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第一部 二章:夢を持っていますか?
十一話 初戦
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魔法は二種類に分けられる。
祝福を元にして作った魔法か、それとも魔力がある個の願いや想いに反応し、 その願いや想いに準じた現象を起こした魔法かである。
また、魔法には理論がある魔法とない魔法がある。
祝福を元にして作った魔法は全てにおいて理論がある。そういう魔法は、分かりやすく言えば『自然』を人工的に作り出す『科学』に近い。
そしてそういう魔法の理論をかかれた書物を魔導書と言う。
だが、願いや想いによって引き起こされた魔法は『科学』ではなく、『自然』の方に分類される。
ただ、その『自然』を生み出した本人が自分の魔法を『科学』に落としこみ、魔導書として残す場合があるので、願いや想いによる魔法に理論がないとはいえない。
なので、魔導書を読み、それを理解して最低限の魔法を使う力さえあれば、誰でも魔法を使うことは可能である。
しかし、アウルラが使ったような〝魔法を反射する魔法〟の理論が書かれた本、魔導書は血族にしか読めないような仕組みとなっていたりする。
なので、魔法の使用者が限られていることもある。
そして、貴族や王族はそういう家系魔法みたいなものを一つ持っていたりする。
まぁ、〝魔法を解析する魔法〟という魔法もあったりするが、ライゼの魔力量で
は到底無理なのだ。最低でもBランクほどの魔力が必要となる。
そうして、貴族たちの家系魔法の応酬を何度か観戦した後、ようやくライゼの番になった。ライゼは一人減らした罰というか功績からシード権を獲得したので、回ってくる順番がとても遅かったのだ。
なので、ライゼは楽しそうに笑っていた。この四年間でライゼは単純に魔法が好きなだけじゃなく、魔法を使った戦闘なども好きになっていたりする。
なんでも、戦闘時に使われる魔法の創意工夫が面白いからだそうだ。
まぁ、けど、ここにいる子たちはまだひよっこなので、その面白さを見ることはできなかったが、それでも家系魔法というのを見れてライゼの気分は高揚していたのだった。
「これより、試合を開始します。ライゼ様、ゼライセ・テイラー様は前へ」
ライゼが控室から出る。また、反対側からも片手剣と盾を携えた金髪碧眼の美少年が優雅に現れる。
片方は清潔はあっても暗い深緑ローブを羽織ったライゼで、もう一方は乙女ゲーとかに出てきそうな騎士様系のカッコいい服である。モブと主人公的な格差だ。
『ねぇ、乙女ゲーって何なの?』
『お、すまん。思念が漏れてたか。まぁ、勝ったら教えるよ』
『分かった』
頷いたライゼを確認して、ローブの首元に俺は引っ込む。試合中はライゼの首に尻尾を付けないように気を付けないとな。
ここ四年間の殆どにおいて、ライゼに〝思念を伝える魔法〟を繋げていたため、無意識に思念が渡ってしまう時があるんだよな。
だけど、試合中は邪魔になるだろうから意識して気を付ける必要があるのだ。
「両者、礼」
そしてライゼと爽やかイケメンが頭を下げる。そして上げる。
ゼライセは強い警戒心をもってライゼを見つめる。先程の戦闘を見る限り、彼は魔法専門ではなく、どちらかというと武術専門だ。だけど、彼は魔法使いであるはずのライゼを警戒している。
午前中の試合を見ていて分かったが、武術を専門とする子は魔法使いを下に見る傾向があったのだが、この子は違かった。それに足の運び方からして結構強い。
「両者、構え!」
進行役の人の言葉と共に、ライゼは腰に差してあった二本の短刀に手をかけ、低く構える。
ゼライセは腰に携えていた片手剣を抜き、正道の構えを取る。
「始め!」
そしてその合図と共にライゼが魔力による身体強化で脚力を強化して、低く低く這うようにゼライセに向かって走る。
ライゼは背が低いので余計に頭の位置が低いまま、ゼライセの懐へと入る。
そして。
「ッ」
「クッ」
ライゼが逆手で右の短刀を抜刀する。それをゼライセが左腕に付けている盾で防ぐ。両者が一瞬だけ撓み、そしてライゼは連続して逆手で左の短刀を抜刀するが。
「フッ」
ゼライセが跳び退いて空を切る。彼もまた身体強化で身体能力を上げて、跳び退いたのだ。
だが、ライゼの連撃はそれだけでは終わらない。
「ッ。〝防御する魔法〟ッ!」
空振り、まだ体勢すら整えていないライゼの目の前に〝攻撃する魔法〟の魔力弾が四つ召喚され、跳び退いて着地をしていたゼライセに向かって放たれた。
ゼライセは盾を起点に前面に光る透明な障壁を張る。
だが。
「何ッ!」
四つの魔力弾の内、二つが途中で軌道を変えて障壁の背後に回りこんだのだ。
そして。
「うぐっ!」
魔法技術がまだ未熟であるが故に、〝防御する魔法〟の障壁を張りながら動くことができなくなっていたゼライセに魔力弾二発が襲った。
ただ、身体強化をして肉体強度を上げていたためか“護身の腕輪”に若干のヒビが入ったものの壊れることはなかった。
そして魔力弾が当たった衝撃で体勢を崩している間に、ライゼは体勢を整えてゼライセに突っ込む。
ただ、ゼライセは打たれ慣れているのか直ぐに体勢を整えて、ライゼに心眼を定める。腰を低くして右手の片手剣を上げ、半身になる。
そしてライゼはゼライセの懐に飛び込み、逆手に持った二本の短刀を軽業のように軽やかにまた素早く振るうが。
「ッ」
「ハァッ!」
ゼライセの巧みな盾術と剣術に逸らされる。ただ、ライゼは身のこなしが軽いため、ゼライセの剣の攻撃は当たらない。華麗に翻る深緑のローブが美しい。
流石だ、ライゼ。
そして、両者の拮抗した攻防が数分も続く。
振るっては防がれて、振るわれては躱してをずっと繰り返す。
そして徐々に体格が大きい、また、多分な魔力によるライゼよりも高い身体強化によって、ゼライセが押してきた。
ゼライセはもうひと頑張りだと、少しだけ瞳と眉を上げる。
そしてゼライセの片手剣とライゼの短刀が交差し、ライゼが体勢を崩す。
ゼライセはそれを好機と見たか左足で踏み込み、ライゼに切りかかった。
よもや、これで決着が着くかと多くの人が思った瞬間。
「へっ?」
ゼライセがつんのめり体勢を崩して倒れたのだ。
そして、体勢を崩していたライゼは魔力弾四発を浮かべてゼライセを打った。
“護身の腕輪”が割れた。
「……勝者、ライゼ!」
ライゼは勝ったのだ。
祝福を元にして作った魔法か、それとも魔力がある個の願いや想いに反応し、 その願いや想いに準じた現象を起こした魔法かである。
また、魔法には理論がある魔法とない魔法がある。
祝福を元にして作った魔法は全てにおいて理論がある。そういう魔法は、分かりやすく言えば『自然』を人工的に作り出す『科学』に近い。
そしてそういう魔法の理論をかかれた書物を魔導書と言う。
だが、願いや想いによって引き起こされた魔法は『科学』ではなく、『自然』の方に分類される。
ただ、その『自然』を生み出した本人が自分の魔法を『科学』に落としこみ、魔導書として残す場合があるので、願いや想いによる魔法に理論がないとはいえない。
なので、魔導書を読み、それを理解して最低限の魔法を使う力さえあれば、誰でも魔法を使うことは可能である。
しかし、アウルラが使ったような〝魔法を反射する魔法〟の理論が書かれた本、魔導書は血族にしか読めないような仕組みとなっていたりする。
なので、魔法の使用者が限られていることもある。
そして、貴族や王族はそういう家系魔法みたいなものを一つ持っていたりする。
まぁ、〝魔法を解析する魔法〟という魔法もあったりするが、ライゼの魔力量で
は到底無理なのだ。最低でもBランクほどの魔力が必要となる。
そうして、貴族たちの家系魔法の応酬を何度か観戦した後、ようやくライゼの番になった。ライゼは一人減らした罰というか功績からシード権を獲得したので、回ってくる順番がとても遅かったのだ。
なので、ライゼは楽しそうに笑っていた。この四年間でライゼは単純に魔法が好きなだけじゃなく、魔法を使った戦闘なども好きになっていたりする。
なんでも、戦闘時に使われる魔法の創意工夫が面白いからだそうだ。
まぁ、けど、ここにいる子たちはまだひよっこなので、その面白さを見ることはできなかったが、それでも家系魔法というのを見れてライゼの気分は高揚していたのだった。
「これより、試合を開始します。ライゼ様、ゼライセ・テイラー様は前へ」
ライゼが控室から出る。また、反対側からも片手剣と盾を携えた金髪碧眼の美少年が優雅に現れる。
片方は清潔はあっても暗い深緑ローブを羽織ったライゼで、もう一方は乙女ゲーとかに出てきそうな騎士様系のカッコいい服である。モブと主人公的な格差だ。
『ねぇ、乙女ゲーって何なの?』
『お、すまん。思念が漏れてたか。まぁ、勝ったら教えるよ』
『分かった』
頷いたライゼを確認して、ローブの首元に俺は引っ込む。試合中はライゼの首に尻尾を付けないように気を付けないとな。
ここ四年間の殆どにおいて、ライゼに〝思念を伝える魔法〟を繋げていたため、無意識に思念が渡ってしまう時があるんだよな。
だけど、試合中は邪魔になるだろうから意識して気を付ける必要があるのだ。
「両者、礼」
そしてライゼと爽やかイケメンが頭を下げる。そして上げる。
ゼライセは強い警戒心をもってライゼを見つめる。先程の戦闘を見る限り、彼は魔法専門ではなく、どちらかというと武術専門だ。だけど、彼は魔法使いであるはずのライゼを警戒している。
午前中の試合を見ていて分かったが、武術を専門とする子は魔法使いを下に見る傾向があったのだが、この子は違かった。それに足の運び方からして結構強い。
「両者、構え!」
進行役の人の言葉と共に、ライゼは腰に差してあった二本の短刀に手をかけ、低く構える。
ゼライセは腰に携えていた片手剣を抜き、正道の構えを取る。
「始め!」
そしてその合図と共にライゼが魔力による身体強化で脚力を強化して、低く低く這うようにゼライセに向かって走る。
ライゼは背が低いので余計に頭の位置が低いまま、ゼライセの懐へと入る。
そして。
「ッ」
「クッ」
ライゼが逆手で右の短刀を抜刀する。それをゼライセが左腕に付けている盾で防ぐ。両者が一瞬だけ撓み、そしてライゼは連続して逆手で左の短刀を抜刀するが。
「フッ」
ゼライセが跳び退いて空を切る。彼もまた身体強化で身体能力を上げて、跳び退いたのだ。
だが、ライゼの連撃はそれだけでは終わらない。
「ッ。〝防御する魔法〟ッ!」
空振り、まだ体勢すら整えていないライゼの目の前に〝攻撃する魔法〟の魔力弾が四つ召喚され、跳び退いて着地をしていたゼライセに向かって放たれた。
ゼライセは盾を起点に前面に光る透明な障壁を張る。
だが。
「何ッ!」
四つの魔力弾の内、二つが途中で軌道を変えて障壁の背後に回りこんだのだ。
そして。
「うぐっ!」
魔法技術がまだ未熟であるが故に、〝防御する魔法〟の障壁を張りながら動くことができなくなっていたゼライセに魔力弾二発が襲った。
ただ、身体強化をして肉体強度を上げていたためか“護身の腕輪”に若干のヒビが入ったものの壊れることはなかった。
そして魔力弾が当たった衝撃で体勢を崩している間に、ライゼは体勢を整えてゼライセに突っ込む。
ただ、ゼライセは打たれ慣れているのか直ぐに体勢を整えて、ライゼに心眼を定める。腰を低くして右手の片手剣を上げ、半身になる。
そしてライゼはゼライセの懐に飛び込み、逆手に持った二本の短刀を軽業のように軽やかにまた素早く振るうが。
「ッ」
「ハァッ!」
ゼライセの巧みな盾術と剣術に逸らされる。ただ、ライゼは身のこなしが軽いため、ゼライセの剣の攻撃は当たらない。華麗に翻る深緑のローブが美しい。
流石だ、ライゼ。
そして、両者の拮抗した攻防が数分も続く。
振るっては防がれて、振るわれては躱してをずっと繰り返す。
そして徐々に体格が大きい、また、多分な魔力によるライゼよりも高い身体強化によって、ゼライセが押してきた。
ゼライセはもうひと頑張りだと、少しだけ瞳と眉を上げる。
そしてゼライセの片手剣とライゼの短刀が交差し、ライゼが体勢を崩す。
ゼライセはそれを好機と見たか左足で踏み込み、ライゼに切りかかった。
よもや、これで決着が着くかと多くの人が思った瞬間。
「へっ?」
ゼライセがつんのめり体勢を崩して倒れたのだ。
そして、体勢を崩していたライゼは魔力弾四発を浮かべてゼライセを打った。
“護身の腕輪”が割れた。
「……勝者、ライゼ!」
ライゼは勝ったのだ。
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