46 / 46
44話 ダゴン戦 決着
しおりを挟む
姫様も戦い、ライリーは操舵しながら敵を蹴り上げ、エヴァンもナイフを使いながら1匹、また1匹と倒していく。
後数匹というところで水面が激しく揺れ、水の中からダゴンがまた姿を現した。砲撃でやられたはずの目が再生している。
「これはまずいな」
後ろを振り返ったライリーから絶望している声が聞こえる。後ろを向いているから表情は分からないけれど、笑っていそうな気がする。微かにだけど、肩が震えているから。
爪を振り上げたダゴン。その先は船を操舵するライリーに向けてだった。
「ライリー逃げて!」
「そういうわけにはいかねぇよ」
舵を切り、なんとか逃れようとするライリーの頭上まで爪が迫っている。逃げなければ縦に半分どころか三枚おろしの状態になってしまう。ライリーのそんな姿見たくない。見たくないと手で目を覆ったその時、4つの轟音が連続で鳴り響いた。4つの弾がライリーの横を通り過ぎ、2つがダゴンに当たったのだ。
これで倒れてくれたらよかったんだけど、相手はなんたって街を水没させたクトゥルフ神話生物だ。津波だって起こせちゃう。
なんでこんなこと言ってるかって? ダゴンの後ろから津波が迫ってきているのが見えているから。
「ライリー、早く!」
「やってらぁ! 野郎ども! 全部の帆を降ろせ! 全力前進だ」
「援護します!」
姫様が帆に向かって杖を振るった。すると、吹いている風とは違うものが帆に当たり、勢いはつくが制御が難しくなる。突然の速さに驚いた声が聞こえてきた。
「おい、誰だ! 何かやる場合は俺に言ってからにしろ」
「わ、私です」
「今のはなんだ」
メアリー様からライリーに魔法について説明があった。何か知らない単語が出て来たけど、分かりやすく言えば、体の内側に巡っている魔力を意識しながら杖に持っていき、そこから放つ。といったけど、説明が長すぎるってライリーが怒っていた。
「もっと分かりやすく言え! 魔法だなんだってのはおとぎ話の中にしやがれってんだ」
「こ、これ以上は」
怒りと操舵で忙しく、メアリー様の言葉が右から左へと流れていってるんだろう。
「ようは自然の力を自分たちが好きに出せるってことじゃない?」
「それならそうと言え。それでこいつのスピードが変わる」
落ち込んでいるメアリー様を慰めつつ、ライリーに簡単に説明した。最初は手こずっていた舵輪の操作も少しずつ慣れてきたのか、船がスピードに乗ってきた。
「風の威力少しだけ下げろ」
「は、はい」
先ほどまで大きく膨らんでいた帆が少し緩やかになった。それに合わせるかのように舵輪を回し、旋回する船。くるりと回った船はダゴンを正面に構えている。
「なにをやっている!」
まさか正面を向くとは思わなかった。エヴァンからも驚きの声が上がっている。
「てめぇら、難破を覚悟しとけよ」
後ろを振り返り、ライリーの顔を見ると真剣な表情をしているが、どこか楽しそうに口角を上げている。まさかあれをしようとしている?
「縁に捕まってた方がいい?」
「そうしろ!」
ライリーのやりたいことがわかった。波を後ろや横から受けないようにする為にして、正面から受けることで被害を少なくしようとしてるんだ。
「みんな捕まって!」
「あいつはいったい何を」
「賭けだけど、波を越えようとしてる」
「この状況でか」
皆が縁に捕まり、耐えようとしている。そのなかで舵輪を回しながらダゴンので横を越えようとしていた。
「砲手長!」
「準備は出来てる」
いつのまに準備してたんだろう。エヴァンがしっかりとした足取りで甲板に足を付け、大砲の向きを変え、ダゴンに向けている。
「撃て!」
ライリーの掛け声で放たれた砲弾は煙を上げ、真っ直ぐ向かい、ダゴンの脳天を貫通した。さすがに脳をやられたら無事ではすまないだろう。開いている穴から緑色の液体が流れ、ダゴンの顔を伝い、水に落ち、少しずつ広がっていく。
「やった!」
「倒したぞ!」
「まだ安心するんじゃねぇ」
ゆっくりと倒れていくダゴン。喜ぶみんなとは違い、ライリーは焦っていた。前方から来る津波とダゴンが倒れたことによる水の波で操舵に悪戦苦闘している。
後数匹というところで水面が激しく揺れ、水の中からダゴンがまた姿を現した。砲撃でやられたはずの目が再生している。
「これはまずいな」
後ろを振り返ったライリーから絶望している声が聞こえる。後ろを向いているから表情は分からないけれど、笑っていそうな気がする。微かにだけど、肩が震えているから。
爪を振り上げたダゴン。その先は船を操舵するライリーに向けてだった。
「ライリー逃げて!」
「そういうわけにはいかねぇよ」
舵を切り、なんとか逃れようとするライリーの頭上まで爪が迫っている。逃げなければ縦に半分どころか三枚おろしの状態になってしまう。ライリーのそんな姿見たくない。見たくないと手で目を覆ったその時、4つの轟音が連続で鳴り響いた。4つの弾がライリーの横を通り過ぎ、2つがダゴンに当たったのだ。
これで倒れてくれたらよかったんだけど、相手はなんたって街を水没させたクトゥルフ神話生物だ。津波だって起こせちゃう。
なんでこんなこと言ってるかって? ダゴンの後ろから津波が迫ってきているのが見えているから。
「ライリー、早く!」
「やってらぁ! 野郎ども! 全部の帆を降ろせ! 全力前進だ」
「援護します!」
姫様が帆に向かって杖を振るった。すると、吹いている風とは違うものが帆に当たり、勢いはつくが制御が難しくなる。突然の速さに驚いた声が聞こえてきた。
「おい、誰だ! 何かやる場合は俺に言ってからにしろ」
「わ、私です」
「今のはなんだ」
メアリー様からライリーに魔法について説明があった。何か知らない単語が出て来たけど、分かりやすく言えば、体の内側に巡っている魔力を意識しながら杖に持っていき、そこから放つ。といったけど、説明が長すぎるってライリーが怒っていた。
「もっと分かりやすく言え! 魔法だなんだってのはおとぎ話の中にしやがれってんだ」
「こ、これ以上は」
怒りと操舵で忙しく、メアリー様の言葉が右から左へと流れていってるんだろう。
「ようは自然の力を自分たちが好きに出せるってことじゃない?」
「それならそうと言え。それでこいつのスピードが変わる」
落ち込んでいるメアリー様を慰めつつ、ライリーに簡単に説明した。最初は手こずっていた舵輪の操作も少しずつ慣れてきたのか、船がスピードに乗ってきた。
「風の威力少しだけ下げろ」
「は、はい」
先ほどまで大きく膨らんでいた帆が少し緩やかになった。それに合わせるかのように舵輪を回し、旋回する船。くるりと回った船はダゴンを正面に構えている。
「なにをやっている!」
まさか正面を向くとは思わなかった。エヴァンからも驚きの声が上がっている。
「てめぇら、難破を覚悟しとけよ」
後ろを振り返り、ライリーの顔を見ると真剣な表情をしているが、どこか楽しそうに口角を上げている。まさかあれをしようとしている?
「縁に捕まってた方がいい?」
「そうしろ!」
ライリーのやりたいことがわかった。波を後ろや横から受けないようにする為にして、正面から受けることで被害を少なくしようとしてるんだ。
「みんな捕まって!」
「あいつはいったい何を」
「賭けだけど、波を越えようとしてる」
「この状況でか」
皆が縁に捕まり、耐えようとしている。そのなかで舵輪を回しながらダゴンので横を越えようとしていた。
「砲手長!」
「準備は出来てる」
いつのまに準備してたんだろう。エヴァンがしっかりとした足取りで甲板に足を付け、大砲の向きを変え、ダゴンに向けている。
「撃て!」
ライリーの掛け声で放たれた砲弾は煙を上げ、真っ直ぐ向かい、ダゴンの脳天を貫通した。さすがに脳をやられたら無事ではすまないだろう。開いている穴から緑色の液体が流れ、ダゴンの顔を伝い、水に落ち、少しずつ広がっていく。
「やった!」
「倒したぞ!」
「まだ安心するんじゃねぇ」
ゆっくりと倒れていくダゴン。喜ぶみんなとは違い、ライリーは焦っていた。前方から来る津波とダゴンが倒れたことによる水の波で操舵に悪戦苦闘している。
0
お気に入りに追加
19
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
°̥✩ℋᎯᎵᎵᎩ ᏁᏋᏔ ᎩᏋᎯℛ*ೄ°̥✩
昨年はお世話になりました♡
本年も宜しくお願い致します♪
★☆★ 2024年新春★☆★
\|/
――●―― / ̄\⊂⌒
/|\ /~~~\⊂
⊂⌒⌒⌒⊃/人\\\
⊂⌒⌒⌒⌒⌒⊃\\\
面白そうなので昨日Twitterに紹介しちゃいました(っ'ヮ'c)
今読んでます〜あとちょっと( *´꒳ˋ*)ノ⁾⁾
Twitterでの紹介ありがとうございます!感想を見てめちゃくちゃびっくりしました!
やっと最新話まで追い付きました☆
スマホが重要なアイテムっていうのはナイスアイデアですね。
色々と呼び出したり記録したりなどなど、すごく想像力が刺激されます。
そして電源どうなってるのん? って思いつつ読んでいます。
たぶん、あかりちゃんの生命力とか元気力とかに連動しているのかな……それとも時間経過で補充される仕様なのかな。
その辺りや世界のことも、これから明らかになっていくのでしょうね。
新キャラの看護士さんも一癖ありつつも良い人みたいでひと安心です。
神話やゲームはからっきしですが、ここまで楽しく読ませていただきました。
事件の顛末やキャラさんたちの活躍を楽しみにしております。
読んでくださりありがとうございます!
スマホは偉大です(´▽`*)なんでもできますからね!
スマホと言ってますけど、あれを魔法を使う力(マジックポイントとか)だと考えていただければ分かりやすいかと。
看護師さんの活躍をお楽しみに!
クトゥルフ神話という創作神話ですが、ハマると沼るのでお気をつけて(;´∀`)