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第二部 二章:独りはあっても孤独はない

プロローグ Together――a

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 それから、一ヶ月が経った。

 ライゼとレーラーが手伝ったこともあり、町の周りを覆っていた雪は除雪され、冒険者ギルドの通達で街道を覆っていた深い雪も除雪された事を知った。
 年を越してから、町は遅まきながら雪化粧をしていたが、それはこの港町が雪除けの結界を張っていて、ついにそれが耐えられなくなったからだ。
 冬に入って二ヶ月で、雪が結界を突き破ったのだ。

 そんな雪の厚化粧を丁寧に落とし、美しく仕上げるころには一ヶ月経っていたというわけだ。
 つまり、俺達はこの町を発つ。

 まぁ、発つためには準備が必要だ。
 冬なので町の中にはあまり食料はない。備蓄はあるけど、売る分はあまりない。

 なので、二週間前に冒険者ギルドに食料を注文し、配達を手配してもらった。
 そして、手配した食料が届くまでの間、ライゼとレーラーはお世話になった人たちに挨拶をしに行った。

 意外にも、いや、そうではないかもしれないが、この挨拶でレーラーは張り切っていた。昔見つけた骨董品や保存した花などを土産として配り、子供たちには遥か昔のお伽噺や伝説を語り、全て回るのに二週間ほど使ってしまった。
 二週間ほどで泣く泣く終わらせた方と言った方がいいか。

 まぁ、流石に気になったので、俺がそれについて聞いたところ、なんでもこの行動はここ百年近くで付いた習慣らしい。とある誰かさんの、世界を救った老人に影響を受けたらしい。
 老人は多くの人に影響を与えていた。

 また、今までは移動することを一応優先していたため、長居しなかったからここまでの行動はしなかったが、今回の滞在は雪という如何することもできない天候によって長居することになった。
 だから、その反動もあり、張り切っていた。

 ライゼもその話を聞いたからか、途中からレーラーと同じく、全力でお世話になった人たちに別れの挨拶をしていった。しっかりと挨拶はしていたが、レーラーみたいに別れの挨拶をしていなかった。
 あ、でも、挨拶は別れではなく、また、またね、という再会を約束する挨拶だ。お世辞ではなく、うわべではなく、本心からだと思う。

 なので、俺も町長に許可を取り――まぁ、説明が面倒だったが――“身大変化”で体を大きくして、子供たちと遊んだりした。
 そんなこんなで、俺達が港町を発つ日がやって来たのだ。

 早朝。

 右手には暗い冬の海からゆっくり顔を覗かせている太陽が見え、俺達は港町を囲っている城門の前に立っていた。
 草原は全て真っ白の染まっていて、けれど、大人一人分の幅の茶色の道だけは、力強く真っ直ぐ伸びていた。その土を俺はしっかりと踏む。

 そして、俺の視線の先には早朝であるにも関わらず、多くの町人がいた。子供はいないが、大人たちは手を振っている。
 “身大変化”で体を大きくし、多くの荷物を腹の横に付けている俺の背に乗っているライゼとレーラーが、そんな町人たちに手を振り返している。

 レーラーが俺の首元でライゼはその後ろに座っている。
 身長の差だ。

 ライゼは満面の笑みを浮かべて、半眼のレーラーは眠そうにして手を大きく振っている。
 俺は長い舌をチロチロと出す。

「じゃあ、行こうか」
「うん、そうだね」

 俺はクルリと反転し、港町を背にする。
 ライゼは後を振り返って手を振り続け、レーラーは眠そうにあくびをしていた。

 別れ際のレーラーはあっさりしている。
 そんな事を思いながら、俺は蜥蜴の尻尾をゆらりゆらりと揺らしながら、冬の道を歩いた。

 目指すは北だ。
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