126 / 316
ちょっとした激動の四か月
夢だけど、夢じゃなかった。的な喜び:Aruneken
しおりを挟む
「……ぅん」
……太陽?
「……久しぶりだな」
俺は、顔に差し掛かる太陽の光に目を覚ます。布団をもう一度被ろうかと思ったが、しかしながら久しぶりの太陽に、ゆっくりと瞼を開けた。
ここ最近はずっと雨だったからな。
ベッドの直ぐ斜め上についている天井窓から見える白み始めた朝日を見て、俺は体を伸ばした。まだ寝ぼけているが、朝露が窓に濡れていて、反射がまぶしい。
目を細める気持ちのいい朝だ。
……このまま二度寝するのもいいが、今日は稽古だったけ。ここ最近は忙しいから、家族みんながそろうのって朝稽古だけなんだよな。朝稽古はどんなに忙しくてもキッチリと行われるし。
クラリスさんとの手紙のやり取りや、昨日のエウの報告など、色々話したいこともあるし、頑張って起きますか。
こう、起きるのが楽しくなる朝はいいな。
「よっと」
そう思って体を起こし、布団を放り投げて服がしまってある階段式の箪笥に目を動かした瞬間。
「えっ!」
歓喜に叫んだ。
元々階段式の箪笥はベッドの反対側にあり、そこに一番日が届きにくい場所だった。そこが、あの俺が見つけた魔法植物を育てるうえで一番重要な場所らしい。
まぁつまり、箪笥の上に魔法植物の種を植えた三つの植木鉢を置いておいたのだ。三つなのは、あれだけの種の量でも三つほどにしか分けられなかったのだ。
どうやら、トリートエウもそうなのだが、十数個の種を同じ場所に植えて、ようやく一つの芽が出るらしい。あと、芽が出るまでは決して日の光に当ててはいけないとか。当てると、全てがやり直しなのだとか。
なので、日の光が決して当たらない箪笥の上で世話をしていた。
地下室の工房の方でもよかったのだが、あっちは魔道具やアーティファクトがおいてあり、それによる魔力影響があるかと思ったので、それを避けるために、ここで世話をしていた。
それと、俺の魔力が充溢している場所で育てた方が、後々楽になるとかロン爺が教えてくれたためだ。
と、そんなことはどうでもいい。今はその三つの植木鉢だ。
「芽が出てるっ!!」
俺は思わず〝念動〟で三つの植木鉢を浮かして、手元に持ってくる。もう芽が出たため、日の光に当てても大丈夫なのだ。
「わぁっ!」
よっしゃ! 一年だ。一年近く毎日毎日水を注いで、魔力を注いで、温度調整の魔道具が取り付けてある植木鉢を揃えて、植えてからの期間によって土の成分を変えて……
手を尽くして、手を尽くして、それでも決して芽が出ることがなかったこれが!
「芽が出てる……」
……そういえば、これって結局なんの植物なんだろう?
感慨に耽っていたが、どうにも芽が出たことで急にそれが気になり始めた。ロン爺に聞いたり、エウに訊ねたり、ソフィアや自由ギルドの方で確かめたりしたのだが、結局分からなかったんだよな。
エウはもちろんのこと、クラリスさんやロイス父さんたちは何か知っている感じだったが、教えてくれなかったし。なんでも、知らない方が面白いと、後でびっくりすると言っていたんだよな。
何がびっくりするんだろう?
まぁいっか。今は芽が出ていることを喜ぼう。
「よし! じゃあ早速次の環境に移して……あ、今日はいいけど明日はどうしよう。この時期に芽が出ちゃったからな。一日に五時間は太陽の光が必要らしいし」
と、思ったのだが、この子たち、芽を出す時期を間違えたのではないかと思ってしまう。いや、そもそも一切日の光を浴びずに芽を出さなきゃいけないのに、出したら出したで日の光が必要って、結構特殊な環境だよな。
魔法植物って言ってたし……あれかなユキと同じかな。神聖魔力が近くにあった瞬間に生むとか、そういう冬雪亀的な特殊な種なのか……
まぁいいや。
今のところは、ベッドの上においておくか。そこが一番日の光があたるし。
そこにおいておいて、稽古の時にロイス父さんたちに相談しよう。なんかいい手でもあるかもしれないし。
ということで、さっさと箪笥から稽古用の服を取り出して着替えるとするか。魔力反応から、ロイス父さんたちがリビングに集まって食事しているのも分かるし。
あ、ユナがこっちに来た。
Φ
「ねぇ、どんな感じっ!?」
「え、普通って感じの芽だったよ! 小さくて可愛らしい若葉だった!」
まず、稽古はストレッチから始まる。ただ、ストレッチには二種類あり、稽古を始めるときのストレッチは、体を伸ばすというよりは温めるに近い。基本立って行い、ちょっと息切れする程度には体全体を動かすのだ。
それから次に、稽古場の周りを十周する。これが結構な距離だ。稽古場はサッカーグラウンド程度の広さだ。そこを十周するから、結構な距離になるのだ。
…………二キロ半くらいだ。
俺はまだ幼児であるから、直接的な訓練はない。肉体を鍛えることはなく、主に体力やらを鍛えることに重きをおいている。
だが、俺は身体強化が使える。これが使えるせいで、俺は身体強化ありで二キロ半も走らされたりしているのだ。
許すまじ。
「特徴は!? 少しだけとげとげがあるとか、背が低いとか、大きさは!?」
「ちょっと待って。それ今言わなきゃダメ!?」
「うん!」
ただ、さらに許すまじなのはライン兄さんである。そんな二キロ半のジョギングで、こんなことを聞いていくるのだ。
いくら身体強化が使えるからといって、あくまで最大出力は肉体のスペックに準ずる。大人になって、筋肉が付いたりすれば別らしいが、小さな子供からだでは限界があるのだ。
それに力はあっても呼吸が乱れる。普通に歩きながら話していても、疲れる時は疲れるのだ。それも、今は走っているから大声を出さなくてはならない。
じゃないと、風を切る音で聞こえなくなるからだ。
疲れるのだ。そのはずなのだ。
なのに、ライン兄さんはその翡翠の瞳を輝かせている。俺と並走しながら、口早にぐいぐいと訊ねてくるのだ。
朝からそのテンションは困る。芽が出てある程度上がっているとはいえ、俺はそのテンションについていけない。
と。
「お前ら。きちんと走んないと父さんたちにどやされるぞ!」
「分かってる!」
一周遅れの俺たちに、エドガー兄さんが呆れたように声をかけた。
「それとライン。後で見せてもらった方が早いだろ。それにセオは結構抜けてるから、あんまり信用できないだろ」
「あ、確かに」
「何それ!」
俺はスイーっと俺たちの前に躍り出たエドガー兄さんに食いつく。よこではライン兄さんが手を打っている。
「よくユリシアのことを言ってるが、お前だって感覚派だってことだ。じゃあな」
ただ、そんな俺たちに構うことなくエドガー兄さんは先に行ってしまった。そして、後ろから迫ってくるロイス父さんから睨みを感じたので、俺とライン兄さんは黙って走る。
そうして、ようやく走り終えた俺は、だいぶお腹が大きくなったアテナ母さんから水筒を受け取った。
アテナ母さんの傍にはレモンが控えていて、ここ最近は全く稽古に参加していない。万が一があったときに、レモンが真っ先に対応するからだ。そのために、アランから色々教わっているらしい。
アランはアランで、アダド森林の調査や死之行進による農地影響の軽減などに忙しく、この場にいない。
それでいて、朝食などといった食事を作ったり仕入れやらなんやらをしているのだから、恐れ入る。
「それでセオ。本当に芽が出たのかしら?」
「うん。それで今って梅雨の時期でしょ。だから、この後どうすれいいかなって。ロン爺が言うには一日に五時間程度、日の光を当てなきゃいけないらしくて、それが一日でも欠けたら枯れちゃうって話なんだよ」
俺はまだ五歳になっていないから、木剣を使った素振りはそこまでやらない。そもそも俺が使う木剣って木剣っていうより、紙剣だし。それくらい軽いやつだし。
あくまで最低限の型だけ覚えさせるのが先で、その型にあった体作りはまだまだ先なんだそうだ。だから、木剣を振るう際は身体強化するように言われているし。
まぁそれでも体力は削られるのだが。
「……ああ、そうだったわね。……と、ライン。アナタは素振りがあるでしょう。行ってらっしゃい」
ライン兄さんはもう直ぐ六歳になるため、木剣も本物の木剣だ。つまり、素振りは結構な数をこなさなければならない。
なのだが、ライン兄さんは一応インドア派だ。体力はあるかもしれないが、体を動かすのは得意ではない。素振りは嫌いなのだ。
しかも植物についての話をしていたため、給水を無理やり引き延ばしていたのだが、流石に長かったらしい。アテナ母さんが、素振りを始めているロイス父さんたちの方にライン兄さんを押し出す。
「……チッ。は~い」
……こんな時だけ、ライン兄さんってアレだよな。どうとは言えないが、アレだよな。
「はぁ。あの子ったら、誰に似たのかしら」
アテナ母さんですよ、とは言わない。魔法の研究に勤しんでいる際に仕事で呼び出された時のアテナ母さんと同じ表情をしているが、決して言わない。
言ったら、恐ろしい目に合うからだ。
こういう時は話題逸らしに限る。
「それで、どうすればいいと思う? 流石に魔法で光は作れても、太陽は作れないんだよね」
「……できないことはないわ。というか、昔はできたようだし」
「え。太陽を作るのがっ!?」
あの魔法植物――仮称、トリートエウの子――が滅ぶ前って、魔法で太陽作ってたの!? マジか。魔法で太陽作れるのか。
え、マジで。
「いや、流石に太陽を作ってないわよ」
アテナ母さんは、俺の驚愕した様子にコロコロと苦笑していた。おっとりとした眉尻などが機敏に動く。
……にしても、無理とは言わないんだな。太陽を作るの。
「太陽の光を作るのよ」
「太陽の光?」
なんか、とんちがアテナ母さんの口から飛び出してきた。ついでに、レモンがカクンと首を傾げていた。
狐耳と尻尾も同じ動きをしていて、なごんだ。
……太陽?
「……久しぶりだな」
俺は、顔に差し掛かる太陽の光に目を覚ます。布団をもう一度被ろうかと思ったが、しかしながら久しぶりの太陽に、ゆっくりと瞼を開けた。
ここ最近はずっと雨だったからな。
ベッドの直ぐ斜め上についている天井窓から見える白み始めた朝日を見て、俺は体を伸ばした。まだ寝ぼけているが、朝露が窓に濡れていて、反射がまぶしい。
目を細める気持ちのいい朝だ。
……このまま二度寝するのもいいが、今日は稽古だったけ。ここ最近は忙しいから、家族みんながそろうのって朝稽古だけなんだよな。朝稽古はどんなに忙しくてもキッチリと行われるし。
クラリスさんとの手紙のやり取りや、昨日のエウの報告など、色々話したいこともあるし、頑張って起きますか。
こう、起きるのが楽しくなる朝はいいな。
「よっと」
そう思って体を起こし、布団を放り投げて服がしまってある階段式の箪笥に目を動かした瞬間。
「えっ!」
歓喜に叫んだ。
元々階段式の箪笥はベッドの反対側にあり、そこに一番日が届きにくい場所だった。そこが、あの俺が見つけた魔法植物を育てるうえで一番重要な場所らしい。
まぁつまり、箪笥の上に魔法植物の種を植えた三つの植木鉢を置いておいたのだ。三つなのは、あれだけの種の量でも三つほどにしか分けられなかったのだ。
どうやら、トリートエウもそうなのだが、十数個の種を同じ場所に植えて、ようやく一つの芽が出るらしい。あと、芽が出るまでは決して日の光に当ててはいけないとか。当てると、全てがやり直しなのだとか。
なので、日の光が決して当たらない箪笥の上で世話をしていた。
地下室の工房の方でもよかったのだが、あっちは魔道具やアーティファクトがおいてあり、それによる魔力影響があるかと思ったので、それを避けるために、ここで世話をしていた。
それと、俺の魔力が充溢している場所で育てた方が、後々楽になるとかロン爺が教えてくれたためだ。
と、そんなことはどうでもいい。今はその三つの植木鉢だ。
「芽が出てるっ!!」
俺は思わず〝念動〟で三つの植木鉢を浮かして、手元に持ってくる。もう芽が出たため、日の光に当てても大丈夫なのだ。
「わぁっ!」
よっしゃ! 一年だ。一年近く毎日毎日水を注いで、魔力を注いで、温度調整の魔道具が取り付けてある植木鉢を揃えて、植えてからの期間によって土の成分を変えて……
手を尽くして、手を尽くして、それでも決して芽が出ることがなかったこれが!
「芽が出てる……」
……そういえば、これって結局なんの植物なんだろう?
感慨に耽っていたが、どうにも芽が出たことで急にそれが気になり始めた。ロン爺に聞いたり、エウに訊ねたり、ソフィアや自由ギルドの方で確かめたりしたのだが、結局分からなかったんだよな。
エウはもちろんのこと、クラリスさんやロイス父さんたちは何か知っている感じだったが、教えてくれなかったし。なんでも、知らない方が面白いと、後でびっくりすると言っていたんだよな。
何がびっくりするんだろう?
まぁいっか。今は芽が出ていることを喜ぼう。
「よし! じゃあ早速次の環境に移して……あ、今日はいいけど明日はどうしよう。この時期に芽が出ちゃったからな。一日に五時間は太陽の光が必要らしいし」
と、思ったのだが、この子たち、芽を出す時期を間違えたのではないかと思ってしまう。いや、そもそも一切日の光を浴びずに芽を出さなきゃいけないのに、出したら出したで日の光が必要って、結構特殊な環境だよな。
魔法植物って言ってたし……あれかなユキと同じかな。神聖魔力が近くにあった瞬間に生むとか、そういう冬雪亀的な特殊な種なのか……
まぁいいや。
今のところは、ベッドの上においておくか。そこが一番日の光があたるし。
そこにおいておいて、稽古の時にロイス父さんたちに相談しよう。なんかいい手でもあるかもしれないし。
ということで、さっさと箪笥から稽古用の服を取り出して着替えるとするか。魔力反応から、ロイス父さんたちがリビングに集まって食事しているのも分かるし。
あ、ユナがこっちに来た。
Φ
「ねぇ、どんな感じっ!?」
「え、普通って感じの芽だったよ! 小さくて可愛らしい若葉だった!」
まず、稽古はストレッチから始まる。ただ、ストレッチには二種類あり、稽古を始めるときのストレッチは、体を伸ばすというよりは温めるに近い。基本立って行い、ちょっと息切れする程度には体全体を動かすのだ。
それから次に、稽古場の周りを十周する。これが結構な距離だ。稽古場はサッカーグラウンド程度の広さだ。そこを十周するから、結構な距離になるのだ。
…………二キロ半くらいだ。
俺はまだ幼児であるから、直接的な訓練はない。肉体を鍛えることはなく、主に体力やらを鍛えることに重きをおいている。
だが、俺は身体強化が使える。これが使えるせいで、俺は身体強化ありで二キロ半も走らされたりしているのだ。
許すまじ。
「特徴は!? 少しだけとげとげがあるとか、背が低いとか、大きさは!?」
「ちょっと待って。それ今言わなきゃダメ!?」
「うん!」
ただ、さらに許すまじなのはライン兄さんである。そんな二キロ半のジョギングで、こんなことを聞いていくるのだ。
いくら身体強化が使えるからといって、あくまで最大出力は肉体のスペックに準ずる。大人になって、筋肉が付いたりすれば別らしいが、小さな子供からだでは限界があるのだ。
それに力はあっても呼吸が乱れる。普通に歩きながら話していても、疲れる時は疲れるのだ。それも、今は走っているから大声を出さなくてはならない。
じゃないと、風を切る音で聞こえなくなるからだ。
疲れるのだ。そのはずなのだ。
なのに、ライン兄さんはその翡翠の瞳を輝かせている。俺と並走しながら、口早にぐいぐいと訊ねてくるのだ。
朝からそのテンションは困る。芽が出てある程度上がっているとはいえ、俺はそのテンションについていけない。
と。
「お前ら。きちんと走んないと父さんたちにどやされるぞ!」
「分かってる!」
一周遅れの俺たちに、エドガー兄さんが呆れたように声をかけた。
「それとライン。後で見せてもらった方が早いだろ。それにセオは結構抜けてるから、あんまり信用できないだろ」
「あ、確かに」
「何それ!」
俺はスイーっと俺たちの前に躍り出たエドガー兄さんに食いつく。よこではライン兄さんが手を打っている。
「よくユリシアのことを言ってるが、お前だって感覚派だってことだ。じゃあな」
ただ、そんな俺たちに構うことなくエドガー兄さんは先に行ってしまった。そして、後ろから迫ってくるロイス父さんから睨みを感じたので、俺とライン兄さんは黙って走る。
そうして、ようやく走り終えた俺は、だいぶお腹が大きくなったアテナ母さんから水筒を受け取った。
アテナ母さんの傍にはレモンが控えていて、ここ最近は全く稽古に参加していない。万が一があったときに、レモンが真っ先に対応するからだ。そのために、アランから色々教わっているらしい。
アランはアランで、アダド森林の調査や死之行進による農地影響の軽減などに忙しく、この場にいない。
それでいて、朝食などといった食事を作ったり仕入れやらなんやらをしているのだから、恐れ入る。
「それでセオ。本当に芽が出たのかしら?」
「うん。それで今って梅雨の時期でしょ。だから、この後どうすれいいかなって。ロン爺が言うには一日に五時間程度、日の光を当てなきゃいけないらしくて、それが一日でも欠けたら枯れちゃうって話なんだよ」
俺はまだ五歳になっていないから、木剣を使った素振りはそこまでやらない。そもそも俺が使う木剣って木剣っていうより、紙剣だし。それくらい軽いやつだし。
あくまで最低限の型だけ覚えさせるのが先で、その型にあった体作りはまだまだ先なんだそうだ。だから、木剣を振るう際は身体強化するように言われているし。
まぁそれでも体力は削られるのだが。
「……ああ、そうだったわね。……と、ライン。アナタは素振りがあるでしょう。行ってらっしゃい」
ライン兄さんはもう直ぐ六歳になるため、木剣も本物の木剣だ。つまり、素振りは結構な数をこなさなければならない。
なのだが、ライン兄さんは一応インドア派だ。体力はあるかもしれないが、体を動かすのは得意ではない。素振りは嫌いなのだ。
しかも植物についての話をしていたため、給水を無理やり引き延ばしていたのだが、流石に長かったらしい。アテナ母さんが、素振りを始めているロイス父さんたちの方にライン兄さんを押し出す。
「……チッ。は~い」
……こんな時だけ、ライン兄さんってアレだよな。どうとは言えないが、アレだよな。
「はぁ。あの子ったら、誰に似たのかしら」
アテナ母さんですよ、とは言わない。魔法の研究に勤しんでいる際に仕事で呼び出された時のアテナ母さんと同じ表情をしているが、決して言わない。
言ったら、恐ろしい目に合うからだ。
こういう時は話題逸らしに限る。
「それで、どうすればいいと思う? 流石に魔法で光は作れても、太陽は作れないんだよね」
「……できないことはないわ。というか、昔はできたようだし」
「え。太陽を作るのがっ!?」
あの魔法植物――仮称、トリートエウの子――が滅ぶ前って、魔法で太陽作ってたの!? マジか。魔法で太陽作れるのか。
え、マジで。
「いや、流石に太陽を作ってないわよ」
アテナ母さんは、俺の驚愕した様子にコロコロと苦笑していた。おっとりとした眉尻などが機敏に動く。
……にしても、無理とは言わないんだな。太陽を作るの。
「太陽の光を作るのよ」
「太陽の光?」
なんか、とんちがアテナ母さんの口から飛び出してきた。ついでに、レモンがカクンと首を傾げていた。
狐耳と尻尾も同じ動きをしていて、なごんだ。
22
読んでくださりありがとうございます!!少しでも面白いと思われたら、お気に入り登録や感想をよろしくお願いします!!また、エールで動画を見てくださると投稿継続につながりますのでよろしくお願いします。
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?
後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。
目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。
日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。
そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。
さて、新しい人生はどんな人生になるのかな?
※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします!
◇◇◇◇◇◇◇◇
お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。
執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。
◇◇◇◇◇◇◇◇
9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます!
9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる