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三男の話 2
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ちょうど3時になったばかりで、列が小さい子供や女子高生でいっぱいになっています。その中に並びに行くのに、龍君は恥ずかしかったりとかしないのでしょうか。恥ずかしいけどもしかして我慢している?
「なんか、ちょっとだけ恥ずかしいかも」
そうよね。勢いで並んでしまったみたいだけど、冷静に周りを見たら男性があまりいないですし。
「ベンチで座って待ってる?」
「いや、大丈夫。一緒に待つ」
顔を逸らして見えないようにしていますが、耳が真っ赤ですよ。
後ろからはあの男の子かわいいとか、かっこいいとか言われているみたいですね。
確かに龍君は少し癖っ毛だけど、短すぎず長すぎない髪型をしていて、目は少しだけ垂れ目。顔は従姉妹である私の欲目もありますが、爽やかで整った顔をしていると思います。そんな子が顔を赤らめていたら、騒ぐ気持ちも分かります。
「お姉さん、ツナサラダとベリークリームを1つずつください」
「はーい。2つで640円になります」
値段を聞いた龍君は学生用カバンから財布を取り出して払おうとしています。ここは私が。
龍君より私はお姉さんですし、いつも彼らに払ってもらっているのでお返しに払わせてくださいな。
「龍君、私が払うよ」
「大丈夫、俺が払うから」
「でも」
「いいの」
ああ……私の前に立って、払ってしまいました。貰っているお小遣いの中から出してくれるなんて。
彼が何か買いたいものがあった時に、今度代わりに買ってあげなくては。
「ありがとうね」
「気にしないで。姉さんが喜ぶんだったらいくらでも払うしね」
喜色満面な様子で、本当に嬉しそうですね。でも、無理しない程度にですよ。
あまりにも迫田家の兄弟達は純粋過ぎて、お姉さん心配になってきました。変な人に騙されないようにしてほしいですね。
「今度何か買いたいものがあったら言ってね?」
「ほんと、気にしなくても大丈夫なのに」
本当に買いたいものがあった時、買えなくなってしまいますよ。お友達も多いって龍君本人から聞いてますし。
ここだと邪魔になってしまいますね。少し横にずれて待っていましょうか。
「お待たせしましたー! ツナサラダとベリークリームですね!」
「ありがとうございます」
あ、どうしましょう、ペットボトルと鞄で両手が。と思ったら龍君が受け取ってくれました。
「お水、鞄に入れるまで待ってるよ」
「ありがと」
長く待たせるのも申し訳ないので、早く入れましょうかね。
焦っているせいかなかなか入りづらいですが。
「あ」
「おっと」
焦って手から滑り落ちてしまったペットボトルを、龍君は足のつま先で受け止めています。なんというバランス感覚。自然と感嘆の声が出てしまいました。
「ごめんね、足で受け止めちゃって」
「ううん、ありがとね」
焦りは禁物ですね。
それにしても、いつあんなことが出来るようになったのでしょうか。前会った時はとてもじゃないですけど、何かを2つ持ったら、よくバランスを崩していたことが多かったのに。
「はい、ベリークリーム。聞かずに勝手に頼んじゃったけど、大丈夫だった?」
「大丈夫よ。私がベリー系好きなのよく覚えてたね」
「まぁね」
鼻高々な顔をしていますね。自信満々なことは良いことですよ。行き過ぎるといけないですが。
座って食べる場所は、他の方が座っていてなさそうですね。少し行儀が悪いですが、食べながら帰りましょう。
「最近嫌なこととかなかった?」
「最近はないわ。けど、少し前にミサンガが切れちゃって。でも、竜之介お兄さんに代わりは貰ってるわ」
「そっか、なら良かった。兄さんが作るものって本当に力があるみたいだしね」
もしかしたら本当にお兄さんは力が持っているのかもしれません。それこそ神職や陰陽師の方たちのようなお力が。けれど、それをひけちらかさすようなことはせず、常にその内にひそめています。
「少しだけ食べていい?」
「どうぞ」
1年前と比べて随分と顔の位置が高くなった龍君の口元に持っていき、ほとんど口に入っていないのではないかと思うほどの量を食べました。食べたところはほとんど、クレープの皮だけでしたよ。
「もっと食べてもいいんだよ?」
「それだと、姉さんが食べる部分が無くなるし」
「大丈夫よ。ほら」
口についてしまうのではないかと心配になりましたが、その必要はなかったですね。戸惑いながらも恐る恐る口にし、目が少しずつ大きくなっています。よほどおいしかったんですね。
「食べた瞬間幸せが口の中に広がる感じ。凄い! 甘酸っぱいけど、そこまで酸味が強くないしクリームも甘すぎないからすげぇ好き!」
急に解説が始まったので驚いてしまいました。この1年で何があったんだろう。
私が驚いたことに気付いた龍君は顔を逸らし、また耳が真っ赤になっていた。
「ご、ごめん……。急にびっくりした、よね」
「すごく驚いた。昔は食べ物とか食べられたらそれでいいって言ってなかった?」
「うん。この1年でちょっと嗜好が変わってね。最近は料理とかするのが好きになってきたんだ」
恥ずかしそうに頬を指でかきながら、目を逸らしています。
「毎日作ってるの?」
「毎日じゃないけど、毎週土曜日は俺が作ったりしてるの。今度食べに来て。ふるまうよ」
「なんか、ちょっとだけ恥ずかしいかも」
そうよね。勢いで並んでしまったみたいだけど、冷静に周りを見たら男性があまりいないですし。
「ベンチで座って待ってる?」
「いや、大丈夫。一緒に待つ」
顔を逸らして見えないようにしていますが、耳が真っ赤ですよ。
後ろからはあの男の子かわいいとか、かっこいいとか言われているみたいですね。
確かに龍君は少し癖っ毛だけど、短すぎず長すぎない髪型をしていて、目は少しだけ垂れ目。顔は従姉妹である私の欲目もありますが、爽やかで整った顔をしていると思います。そんな子が顔を赤らめていたら、騒ぐ気持ちも分かります。
「お姉さん、ツナサラダとベリークリームを1つずつください」
「はーい。2つで640円になります」
値段を聞いた龍君は学生用カバンから財布を取り出して払おうとしています。ここは私が。
龍君より私はお姉さんですし、いつも彼らに払ってもらっているのでお返しに払わせてくださいな。
「龍君、私が払うよ」
「大丈夫、俺が払うから」
「でも」
「いいの」
ああ……私の前に立って、払ってしまいました。貰っているお小遣いの中から出してくれるなんて。
彼が何か買いたいものがあった時に、今度代わりに買ってあげなくては。
「ありがとうね」
「気にしないで。姉さんが喜ぶんだったらいくらでも払うしね」
喜色満面な様子で、本当に嬉しそうですね。でも、無理しない程度にですよ。
あまりにも迫田家の兄弟達は純粋過ぎて、お姉さん心配になってきました。変な人に騙されないようにしてほしいですね。
「今度何か買いたいものがあったら言ってね?」
「ほんと、気にしなくても大丈夫なのに」
本当に買いたいものがあった時、買えなくなってしまいますよ。お友達も多いって龍君本人から聞いてますし。
ここだと邪魔になってしまいますね。少し横にずれて待っていましょうか。
「お待たせしましたー! ツナサラダとベリークリームですね!」
「ありがとうございます」
あ、どうしましょう、ペットボトルと鞄で両手が。と思ったら龍君が受け取ってくれました。
「お水、鞄に入れるまで待ってるよ」
「ありがと」
長く待たせるのも申し訳ないので、早く入れましょうかね。
焦っているせいかなかなか入りづらいですが。
「あ」
「おっと」
焦って手から滑り落ちてしまったペットボトルを、龍君は足のつま先で受け止めています。なんというバランス感覚。自然と感嘆の声が出てしまいました。
「ごめんね、足で受け止めちゃって」
「ううん、ありがとね」
焦りは禁物ですね。
それにしても、いつあんなことが出来るようになったのでしょうか。前会った時はとてもじゃないですけど、何かを2つ持ったら、よくバランスを崩していたことが多かったのに。
「はい、ベリークリーム。聞かずに勝手に頼んじゃったけど、大丈夫だった?」
「大丈夫よ。私がベリー系好きなのよく覚えてたね」
「まぁね」
鼻高々な顔をしていますね。自信満々なことは良いことですよ。行き過ぎるといけないですが。
座って食べる場所は、他の方が座っていてなさそうですね。少し行儀が悪いですが、食べながら帰りましょう。
「最近嫌なこととかなかった?」
「最近はないわ。けど、少し前にミサンガが切れちゃって。でも、竜之介お兄さんに代わりは貰ってるわ」
「そっか、なら良かった。兄さんが作るものって本当に力があるみたいだしね」
もしかしたら本当にお兄さんは力が持っているのかもしれません。それこそ神職や陰陽師の方たちのようなお力が。けれど、それをひけちらかさすようなことはせず、常にその内にひそめています。
「少しだけ食べていい?」
「どうぞ」
1年前と比べて随分と顔の位置が高くなった龍君の口元に持っていき、ほとんど口に入っていないのではないかと思うほどの量を食べました。食べたところはほとんど、クレープの皮だけでしたよ。
「もっと食べてもいいんだよ?」
「それだと、姉さんが食べる部分が無くなるし」
「大丈夫よ。ほら」
口についてしまうのではないかと心配になりましたが、その必要はなかったですね。戸惑いながらも恐る恐る口にし、目が少しずつ大きくなっています。よほどおいしかったんですね。
「食べた瞬間幸せが口の中に広がる感じ。凄い! 甘酸っぱいけど、そこまで酸味が強くないしクリームも甘すぎないからすげぇ好き!」
急に解説が始まったので驚いてしまいました。この1年で何があったんだろう。
私が驚いたことに気付いた龍君は顔を逸らし、また耳が真っ赤になっていた。
「ご、ごめん……。急にびっくりした、よね」
「すごく驚いた。昔は食べ物とか食べられたらそれでいいって言ってなかった?」
「うん。この1年でちょっと嗜好が変わってね。最近は料理とかするのが好きになってきたんだ」
恥ずかしそうに頬を指でかきながら、目を逸らしています。
「毎日作ってるの?」
「毎日じゃないけど、毎週土曜日は俺が作ったりしてるの。今度食べに来て。ふるまうよ」
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