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第3章 魔法使い
冒険記録38 謎のじいさん
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欠伸をしながらゆっくりヨシュアが歩いていると、若い男が悲鳴を上げる声と地面に崩れ落ちる音が聞こえた。ヨシュアが辿り着いた時、ヘルニーが4人のうちの1人に飛び蹴りをして、それが顔の正面に足が当たり、吹き飛ばされていた音だった。
「あーあ、そりゃ痛いな」
追いついたヨシュアの声に驚く若い男達。一瞬でもヨシュアに意識を向けた男たちは、ヘルニーによって気絶させられた。どれも顔に向けて蹴っていたが。
「お前さんも結構えぐいことするよな。顔って」
「背中とかじゃ気絶しないんだもん」
荷物を持ち、杖を突いている年老いた男を放って言い合いをする2人。その間を撫でてと言わんばかりにアルヴァーノが首を割り込ませてきた。一瞬驚くも、ヨシュアは愛馬の頭を撫でた。
「その馬はペリルじゃな?」
「なんだ、じいさんもこいつを捕まえる気か?」
「いやいや。そんな恐ろしいことはせんよ」
睨み、カットラスの柄に手を添えるヨシュア。ほっほっほと笑いながら、手のひらをヨシュアに向けてヒラヒラと横に動かす年老いた男は、2人に近づいた。
「随分と懐いているようじゃの。それ同様にお主もその馬に愛情を与えておるようじゃ」
「分かるのか」
「うむ。これでも70近く生きておるからの」
「その割にはしっかりしてんな」
近づいてきて、愛馬の鼻近くにしわくちゃの手を差し伸べた。警戒していたものの、匂いを嗅いで自分にもヨシュアにも危害を加えない人なのだと分かったアルヴァーノが他人に撫でられる事を了承した。
「……珍しいこともあるもんだな」
「そういうお主も……」
素直に甘えている愛馬にヨシュアは驚いている。何を言うかと言わんばかりにヨシュアの方を年老いた男は見たが、途中で言葉を止めた。その事に不思議そうに首を傾げるヨシュア。
「なんだ、じいさん」
「お主気付いておらんのか?」
見開いてヨシュアを見つめている。
「何がだ」
「……言ってはならんようじゃの」
なんの事かさっぱり分からないヨシュアは目の前にいる人物に問いかけたが、年老いた男はヨシュアの中に何かを見たのだろう。言おうと開けていた口を閉じてしまった。
「名を言い忘れておったわ。わしはガルーラという。お主達は?」
「……ヨシュア」
「ヘル二ーっていうんだよ。よろしくね!」
怪訝な顔をしながらもお互いに自己紹介をしあった。ヨシュアが何を言いたいのか分かった年老いた男、改めガルーラは自分で気づかなければ意味がないと意味深なことを言い、更に疑問が増えるヨシュアだった。
「うむ。そしてこの子は」
「アルヴァーノだ」
「ふむふむ、夕焼けか。似合っておるの」
慈愛のこもった目でガルーラはよしよしと優しくアルヴァーノの背を撫でつつ、ついでに絡まった髪を解していた。その様子を見ていたヨシュアは嫉妬しているのか、眉頭を真ん中に寄せている。
「じいさん、言っておくがアルヴァーノは私のだからな」
「分かっておるわい」
愛馬に近づたヨシュアはガルーラから引き離し、その行動を見た彼は笑ってアルヴァーノのそばから離れた。
「ところで、なんでこんなところでこいつらに絡まれてたんだ」
気絶して倒れている若い男たちを見下ろしながらヨシュアは疑問を投げかけた。70年近く生きているにも関わらず言葉もはっきりしていて、背筋も曲がっていない。そんなパワフルな男が絡まれていた理由は、ヨシュア達が近くにいたからだという。ここからでは先程彼らがいたところは見えない。それにも関わらず助けを待っていたというガルーラに疑うような目で見るヨシュア。
「私たちでさえあんたがいる場所が見えてなかったのに、何故」
「秘密じゃ」
「謎ばかりだな、じいさん」
「多い方がよかろう?」
口角を上げて楽しんでいるガルーラに、謎は冒険だけで十分だとため息をつきながらヨシュアは言い、まだ気絶している者達の近くに寄っていく。そこではヘルニーが1人1人に逃げられないよう縄で縛っていた。
「武器を隠してないか確認したか?」
「あ、そうだった」
3人目を縛っている途中で止め、若い男たちの服の上から手を当てて探している。服ではない物に手が当たると、ヘル二ーは次々と取り出していた。その中には、小さい瓶に詰まった毒々しい緑色の液体や短刀が出てくる。さすがに瓶は投げられないのか、近くに置いていた。
「うげっ」
黄色い花の花粉を吸って、幻覚を見ていた時に解毒剤として飲まされていたものを思い出したのか、ヨシュアが眉をひそめ、口角を下げている。あの色は紫色だったが、小瓶に入れられている物で連想してしまったのだろう。
「あーあ、そりゃ痛いな」
追いついたヨシュアの声に驚く若い男達。一瞬でもヨシュアに意識を向けた男たちは、ヘルニーによって気絶させられた。どれも顔に向けて蹴っていたが。
「お前さんも結構えぐいことするよな。顔って」
「背中とかじゃ気絶しないんだもん」
荷物を持ち、杖を突いている年老いた男を放って言い合いをする2人。その間を撫でてと言わんばかりにアルヴァーノが首を割り込ませてきた。一瞬驚くも、ヨシュアは愛馬の頭を撫でた。
「その馬はペリルじゃな?」
「なんだ、じいさんもこいつを捕まえる気か?」
「いやいや。そんな恐ろしいことはせんよ」
睨み、カットラスの柄に手を添えるヨシュア。ほっほっほと笑いながら、手のひらをヨシュアに向けてヒラヒラと横に動かす年老いた男は、2人に近づいた。
「随分と懐いているようじゃの。それ同様にお主もその馬に愛情を与えておるようじゃ」
「分かるのか」
「うむ。これでも70近く生きておるからの」
「その割にはしっかりしてんな」
近づいてきて、愛馬の鼻近くにしわくちゃの手を差し伸べた。警戒していたものの、匂いを嗅いで自分にもヨシュアにも危害を加えない人なのだと分かったアルヴァーノが他人に撫でられる事を了承した。
「……珍しいこともあるもんだな」
「そういうお主も……」
素直に甘えている愛馬にヨシュアは驚いている。何を言うかと言わんばかりにヨシュアの方を年老いた男は見たが、途中で言葉を止めた。その事に不思議そうに首を傾げるヨシュア。
「なんだ、じいさん」
「お主気付いておらんのか?」
見開いてヨシュアを見つめている。
「何がだ」
「……言ってはならんようじゃの」
なんの事かさっぱり分からないヨシュアは目の前にいる人物に問いかけたが、年老いた男はヨシュアの中に何かを見たのだろう。言おうと開けていた口を閉じてしまった。
「名を言い忘れておったわ。わしはガルーラという。お主達は?」
「……ヨシュア」
「ヘル二ーっていうんだよ。よろしくね!」
怪訝な顔をしながらもお互いに自己紹介をしあった。ヨシュアが何を言いたいのか分かった年老いた男、改めガルーラは自分で気づかなければ意味がないと意味深なことを言い、更に疑問が増えるヨシュアだった。
「うむ。そしてこの子は」
「アルヴァーノだ」
「ふむふむ、夕焼けか。似合っておるの」
慈愛のこもった目でガルーラはよしよしと優しくアルヴァーノの背を撫でつつ、ついでに絡まった髪を解していた。その様子を見ていたヨシュアは嫉妬しているのか、眉頭を真ん中に寄せている。
「じいさん、言っておくがアルヴァーノは私のだからな」
「分かっておるわい」
愛馬に近づたヨシュアはガルーラから引き離し、その行動を見た彼は笑ってアルヴァーノのそばから離れた。
「ところで、なんでこんなところでこいつらに絡まれてたんだ」
気絶して倒れている若い男たちを見下ろしながらヨシュアは疑問を投げかけた。70年近く生きているにも関わらず言葉もはっきりしていて、背筋も曲がっていない。そんなパワフルな男が絡まれていた理由は、ヨシュア達が近くにいたからだという。ここからでは先程彼らがいたところは見えない。それにも関わらず助けを待っていたというガルーラに疑うような目で見るヨシュア。
「私たちでさえあんたがいる場所が見えてなかったのに、何故」
「秘密じゃ」
「謎ばかりだな、じいさん」
「多い方がよかろう?」
口角を上げて楽しんでいるガルーラに、謎は冒険だけで十分だとため息をつきながらヨシュアは言い、まだ気絶している者達の近くに寄っていく。そこではヘルニーが1人1人に逃げられないよう縄で縛っていた。
「武器を隠してないか確認したか?」
「あ、そうだった」
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「うげっ」
黄色い花の花粉を吸って、幻覚を見ていた時に解毒剤として飲まされていたものを思い出したのか、ヨシュアが眉をひそめ、口角を下げている。あの色は紫色だったが、小瓶に入れられている物で連想してしまったのだろう。
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