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三男の話
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「あ、姉さん!」
いち早く見つけてものすごい勢いで近づいてきたのは、三男の龍君。
14歳になったばかりでこの年頃になると反抗期とかも出てくるころだと思うのですが、彼は真っ直ぐな性格のまま成長しています。ただ、
「怪しい人とかいなかった? どこかで怪我したりとかもしてない?」
とんでもないほど、心配性なんです。
「大丈夫だよ」
「それは良かった。姉さんに何かあったら俺倒れてしまうよ」
毎回会うたびにこう心配されるので、反対に私が心配してしまうほど。
それに、私が覚えている限りなのですが、確か彼が小学校一年生のころから何かあるたびに抱き着いてきていたので、私はとても心配です。
俗にいうシスコンというやつなのではないかと。
「迎えに来てくれてありがと」
「今日は部活はなかったの?」
「うん。今日からテスト前期間だから休めって」
誰も隣に立たせないと言わんばかりに、距離が近いです。
悪いことではないと思いますが、学校で変なこと言われていないか、とても心配なのです。
「そういえばこの前、動物園行ったって弐龍兄さんから聞いたけど、どうだったの?」
「驚きでいっぱいだったよ」
「癒された?」
「とてもね」
それは良かったと言いながら微笑み、また隣を歩いています。
時々、別の方向を見て、何かを追っ払っているような手の動きをしていますが、あれはなんなのでしょう。
「そういえば、急に鷹か鳶に襲われたって」
「直接ではなかったけど、あれはびっくりしたよ。弐龍君が会話みたいなことをしてたけど、何を話していたのかでは知らないんだけどね」
「兄さんがいうには、お腹が空いてたらしくて、人が食べる物を狙ってたって」
「そうだったの?」
よほど食べ物に困っていたんですね。
どうにかしようにも、飼うことは出来ないみたいで私にはどうしようも出来ません。
「多分だけど、お話してたんじゃないかな? ここには無いよって。兄さんはよく間違って人がいる場所に来ちゃった動物とそんな会話をいつもしてるから」
いつもということは、鳥以外とも話せるということでしょうか。
「弐龍君は凄いね」
「自慢の兄さんだよ。少し子供っぽいけどね」
思ってることは同じみたいですね。
「それでも俺は良いと思うよ。純粋だからこそ、動物とか赤ちゃんとかに警戒心を持たれずに会話出来るから」
確かに弐龍君は子供のように純粋で、常に真っ直ぐこちらを見てくることがあります。
そういえば、龍君や竜之介お兄さんも同じですね。お兄さんは芯が通った熱い目をする方。龍君は慈愛がこもった目。
迫田家の兄弟は全員そうなのかもしれません。
「姉さん、この先にクレープ売ってるみたいだよ」
「え、どこ?」
「ここを真っ直ぐ行った所」
急に龍君が言うので、その指差す方向を見ているのですが、まったく見えません。
匂いが漂ってきているのなら分かったりはするのですが、それすらもないです。
「こっち」
私の腕を掴んで、真っ直ぐ走っていく龍君。
少しだけ速度がありますが、それほど食べたいのでしょうか。
小走りで向かおうと動いた直後、どこかでガラスが割れる音が聞こえましたけど、手が滑って落としてしまったのでしょうね。
民家が近いですし。
「こっちだよ」
「りゅ、龍君、少しだけ速度を……!」
「あと少し頑張れる?」
「ど、どれ、くらい?」
「後、5メートルくらい」
眉を下げて、少しだけ速度を緩めてくれたけど、まだ速くて。息が。
「うん、これくらいなら大丈夫。ほら、あったよ、クレープ売ってるところ」
「す、すこしまって」
「お水いる?」
「ちょ、ちょうだい」
ここで待っててと言い、近くにある自動販売機に向かっていく龍君。私は近くのベンチで休んでおきましょうか。
「あ、そこ座っちゃダメ!」
「え?」
腰掛けようとしたところに龍君の声が聞こえ、中腰状態に。なんでダメなのでしょう。
「椅子の裏にペンキ塗りたてって書いてあったよ」
「あ、ほんとだ」
裏に張られたら分かるものも分からないですよ、まったく。
「反対側に座るとこあるみたいだし、そっち行こ」
買ったお水を片手に、私の腕を引きながら反対側へ。
「何食べる? イチゴとバナナ、あとツナもあるみたい」
ここにはペンキは塗られてないみたいですね。良かった。買ってもらったお水を貰い、一口飲んで少し落ち着きました。
それにしても、龍君はとても目がいいんですね。私も視力は悪い方ではないのですが、キッチングカーの受け渡しにある小さい黒板に書いてある字を読めるわけではありません。ここからだと何か書いてあるな程度です。
それをはっきりと見えているということは、
「私も一緒に行くよ」
「大丈夫? 少し休憩できた?」
「平気よ」
「それは良かった」
一息つくことが出来ましたし、並んで待ちましょうか。
いち早く見つけてものすごい勢いで近づいてきたのは、三男の龍君。
14歳になったばかりでこの年頃になると反抗期とかも出てくるころだと思うのですが、彼は真っ直ぐな性格のまま成長しています。ただ、
「怪しい人とかいなかった? どこかで怪我したりとかもしてない?」
とんでもないほど、心配性なんです。
「大丈夫だよ」
「それは良かった。姉さんに何かあったら俺倒れてしまうよ」
毎回会うたびにこう心配されるので、反対に私が心配してしまうほど。
それに、私が覚えている限りなのですが、確か彼が小学校一年生のころから何かあるたびに抱き着いてきていたので、私はとても心配です。
俗にいうシスコンというやつなのではないかと。
「迎えに来てくれてありがと」
「今日は部活はなかったの?」
「うん。今日からテスト前期間だから休めって」
誰も隣に立たせないと言わんばかりに、距離が近いです。
悪いことではないと思いますが、学校で変なこと言われていないか、とても心配なのです。
「そういえばこの前、動物園行ったって弐龍兄さんから聞いたけど、どうだったの?」
「驚きでいっぱいだったよ」
「癒された?」
「とてもね」
それは良かったと言いながら微笑み、また隣を歩いています。
時々、別の方向を見て、何かを追っ払っているような手の動きをしていますが、あれはなんなのでしょう。
「そういえば、急に鷹か鳶に襲われたって」
「直接ではなかったけど、あれはびっくりしたよ。弐龍君が会話みたいなことをしてたけど、何を話していたのかでは知らないんだけどね」
「兄さんがいうには、お腹が空いてたらしくて、人が食べる物を狙ってたって」
「そうだったの?」
よほど食べ物に困っていたんですね。
どうにかしようにも、飼うことは出来ないみたいで私にはどうしようも出来ません。
「多分だけど、お話してたんじゃないかな? ここには無いよって。兄さんはよく間違って人がいる場所に来ちゃった動物とそんな会話をいつもしてるから」
いつもということは、鳥以外とも話せるということでしょうか。
「弐龍君は凄いね」
「自慢の兄さんだよ。少し子供っぽいけどね」
思ってることは同じみたいですね。
「それでも俺は良いと思うよ。純粋だからこそ、動物とか赤ちゃんとかに警戒心を持たれずに会話出来るから」
確かに弐龍君は子供のように純粋で、常に真っ直ぐこちらを見てくることがあります。
そういえば、龍君や竜之介お兄さんも同じですね。お兄さんは芯が通った熱い目をする方。龍君は慈愛がこもった目。
迫田家の兄弟は全員そうなのかもしれません。
「姉さん、この先にクレープ売ってるみたいだよ」
「え、どこ?」
「ここを真っ直ぐ行った所」
急に龍君が言うので、その指差す方向を見ているのですが、まったく見えません。
匂いが漂ってきているのなら分かったりはするのですが、それすらもないです。
「こっち」
私の腕を掴んで、真っ直ぐ走っていく龍君。
少しだけ速度がありますが、それほど食べたいのでしょうか。
小走りで向かおうと動いた直後、どこかでガラスが割れる音が聞こえましたけど、手が滑って落としてしまったのでしょうね。
民家が近いですし。
「こっちだよ」
「りゅ、龍君、少しだけ速度を……!」
「あと少し頑張れる?」
「ど、どれ、くらい?」
「後、5メートルくらい」
眉を下げて、少しだけ速度を緩めてくれたけど、まだ速くて。息が。
「うん、これくらいなら大丈夫。ほら、あったよ、クレープ売ってるところ」
「す、すこしまって」
「お水いる?」
「ちょ、ちょうだい」
ここで待っててと言い、近くにある自動販売機に向かっていく龍君。私は近くのベンチで休んでおきましょうか。
「あ、そこ座っちゃダメ!」
「え?」
腰掛けようとしたところに龍君の声が聞こえ、中腰状態に。なんでダメなのでしょう。
「椅子の裏にペンキ塗りたてって書いてあったよ」
「あ、ほんとだ」
裏に張られたら分かるものも分からないですよ、まったく。
「反対側に座るとこあるみたいだし、そっち行こ」
買ったお水を片手に、私の腕を引きながら反対側へ。
「何食べる? イチゴとバナナ、あとツナもあるみたい」
ここにはペンキは塗られてないみたいですね。良かった。買ってもらったお水を貰い、一口飲んで少し落ち着きました。
それにしても、龍君はとても目がいいんですね。私も視力は悪い方ではないのですが、キッチングカーの受け渡しにある小さい黒板に書いてある字を読めるわけではありません。ここからだと何か書いてあるな程度です。
それをはっきりと見えているということは、
「私も一緒に行くよ」
「大丈夫? 少し休憩できた?」
「平気よ」
「それは良かった」
一息つくことが出来ましたし、並んで待ちましょうか。
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