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長男の話
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私の従兄弟の中に、変わった五人の兄弟います。その一人の内の長男と今日駅で待ち合わせ中です。
名前は迫田竜之介。何が変わっているかと言うと
「おーい、莉奈よ。ここじゃ」
「竜之介お兄さん」
「長旅疲れたであろう? 家に向かおうか」
お侍さんのような話し方をするのです。それにお馬さんのように後ろ髪を年中ポニーテールにしているのです。
「その前に、まずは腹拵えか?」
「そうですね。お腹が空きました」
「ならば、良い所がある」
私の手荷物以外を自然と持ってくれるお兄さん。それに、お侍さんが現代に来たような性格のお人で、私は自然と後ろに立たなくてはと思っていたのですが、お兄さんから『立たなくて良い』と言われてしまったので、今は隣を歩いています。
「ここは某が一等気に入りの食事処である」
「大丈夫です? ここ、他の方の家とかでは?」
駅から10分歩いて小道を抜けた所にある古民家に着きました。お食事処と竜之介お兄さんは言いましたが、看板も暖簾もないのです。ここは入っても大丈夫な場所なのでしょうか。不法侵入で訴えられてでもしたら、私にはどうしようもできません。
「なに、心配するな。所謂隠れ家と言われる場所だ」
「こんなところに……」
やはりどう見ても古民家にしか見えません。入口も木で出来たダークブラウンのドア。ドア枠には型板ガラスがついており、お兄さんがドアを開けると、そこから新しく出来たばかりの家の木の香りとお魚が焼けた香ばしい匂い。それに炭が焼けた音も聞こえてきます。
「竜之介君、いらっしゃい」
「今日も馳走になるぞ。後一人おるが良いか?」
「あら、珍しい。いらっしゃい初めましての方」
「おじゃまします」
お店の中はカウンター席が六つと畳の部屋が四つ。その個室は障子で一つ一つ区切られていました。外からは想像出来ない内装の豪華さに目を見張るばかりです。
「荷はここに置いても良いか?」
「ええ、どうぞ」
竜之介さんが入口の邪魔にならないところに私のキャリーケースを置き、女将さんと対面するかのようにカウンター席に座りましたが、私はどうすれば。
「竜之介お兄さん、私、作法は……」
「よいよい。ここは大目に見てくれる」
ここはもしかすると、とてつもなくお値段の高い日本料理店なのではないでしょうか。椅子も革細工で作られていますし、壁も漆喰でとても高級感漂う場所です。
「失礼します」
「竜之介君はいつもので?」
「うむ」
竜之介お兄さんは常連さんなんですね。『いつもの』が通じていて、どんなメニューが来るのか私にはまったく分かりません。
「そちらの方はどうされますか?」
「何があるか分からないので同じものをお願いします」
お兄さんのことですから、これぞ日本と思われる物を食べるのではないでしょうか。例えば魚料理とか。
「分かりました」
ここへ来て何分か経ちましたが、本当にお客さんが少ないのですね。竜之介お兄さんはどうやって見つけたのでしょうか?
「女将さん、いつものを頂戴」
静かな空気を破るかのように後ろにあるドアが勢いよく開き、少し驚いてしまいました。それを竜之介お兄さんに見られていて、微笑されてしまいました。お恥ずかしい。
「あら、圭さん。いらっしゃい。まずは席に座って下さいな」
「そうだったそうだった。おや、竜之介君が女性を連れてるとは珍しい」
「従姉妹じゃ」
筋骨隆々とはこの男性のことを言うのでしょうか。黒く短い髪に整えられたお髭。スーツを着ていますがはち切れそうです。
「初めましてお嬢さん。僕は葛城圭。よろしくね」
「白梅莉奈と申します」
会釈して顔を上げたら圭さんが驚いた顔をされていました。どうしたのでしょうか?
「とてもお上品で」
「そんな、私は……」
「自慢の従姉妹である。彼女と共におると心地が良いのでな」
竜之介お兄さんが目を細めて私を見ていらっしゃいます。恥ずかしさと自慢だと言ってくださったことで頬が熱くなってきました。
「彼女とお付き合いしないのかい?」
「某には既に意中の女性がいるのでな。卒業したら結納するつもりじゃ」
竜之介お兄さんの彼女の噂はかねがね聞いていましたが、本当だったのですね。どんな方なのでしょうか。清楚な方でしょうか。それとも可憐な方? お兄さんはとても真面目な方ですから、とてもお似合いなのでしょうね。
「それはおめでたい。今日は奢ろうか? 結納祝いで」
「いや、いつも世話になっておる故、気持ちだけで充分である」
「そうかそうか」
幸せそうに頷き、顔をほころばせた圭さんは、焼酎を頼んでいました。
「今日は飲まないのかい?」
「いつも飲んでおらぬぞ」
トクトクトクとおちょこに注ぐ心地いい音が静かな空間に響き、とても癒されますが匂いだけで酔いそうです。
「お待ちどおさま」
「これは」
名前は迫田竜之介。何が変わっているかと言うと
「おーい、莉奈よ。ここじゃ」
「竜之介お兄さん」
「長旅疲れたであろう? 家に向かおうか」
お侍さんのような話し方をするのです。それにお馬さんのように後ろ髪を年中ポニーテールにしているのです。
「その前に、まずは腹拵えか?」
「そうですね。お腹が空きました」
「ならば、良い所がある」
私の手荷物以外を自然と持ってくれるお兄さん。それに、お侍さんが現代に来たような性格のお人で、私は自然と後ろに立たなくてはと思っていたのですが、お兄さんから『立たなくて良い』と言われてしまったので、今は隣を歩いています。
「ここは某が一等気に入りの食事処である」
「大丈夫です? ここ、他の方の家とかでは?」
駅から10分歩いて小道を抜けた所にある古民家に着きました。お食事処と竜之介お兄さんは言いましたが、看板も暖簾もないのです。ここは入っても大丈夫な場所なのでしょうか。不法侵入で訴えられてでもしたら、私にはどうしようもできません。
「なに、心配するな。所謂隠れ家と言われる場所だ」
「こんなところに……」
やはりどう見ても古民家にしか見えません。入口も木で出来たダークブラウンのドア。ドア枠には型板ガラスがついており、お兄さんがドアを開けると、そこから新しく出来たばかりの家の木の香りとお魚が焼けた香ばしい匂い。それに炭が焼けた音も聞こえてきます。
「竜之介君、いらっしゃい」
「今日も馳走になるぞ。後一人おるが良いか?」
「あら、珍しい。いらっしゃい初めましての方」
「おじゃまします」
お店の中はカウンター席が六つと畳の部屋が四つ。その個室は障子で一つ一つ区切られていました。外からは想像出来ない内装の豪華さに目を見張るばかりです。
「荷はここに置いても良いか?」
「ええ、どうぞ」
竜之介さんが入口の邪魔にならないところに私のキャリーケースを置き、女将さんと対面するかのようにカウンター席に座りましたが、私はどうすれば。
「竜之介お兄さん、私、作法は……」
「よいよい。ここは大目に見てくれる」
ここはもしかすると、とてつもなくお値段の高い日本料理店なのではないでしょうか。椅子も革細工で作られていますし、壁も漆喰でとても高級感漂う場所です。
「失礼します」
「竜之介君はいつもので?」
「うむ」
竜之介お兄さんは常連さんなんですね。『いつもの』が通じていて、どんなメニューが来るのか私にはまったく分かりません。
「そちらの方はどうされますか?」
「何があるか分からないので同じものをお願いします」
お兄さんのことですから、これぞ日本と思われる物を食べるのではないでしょうか。例えば魚料理とか。
「分かりました」
ここへ来て何分か経ちましたが、本当にお客さんが少ないのですね。竜之介お兄さんはどうやって見つけたのでしょうか?
「女将さん、いつものを頂戴」
静かな空気を破るかのように後ろにあるドアが勢いよく開き、少し驚いてしまいました。それを竜之介お兄さんに見られていて、微笑されてしまいました。お恥ずかしい。
「あら、圭さん。いらっしゃい。まずは席に座って下さいな」
「そうだったそうだった。おや、竜之介君が女性を連れてるとは珍しい」
「従姉妹じゃ」
筋骨隆々とはこの男性のことを言うのでしょうか。黒く短い髪に整えられたお髭。スーツを着ていますがはち切れそうです。
「初めましてお嬢さん。僕は葛城圭。よろしくね」
「白梅莉奈と申します」
会釈して顔を上げたら圭さんが驚いた顔をされていました。どうしたのでしょうか?
「とてもお上品で」
「そんな、私は……」
「自慢の従姉妹である。彼女と共におると心地が良いのでな」
竜之介お兄さんが目を細めて私を見ていらっしゃいます。恥ずかしさと自慢だと言ってくださったことで頬が熱くなってきました。
「彼女とお付き合いしないのかい?」
「某には既に意中の女性がいるのでな。卒業したら結納するつもりじゃ」
竜之介お兄さんの彼女の噂はかねがね聞いていましたが、本当だったのですね。どんな方なのでしょうか。清楚な方でしょうか。それとも可憐な方? お兄さんはとても真面目な方ですから、とてもお似合いなのでしょうね。
「それはおめでたい。今日は奢ろうか? 結納祝いで」
「いや、いつも世話になっておる故、気持ちだけで充分である」
「そうかそうか」
幸せそうに頷き、顔をほころばせた圭さんは、焼酎を頼んでいました。
「今日は飲まないのかい?」
「いつも飲んでおらぬぞ」
トクトクトクとおちょこに注ぐ心地いい音が静かな空間に響き、とても癒されますが匂いだけで酔いそうです。
「お待ちどおさま」
「これは」
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