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最終章 変化

※読む際は注意してください 冒険記録44. 悲惨

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 略奪や殺人で悪名をとどろかせ、人から怖がられることはあっても、初対面のメイドたちに怖がられるようなことをヨシュアは何もしていない。予想外のことにまた放心状態になっていた。何故だと呟きながら。

「こんなの……」

 恩には恩を返すをモットーにしているヨシュアにとって、先程のメイドたちの行動は予想だにしていないし、納得もしていないものだった。

「こんなの望んじゃいねぇんだよ」

 頭を抱え、項垂うなだれる。ヨシュアが言葉を吐き出すたびに壁にひびが入り、窓がガタガタと揺れ始め、次第にそれは激しさを増していく。ひびが入った壁から崩れていき、窓ガラスが割れ、屋敷の中にいる者達の悲鳴がいろいろなところから聞こえてくる。1番近いのはヨシュア達が向かっていたダイニングだ。何事かと揺れで歪んだドアを魔法で壊してきたガルーラが廊下に出てくると、壁に手を付いて倒れないようにしているヘルニーと目が合った。

「何事じゃ」
「うん、ちょっとね……」

 問いかけに答えながら、ヘルニーは頭を抱えて俯いているヨシュアを見る。先程まで意味のある言葉を話していたが、今では彼が異世界に来て学んだ言葉でも、彼の母国の言葉でもないものを口にしていた。
 流れるようにヨシュアを見るガルーラは目を見開き、もう一度ヘルニー見る。何も聞かず、今どういう状況か察したのだろう。そして、この揺れはヨシュアが出しているものだとわかったのだろう。

「僕がどうにかしたいんだけど、こうやって体を支えているのが限界でさ。彼を眠らせることできる?」
「うむ」

 揺れが激しくなっていく中、杖で自身を支えながら言葉を発し、杖の先が青く光ると、その光はヨシュアに向かっていく。ゆっくり動きながら近付いていくが、もう少しでヨシュアに触れそうになった瞬間、ぱちんと弾けた。驚くヘルニーとガルーラ。お互い目を合わせている。

「解除された?」
「いや、彼に吸収されたのじゃ」
「そんなことある?」
「わしも初めてじゃわい」

 どうするべきかと悩んでいる間にも揺れはどんどん強くなり、建物が崩壊し始めている。2人とも立っていられないほどだ。床に座り込みながらも、ヨシュアを再度眠らそうとしているが効果はなく、このままここにいては天井が落ちてきて三人とも押しつぶされてしまう。
 隠している力をヘルニーが使おうとヨシュアに手を向けたそのとき、彼の体にある模様が青く光り、膝をついて倒れた。

「助かったぞ」
「僕なんもしてない……」

 揺れていた時の感覚が抜けきっていないのか、2人ともふらふらと立ち上がり、倒れているヨシュアを見る。

「これは前からあったことなのかの?」
「ううん。今日がはじめて」

 顔を見合わせ、とりあえず避難することにした2人は、ヨシュアを抱えながら玄関へと向かう。その間にメイドたちが無事かどうかを確認しながら。出口へ向かう最中も、天井からは砂がパラパラと降っている。いつ崩壊してもおかしくはないだろう。
 屋敷に居た者達全員の安否を確認し、外を見渡すと、屋敷以外にも建物がいくつか崩れ、悲鳴があちこちから聞こえてくる。一部では火も上がっていた。

「これは……」

 あまりもの惨状に言葉が出ないガルーラ。魔法を使える者が水を出して消火活動を行ったり、建物の中に取り残された者達の救助に取り掛かっている。恐る恐る後ろを振り返ったガルーラは、この惨状を作り出したヨシュアを見て、目を不安そうに揺らしている。当の本人はまだ眠っていた。

「ガルーラ様」
「街へ行って救助をした方がよいかもしれぬな」

 執事の一人がガルーラに近づく。彼の言葉を聞き、無言のまま頷いた後、執事はメイドたちに指示を出し始めた。ガルーラ含めた数名が街に救助しにいき、ヘルニーはヨシュアの近くにいた。彼が目が覚めた時、街で起きた現状にまた動揺し、揺れを起こしかねないからだ。

「あまりにもあの力は彼には大きすぎたかもしれません、創造主様」

 安全を確かめながら屋敷の中に入り、毛布を取りに行くメイドたちを見ながら女神にヘルニーは問いかけた。

「あの、そこで横たわっている彼は……」
「大丈夫だよ。ただ、さっきの揺れでびっくりして頭を打って気絶しちゃっただけだから」
「怪我は?」
「さっき見たけど、どこも怪我してなかったよ」

 まだヨシュアが怖いのか、距離を取りながらいつまでも起きない彼を心配したメイドが、揺れで割れていなかったポーション入りの篭を持ちながらヘルニーに問いかける。空を見上げていたヘルニーがメイドに自分の現状とヨシュアの状況を伝えた。どちらも怪我はないと知ると、2人から離れていき、軽傷を負った者の近くへと走り寄っていく。
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