上 下
61 / 138
第二部 二章:独りはあっても孤独はない

七話 “森彩”と傍観

しおりを挟む
 次に“森彩”だが、基本的に機構や性能は“森顎”とほぼ同等だ。
 違うのは銃口の口径と数、そして取り外しと分解可能な回転式弾倉がある事だ。
 回転式弾倉は銃身の根元にあり、グリップを少し上に握れば、触れるようになっている。

 まず、口径は二十八口径で銃口は一つである。
 また、“森彩”の“宝石銃弾”は“森顎”よりも小さいが、しかし封印されている魔法の種類は同等で、効果は決して低くない。むしろ、飛距離や弾速、回転数は“森顎”の“宝石銃弾”を上回っている。連射性もある。
 ただ小さいため、軽く威力は低い。貫通性は弾速と回転数、それと強度があるため問題はない。

 そして回転式弾倉だが、そもそもの“森顎”と“森彩”のコンセプトは、“森顎”は威力重視で、“森彩”は多様さ重視だ。
 そのため、“森彩”は『彩』が入っている通り、多種多様な種類の“宝石銃弾”が放てるようにしてある。

 それを可能にしているのは回転式弾倉だ。
 ただ、地球の回転式弾倉とは全くもって違う。弾丸を打てば自動的に弾倉が回転するわけではないのだ。

 “宝石銃弾”を収納する“宝石倉”は一種類の“宝石銃弾”を収納できる。“宝石銃弾”に自由に込められる魔法は一種類のため、込めた魔法の種類によって種類は変わる。
 雷の弾丸だったり、毒の弾丸だったり、火の弾丸だったり、込める魔法によって様々だ。まぁ、どんな魔法込められるかはライゼが行使できるか如何かで決まる。

 ということで、回転式弾倉にすることによって六つの“宝石倉”を付け、六種類の弾丸を操れるようにしてある。そしてグリップ部のギミック操作を使って、回転式弾倉を自由に回転させて、好きな弾丸に変える。

 また、回転式弾倉自体がギミック操作で簡単に外れ、また、簡単に装着できるため、六種類の“宝石銃弾”のグループを幾つか作り、それを瞬時に取り替えることが可能なのだ。つまり、敵の種類に応じて戦い方を変える事ができる。
 そして更に、一つの回転式弾倉に組み込まれている六つの内の一つの“宝石倉”を取り外すことも可能で、ある一種類だけ使い切った場合も問題ないようにしてある。頻繁に使う宝石の弾丸もある。

 “森彩”にこんな自由な回転式弾倉を組み込めたのは、“森顎”の様に銃口を二つ付けていないため、その分の幅があったからだ。
 “森顎”ではこのようにいかない。

『ヘルメス、ヘルメス!』
『んぉ、なんだ』

 と、現時点での俺の最高傑作に想いを馳せていたら、ライゼに思いっきり尻尾を叩かれた。びっくりした。
 ライゼを見ると、呆れているような表情を浮かべている。

『点検してくれるのは嬉しいんだけど、改良とかは後で考えてくれる? 時間的にレーラー師匠を起こして、朝食を食べなきゃいけないし』

 太陽は既に水平線の上にあり、人の数も多くなってきた。

『分かった。ただ、あとでキチンと修正点とかを聞かせてくれよ』
『うん、もちろんだよ』

 俺達は借家に戻った。


 Φ


『ヘルメス、自分の鱗を剥がすのはやめた方がいいよ』
『ん? なんでだ、レーラー』

 水の上で乱舞して、飛雷魚を討伐しているライゼを港で眺めながら、レーラーは忠告する様に言ってきた。
 レーラーは飛雷魚を積極的に討伐しない。やろうと思えば、一日もかからずに増えすぎた飛雷魚を全て斃せるだろう。

 だが、レーラーはそれをしない。飛雷魚の討伐はライゼにほぼ任せてある。
 ライゼの訓練のためだ。

『なんでって、いくら身体が魔素で構成されてるとはいえ、“森顎”と“森彩”を作る際に相当な鱗を使ったでしょ』
『まぁな。鱗が魔素でできてるから、鉱物とかにもなじみやすいし、何故か俺の鱗は、俺から離れても消えたりしないからな』

 通常、魔素で構成されている身体は、千切れたり、取れたりした場合、消える。死んだ場合も消える。
 魔素で身体を構成しているレーラーがそういうのだから間違いないのだろう。

 だが、俺の場合は違う。
 俺の身体から鱗が剥がれても消える事はないし、たぶん、俺が死んでも消える事はない。理由は分かっていない。

 なので、時間さえ経てば再生することもあり、俺は相当数の鱗を“森顎”と“森彩”に組み込んである。
 魔素で構成されているからか、好物などに溶け込んで混じり合う事ができるため、魔力伝導率やその他諸々の性能が上がるのだ。

 まぁ、もちろん、鱗を剥がすのはとても痛い。激痛が走る。
 が、ライゼの命を守れるのだ。背に腹は代えられない。

『でも、やめた方がいい。いつか取り返しの付かない事をやりそうだし、それにペレグリーナーティオトカゲは、自分の身を犠牲にして死んでいった数が多い。人間に飼われていたのに、滅んだのはそれだし』
『……まぁ、気を付けるよ。ありがとな』
『仲間だから。それにヘルメスはもっと周りを見た方がいい』

 確かに血肉を切り売りするという事は、身を滅ぼしかねないからな。
 ただ、まぁ、ライゼには俺の鱗を持ってもらいたいと思っている。お守りというか何というか、安心できるのだ。
 
 酷く醜く可哀想な感情かもしれないが、それでもそう思う。
 けど、レーラーのように心配してくれる仲間もいるので、控えようとは思うが。まぁ、俺の魔道具師としての技術があがれば、俺の鱗を使う必要はなくなるのだが。

 つまり、俺が未熟なだけなのだ。

 けど、俺はよく回りを見ていると思うんだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。 目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に! 火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!! 有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!? 仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない! 進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命! グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか! 読んで観なきゃあ分からない! 異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す! ※「小説家になろう」でも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび
ファンタジー
ある日、突然転生の為に呼び出された男。 しかし、異世界転生前に神様と喧嘩した結果、死地に送られる。 魔物に襲われそうな所を白銀の狼に助けられたが、意思の伝達があまり上手く出来なかった。 狼に拾われた先では、里ならではの子育てをする過保護な里親に振り回される日々。 男はこの状況で生き延びることができるのか───? 大人になった先に待ち受ける彼の未来は────。 ☆ 第1話~第7話 赤ん坊時代 第8話~第25話 少年時代 第26話~第?話 成人時代 ☆ webで投稿している小説を読んでくださった方が登場人物を描いて下さいました! 本当にありがとうございます!!! そして、ご本人から小説への掲載許可を頂きました(≧▽≦) ♡Thanks♡ イラスト→@ゆお様 あらすじが分かりにくくてごめんなさいっ! ネタバレにならない程度のあらすじってどーしたらいいの…… 読んで貰えると嬉しいです!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...