異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ

文字の大きさ
上 下
186 / 316
さて準備かな

頑張ってコップをくるくる回せば、浮かすことができる。腕が疲れるけど:emulate

しおりを挟む
 昼食の休憩時間が終わり、アラン率いる調査隊は例の人影を探しに第三山脈の中腹へと調査しに行った。
 
 そして俺たちは、

「まず、二人には互いの魔力を隠蔽してもらう」

 ソフィアの指導を受けていた。

 今回、俺たちがこんな山脈に来たのはソフィアから色々な技術、隠蔽について学ぶためだ。

 というのも、アルたちやミズチがいるからだ。

 俺やライン兄さんは兎も角として、アルたちは俺たちと数週間以上離れることはできない。

 ……いや、物理的にそういう制約があるわけではなく、アルたちが悲しむし、俺たちがそんなアルたちを見たくないからというのもあるのだが。

 なので、アルたちを外に連れて行く場合に、アルたちの存在を隠す必要がでてくる。そのための訓練だ。

 まぁ今回は、アルたちは家でお留守番してもらっているが。数日間は我慢できた方がいいというロイス父さんたちの判断だ。

 後、俺の場合は“隠者”による隠蔽の隠蔽や膨大な魔力の隠蔽もあるのだが……

「二人とも、自分の魔力操作と魔力隠蔽はできるね」
「うん」
「問題ないよ」

 キャンプ地の直ぐ近くでローブを羽織りながらソフィアは、頷く。

「なら、最初は互いの魔力を感じるところから始めるよ」
「……? 感じてるけど」
「うん。僕もセオの魔力が分かるよ」

 ソフィアがチッチッチッと人差し指を立てながら首を横に振る。

「それは漏れ出ている魔力でしょ? 君たちに感じてもらうのは体内魔力。特に体の奥底にある魔力だね」
「……何が違うの?」

 俺は首を傾げる。感覚的に分かっている限り、体の何処にあろうと魔力は魔力だと思うんだが。

 俺がそう尋ねるとソフィアはう~ん、と顎に手を当てて、少し悩んだ後、ライン兄さんをビシッと指す。

「ライン君、何が違うと思う?」
「え、何が違う……」

 ライン兄さんは戸惑う。けれど、直ぐに分からないと言うことなく、眉を八の字にしながら恐る恐る述べる。

「濃度? 奥とか言ってたし……」
「確かにそれもあるかもね」

 ソフィアはうんうんと肯定する。それからビシッと俺を指す。

「セオ君。質問です。熱されて溶解された金属は、どこから冷めていく?」
「それは空気とか温度の低い部分に接しているところからじゃないの?」

 質問の意図が分からず、疑問系で返してしまう。っというか、俺って“細工術”を使って金属やらを変形、圧縮、分解しているから鋳造とかしてないんだよな。

 魔力を込めて捏ねればいいだけだし。最近は魔力操作でも金属の変形ができるようになってきたしな……

 と、そう思っていたらソフィアは一度だけ頷き、懐から二つの宝珠を取り出す。

「じゃあ、ここに自然魔力が結晶化した魔晶石と生体魔力が結晶化した魔石があります」
「うん、そうだね」

 俺は何をするのか分からず、相槌を打つ。ただ、ライン兄さんはポツリと首を傾げた。

「……溶かすの?」
「惜しい。発散させるんだよ」

 そう言いながらソフィアはどこからともなく取り出した二つの金属板の上にその魔晶石と魔石を置く。

 それから透き通ったガラスのカップを二つ取り出し、それぞれにかぶせる。

「さて、昼食の時に言ったと思うけど、ここら一帯には熱と活性化の魔力の鱗粉が漂っている。この中にもそれは入っているよ」

 ソフィアがコンコンと魔晶石や魔石に被せたガラスのカップを叩く。

「では、この中だけその魔力を増幅アンプさせます」
増幅アンプ?」
「うん」

 純真な笑顔で頷いたソフィアは、これ見よがしにフィンガースナップする。

 ……なんか、子供っぽいよな。

 そんな感想を抱いた瞬間、

「ちょっ!?」
「何これっ!?」

 ガタガタカタガタガタカタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタカタカタカタガタガタガタガタカタガタカタカタカタタガタガタガタガタカタカタガタガタガタガタガタカタカタカタガタカタガタガタガタカタガタガタガタガタカタカタカタカタガタガタガタガタガタカタカタガタガタ。

 ポルターガイストなんてものが可愛らしいと思うほど、周囲の全てが揺れる。金属板もガラスのカップもその中にある魔晶石と魔石も。

 それだけではなく、俺たちが立っている河原も揺れる。地震ではない。河原に敷き詰められている様々な大きさの石が震えているのだ。

 しまいには浮き上がる。ガタガタガタと震えながら、ゆっくりとゆっくりと浮き上がっていく。

 ……あれだ。スーパーボールに逆さにしたコップを被せ、コップを高速で回すとスーパーボールが浮き上がる感じだ。

 こう、くるくる振動しながら空中へ昇っているのだ。

 そして、

「セオ君たち。注目するべきはこっちだよ」

 周囲の浮き上がる石に目を囚われていた俺とライン兄さんは、いつもと変わらないソフィアの声にハッと反応する。

 暴れ狂いながら、それでも割れることも倒れることもない魔晶石と魔石の方へ目が行く。

 それは、

「何あれ……」
粉塵ダスト……」

 魔晶石と魔石がドロリドロリと溶けたかと思うと、されどすぐさまダイヤモンドダストの如く、小さな粉塵となって舞い上がる。

 それがまた、縦横無尽に震える。

 けれど……

「魔晶石の方が少し赤い」
「熱いんだ」

 魔晶石の方は赤熱化してきている。舞い上がった粉塵ダストが赤くなり、そして幾つかの粉塵ダストは集まり、ドロリと融解して下に落ちて、また金属に触れると小さな粒子ダストとなり舞い上がり、また集まって、ドロリと融解して落ちる。

 対して魔石の方はそんな事はない。

 っというか、魔晶石よりもとても変だ。不思議だ。目を疑う光景が広がっている。

「孔?」
「洞だよ。ライン兄さん」

 カップの中で粉塵ダストは舞っているのは確かだ。なのに、魔石は魔石のままだ。

 魔晶石のようにドロリドロリと融解されているはずなのに、容が崩れることはない。融解されているのは表面じゃないのだ。

 中心部なのだ。

 中心部がドロリドロリと溶けて、それがどうやってか閉じ込められることもなく透過して表面から流れ出ているのだ。

 そして粉塵ダストとして発散し、舞い、振動している。

 振動しているのに、熱や強いエネルギーを感じることがない。粒子があれだけ振動すればそれなりの熱さがあるはずなのだ。現に魔晶石の粉塵ダストは熱を持っているし。

 そして全てが魔晶石も魔石も全てが溶けて、粉塵ダストとなった時、

「目を話さないでね」

 ソフィアが再びフィンガースナップをした。
 
 瞬間、

「あ」
「止まった」

 あれだけ揺れていた全てが静止した。

 浮き上がっていた河原の石たちがボトリと落ち、豪雨のような音を立てる。

 けれど、俺もライン兄さんもそれに目もくれない。ソフィアが事前に言ったのもあるが、目の前の現象が不思議すぎて目を離せないのだ。

 魔晶石の方は、たぶん順当に固まっているんだと思う。舞い散る粉塵ダストの中心に小さな固まりができて、どんどんと周りの粉塵ダストがそれに集まっている。

 いや、最初の塊が宙に浮いていたり、何らかしらの引力が働いて周囲の粉塵ダストを集めているのは確かだと思うが、それでもたぶん順当だ。

 だって、だんだんと大きくなるんだし。結晶化の仕方としては順当だと思う。そう感じる。

 けれど、おかしなのは魔石の方。

 型はないのだ。

 なのに、舞い散った粉塵ダストは最初、空洞の球体――宝珠となる。示し合わせたように一番最初の魔石と同じ大きさだ。

 それから周りの粉塵ダストは空洞を持つその宝珠に吸い込まれ、どんどん空洞の端から結晶化していく。

 そして最後に一番中心の空洞が埋まる。

 凄いおかしなものを見た感じだ。けれど、何故かそれを当たり前後判断してしまう自分がいる。

 周りから固まる事がそんなにおかしいのか? と思ってしまうのだ。

 チラリと隣を見れば、ライン兄さんもそんな感じの表情を浮かべている。

 と、

「それは二人とも魔力の流れが分かるからだよ」

 悪戯が成功した子供の無邪気の笑顔を浮かべたソフィアが、そう言った。

 
しおりを挟む
読んでくださりありがとうございます!!少しでも面白いと思われたら、お気に入り登録や感想をよろしくお願いします!!また、エールで動画を見てくださると投稿継続につながりますのでよろしくお願いします。
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。 亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。 さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。 南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。 ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...