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最終章 変化
冒険記録46. 尋常ではない力
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「これはいったい何が……」
「地震が起きたのですよ」
「地震だと」
屋敷の廊下でヨシュアが意識を失った時に収まったが、その後は悲惨な状況になっていた。その原因を作ったことをアテリアは本人には伝えず、お願いという名のつぐないとして提案した。自身で起こしたことは自分でどうにかしなさいと遠まわしに。
「待て、知識をやるにしても私にも限度がある」
「ええ。ですから、私も間接的にですがあなたの手伝いをします」
ヨシュアに近づき、アテリアは彼の頭に手をかざす。彼の体が光り始めると同時に、頭を押さえて痛み出した。彼の頭の中にはとんでもなく多い情報が流し込まれている。常人で同じことをしたら頭が消し飛ぶほどの量が。それでも激しい頭痛で収まっているのは、彼はすでに半分人ではないからだ。
必要な情報を入れ終わったアテリアは手を離すと、ヨシュアは頭痛に耐えきれなくなったのか意識を飛ばし、滑り落ちそうになる。地面に頭を当てそうな彼のお腹側に手を伸ばして支え、ベッドに横たえさせた。
「よろしかったのですか? まだ彼は中途半端な存在で、しかも海賊です」
警備天使の1人が、この狭間からいなくなったヨシュアのことを危惧していた。自分たちの主が騙されることは無いが、海賊というものがどういった存在か知っているからこそ、裏切るようなことをするのではないかと。
「大丈夫ですよ。彼はしっかりと成し遂げてくれます。他の海賊たちなら託すようなことはしませんが、彼は約束を守る人間です。私もそこを好きになったのですから」
ヨシュアがいなくなったベッドの上に座ったまま、先程まで彼がいた場所の温もりを確かめるように何度も触れている。撫でる動作をしているアテリアは、恍惚とした表情でずっとベッドのシーツを見ていた。それを邪魔してはならないと警備天使たちは静かに消えていく。
「あ、起きた。良かった。ずっと眠ったままだったらどうしようかと」
目を開けたヨシュアを見下ろし、ほっとした表情をヘルニーが浮かべている。目が覚めたことを周りの者に伝えているヘルニーの様子をヨシュアは静かに見ていた。
「お前さん、人ではなかったんだな」
誰にも告げていなかったことを言われたヘルニーは目を見開いていたが、彼の目を見て納得していた。
「なんでわかったのって思ったけど、その目だったらそりゃ分かるよね」
「目? 私の目がなんだ? 深緑だろ?」
「ううん、今は紫だね」
彼が目を覚ました時、瞳が変わっていることに対し、なにも驚いていなかったのは今までと同じように見えていたからだ。ヘルニーに言われ、自分の目が変化していたことにようやく気付く。驚いて自分を見るものを探しているが、手持ちになかった。今ヨシュアの容姿を確認出来るのはヘルニーに教えてもらうこと以外ない。
「……あのときのか」
「一体誰が」とヨシュアは言いかけたが、こうなった原因に心当たりがあった。頭痛で気絶する前にアテリアにお願いされ、頭に手をかざしていた。その時に目の色も変わったのだろう。もし、ヨシュアが眠る前に目が変わっていたらすぐ誰かが言っていた。
「アテリア様に会ってきたの?」
「強制的に会わされたがな」
「ああ」
ため息をつきながら起き上がるヨシュア。彼がいうことに思い当たる節がヘルニーにもあるのだろう。納得した声を出し、街を見つめるヨシュアの隣に並ぶ。街では今も救助活動が行われている。
「柄でもないことはしたくはないのだが、お願いされてしまってはやるしかあるまい」
街へ向かうヨシュアに慌てたヘルニーはメイドたちに救助しに行くことをと伝え、彼を追いかけていく。
街へと向かっている2人だが、ヨシュアの走る速度は人の域を超え、救助していた人たちはあまりにも早く走り去っていくヨシュアに驚いて固まり、走っているヨシュア本人も目をかっぴらいて自分の足元を見ている。驚くのも無理はないだろう。ヨシュアが出している速度は馬が全力で走っている時と同じくらいなのだから。
彼の足はもつれかけるも、建物の壁に手を当ててなんとか止めることが出来た。
「だ、大丈夫?」
「なんとかな。……すまんが、これ抜くの手伝ってくれないか? 抜けん」
「う、うん」
早く走りすぎた体を止めるために手を当てていたが、勢いあまりすぎてヨシュアの手は壁の向こう側に貫通している。抜こうと壁に足を当てて体を後ろに引いているが、一向に抜けなかった。
「痛くないの?」
「よく分からんのだが、痛みはない」
追いついたヘルニーがヨシュアの服を引っ張りながら手の心配をしていた。壁で開いた穴で腕が擦れれば痛いはずなのだが、ヨシュアは痛がっていない。一向に抜けないことにしびれを切らしたヨシュアは壁に背を向け、背負い投げをするような体制になる。体を後ろに引くよりも、前に体を持っていく方がいいと判断しての行動だった。
「それ大丈夫?」
「分からんが、やるしかない」
後ろに引っ張るよりかは効果はあった。開いている穴から亀裂が走り、パラパラと砂が降ってくる。
「あ……」
あっさりとヨシュアの手は抜けたのだが、勢いが強すぎて建物は崩壊した。
「地震が起きたのですよ」
「地震だと」
屋敷の廊下でヨシュアが意識を失った時に収まったが、その後は悲惨な状況になっていた。その原因を作ったことをアテリアは本人には伝えず、お願いという名のつぐないとして提案した。自身で起こしたことは自分でどうにかしなさいと遠まわしに。
「待て、知識をやるにしても私にも限度がある」
「ええ。ですから、私も間接的にですがあなたの手伝いをします」
ヨシュアに近づき、アテリアは彼の頭に手をかざす。彼の体が光り始めると同時に、頭を押さえて痛み出した。彼の頭の中にはとんでもなく多い情報が流し込まれている。常人で同じことをしたら頭が消し飛ぶほどの量が。それでも激しい頭痛で収まっているのは、彼はすでに半分人ではないからだ。
必要な情報を入れ終わったアテリアは手を離すと、ヨシュアは頭痛に耐えきれなくなったのか意識を飛ばし、滑り落ちそうになる。地面に頭を当てそうな彼のお腹側に手を伸ばして支え、ベッドに横たえさせた。
「よろしかったのですか? まだ彼は中途半端な存在で、しかも海賊です」
警備天使の1人が、この狭間からいなくなったヨシュアのことを危惧していた。自分たちの主が騙されることは無いが、海賊というものがどういった存在か知っているからこそ、裏切るようなことをするのではないかと。
「大丈夫ですよ。彼はしっかりと成し遂げてくれます。他の海賊たちなら託すようなことはしませんが、彼は約束を守る人間です。私もそこを好きになったのですから」
ヨシュアがいなくなったベッドの上に座ったまま、先程まで彼がいた場所の温もりを確かめるように何度も触れている。撫でる動作をしているアテリアは、恍惚とした表情でずっとベッドのシーツを見ていた。それを邪魔してはならないと警備天使たちは静かに消えていく。
「あ、起きた。良かった。ずっと眠ったままだったらどうしようかと」
目を開けたヨシュアを見下ろし、ほっとした表情をヘルニーが浮かべている。目が覚めたことを周りの者に伝えているヘルニーの様子をヨシュアは静かに見ていた。
「お前さん、人ではなかったんだな」
誰にも告げていなかったことを言われたヘルニーは目を見開いていたが、彼の目を見て納得していた。
「なんでわかったのって思ったけど、その目だったらそりゃ分かるよね」
「目? 私の目がなんだ? 深緑だろ?」
「ううん、今は紫だね」
彼が目を覚ました時、瞳が変わっていることに対し、なにも驚いていなかったのは今までと同じように見えていたからだ。ヘルニーに言われ、自分の目が変化していたことにようやく気付く。驚いて自分を見るものを探しているが、手持ちになかった。今ヨシュアの容姿を確認出来るのはヘルニーに教えてもらうこと以外ない。
「……あのときのか」
「一体誰が」とヨシュアは言いかけたが、こうなった原因に心当たりがあった。頭痛で気絶する前にアテリアにお願いされ、頭に手をかざしていた。その時に目の色も変わったのだろう。もし、ヨシュアが眠る前に目が変わっていたらすぐ誰かが言っていた。
「アテリア様に会ってきたの?」
「強制的に会わされたがな」
「ああ」
ため息をつきながら起き上がるヨシュア。彼がいうことに思い当たる節がヘルニーにもあるのだろう。納得した声を出し、街を見つめるヨシュアの隣に並ぶ。街では今も救助活動が行われている。
「柄でもないことはしたくはないのだが、お願いされてしまってはやるしかあるまい」
街へ向かうヨシュアに慌てたヘルニーはメイドたちに救助しに行くことをと伝え、彼を追いかけていく。
街へと向かっている2人だが、ヨシュアの走る速度は人の域を超え、救助していた人たちはあまりにも早く走り去っていくヨシュアに驚いて固まり、走っているヨシュア本人も目をかっぴらいて自分の足元を見ている。驚くのも無理はないだろう。ヨシュアが出している速度は馬が全力で走っている時と同じくらいなのだから。
彼の足はもつれかけるも、建物の壁に手を当ててなんとか止めることが出来た。
「だ、大丈夫?」
「なんとかな。……すまんが、これ抜くの手伝ってくれないか? 抜けん」
「う、うん」
早く走りすぎた体を止めるために手を当てていたが、勢いあまりすぎてヨシュアの手は壁の向こう側に貫通している。抜こうと壁に足を当てて体を後ろに引いているが、一向に抜けなかった。
「痛くないの?」
「よく分からんのだが、痛みはない」
追いついたヘルニーがヨシュアの服を引っ張りながら手の心配をしていた。壁で開いた穴で腕が擦れれば痛いはずなのだが、ヨシュアは痛がっていない。一向に抜けないことにしびれを切らしたヨシュアは壁に背を向け、背負い投げをするような体制になる。体を後ろに引くよりも、前に体を持っていく方がいいと判断しての行動だった。
「それ大丈夫?」
「分からんが、やるしかない」
後ろに引っ張るよりかは効果はあった。開いている穴から亀裂が走り、パラパラと砂が降ってくる。
「あ……」
あっさりとヨシュアの手は抜けたのだが、勢いが強すぎて建物は崩壊した。
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