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幕間 I’m Gonna Live Till I Die
終わりの旅の始まりa
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「……ん……ぅん……うう」
朝日とは言い難い昼間に近い陽の光がレーラーを起こす。
いや、何度か鬱陶しそうに唸った後、布団を被った。太陽に背を向けた。ただ、岩戸の内に引きこもることはない。
その前に部屋の扉が開いた。
「起きろ、レーラー」
「……ゃ」
入って来たのは後で纏めた白髪を揺らす老人。袖から見える老人に相応しくない筋肉でレーラーが包まっていた布団を引きはがそうとする。
が、レーラーだって負けていない。寝ぼけながらも“身体強化”や幾つかの肉体強化系の魔法を使って布団を死守する。
「起きろ。起きろ!」
そんなレーラーをフリーエンは怒鳴りつけて起こす。
ただ、怒鳴っているのにフリーエンの表情は少しだけ嬉しそうで、呆れている感じで。
そうやって攻防を続ける事十分近く。
レーラーがようやく起きてきた。
「……おはよう、フリーエン」
「もう、おはようではない。はぁ、お前さんの弟子は大変だな」
起きてこないレーラーに呆れて簡素な木製のテーブルの傍で本を読んでいたフリーエンは、着替えに時間を掛けていたレーラーを見た。
自室からリビングに出てきたレーラーは、いつも以上の眠たそうな半眼でフリーエンを見て、腹の虫を鳴らした。どういう神経なのだろうか。
「フリーエン、ごはん」
「あるわけなかろう。朝食を食べたいなら、朝食の時間に起きろ」
「……ライゼはそんな事言わないのに」
レーラーはキューグーとなる腹を押さえながら少しだけ拗ねたように呟いた。
そして、仕方ないと溜息を吐き、少しだけ身支度を整えて外に出た。山菜やら果物を採って食べるつもりである。
と、思ったら。
「ん? ……ライゼからか」
カラス似の召喚獣がレーラーの頭上を二度旋回し、それを見たレーラーが右腕を横に上げる。
そうすれば、カラス似の召喚獣はレーラーの右腕にとまった。レーラーはそのカラス似の足に括りつけられている手紙を取る。そして召喚獣を消す。
「返信が早いな」
レーラーは玄関の階段に腰を下し、手紙を開いた。
そして数十秒もかからずにそれを読んだ。溜息を吐く。
「人使いの荒い弟子だね。けど……うん、確かにいい提案だ。老骨と美少女二人の旅行もいいかな。チヤホヤして貰えそうだし」
けれど溜息を吐きながらも、嬉しそうに頬を緩めたレーラーは手短に返信の手紙を書く。
どこからともなく蒼然とした羽ペンと紙を取り出し、空中で書き始める。羽ペンが独りでに動きレーラーはその間に、同じく何処からともなく取り出した地図を見ながら首を捻る。
「……まず、ファーバフェルクト領に行って、頼まれたことをして、その後は……南に一旦下りながら……エルピスがしょんべん漏らした……いや、それよりも………………うーーん」
レーラーは首を捻る。何度も捻る。
そうしてそんな間に、独りでに動いていた羽ペンは止まり、空中に浮いていた紙は独りでに小さく纏まっていく。
そしてそれをチラリと見たレーラーは溜息を吐いて。
「まぁ、フリーエンの希望でいっか。目的地があれなら問題ないだろうし」
手に出していた地図と空中に浮かばせていた羽ペンを虚空へ仕舞い、また、カラス似の召喚獣を再び召喚して羽ペンに書かせた手紙を括りつける。
こうするなら、召喚獣を消す必要なないのでは?っと思うかもしれないが、しかし、宿主を設定しなおすのにも消すという手順が必要だったりする。
そして立ち上がったレーラーは、カラス似の召喚獣を飛ばす。
それを見届けたら身体を反転させる。どうやら朝食は後回しにするようだ。
それから小屋の中に再び入る。
「……朝食を採りに行ったのではなかったのか」
「うん、けど新しい用事ができたからね」
そうして、簡素なテーブルがあるリビングに足をいれ、少しだけ優しい深緑の瞳をフリーエンに向ける。
ついでに、ポニーテルの金髪が揺れる。
「これ」
そしてレーラーは虚空から古びた書物を机に置いた。また、椅子を引いて、フリーエンの向かい側に座った。
フリーエンは読んでいた本を閉じる。
「……解読が終わったのか」
早すぎる、という副音声が聞こえそなほどの溜息を吐きながら、フリーエンは古びた本の表紙を撫でる。
と、そんなフリーエンにレーラーとぼけるように、首を振る。
「いや、解読できるわけないじゃん。これ、偽物の魔導書でしょ?」
「……ああ、そうだ」
その魔導書は確かに古く、格式ある本だった。
けれど、普通の魔導書なら時間が経とうとも抜け落ちない魔力言語が抜け落ちていた。つまり、偽物の魔導書。
もしくは。
「まぁ、というのは偽装で、ワザと魔力言語が抜け落ちるように作ってあり――」
偽物の魔導書に偽装した本物の魔導書。
記された魔法は。
「〝過去を再生する魔法〟が記された魔法。……時干渉系の魔導書何てよく見つけたね」
「……たまたまだ」
つまり、この偽物の魔導書を起点に〝過去を再生する魔法〟によって、正常な魔導書の過去を再生、映し出して読み解けという事。
クソみたいな仕様の魔導書である。その魔法を手に入れるために魔導書を読むのに、だがしかし、その魔法を使わなければ読めないなど。
「こんな魔導書、解読できるわけないじゃん。簡単な魔法なら多少魔力言語が抜け落ちても習得できるけど、流石に時干渉はね。それに時干渉系の魔法は苦手なんだよ」
「確かに、そんな事を言ってたな。ダンジョンで手に入れた未来を見る?だったか、あれも使ってなかったしな」
「不老の代償だね」
レーラーは少しだけ面白そうに笑った。
朝日とは言い難い昼間に近い陽の光がレーラーを起こす。
いや、何度か鬱陶しそうに唸った後、布団を被った。太陽に背を向けた。ただ、岩戸の内に引きこもることはない。
その前に部屋の扉が開いた。
「起きろ、レーラー」
「……ゃ」
入って来たのは後で纏めた白髪を揺らす老人。袖から見える老人に相応しくない筋肉でレーラーが包まっていた布団を引きはがそうとする。
が、レーラーだって負けていない。寝ぼけながらも“身体強化”や幾つかの肉体強化系の魔法を使って布団を死守する。
「起きろ。起きろ!」
そんなレーラーをフリーエンは怒鳴りつけて起こす。
ただ、怒鳴っているのにフリーエンの表情は少しだけ嬉しそうで、呆れている感じで。
そうやって攻防を続ける事十分近く。
レーラーがようやく起きてきた。
「……おはよう、フリーエン」
「もう、おはようではない。はぁ、お前さんの弟子は大変だな」
起きてこないレーラーに呆れて簡素な木製のテーブルの傍で本を読んでいたフリーエンは、着替えに時間を掛けていたレーラーを見た。
自室からリビングに出てきたレーラーは、いつも以上の眠たそうな半眼でフリーエンを見て、腹の虫を鳴らした。どういう神経なのだろうか。
「フリーエン、ごはん」
「あるわけなかろう。朝食を食べたいなら、朝食の時間に起きろ」
「……ライゼはそんな事言わないのに」
レーラーはキューグーとなる腹を押さえながら少しだけ拗ねたように呟いた。
そして、仕方ないと溜息を吐き、少しだけ身支度を整えて外に出た。山菜やら果物を採って食べるつもりである。
と、思ったら。
「ん? ……ライゼからか」
カラス似の召喚獣がレーラーの頭上を二度旋回し、それを見たレーラーが右腕を横に上げる。
そうすれば、カラス似の召喚獣はレーラーの右腕にとまった。レーラーはそのカラス似の足に括りつけられている手紙を取る。そして召喚獣を消す。
「返信が早いな」
レーラーは玄関の階段に腰を下し、手紙を開いた。
そして数十秒もかからずにそれを読んだ。溜息を吐く。
「人使いの荒い弟子だね。けど……うん、確かにいい提案だ。老骨と美少女二人の旅行もいいかな。チヤホヤして貰えそうだし」
けれど溜息を吐きながらも、嬉しそうに頬を緩めたレーラーは手短に返信の手紙を書く。
どこからともなく蒼然とした羽ペンと紙を取り出し、空中で書き始める。羽ペンが独りでに動きレーラーはその間に、同じく何処からともなく取り出した地図を見ながら首を捻る。
「……まず、ファーバフェルクト領に行って、頼まれたことをして、その後は……南に一旦下りながら……エルピスがしょんべん漏らした……いや、それよりも………………うーーん」
レーラーは首を捻る。何度も捻る。
そうしてそんな間に、独りでに動いていた羽ペンは止まり、空中に浮いていた紙は独りでに小さく纏まっていく。
そしてそれをチラリと見たレーラーは溜息を吐いて。
「まぁ、フリーエンの希望でいっか。目的地があれなら問題ないだろうし」
手に出していた地図と空中に浮かばせていた羽ペンを虚空へ仕舞い、また、カラス似の召喚獣を再び召喚して羽ペンに書かせた手紙を括りつける。
こうするなら、召喚獣を消す必要なないのでは?っと思うかもしれないが、しかし、宿主を設定しなおすのにも消すという手順が必要だったりする。
そして立ち上がったレーラーは、カラス似の召喚獣を飛ばす。
それを見届けたら身体を反転させる。どうやら朝食は後回しにするようだ。
それから小屋の中に再び入る。
「……朝食を採りに行ったのではなかったのか」
「うん、けど新しい用事ができたからね」
そうして、簡素なテーブルがあるリビングに足をいれ、少しだけ優しい深緑の瞳をフリーエンに向ける。
ついでに、ポニーテルの金髪が揺れる。
「これ」
そしてレーラーは虚空から古びた書物を机に置いた。また、椅子を引いて、フリーエンの向かい側に座った。
フリーエンは読んでいた本を閉じる。
「……解読が終わったのか」
早すぎる、という副音声が聞こえそなほどの溜息を吐きながら、フリーエンは古びた本の表紙を撫でる。
と、そんなフリーエンにレーラーとぼけるように、首を振る。
「いや、解読できるわけないじゃん。これ、偽物の魔導書でしょ?」
「……ああ、そうだ」
その魔導書は確かに古く、格式ある本だった。
けれど、普通の魔導書なら時間が経とうとも抜け落ちない魔力言語が抜け落ちていた。つまり、偽物の魔導書。
もしくは。
「まぁ、というのは偽装で、ワザと魔力言語が抜け落ちるように作ってあり――」
偽物の魔導書に偽装した本物の魔導書。
記された魔法は。
「〝過去を再生する魔法〟が記された魔法。……時干渉系の魔導書何てよく見つけたね」
「……たまたまだ」
つまり、この偽物の魔導書を起点に〝過去を再生する魔法〟によって、正常な魔導書の過去を再生、映し出して読み解けという事。
クソみたいな仕様の魔導書である。その魔法を手に入れるために魔導書を読むのに、だがしかし、その魔法を使わなければ読めないなど。
「こんな魔導書、解読できるわけないじゃん。簡単な魔法なら多少魔力言語が抜け落ちても習得できるけど、流石に時干渉はね。それに時干渉系の魔法は苦手なんだよ」
「確かに、そんな事を言ってたな。ダンジョンで手に入れた未来を見る?だったか、あれも使ってなかったしな」
「不老の代償だね」
レーラーは少しだけ面白そうに笑った。
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