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五男の話
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「帰ってきてたんだ」
「来てたら悪ぃのかよ」
「別に」
玄関を先に通った慶君が誰かとさっそく口論になりました。と言っても迫田家兄弟の誰かと、ですが。
「莉奈姉、久しぶり」
慶君と喧嘩していた相手は、ちょうど階段から降りてきていた末っ子の龍牙君でした。両目に2本の傷がある子。事故でついたわけではなくて、生まれつきあるそうで。それのせいで一時期不登校になってたって聞いていましたけど、今はどうなんでしょう。
「久しぶり。元気だった?」
「なんも問題ないよ。とりあえず、靴脱いで居間に行ったら?」
その一言をいって、居間へ向かっていきました。なんでしょう。今までの龍牙君と違って雰囲気が冷たいような気がします。私の知っている彼はとても大人しくて、何に対しても怖がっていたのに、今の彼は全てに吹っ切れているような印象です。
「姉さん、どうしたの? そこだと寒いよ?」
5人分のお茶をのせたお盆を持った状態で龍君が固まっています。
体を冷やして風邪をひいては元も子もないですからね。お言葉に甘えてあがりますか。
ここはまったりしていていいですねと思ったのですが、慶君と龍牙君が喧嘩しています。
「足邪魔」
「てめぇこそ、その短ぇ足もっと縮めろ!」
私を抜いた4人がすっぽり入るくらいこたつは大きいのに、場所の取り合いをしています。
「や゛ぁあああ!」
あ、弐龍君いたんですね。こたつで寝ていたところを邪魔されて不機嫌そうですね。
それに寝ぐせで髪が爆発しています。
ものすごい声量で窓が震えて、自分の耳の鼓膜が破れるかと思っちゃいましたよ。
「起こしちゃってごめんね弐龍兄さん。ほら、2人とも場所開けて。姉さんと俺が座るところがないでしょ」
長男の竜之介お兄さんがいないときは、龍君が皆のまとめ役として代わりにしているんですね。バランスが取れてていいですね。
「兄さん、お茶にする?」
大きめのクッションに顔を埋めて首を横に振っていますね。そして寝るのが早い。
「姉さんはお茶で良かった?」
「大丈夫よ」
2人が席を空けてくれたのでそこに座ると、冷えた足がじんわりと温かくなってきました。こたつはいいですね。
龍君からお茶を貰い、冷えた体を温めていると、龍牙君から今日のことを質問されました。私にしか見えていなかったお店。私自身に今までと変わったところはないか。怪我はないかなど。
「そういえば、翔栄に会った?」
「黒い服を着ている子?」
「うん」
「会ったよ」
あの子は子供という認識でいいのでしょうか。
「前、竜之介兄さんが言っていたこと覚えてる? 護衛を雇うって」
「もしかしてあの子が?」
「そうだよ」
あんな小さな子が私を護るために動くの? 危なくないかしら。それにあの子の親はなんて言っているのかしら。
そもそも、なんで皆止めないの。
「龍牙君があの子に頼んだの?」
「うん。莉奈姉を陰から守るには彼が適任だから」
適任って。おかしいと思わないのでしょうか。あんな小さい子に人を護らせるなんて。
いつから彼らはこのことを異常だと思わないようになったのだろう。それとも私だけがおかしいのかしら。
「莉奈姉。もしかして翔栄の事小さい子供だって思ってる?」
「そうじゃないの?」
「違う」
おかしいなって思ってたことが龍牙君にバレちゃったのかな。
あの子、存在は薄かったけど私の目の前に立っていたし、話もした。すぐ姿が見えなくなったりとちょっとおかしなところはあったけど、すぐ近くに路地裏に行く道があったから、そこに入ったのかもしれないですし。
「少しだけ話がそれるけど、生駒がおんみょうじだってのは知ってるよね?」
「うん」
「式神は見たことある?」
詳しくはわからないのですが、式神って今、私の頭の中で想像してるあの人の形をした紙のことでしょうか。
テレビとか漫画とかで見たことあるけど、実際に見たかといわれるとちょっと。
「ないね」
「漫画とかで出てくる人型の紙を想像したらいいよ。あれが人の姿をしたり、小鬼の姿だったりすることがある」
いつからかは分からないのですが、生駒家は昔から迫田家に仕えている陰陽師だって言ってた気がします。
でもそれが翔栄くんとどういう関係があるのでしょうか。
「翔栄も式神だ。でも使役しているのは生駒じゃない。僕だ」
どういうこと。龍牙君は陰陽師だったの? 確か今12歳だったよね。え、誰でもなれるものなの?
「僕はおんみょうじでもなんでもないよ。ただの小学生」
なんで私が考えていること分かるんだろう。
龍君も慶君もそうだったけど、1年会ってない間に何があったんだろう。性格が変わっていたり、さらに乱暴になったりで、私、よくわからなくなってきた。
「来てたら悪ぃのかよ」
「別に」
玄関を先に通った慶君が誰かとさっそく口論になりました。と言っても迫田家兄弟の誰かと、ですが。
「莉奈姉、久しぶり」
慶君と喧嘩していた相手は、ちょうど階段から降りてきていた末っ子の龍牙君でした。両目に2本の傷がある子。事故でついたわけではなくて、生まれつきあるそうで。それのせいで一時期不登校になってたって聞いていましたけど、今はどうなんでしょう。
「久しぶり。元気だった?」
「なんも問題ないよ。とりあえず、靴脱いで居間に行ったら?」
その一言をいって、居間へ向かっていきました。なんでしょう。今までの龍牙君と違って雰囲気が冷たいような気がします。私の知っている彼はとても大人しくて、何に対しても怖がっていたのに、今の彼は全てに吹っ切れているような印象です。
「姉さん、どうしたの? そこだと寒いよ?」
5人分のお茶をのせたお盆を持った状態で龍君が固まっています。
体を冷やして風邪をひいては元も子もないですからね。お言葉に甘えてあがりますか。
ここはまったりしていていいですねと思ったのですが、慶君と龍牙君が喧嘩しています。
「足邪魔」
「てめぇこそ、その短ぇ足もっと縮めろ!」
私を抜いた4人がすっぽり入るくらいこたつは大きいのに、場所の取り合いをしています。
「や゛ぁあああ!」
あ、弐龍君いたんですね。こたつで寝ていたところを邪魔されて不機嫌そうですね。
それに寝ぐせで髪が爆発しています。
ものすごい声量で窓が震えて、自分の耳の鼓膜が破れるかと思っちゃいましたよ。
「起こしちゃってごめんね弐龍兄さん。ほら、2人とも場所開けて。姉さんと俺が座るところがないでしょ」
長男の竜之介お兄さんがいないときは、龍君が皆のまとめ役として代わりにしているんですね。バランスが取れてていいですね。
「兄さん、お茶にする?」
大きめのクッションに顔を埋めて首を横に振っていますね。そして寝るのが早い。
「姉さんはお茶で良かった?」
「大丈夫よ」
2人が席を空けてくれたのでそこに座ると、冷えた足がじんわりと温かくなってきました。こたつはいいですね。
龍君からお茶を貰い、冷えた体を温めていると、龍牙君から今日のことを質問されました。私にしか見えていなかったお店。私自身に今までと変わったところはないか。怪我はないかなど。
「そういえば、翔栄に会った?」
「黒い服を着ている子?」
「うん」
「会ったよ」
あの子は子供という認識でいいのでしょうか。
「前、竜之介兄さんが言っていたこと覚えてる? 護衛を雇うって」
「もしかしてあの子が?」
「そうだよ」
あんな小さな子が私を護るために動くの? 危なくないかしら。それにあの子の親はなんて言っているのかしら。
そもそも、なんで皆止めないの。
「龍牙君があの子に頼んだの?」
「うん。莉奈姉を陰から守るには彼が適任だから」
適任って。おかしいと思わないのでしょうか。あんな小さい子に人を護らせるなんて。
いつから彼らはこのことを異常だと思わないようになったのだろう。それとも私だけがおかしいのかしら。
「莉奈姉。もしかして翔栄の事小さい子供だって思ってる?」
「そうじゃないの?」
「違う」
おかしいなって思ってたことが龍牙君にバレちゃったのかな。
あの子、存在は薄かったけど私の目の前に立っていたし、話もした。すぐ姿が見えなくなったりとちょっとおかしなところはあったけど、すぐ近くに路地裏に行く道があったから、そこに入ったのかもしれないですし。
「少しだけ話がそれるけど、生駒がおんみょうじだってのは知ってるよね?」
「うん」
「式神は見たことある?」
詳しくはわからないのですが、式神って今、私の頭の中で想像してるあの人の形をした紙のことでしょうか。
テレビとか漫画とかで見たことあるけど、実際に見たかといわれるとちょっと。
「ないね」
「漫画とかで出てくる人型の紙を想像したらいいよ。あれが人の姿をしたり、小鬼の姿だったりすることがある」
いつからかは分からないのですが、生駒家は昔から迫田家に仕えている陰陽師だって言ってた気がします。
でもそれが翔栄くんとどういう関係があるのでしょうか。
「翔栄も式神だ。でも使役しているのは生駒じゃない。僕だ」
どういうこと。龍牙君は陰陽師だったの? 確か今12歳だったよね。え、誰でもなれるものなの?
「僕はおんみょうじでもなんでもないよ。ただの小学生」
なんで私が考えていること分かるんだろう。
龍君も慶君もそうだったけど、1年会ってない間に何があったんだろう。性格が変わっていたり、さらに乱暴になったりで、私、よくわからなくなってきた。
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