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第3章 魔法使い
冒険記録40. 食事と酒の味
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残り1本をアルヴァーノの目の前に出し、自分のを背に隠した。1本じゃ足りないのだろう。ヨシュアの分の2本を狙っている。
ヨシュアにとって、野菜と肉が同時に食べられるものは貴重なものだ。いくらアルヴァーノが好きであってもこれだけは渡せない。しばらく露店の前で攻防が続く。
長引く戦いにアルヴァーノは作戦に出た。目を細めてヨシュアに頭をすり寄せてきたのだ。甘え攻撃で貰おうとしている。
「……それをやられてもこれはやらんぞ」
甘える愛馬に、差し出しそうになるがなんとか踏みとどまっているヨシュア。言葉での会話は出来ないが、ちょうだいという声の幻聴が聞こえてきそうなほど擦り寄る愛馬に、彼は負けそうになる。
「平等にだぞ、アルヴァーノ」
じりじりと交代するヨシュアに甘えたような声を出しながら近付くアルヴァーノ。数分間攻防が続くが、根負け勝負でヨシュアが負け、自分の分を2本ともあげた。さすがに4本食べることはなく、ヨシュアは愛馬が食べなかった分を食べた。
「……お前さんが幸せならそれでいいさ。飢えには慣れているしな」
嬉しそうなアルヴァーノの隣で明らかにヨシュアは落ち込んでいた。溜息をつき、肩を落としている。言葉ではああ言っているが、彼のお腹からは空腹を知らせる音が鳴っている。
「……何か食うかの?」
「今じゃなくていいが、後で酒と飯を食わせてくれ。それでチャラだ」
先程の事があまりにも哀れだと思ったガルーラが奢ると約束し、とりあえず露店の前から離れることにした。
もう日は暮れかけている。怪我は治ったとは言っても、ヨシュアの体はまだ本調子ではない。港からここまで歩き続け、すでに体力は底をつきそうだった。それはアルヴァーノとヘルニーも同様だ。宿と食事処が一緒になっている所を探すも、なかなか見つからず、ひとまず食事だけをすることに。
この街の事をよく知っているというガルーラに任せ、大通りから少し離れた小道を歩いていくと、こじんまりとした木造建ての食堂がある。
「お主が満足するかは分からんが、ここの酒は美味いぞ」
「ここ次第だな」
ヨシュア達以外のお客はいない。アルヴァーノが入ってきたことで最初は驚かれていたが、ガルーラが暴れるようなことは無いと説得してくれ、それなら中にいてもいいとのことになる。ヨシュアもそれには賛成した。外に置いていて、どこかに連れ去られるのは困る」といっていた。
席に着き、ガルーラの奢りで食べられるということを知り、遠慮なく食べ物と酒を頼むヨシュア。持ってきたのはジョッキになみなみと注がれているラム酒に、小鹿をまるまる使った肉料理。肉の周りにはジャガイモがのせられている。
「じゃあ早速」
喉の渇きを癒すためにヨシュアは先にラム酒に手を伸ばす。一滴も溢さないように慎重に持ち上げ、口元に近づけると一気に飲み干した。彼の喉からゴクゴクと音が聞こえる。
「ッハァー」
喉を潤せた喜びに満たされた顔になるかと思われたが、彼の顔は不満そうに眉を顰めるだけだ。彼が知っているラム酒なのだが、どうにも納得がいかないのか、首まで傾げていた。その顔を見たガルーラがどうしたのかと聞いてくる。
「確かにラム酒なんだが、酒の味がしない」
「いったいどういうこと?」
「ただ味が濃いだけの飲み物にしか感じない」
木のジョッキを凝視しているヨシュア。この現象はジュリーと朝食を食べに、酒場に行った時と同じだった。酔いに強くなったかどうかは今の段階では不明だろう。確認のためにヨシュアはもう一杯を頼み、来たものを飲み干したが変わらなかったようだ。
「もっと酔えるものはないのか? これよりも酔いやすい酒だ」
「あることにはあるが、喉が焼けちまうよ」
「それでいい」
心配そうに聞いてくる店主の言葉に、慣れているから平気だとヨシュアは返し、持ってくる間に肉を切って食べていた。店主以外でもガルーラとヘルニーが心配そうに彼の顔を見つめている。2人からじっと見られ、居心地が悪くなったのか、食べているものを飲みこんで片眉を上げている
「なんだ」
「いつぐらいからそうなったの?」
肉を切り取り、ジャガイモをとって食べている。ジャガイモはただ焼いているだけで、味付けはされていないのだろう。
「おじょーちゃんのところに居た時からだな」
「おじょーちゃん?」
「ジュリー・マクシーラ・アニス」
呟いたその名に、ヨシュアとアルヴァーノ以外の手から食器が滑り落ち、音が店の中で響き渡る。
ヨシュアにとって、野菜と肉が同時に食べられるものは貴重なものだ。いくらアルヴァーノが好きであってもこれだけは渡せない。しばらく露店の前で攻防が続く。
長引く戦いにアルヴァーノは作戦に出た。目を細めてヨシュアに頭をすり寄せてきたのだ。甘え攻撃で貰おうとしている。
「……それをやられてもこれはやらんぞ」
甘える愛馬に、差し出しそうになるがなんとか踏みとどまっているヨシュア。言葉での会話は出来ないが、ちょうだいという声の幻聴が聞こえてきそうなほど擦り寄る愛馬に、彼は負けそうになる。
「平等にだぞ、アルヴァーノ」
じりじりと交代するヨシュアに甘えたような声を出しながら近付くアルヴァーノ。数分間攻防が続くが、根負け勝負でヨシュアが負け、自分の分を2本ともあげた。さすがに4本食べることはなく、ヨシュアは愛馬が食べなかった分を食べた。
「……お前さんが幸せならそれでいいさ。飢えには慣れているしな」
嬉しそうなアルヴァーノの隣で明らかにヨシュアは落ち込んでいた。溜息をつき、肩を落としている。言葉ではああ言っているが、彼のお腹からは空腹を知らせる音が鳴っている。
「……何か食うかの?」
「今じゃなくていいが、後で酒と飯を食わせてくれ。それでチャラだ」
先程の事があまりにも哀れだと思ったガルーラが奢ると約束し、とりあえず露店の前から離れることにした。
もう日は暮れかけている。怪我は治ったとは言っても、ヨシュアの体はまだ本調子ではない。港からここまで歩き続け、すでに体力は底をつきそうだった。それはアルヴァーノとヘルニーも同様だ。宿と食事処が一緒になっている所を探すも、なかなか見つからず、ひとまず食事だけをすることに。
この街の事をよく知っているというガルーラに任せ、大通りから少し離れた小道を歩いていくと、こじんまりとした木造建ての食堂がある。
「お主が満足するかは分からんが、ここの酒は美味いぞ」
「ここ次第だな」
ヨシュア達以外のお客はいない。アルヴァーノが入ってきたことで最初は驚かれていたが、ガルーラが暴れるようなことは無いと説得してくれ、それなら中にいてもいいとのことになる。ヨシュアもそれには賛成した。外に置いていて、どこかに連れ去られるのは困る」といっていた。
席に着き、ガルーラの奢りで食べられるということを知り、遠慮なく食べ物と酒を頼むヨシュア。持ってきたのはジョッキになみなみと注がれているラム酒に、小鹿をまるまる使った肉料理。肉の周りにはジャガイモがのせられている。
「じゃあ早速」
喉の渇きを癒すためにヨシュアは先にラム酒に手を伸ばす。一滴も溢さないように慎重に持ち上げ、口元に近づけると一気に飲み干した。彼の喉からゴクゴクと音が聞こえる。
「ッハァー」
喉を潤せた喜びに満たされた顔になるかと思われたが、彼の顔は不満そうに眉を顰めるだけだ。彼が知っているラム酒なのだが、どうにも納得がいかないのか、首まで傾げていた。その顔を見たガルーラがどうしたのかと聞いてくる。
「確かにラム酒なんだが、酒の味がしない」
「いったいどういうこと?」
「ただ味が濃いだけの飲み物にしか感じない」
木のジョッキを凝視しているヨシュア。この現象はジュリーと朝食を食べに、酒場に行った時と同じだった。酔いに強くなったかどうかは今の段階では不明だろう。確認のためにヨシュアはもう一杯を頼み、来たものを飲み干したが変わらなかったようだ。
「もっと酔えるものはないのか? これよりも酔いやすい酒だ」
「あることにはあるが、喉が焼けちまうよ」
「それでいい」
心配そうに聞いてくる店主の言葉に、慣れているから平気だとヨシュアは返し、持ってくる間に肉を切って食べていた。店主以外でもガルーラとヘルニーが心配そうに彼の顔を見つめている。2人からじっと見られ、居心地が悪くなったのか、食べているものを飲みこんで片眉を上げている
「なんだ」
「いつぐらいからそうなったの?」
肉を切り取り、ジャガイモをとって食べている。ジャガイモはただ焼いているだけで、味付けはされていないのだろう。
「おじょーちゃんのところに居た時からだな」
「おじょーちゃん?」
「ジュリー・マクシーラ・アニス」
呟いたその名に、ヨシュアとアルヴァーノ以外の手から食器が滑り落ち、音が店の中で響き渡る。
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