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次男の話 2
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こうやって2人で出掛けることで初めて知れた事があって良かったなって思います。まさか弐龍君にあんな特技があったなんて。
「ばっばー」
もう少しで目的地のバス停に着きます。それは弐龍君も分かっているようで、赤ちゃんに向けて小さく手を降っていました。
言いやすいのだと、言葉にもしやすいんですね。
目的地近くのバス停に着いてお金を払い、そこから歩いて目的の場所へ。
「ぶちゅ」
「武術?」
「んな」
違うと首を横に振っています。キスした時の音とかでしょうか?
「ぶちゅえ」
ぶちゅえとはいったい。私も弐龍君の言葉が分かれば、スムーズに会話出来るのに。
「どぶちゅえ、たぁみ」
どうしましょう。何かを伝えたいのでしょうが、まったくわからないです。これからどう1日過ごしましょう。
「ゔぅ」
眉を下げて悲しそうです。動物園まではまだまだ距離があります。その間に何とか理解出来るようにならなくては。
「たいたい」
何故か急に頭を優しく撫でられました。悲しそうにしていたのは弐龍君のはずが、いつのまにか私がそんな顔をしていたようです。
『完全に理解しなくても大丈夫』
携帯を取り出したかと思ったら、文字の後にグッドと表現した顔文字付きの文章を見せてくれました。
「あぅま」
ニッコリと笑うと、早く行きたいのか、私の腕を掴んで動物園まで早歩きになりました。ただ、息が上がる程のではなく、時々私の方を振り返り、大丈夫?と言いたげに首を傾げています。私が大丈夫だと言えば、穏やかに笑い、また引っ張って目的地へと向かいました。
歩いて目的の動物園に着きました。土日だからなのか、親子連れや恋人同士で来ている人でごった返しています。迷子にならないようにしないと。
『会計は僕がするよ。だから人数とかお願い』
「大丈夫よ。お金は私が」
「ヴヴヴヴ」
「それはどんな声なの」
唇で鳴らしているのか喉で鳴らしているのか分からない声が、弐龍君から聞こえてきました。それが面白くて笑ってしまったら、弐龍君も赤ちゃんのように笑っています。
「入るまでしばらくかかりそうだね」
人が多すぎて入場口から行列が出来て入口が見えない程です。
「最初は何を見に行く?」
「がおー」
「ライオン?」
入口まではまだまだ遠いので、最初に何を見に行くかと聞くと、爪を立てて、猛獣の真似をしてきました。それが当たっていたようで、何度も頷いて足踏みしながら楽しそうにその場で一周回っています。弐龍君は体を動かすことで、今の気持ちを表現してるんですね。
「ゔぁ」
急に動きを止めたと思ったら、私をその場で半回転させて何かを凝視しているようです。何かついているのでしょうか? 今日はハーフアップにしているのですが、髪留めとかを見ているとか。
「かぁーい」
正面に戻ってくると、肩に手を起いて何か埃を払うかのような仕草をしてました。髪の事じゃなかった。恥ずかしい。
「ぅぶちゅ」
自信満々に頷いたのですが、なんのことでしょうか。頷いた後、また何かを凝視しています。
「ぴゃ!」
何かに驚いたようで、肩が跳ねて、目も瞑っています。手も反応してるので、何かが弐龍君に向かって飛び跳ねてきたのでしょうか。見た感じ何もないですが。
必至に取り払おうと、顔を何度も強く撫でていますが、何もついてないですよ。
「顔に何かついたの?」
「ぱいぱい!」
ぱ……。
「あぃやぁい」
先程言った言葉は一旦置いときましょう。頭の整理が追いつかないです。
取り払った何かに怒っているようです。地面を見ながら、足で同じ場所を何度も踏んで、まるで何かを潰しているかのようです。
「取れた?」
「う」
スッキリした顔で頷き、前を見ていると列が動き始めました。そろそろ開園のようですね。
「ライオン見たら次はどうする?」
「あぅー」
腕を掴んで、首を傾げています。初めて行く動物園だからか、どこに何があるか分からなくて迷っているようです。マップを入口で取ってから考えても良さそうですね。
「ぁじゃい」
「大人二名です」
受付の方に二人だと言っているのでしょうが、他から見るとピースサインをしているようにしか見えないようで、お姉さんが困っています。代わりに私が二人分を買いました。1200円は安いほうなのでしょうか? さっぱり分からなくて。
あ、そうだ。マップを取らないと。
「ライオンのところまでは遠いみたいだよ」
入場券を貰って、弐龍君は無くさないように透明なカードホルダーの中に入れて、首に下げています。それには龍が可愛らしく描かれているイラストが載っていました。龍が好きなのでしょうか。
「いぅ」
ものすごくショックを受けていますけど、それほどライオンとかが好きなのかな。
「ゆっくり見ていきましょ」
「ぅん……」
余程見たかったようです。
「ばっばー」
もう少しで目的地のバス停に着きます。それは弐龍君も分かっているようで、赤ちゃんに向けて小さく手を降っていました。
言いやすいのだと、言葉にもしやすいんですね。
目的地近くのバス停に着いてお金を払い、そこから歩いて目的の場所へ。
「ぶちゅ」
「武術?」
「んな」
違うと首を横に振っています。キスした時の音とかでしょうか?
「ぶちゅえ」
ぶちゅえとはいったい。私も弐龍君の言葉が分かれば、スムーズに会話出来るのに。
「どぶちゅえ、たぁみ」
どうしましょう。何かを伝えたいのでしょうが、まったくわからないです。これからどう1日過ごしましょう。
「ゔぅ」
眉を下げて悲しそうです。動物園まではまだまだ距離があります。その間に何とか理解出来るようにならなくては。
「たいたい」
何故か急に頭を優しく撫でられました。悲しそうにしていたのは弐龍君のはずが、いつのまにか私がそんな顔をしていたようです。
『完全に理解しなくても大丈夫』
携帯を取り出したかと思ったら、文字の後にグッドと表現した顔文字付きの文章を見せてくれました。
「あぅま」
ニッコリと笑うと、早く行きたいのか、私の腕を掴んで動物園まで早歩きになりました。ただ、息が上がる程のではなく、時々私の方を振り返り、大丈夫?と言いたげに首を傾げています。私が大丈夫だと言えば、穏やかに笑い、また引っ張って目的地へと向かいました。
歩いて目的の動物園に着きました。土日だからなのか、親子連れや恋人同士で来ている人でごった返しています。迷子にならないようにしないと。
『会計は僕がするよ。だから人数とかお願い』
「大丈夫よ。お金は私が」
「ヴヴヴヴ」
「それはどんな声なの」
唇で鳴らしているのか喉で鳴らしているのか分からない声が、弐龍君から聞こえてきました。それが面白くて笑ってしまったら、弐龍君も赤ちゃんのように笑っています。
「入るまでしばらくかかりそうだね」
人が多すぎて入場口から行列が出来て入口が見えない程です。
「最初は何を見に行く?」
「がおー」
「ライオン?」
入口まではまだまだ遠いので、最初に何を見に行くかと聞くと、爪を立てて、猛獣の真似をしてきました。それが当たっていたようで、何度も頷いて足踏みしながら楽しそうにその場で一周回っています。弐龍君は体を動かすことで、今の気持ちを表現してるんですね。
「ゔぁ」
急に動きを止めたと思ったら、私をその場で半回転させて何かを凝視しているようです。何かついているのでしょうか? 今日はハーフアップにしているのですが、髪留めとかを見ているとか。
「かぁーい」
正面に戻ってくると、肩に手を起いて何か埃を払うかのような仕草をしてました。髪の事じゃなかった。恥ずかしい。
「ぅぶちゅ」
自信満々に頷いたのですが、なんのことでしょうか。頷いた後、また何かを凝視しています。
「ぴゃ!」
何かに驚いたようで、肩が跳ねて、目も瞑っています。手も反応してるので、何かが弐龍君に向かって飛び跳ねてきたのでしょうか。見た感じ何もないですが。
必至に取り払おうと、顔を何度も強く撫でていますが、何もついてないですよ。
「顔に何かついたの?」
「ぱいぱい!」
ぱ……。
「あぃやぁい」
先程言った言葉は一旦置いときましょう。頭の整理が追いつかないです。
取り払った何かに怒っているようです。地面を見ながら、足で同じ場所を何度も踏んで、まるで何かを潰しているかのようです。
「取れた?」
「う」
スッキリした顔で頷き、前を見ていると列が動き始めました。そろそろ開園のようですね。
「ライオン見たら次はどうする?」
「あぅー」
腕を掴んで、首を傾げています。初めて行く動物園だからか、どこに何があるか分からなくて迷っているようです。マップを入口で取ってから考えても良さそうですね。
「ぁじゃい」
「大人二名です」
受付の方に二人だと言っているのでしょうが、他から見るとピースサインをしているようにしか見えないようで、お姉さんが困っています。代わりに私が二人分を買いました。1200円は安いほうなのでしょうか? さっぱり分からなくて。
あ、そうだ。マップを取らないと。
「ライオンのところまでは遠いみたいだよ」
入場券を貰って、弐龍君は無くさないように透明なカードホルダーの中に入れて、首に下げています。それには龍が可愛らしく描かれているイラストが載っていました。龍が好きなのでしょうか。
「いぅ」
ものすごくショックを受けていますけど、それほどライオンとかが好きなのかな。
「ゆっくり見ていきましょ」
「ぅん……」
余程見たかったようです。
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