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さて準備かな
偽物の情報を掴ませる:emulate
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「じゃあ、行くよ」
木々が生い茂った山を登る。獣道すらなく、そこは険しい。
けれどソフィアは手加減することなく、天狗の如き足取りで登る。俺たちはその後を必死についていく。
「感知することを忘れちゃだめだよ。これは訓練だからね」
「……うん」
「分かってる」
いくら身体強化をしているとはいえ、ついていくのに精一杯な俺たちは周囲の魔力や気配を感知する余裕などない。
が、ソフィアの歩幅は俺たちと殆ど変わらないため、その上を歩けばジェームスのような危険な植物を踏んだりすることもない。
まぁ、そう上手くいくはずもなく、サボると普通にバレるらしい。注意してくるので、やっぱり辛い。
と、ライン兄さんが鋭く尋ねる。
「調査させてくれるんじゃなかったのっ?」
「だからしてるでしょ? じっくり観察するだけじゃない。一瞬一瞬で観察するのも、一つだよ。それに将来、君はどんな研究をしたいんだい? もちろん、植物や動物を捕獲して、その上で観察するのもあるかもしれない。けれど、実地で一秒一秒の生を掴んで生きている生物を相手にするなら、今のうちにそういう洞察力は磨いた方がいい」
「……むぅ」
ライン兄さんは少し不満な表情をしたが、けれど一理あると思ったのか渋々頷いていた。
それからふすん、と鼻息一つして、背負っているバックパックからに刺さっていたちょっとした筒を取り出す。
問答無用で進むソフィアについていきながら、ライン兄さんはその筒を使って写真を撮り始めた。写真みたいに記録を残せる“想起”の魔法が組み込まれている魔道具だ。
「ねぇ、ソフィア。どこに向かってるのっ?」
「拠点だよ。ボクが昨日立てたルートを周っているだけ。それよりも、また感知怠ってるでしょ。さっき、結構危険な毒を持った虫が近くを通ったのに気づかなかったし」
「うぇっ!?」
俺は体中をまさぐる。ローブの下も見る。
……………………
ふぅ。
よかった。何もいない。
と思ったらソフィアが足を止め、心配そうに俺を見た。
「……素直なのはいいことだけど、疑う事を覚えたほうがいいよ」
「嘘だったのっ! 酷い。本当に焦ったんだからっ!」
「腹芸をマスターしろとは言わないけど、そう一々反応するのもやめた方がいい」
「……いや、ソフィア相手だからしているわけで、誰でも……」
「セオ君?」
……流されなかったか。こう言えば、見逃してくれるかと思ったんだけど、普通に怒っていた。冗談は通じないか。
「本心からそう言ってくれる事を待ってるよ」
「……はい」
頷いた。
Φ
「つ、疲れた……」
「もう、無理」
キャンプ地に戻った俺たちはひっくり返る。肉体的な疲労もそうだが、何よりも頭を使った。
いや、だって、獣道すらない不安定な足場の山を登りつづけながら、周囲の植物などに注意し、感知をするのだ。
しかも、あの後、ソフィアは地に足をついて歩くことを文字通りの意味でやめ、木の上を歩くようになった。
何を言っているのか分からないだろうが、いわば忍び。
危険な植物や虫などを避けながら、木から木へ飛び移るソフィアを追いかけるのだ。
幸い、獣や魔物はソフィアが事前に追い払っていたらしく、それを相手にする必要はなかったが、もしそうでなかったら俺たちは今頃死んでいただろう。
無理やり“隠者”のごり押しで分身を潜ませていた俺は、酷いなと実感した。それと同時に、毒だろうが何だろうが関係なく魔力さえあれば無尽蔵に動かせる分身
は強いなとも再確認する。
それにしても、集中しながらも意識を分散させるのはとても難しい。
今まで“研究室”に感知を任せていたため、俺は対して気にもしなかったのだが、常に深い感知をしながら日常生活を送るのも相当困難だ。
「二人ともよく頑張った。重心の使い方も分かっただろうし、何よりも自然の雰囲気を掴めたよね」
「し、自然の雰囲気?」
「何それ……」
ぶっちゃけ、頭が働かない。何を言われても分からない。
そうすると、顔を覗き込んでいたソフィアがキシシシッといった具合に笑う。俺たちに手を差し伸べる。起き上がれという意味だろう。
「今、してるじゃん。君たち」
「え、どういう……」
「ソフィア、ちょっと何を言ってる……」
俺たちは混乱しながら、ソフィアの手をとり起き上がる。ソフィアは自分の頭に乗っけていた水の入ったコップを手に取り、俺たちに差し出す。
器用な事で。
「飲み終わってからでいいから、自分の魔力。キチンと感じてみな」
「え、うん……」
「分かった」
クイッと水を飲む。
ああ、しみわたる。五臓六腑にもそうだが、この水の冷たさが熱くそれでいて疲れ切った脳内を冷やしてくれる。トロトロにしてくれる。
…………………………………………
ふぅ。
で、自分の魔力だって? それはいつも通り魔力放出をほぼ抑えて、ついでに“隠者”で気配も消していて……
あれ?
「なんか、雑い。なんで、こんな魔力隠蔽をしてるんだ? 俺」
「……ねぇ、前にできてた隠蔽ができなくなってるんだけど。何これ、なんでこう勝手に放出しちゃうのっ?」
と思ったら、全然魔力を隠蔽できていなかった。
いや、隠蔽自体はしているのだが、何故かそのうえで体内に納めていた魔力を放出しているのだ。しかも、とても複雑に。っというか、これ、なんか俺の魔力と少し違うような……
無意識? 無意識でしかできないよな。しかも、自分の意志が働かないし。
と、混乱していた俺たちを眺めていたソフィアが頷く。
「まずは第一段階達成だね」
「……これが? 駄目じゃん。隠蔽できてないじゃんっ」
「いいや、できてるよ。君たちの魔力自体は問題なく隠蔽できている。そのうえで、隠蔽している事すらも隠している」
「……そういえばロイス父さんたちもそんな事を言ってたけど、どういうこと?」
隠蔽した事を隠す。なんとなく、意味は分かるのだが、実際のところ具体的な事はさっぱり分かっていなかったのだ。
「ジェームズを思い出して。あの魔力は、よくよく感知しないと普通で優しい雰囲気を持っていたよね。本当は毒々しい魔力が込められているのに」
「……偽ってる優しい雰囲気しかわからなかったんだけど。毒々しい魔力が込められてたの?」
「うん。そうだよ。まだ、君たちははっきりとはわからないだろうけど、その片鱗をつかんだから、偽りだと感じ取った」
「つまり、毒々しい魔力が僕たち本来の魔力。それで、普通に放出しているのが普通で優しい魔力が、今、僕たちが放出している魔力?」
「正解だよ、ライン君」
うん? あまり頭が働かないから、そう難しい……
………………
ふぅ。ようやく理解できてきた。
「セオ君も理解できたようだね。じゃあ、進めるよ。ボクたち生物は無意識上において、体内に納まってる、正確には肉体に重なる魄の部分の魔力をその生物固有の魔力として認識する。それで、そこから放出されて体外にでた魔力は自然魔力として認識するんだ」
「でも、放出されたからと言って、その人固有の魔力なんだよね?」
「そうだよ、ライン君」
ソフィアは頷く。
と、俺を指さす。
「セオ君。何か、分かったね?」
「あ、うん。なんとなく? たぶん、体内魔力を感じるのは疲れるんだと思うんだ。ほら、感知っていわば自分の感覚を拡張するようなものだから、他人の体内魔力を体内にいれた感じに近い。だから、それは避ける」
だって、つまり昨日みたいな感覚を味わうと言うことだ。あれよりはマイルドな感覚だろうが、無意識的に避けるんだ。
「それで、だから放出した魔力を代替としてその人の固有の魔力の雰囲気として認識している……の?」
「うん。基本的に間違いはないから進めるよ」
「待って、間違いがあるの?」
「まぁ、細かい部分を言えばね。けど、それは研究の領域だ。君たちが各々で調べ、考え、実験し、検証する部分だから、言わないよ」
そういってソフィアは、指先を空中に滑らせる。すると、魔力の線が描かれ、発光していく。空中に掛かれた絵だ。綺麗で優しい絵だ。
俺が魔術を使う際に用いる無属性魔法、〝描光〟だ。無属性魔法だから、魔力の性質や波長などには一切手がくわえられていない。
「今の君たちになら分かるね」
「……うん。感覚的にはその空中の絵の魔力はソフィアのものだと認識する」
「けど、実際は若干違う。ソフィアの体内魔力は、本当の魔力はもうちょっと優しい。柔らかで安心する」
ソフィアは満面の笑みで頷いた。
「正解、正解、大正解!!」
パチパチパチと褒められて、なんか照れる。だって、ソフィアの笑顔って屈託がないから、本心だって分かるんだもん。嬉しいしよ。
「そしてそこまで分かれば、何故この訓練をしたか分かるね」
俺もライン兄さんも頷いた。
「俺たち本来の魔力は隠しつつ、アルたちに合わせた魔力を放出するため。つまり、自分の魔力を偽装して、アルたちのを俺たちの魔力だと勘違いさせてアルたちの存在を感知されないようにする」
「もしくは、僕たちとミズチたちの本来の魔力は隠蔽して、放出する両方の魔力を偽装しながら同調させる。たぶん、昨日僕とセオが互いの魔力を隠蔽しようとした練習は、感知能力を高めるのもあるけど、そのための準備」
ソフィアが頷いた。
「そう、それこそが隠蔽自体を隠す事。単に放出魔力を抑えただけだと、一般人なら魔力自体が少ないのかな? と勘違いする。もしくは、存在自体に気が付かない。けれど、魔力感知にそれなりに優れている者は、隠蔽しているのだと気が付く」
ソフィアが放出していた魔力をゼロにした。
確かに、隠蔽している事が丸わかりだ。
「だから、わざと魔力を放出する。自分ではない偽装した魔力を。応用すれば、変装が得意になったり、周囲の木々などに同調したりできる。セオ君の“隠者”は、隠した事自体の違和感を希薄化させるものだけど、こっちは違和感そのものも作り出さない技術だよ」
そう言って、ソフィアは俺たちの頭を撫でた。
「昨日の訓練や今日の特定のルートを移動させる事によって、無意識的にそれができるようにはしたけど、けれど君たちの努力があってこそだ。よくやった。本当に凄いよ、君たちは」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、なんか嬉し恥ずかしかった。
木々が生い茂った山を登る。獣道すらなく、そこは険しい。
けれどソフィアは手加減することなく、天狗の如き足取りで登る。俺たちはその後を必死についていく。
「感知することを忘れちゃだめだよ。これは訓練だからね」
「……うん」
「分かってる」
いくら身体強化をしているとはいえ、ついていくのに精一杯な俺たちは周囲の魔力や気配を感知する余裕などない。
が、ソフィアの歩幅は俺たちと殆ど変わらないため、その上を歩けばジェームスのような危険な植物を踏んだりすることもない。
まぁ、そう上手くいくはずもなく、サボると普通にバレるらしい。注意してくるので、やっぱり辛い。
と、ライン兄さんが鋭く尋ねる。
「調査させてくれるんじゃなかったのっ?」
「だからしてるでしょ? じっくり観察するだけじゃない。一瞬一瞬で観察するのも、一つだよ。それに将来、君はどんな研究をしたいんだい? もちろん、植物や動物を捕獲して、その上で観察するのもあるかもしれない。けれど、実地で一秒一秒の生を掴んで生きている生物を相手にするなら、今のうちにそういう洞察力は磨いた方がいい」
「……むぅ」
ライン兄さんは少し不満な表情をしたが、けれど一理あると思ったのか渋々頷いていた。
それからふすん、と鼻息一つして、背負っているバックパックからに刺さっていたちょっとした筒を取り出す。
問答無用で進むソフィアについていきながら、ライン兄さんはその筒を使って写真を撮り始めた。写真みたいに記録を残せる“想起”の魔法が組み込まれている魔道具だ。
「ねぇ、ソフィア。どこに向かってるのっ?」
「拠点だよ。ボクが昨日立てたルートを周っているだけ。それよりも、また感知怠ってるでしょ。さっき、結構危険な毒を持った虫が近くを通ったのに気づかなかったし」
「うぇっ!?」
俺は体中をまさぐる。ローブの下も見る。
……………………
ふぅ。
よかった。何もいない。
と思ったらソフィアが足を止め、心配そうに俺を見た。
「……素直なのはいいことだけど、疑う事を覚えたほうがいいよ」
「嘘だったのっ! 酷い。本当に焦ったんだからっ!」
「腹芸をマスターしろとは言わないけど、そう一々反応するのもやめた方がいい」
「……いや、ソフィア相手だからしているわけで、誰でも……」
「セオ君?」
……流されなかったか。こう言えば、見逃してくれるかと思ったんだけど、普通に怒っていた。冗談は通じないか。
「本心からそう言ってくれる事を待ってるよ」
「……はい」
頷いた。
Φ
「つ、疲れた……」
「もう、無理」
キャンプ地に戻った俺たちはひっくり返る。肉体的な疲労もそうだが、何よりも頭を使った。
いや、だって、獣道すらない不安定な足場の山を登りつづけながら、周囲の植物などに注意し、感知をするのだ。
しかも、あの後、ソフィアは地に足をついて歩くことを文字通りの意味でやめ、木の上を歩くようになった。
何を言っているのか分からないだろうが、いわば忍び。
危険な植物や虫などを避けながら、木から木へ飛び移るソフィアを追いかけるのだ。
幸い、獣や魔物はソフィアが事前に追い払っていたらしく、それを相手にする必要はなかったが、もしそうでなかったら俺たちは今頃死んでいただろう。
無理やり“隠者”のごり押しで分身を潜ませていた俺は、酷いなと実感した。それと同時に、毒だろうが何だろうが関係なく魔力さえあれば無尽蔵に動かせる分身
は強いなとも再確認する。
それにしても、集中しながらも意識を分散させるのはとても難しい。
今まで“研究室”に感知を任せていたため、俺は対して気にもしなかったのだが、常に深い感知をしながら日常生活を送るのも相当困難だ。
「二人ともよく頑張った。重心の使い方も分かっただろうし、何よりも自然の雰囲気を掴めたよね」
「し、自然の雰囲気?」
「何それ……」
ぶっちゃけ、頭が働かない。何を言われても分からない。
そうすると、顔を覗き込んでいたソフィアがキシシシッといった具合に笑う。俺たちに手を差し伸べる。起き上がれという意味だろう。
「今、してるじゃん。君たち」
「え、どういう……」
「ソフィア、ちょっと何を言ってる……」
俺たちは混乱しながら、ソフィアの手をとり起き上がる。ソフィアは自分の頭に乗っけていた水の入ったコップを手に取り、俺たちに差し出す。
器用な事で。
「飲み終わってからでいいから、自分の魔力。キチンと感じてみな」
「え、うん……」
「分かった」
クイッと水を飲む。
ああ、しみわたる。五臓六腑にもそうだが、この水の冷たさが熱くそれでいて疲れ切った脳内を冷やしてくれる。トロトロにしてくれる。
…………………………………………
ふぅ。
で、自分の魔力だって? それはいつも通り魔力放出をほぼ抑えて、ついでに“隠者”で気配も消していて……
あれ?
「なんか、雑い。なんで、こんな魔力隠蔽をしてるんだ? 俺」
「……ねぇ、前にできてた隠蔽ができなくなってるんだけど。何これ、なんでこう勝手に放出しちゃうのっ?」
と思ったら、全然魔力を隠蔽できていなかった。
いや、隠蔽自体はしているのだが、何故かそのうえで体内に納めていた魔力を放出しているのだ。しかも、とても複雑に。っというか、これ、なんか俺の魔力と少し違うような……
無意識? 無意識でしかできないよな。しかも、自分の意志が働かないし。
と、混乱していた俺たちを眺めていたソフィアが頷く。
「まずは第一段階達成だね」
「……これが? 駄目じゃん。隠蔽できてないじゃんっ」
「いいや、できてるよ。君たちの魔力自体は問題なく隠蔽できている。そのうえで、隠蔽している事すらも隠している」
「……そういえばロイス父さんたちもそんな事を言ってたけど、どういうこと?」
隠蔽した事を隠す。なんとなく、意味は分かるのだが、実際のところ具体的な事はさっぱり分かっていなかったのだ。
「ジェームズを思い出して。あの魔力は、よくよく感知しないと普通で優しい雰囲気を持っていたよね。本当は毒々しい魔力が込められているのに」
「……偽ってる優しい雰囲気しかわからなかったんだけど。毒々しい魔力が込められてたの?」
「うん。そうだよ。まだ、君たちははっきりとはわからないだろうけど、その片鱗をつかんだから、偽りだと感じ取った」
「つまり、毒々しい魔力が僕たち本来の魔力。それで、普通に放出しているのが普通で優しい魔力が、今、僕たちが放出している魔力?」
「正解だよ、ライン君」
うん? あまり頭が働かないから、そう難しい……
………………
ふぅ。ようやく理解できてきた。
「セオ君も理解できたようだね。じゃあ、進めるよ。ボクたち生物は無意識上において、体内に納まってる、正確には肉体に重なる魄の部分の魔力をその生物固有の魔力として認識する。それで、そこから放出されて体外にでた魔力は自然魔力として認識するんだ」
「でも、放出されたからと言って、その人固有の魔力なんだよね?」
「そうだよ、ライン君」
ソフィアは頷く。
と、俺を指さす。
「セオ君。何か、分かったね?」
「あ、うん。なんとなく? たぶん、体内魔力を感じるのは疲れるんだと思うんだ。ほら、感知っていわば自分の感覚を拡張するようなものだから、他人の体内魔力を体内にいれた感じに近い。だから、それは避ける」
だって、つまり昨日みたいな感覚を味わうと言うことだ。あれよりはマイルドな感覚だろうが、無意識的に避けるんだ。
「それで、だから放出した魔力を代替としてその人の固有の魔力の雰囲気として認識している……の?」
「うん。基本的に間違いはないから進めるよ」
「待って、間違いがあるの?」
「まぁ、細かい部分を言えばね。けど、それは研究の領域だ。君たちが各々で調べ、考え、実験し、検証する部分だから、言わないよ」
そういってソフィアは、指先を空中に滑らせる。すると、魔力の線が描かれ、発光していく。空中に掛かれた絵だ。綺麗で優しい絵だ。
俺が魔術を使う際に用いる無属性魔法、〝描光〟だ。無属性魔法だから、魔力の性質や波長などには一切手がくわえられていない。
「今の君たちになら分かるね」
「……うん。感覚的にはその空中の絵の魔力はソフィアのものだと認識する」
「けど、実際は若干違う。ソフィアの体内魔力は、本当の魔力はもうちょっと優しい。柔らかで安心する」
ソフィアは満面の笑みで頷いた。
「正解、正解、大正解!!」
パチパチパチと褒められて、なんか照れる。だって、ソフィアの笑顔って屈託がないから、本心だって分かるんだもん。嬉しいしよ。
「そしてそこまで分かれば、何故この訓練をしたか分かるね」
俺もライン兄さんも頷いた。
「俺たち本来の魔力は隠しつつ、アルたちに合わせた魔力を放出するため。つまり、自分の魔力を偽装して、アルたちのを俺たちの魔力だと勘違いさせてアルたちの存在を感知されないようにする」
「もしくは、僕たちとミズチたちの本来の魔力は隠蔽して、放出する両方の魔力を偽装しながら同調させる。たぶん、昨日僕とセオが互いの魔力を隠蔽しようとした練習は、感知能力を高めるのもあるけど、そのための準備」
ソフィアが頷いた。
「そう、それこそが隠蔽自体を隠す事。単に放出魔力を抑えただけだと、一般人なら魔力自体が少ないのかな? と勘違いする。もしくは、存在自体に気が付かない。けれど、魔力感知にそれなりに優れている者は、隠蔽しているのだと気が付く」
ソフィアが放出していた魔力をゼロにした。
確かに、隠蔽している事が丸わかりだ。
「だから、わざと魔力を放出する。自分ではない偽装した魔力を。応用すれば、変装が得意になったり、周囲の木々などに同調したりできる。セオ君の“隠者”は、隠した事自体の違和感を希薄化させるものだけど、こっちは違和感そのものも作り出さない技術だよ」
そう言って、ソフィアは俺たちの頭を撫でた。
「昨日の訓練や今日の特定のルートを移動させる事によって、無意識的にそれができるようにはしたけど、けれど君たちの努力があってこそだ。よくやった。本当に凄いよ、君たちは」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、なんか嬉し恥ずかしかった。
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