてやっていけるか心配になるぞ。
けど、これくらい素直な方が人間味があっていいと思うし、汚い部分は学園で学べばいいしな。
そういう人間関係の察し方や考え方を学ぶためにも学園はあるんだし。
なので、俺は訂正しない。まぁ、実際、中には本気の娘もいただろうし、そういう意味では訂正しない方がいい。
「はぁ」
と、そう思っていたら、エドガー兄さんが更に溜息を吐いた。
「そう何度も溜息を吐いてたら、幸せが逃げるよ。それに、自分が蒔いた種なんだし、自分で刈り取らなきゃいけないんだよ?」
「分かってるって。だが、な。あいつにも頭を下げるとなるとな……」
「あいつ?」
エドガー兄さんのとても苦々しい表情を見て、俺は首をかしげる。
逆にエドガー兄さんは俺が首を傾げたことに、首を傾げた。
「あん? お前、あいつに会ってないのか?」
「え、誰?」
「誰って……いや、まぁ、お前が分からないなら――」
あいつ、あいつ。
そういえば、さっきのエドガー兄さんの表情、どっかで見たことあるんだよな。
そうそう、あれも一昨年のこんな時期で、確か令嬢たちからの手紙を沢山返していた時……
あ、確か前にもエドガー兄さんって中等学園に行きたくないって言ってたよな。あの時言ってた理由は確か……
「――あ、例の人」
「チッ」
そうそう。
生誕祭に行くときに、ライン兄さんがそのことでエドガー兄さんを揶揄ってたわ。
あ、でも、結局、俺、その人のこと知らないんだよな。
……そういえば、ライン兄さん、生誕祭の日におかしなことを言っていたよな。ルーシー・バールクについてエドガー兄さんに押し付けられるとかどうとか……
もしかして、
「ルーシー・バールク?」
「……さぁ、どうだか?」
俺がそういった瞬間、エドガー兄さんは少しだけ目を見開いた。それから、わざとらしく肩を竦める。
五年近くエドガー兄さんの弟をやっているのだ。癖くらい分かる。
「違うんだ」
まぁ、彼女は今年、中等学園に入学するわけじゃないしな。
「けど、かなり近いんだね」
「ノーコメントで」
エドガー兄さんはそっぽを向いた。表情を見せないつもりだろう。
にしてもルーシー・バールクが違うとなると誰だ。
中等学園ってことを考慮すれば、歳はエドガー兄さんと同じか、二つ上まで。
それでルーシー・バールクと関係があるとすれば、それなりに爵位の高くてなおかつ、ルーシー・バールクの派閥の者……
となると、かなり限られるが……
「オホークツ侯爵令嬢? ニュージラン侯爵令嬢? ジーン伯爵令嬢? プリトレン辺境伯令嬢? ……これも違うか」
エドガー兄さんはだんまり。
それから俺は思いつく限りの令嬢を上げたのだが、エドガー兄さんがそれらしい反応をしない。
「え~、俺が覚えている限りの派閥の娘たちを上げたけど、違うの? 男爵令嬢や子爵令嬢も上げたのに……」
俺は頭を悩ませる。
明日、ライン兄さんに聞けばいいかもしれないが、それはそれでつまらないし、プライドが許さない。
と、エドガー兄さんが立ち上がった。
「もういいだろ! かなり話し込んだし、眠くなった。それに母さんにバレると怖い」
「あ、ちょ、逃げないでよ!」
確かにかなり話し込んだしな。もうそろそろ寝ないと、明日、酷いことになる。
そう思って、俺はスタスタと屋敷に戻るエドガー兄さんの後をついていく。
っというか、母さんにバレるって。エドガー兄さんってアテナ母さんをかなり恐れれるよね。
まぁ、かなり怒られたと思うし、そういうところは子供っぽくて可愛いと思うが、おっとりしている感じの人が苦手なのかな?
と、エドガー兄さんって可愛いなと思ったとき、
「あ」
突如として、閃いてしまった。
俺は恐る恐るエドガー兄さんに尋ねる。
「ねぇ、普通に考えると貴族社会的にありえないし、問題になるかもしれないけど、もしかしてさ……」
「……なんだよ」
「ハティア王女殿下だったりする? ルーシー・バールク派閥って、彼女のための派閥だし」
スタスタと歩いていたエドガー兄さんが足を止めた。
それから数秒黙り込んだ後、エドガー兄さんはポツリと言った。
「……違うぞ」
確信した。ハティア王女殿下だ。
「え、マジでッ!!?? エドガー兄さんはなんて返事したの!? そういえば、ライン兄さん婚姻話にまで進むとか言ってたけど、あれってどういうことッ!?」
めっちゃ楽しい。
驚きもあるが、それ以上にものすごく面白そう!
ニヨニヨが止まらない。
「おい、ひっつくなや! っつか、違うって言ってんだろ!」
「さっきまでノーコメントだったのに、やけに否定するじゃん!」
「ッ。お前の言葉が流石に不敬だから、きつく言っただけだ!」
「嘘だ。嘘だ! それで直接そういう話が上がったの!? それとも、向こうがそれとなくにおわせてきたの!? っというか、エドガー兄さんはハティア王女殿下のことが好きな――」
いや、ワクテカ。wktk。
エドガー兄さんの少し頬が赤く染まった表情とか、うん、楽しい!
そう、楽しすぎたんだ。
だから、
「あなたたち、こんな夜中に何騒いでいるのかしら? しかも、屋敷の外で?」
「「あ」」
俺の声が大きすぎたか。
アテナ母さんがいつの間にか俺たちの前にいた。
鬼だった。
Φ
アテナ母さんにしこたま怒られた俺とエドガー兄さんは、眠たい目をこすりならがら就寝した。
そして、その日の朝にエドガー兄さんは家を発った。
14
読んでくださりありがとうございます!!少しでも面白いと思われたら、お気に入り登録や感想をよろしくお願いします!!また、エールで動画を見てくださると投稿継続につながりますのでよろしくお願いします。
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる