上 下
41 / 46

39話 避けるべきこと

しおりを挟む
「高い者が見た場合どうなるのです?」
「正気度が減るだけですね。それでも危険なことに変わりはないですが」

 たとえ、耐えることが出来たとしてものちのちに響いてくる。低すぎると発狂してしまう。シナリオで回復させることが出来るものもあるけど、どうしたら。
 自分のスマホは召喚するだけなのだろうか? 今まで水とエヴァンとゾーイと見えない馬を召喚した。それ以外に何かできないかと、かばんの中でこっそりとスマホの画面を確認すると、何か一件通知が来ていた。電波は繋がっていないのに、いったい誰から? もしかしてニャル様? スマホ使えたの?

【新たなスキルを覚えました。確認しますか?】

 という通知。新たなスキルってなに? 召喚するだけじゃなかったの? 詳しく見たいけど、今は目の前にいるメアリー様を優先しなくては。
 
「君が本を読んだらいいんじゃないか?」

 ひとりの衛兵が言ってくる。その言葉に反応するエヴァンとゾーイ。一度、私がおかしくなるところを見ているからこそ、許せなかったのかも。
 エヴァンが目の前の衛兵を殺してしまう前に抑えてと言い聞かせ、腰に付けているナイフから手を離させた。抜いたら一瞬で喉を切り裂いちゃうだろうから。

「知っているからしろってことですか?」
「そうだ」
「これに関して、知識はない方がいいんです。あればあるほど発狂します」
「そんなことあり得るのか?」
「あり得るんです。だって、神と同様の相手ですから」
 
 大いなるクトゥルフ。次元を超えるティンダロスの猟犬。黄衣こういの王。父なるダゴン。
 有名どころだけど、これだけ知っていても会ってしまったら正気度が減っていく。
 減るどころか死ぬ。
 
「神と……」
「極力戦闘は避けてください。ですが、もし出会ってしまった時、倒せそうだと判断したら戦闘してから逃げてください」
「矛盾していないか?」

 矛盾しているけど、私たちが広場に行ったとき奇襲されたことを伝えた。そういう時は仕方なしに戦闘するしかない。
 これから説明する敵は倒せるかもしれない敵の名前と特徴を言うことにした。姿を説明するだけだったら大丈夫だよね。これでもSAN値減少とかにはならないよね。

「私が出来るのは知っていることを教えるのみです」

 自分が役に立てないことは知っている。だから裏でサポートをする。それしかできない。
 
「今あかり様がおっしゃった敵は人でも倒せるのですね?」
「倒せますが、緊急の時以外は手を出さないように」

 私は何度も言う。それほどクトゥルフとの戦闘は避けるべきだから。

「わかりましたわ。他に注意することはございますか?」
「ニャルラトホテップと呼ばれる生物には特に注意してください。あれは人が好きでありながらも狂気におとしいれようとしてくるので」

 メアリー様たちの見た肌が黒い姿。褐色のとき。醜い女性として現れたなどいろいろと姿を変えてでてくるのだ。

「その数は?」
「千以上」
「千……」

 メアリー様たちが目を見開いて驚いている。

「そいつがお前をおかしくさせたのか」

 エヴァンの声色が変わった。背筋が凍るような感覚がして横に座っているエヴァンの顔をちらりと見たら、無表情になっている。ついでにとゾーイの顔も見たら無表情になっていた。2人して変えないで。
 ずっと内緒にしてたけど、メアリー様に説明するとき言ってしまった名前を、二人して小声で呟きながら名前を覚えるかのように繰り返している。特にゾーイがすると怖い。恨んでいるかのように呟き続けているし。

 今思ったんだけど、もしかしてこれ、被害者を増やしてしまった可能性なくないか? だ、大丈夫だよね。これでメアリー様とかエヴァンたちのSAN値が減って発狂したら完全に私のせいだよね。

 うわぁあああ、やってしまった。証言者がここにはいっぱいいるし、クトゥルフの知識があるのは私だけ。もし、発狂しておかしくなってしまったらその罪で処されないよね? なってしまった時の対処法も教えておこう。うん。

「姫様、もし、例の者に会っておかしくなってしまった人物がいたら、監視しながらしっかりと療養させてください」
「どんなふうにですか?」
「暴れているなら抑え、心を安定させるように治療するんです。言葉をかけてあげるといいかもしれません。大丈夫、と」

 これは1つの例え。他にもいろいろと方法はある。私が考えられるのは1つしかないけど、寄りいながら看病すれば出てくると思う。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

処理中です...