【完】私の従兄弟達は独特です 

yasaca

文字の大きさ
上 下
17 / 17

五男の話 3

しおりを挟む
「それに、口外禁止なの知ってるでしょ」
「そりゃあ……」


 前までは龍牙りゅうき君が引き下がっていた口喧嘩が、今は関係性が変わってけい君が抑え込まれています。


「莉奈姉、話を戻すね」


 慶君が舌打ちして、ふて寝してしまいました。ついでに龍牙君の足を蹴ったのでしょうね。声には出さなかったですが、ものすごい形相で慶君を睨んでいます。


「精神が大人と同じの意味が分からないんだよね」
「うん」
「その理由を今から話すんだけど、他人には絶対言わないこと約束出来る?」


 知られたらまずいことなのかな。それを私は聞いてもいいのか分からないですし、すごいと思って他の人に話してしまいそうです。


「確実に言わないとは約束出来ないかも……」
「それだったらこの話は言わない。どんだけ気になったとしても、約束を守ってもらえないと僕ら兄弟がおかしな人だって周りの人に思われちゃうから」


 それだけは勘弁、と龍牙君が下を向いてしまいました。心なしか龍君も不安そうに瞳を揺らしています。


「僕らに関しての話はこれで終わり。分からなかったってところはある?」
「ないよ」
「そう。じゃあ、ここからは莉奈姉の護衛についての話に変えるよ」


 いろいろと聞かないとですね。お金とかどういうことをしてくれるのかとか。


「本人も呼ぼうか」


 そう言うとスマホを龍君から借りて、あの子にかけています。式神だけど持っているんですね。


「すぐ来るよ」


 そう言った直後、チャイムが鳴りました。いくら何でも早すぎませんか。ずっと家の外で待っていたぐらいの早さです。こんな寒い時期に外で待つのは辛いですよ。


「お呼びでしょうか、龍牙様」
「前から話していたこと、今日からよろしくね」
「畏まりました。莉奈様、本日より貴女様の護衛をさせていただきます」


 流れるように龍牙君の前で膝をついて、私にも頭を下げて来たけど何もついていけてないですよ。
 いろいろと話してから護衛をするということではなかったのですか。


「彼が側にいるのはもう決定事項?」
「うん。僕らは学校とかもあるし、莉奈姉が住んでいる場所まで行けないし」
「もっと、こう話し合いを」
「止めとく?」


 可愛らしく首を傾けて言われたら揺らいでしまうじゃないですか。
 せっかくの好意を無駄にしたくないけど、もう少し要望とか言えないのでしょうか。
 護衛というと、ずっと一緒にいないといけないってイメージがあります。


「ずっと付きっ切りってわけじゃないから安心して」
「そうなの?」
「うん。こういうことはしてほしくないって言えば守るから」


 ずっとだったら私も疲れますし、この子も疲れてしまいますから。例え式神だったとしても、私はこの子を人として見ますからね。
 でも、今は何をしたらよくて、どれがダメなのかが何も思いつきません。


「あの、翔栄君。後からでも大丈夫?」
「はい。その時その時に申してください。合わせます」


 龍牙君に翔栄君は式神だっていわれていたけど、あまりにも人っぽくて何度も間違えてしまいそうです。
 ちゃんと受け答えが出来ているんですもん。
 式神だと言われずに紹介されていたら、勘違いしてしまいますよ。


「あの、お金とかは?」
「私には必要ありません。竜之介様からお聞きしましたが、もししたいのであればご自由に」


 本当にいいの? あ、じゃあ龍牙君に渡した方がよさそうですね。


「言っておくけど、僕もいらないからね。しいて言うなら、ずっとむびょうそくさいでいて欲しいくらいだね。莉奈姉に何かあったら龍兄さんが悲しむから」
「龍君が?」
「うん。姉さんに何かあるたびに『大丈夫だろうか』って言いながらその場をぐるぐる回ったり、寝込んだりしてるから」
「龍牙!」


 まさか本人の前で言われるとは思っていなかったのか、龍君の顔が真っ赤になっています。耳まで赤いですね。
 龍牙君はしてやったりな顔をしています。


「ほかに言いたいこととか聞きたいことある?」
「竜之介お兄さんが言っていたけど、肝とかを食べるの?」
「基本食事はしないのですが、莉奈様が共にしたいときは呼んでくだされば」


 これから誰かと食べるご飯が楽しみになりますね。アパートに戻ればいつも一人でしたから。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

母が田舎の実家に戻りますので、私もついて行くことになりました―鎮魂歌(レクイエム)は誰の為に―

吉野屋
キャラ文芸
 14歳の夏休みに、母が父と別れて田舎の実家に帰ると言ったのでついて帰った。見えなくてもいいものが見える主人公、麻美が体験する様々なお話。    完結しました。長い間読んで頂き、ありがとうございます。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

あばらやカフェの魔法使い

紫音
キャラ文芸
ある雨の日、幼馴染とケンカをした女子高生・絵馬(えま)は、ひとり泣いていたところを美しい青年に助けられる。暗い森の奥でボロボロのカフェを営んでいるという彼の正体は、実は魔法使いだった。彼の魔法と優しさに助けられ、少しずつ元気を取り戻していく絵馬。しかし、魔法の力を使うには代償が必要で……?ほんのり切ない現代ファンタジー。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

少年、その愛 〜愛する男に斬られるのもまた甘美か?〜

西浦夕緋
BL
【和風BL】15歳の少年篤弘はある日、夏朗と名乗る17歳の少年と出会う。 彼は篤弘の初恋の少女が入信を望み続けた宗教団体・李凰国(りおうこく)の男だった。 亡くなった少女の想いを受け継ぎ篤弘は李凰国に入信するが、そこは想像を絶する世界である。 罪人の公開処刑、抗争する新興宗教団体に属する少女の殺害、 そして十数年前に親元から拉致され李凰国に迎え入れられた少年少女達の運命。 「愛する男に斬られるのもまた甘美か?」 李凰国に正義は存在しない。それでも彼は李凰国を愛した。 「おまえの愛の中に散りゆくことができるのを嬉しく思う。」 李凰国に生きる少年少女達の魂、信念、孤独、そして愛を描く。

処理中です...