【完】私の従兄弟達は独特です 

yasaca

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長男の話 3

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 それからしばらくお兄さんと会話を楽しみ、日々の事を多く話しました。日常にあった面白いことや辛いこと。学校であったこと。一日暮らす中で数分前まであったものがよく無くなってしまうこと。よく危険な目に遭うことが多くなってきていること。
 特に命に関わることを深く話しました。
 お祓いにも行ったのですが、住職さんになんともないと言われまして、どうしたらいいか分からず、今日お兄さんを頼ったというわけです。


「竜之介お兄さん、私とても辛いのです」
「そうであろうな……」
「どうにかすることって出来ないでしょうか?」


 お食事は終わり、会計もお兄さんがしてくれて、体の芯まで温かくなっていた場所から出るのは寂しいですが、そろそろ家に戻らなくては。両親がそろそろ心配している頃でしょうから。

 外は冬が近づいて来ているのかとても風が冷たいです。


「お主に護衛をつけようか」
「護衛、ですか?」


 お兄さんは簡単に言いますが、護衛の方々を一般人の私でも借りることは出来るのでしょうか? もし出来るとして、お金はどうするのでしょう。 バイトはしていますが、もし足りなかったら。


「手配は某がしておこう」
「お金は……」
「金の心配は無用ぞ。某の知り合いだ」


 知り合いだとしても雇うわけですから、どのみち必要なのではないでしょうか。


「竜之介お兄さん、ただと言うわけには」
「ふむ。お主がそう言うのであれば、金を払ってもよいし、何か他の物を渡してもよい」


 お金は聞いてからがよさそうですね。他の物といいますと、私が出来ることは料理だけ。その方がどんなものが好きなのかも分からない状態で作るとなると大変です。


「その方はどんなお料理が好きなのでしょうか?」
「主に肉である。ああ、少し変わっておるが、骨や肝なども好きだと言っておった」


 砂肝とかうなぎの肝でしょうか。鳥の肝はスーパーに売っていますし、今度スーパーに行ったとき探してみますか。ただ、うなぎの肝は見たことがないので取り寄せしないといけなさそうな気がします。
骨というのがどういうことか分からないのですが、世の中には変わった方もいますから、その方は好きなのでしょうね。


「冷えてきたの」
「はい」


 ご飯で温まった体はすっかりと冷えて人通りの少ない道を歩いていると、家の塀と塀の間から吹く冷たい風で少しだけ自分の体が震え、それを見ていたお兄さんが側に寄ってきてくれました。

 何故かは分からないのですが、お兄さんの近くにいると体がとても暖かくなるのです。昔、一度だけ手を触らせてもらったことがあるのですが、病気にかかってしまったのではと心配してしまうほど手が熱くなっていましたが、『病ではない』と言っておりました。お兄さんは後二年で成人ですし、子供体温というわけではないですが、とても不思議な方です。


「いつも暖かいですね」
「鍛えておるからかもしれぬな」


 鍛えていると体温が上がったりするのですね。私はあまり運動が得意ではないので、あまり動くことは無いですが、今度から少し試してみようかなと思います。


「さて、護衛の連絡は後日するゆえ、その日確認としよう」
「電話は誰が」
「某からいく。ただ話すのは護衛本人とだ」


 もう家の前にまでついてしまいました。もう少し会話したかったのですが、お兄さんも忙しい方。あまり時間を取るのも申し訳ないです。


「りゅ、竜之介お兄さん」
「なんぞ?」


 急に頭に手を置かれて心臓が飛び出るかと思いました。誰だって期待してしまうでしょう。尊敬している方から急に頭の上に手を持ってこられたら撫でてくれるのかな、と。


「期待しておったか」


 私の心の内を読んでいるかのように微笑みながら、優しくも武骨な温かい手で撫でてくれました。
 そういえばなのですが、世間で手が温かい人は心が冷たいだなんていわれることもありますが、私はそうとは思いません。だって、これほど温かくて優しい方はいませんもの。それに竜之介お兄さんが怒ったところを、今まで私は見たことがないのですから。


「ではまたの」
「はい」


 離れていくお兄さんに手を振り、家のドアに手をかけた時、何かを思い出したのか「あ」と声を上げてお兄さんが戻ってきました。どうしたのでしょう。


「渡すのを忘れておった。そら、これをやろう」
「ミサンガですか?」
「うむ。いつも手首にしておったのが無くなっていたゆえな」


 ちょうど欲しいと思ってたんです。前貰ったものはいつのまにか切れていて、どこかにいってしまっていて。実をいうと無くしてからずっと不安だったのですけど、貰ったことで空いた穴が埋まるかのようにホッと息が漏れてしまいました。


「達者に暮らすのだぞ」


 最後に少しだけ強めに頭を撫でてお兄さんはご自分の家に戻って行かれました。
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