【完】私の従兄弟達は独特です 

yasaca

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四男の話 2

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「姉貴、腹減った」
「なにか食べに行く?」
「なんでもいい」


 なんでもいいが1番困りますね。でしたら、あの場所に行きましょう。竜之介お兄さんと行ったお食事処に。
 道は覚えています。


「少し遠いけど、いい?」
「おう。どこ行くんだ?」
「内緒」


 慶君もきっと驚きますよ。あの豪華さと鯉料理が出るところに。
 来た道を戻り、駅の方向まで。確か歩いて10分のところにありましたよね。小道に入るので迷わないように。


「どこにあんだ、その秘密の場所ってのは」
「駅の近くだよ」
「駅までだとここから歩いて20分かかんぞ。それだったら近くのとこがいいだろ」
「え、そんなに遠い?」
「遠いな」


 おかしい。竜之介お兄さんと歩いてた時はそこから10分くらいで私の家に着いたのですが、話しながら歩いていたから短く感じたのでしょうか。そうだとしても時間の進みが違いすぎませんか?


「店名覚えてるか?」
「ううん。暖簾のれんも看板もなかったよ」


 そう言うと、スマホ片手に片眉を上げて怪しむ慶君。私だって不思議に思いましたよ。何もない所がお食事処だなんて。初見だったら気付かないですもん。


「そこに連れて行ったのって誰だ?」
「竜之介お兄さんよ」
「んじゃ、兄貴に聞いてみりゃいいだけだな」


 スマホを取り出して、お兄さんに電話をかけています。
 今はもう中学生でもスマホを持つ時代なんですね。もしかしたら小学生でも持っているのかも。


「今日開いてるかな」
「そこも聞いてみるわ」


 なかなかでないみたいですね。忙しいのでしょうか。


「兄貴、今姉貴といんだけどよ。兄貴が連れて行った駅近くの店ってどこにあんだ?」


 ようやく繋がったみたいです。


「あ? そうなのか? じゃあ今日行っても無理なのかよ」


 行けない雰囲気が今私たちの周りを占めているようです。


「あー、分かった」
「お兄さんはなんて?」
「開いてるかどうか確認するんだってよ。したらまた電話が来る」


 それまでどうしましょう。ここで立ち止まっているわけにもいきませんし。
 もし開いてなかったことを考えて、近くに食べるところがないか探した方がよさそうですね。駅の近くはいろいろと賑わっていますから。


「姉貴、そこって高級料理店?」
「そうだよ。お兄さんから聞いた?」
「まぁな。思ったんだけどよ、そこってこんな格好で行っていいところなのか。それに気軽に行こうとして行ける場所なのかよ」
「帰ってきたときは、ラフな格好だったけど」


 お兄さんはあの場所で作法とかは多めに見てくれると言っていましたが、確かに言われてみればあまりにも場違いな格好だった気がします。あの男性もスーツを着ていましたし、女将さんはとても上品な方でしたし。気軽に行っていいところなのか不安になってきました。


「兄貴からか」


 早速聞いて連絡してくれたっぽいですね。


「兄貴じゃねぇと分かんねぇの? なら俺が今道聞いても無理なのか」


 お兄さんしか知らない道。そんなことがあるのでしょうか。


「あー、それじゃ分かんねぇのも仕方ねぇな。兄貴ほど俺は器用じゃねぇし」


 器用とはどういうことでしょう。道案内するのでしたら方向音痴という言葉が適切だと思うのですが。
 時々私の従兄弟達は不思議なことを言うので、ついていけないところがあります。


「無理っぽいね……。なら、ほかのところにしよっか」


 電話が終わった慶君が眉尻を下げて、申し訳なさそうな顔をしながら見つめてきます。
 大丈夫ですよ、あなたのせいではないですから。

 スマホで時間を見てみたらすでに12時は超えていました。
 私のお腹が何か食べたいと主張していますし、移動しますか。


「いつか兄貴と一緒に行かねぇ? 俺もそこ気になんだよ」
「そうね」


 そのいつかはいつになるかは分からないですが、また行きたいですね。 
 

 駅までは遠いみたいですし、近くにいい場所は……。


「いいとこ見つかったか?」
「とんかつ屋さん行く?」
「おう」


 決定ですね。今から行くところがおいしい所だったらいいのですね。
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