56 / 56
最終章 変化
冒険記録52. 神になる END
しおりを挟む
一体何事だとざわつく門番たちに呑気な声であいさつするヘルニー。ため息をついたヨシュアは事の顛末を説明していた。最初は頭の上にはてなが浮かんでいたが、理解した門番たちに犯人を預け、ガルーラの元へ戻っていく。
「自分の力が尋常じゃないこと理解しろよ。飛び蹴りで気絶って」
「これでもめちゃくちゃ制限してるよ」
「それでもか」
制限しまくった結果が飛び蹴りでの気絶。ヘルニーの力の片鱗を見たヨシュアは、気味悪そうな顔をしながら見つめた。視線に気づいたヘルニーが「なんだよー!」と頬を膨らませながら怒っていた。
ガルーラのところに戻った2人は報告をし、まだ無事だった建物に移動する。怪我はしていないものの家が無くなってしまった街の人たちは、お互い協力しながら家の中へと入って行った。
案内された家の中へ入ろうとしているヨシュアの耳に、馬の蹄の音が聞こえてくる。音の方向を見ると、存在をすっかり忘れていた彼の愛馬、アルヴァーノがものすごい勢いで走ってくるのが見えた。ただ少しだけ違和感があった。今まで無かったものがアルヴァーノの頭にある鋭利な角だ。頭を下に項垂れながらヨシュアの脇腹に突っ込み、カエルが潰されたような声を出しながらヨシュアは飛ばされた。
「今までと同じ愛情表現なのだろうが、加減はしてくれ……」
地面に倒れながら言うヨシュアの周りを不安そうに歩いている。半神になっているとはいえ、怪我だってするのだ。脇腹から血を流しながらゆっくりと起き上がり、心配している愛馬の背を撫でて、共に家の中へ入って行く。
夕食はあるものでしか食べられなかったが、今まで以上に飲んで騒いでをヨシュア達は繰り返し、月が真上に来るまで来てようやく落ち着いた。案内された部屋で2人と1頭は、そこで一日の疲れを癒すためにベッドに潜りこみ、即眠りについた。
「お疲れ、ヨシュア様」
斥候の姿ではないヘルニーがヨシュアの頭を一撫でし、その部屋から消えた。それを見ていたのはアルヴァーノのみだった。
「おかえりなさい」
「ここに戻ってくるとはな」
全ての罪を償い終えたヨシュアは異世界で眠っていた時に、創造主アテリアによって引き戻されていた。同じくアルヴァーノも。妙な浮遊感で彼は目覚めたが、愛馬はまだ呑気に寝ていた。まぶしさに眉間に皺を寄せて起き上がった彼は、異世界に行く前に来ていた場所にいることを一瞬で察した。
「次はどこに行けって言うんだ?」
「どこにも行く必要はないのですよ」
異世界にいく前、ヨシュアはベッドごと移動していたが、それがまだ世界の狭間に残っていた。ベッドの上にある毛布。2、3個置かれている枕。整えられたシーツ。何もかもが変わっていた。
「どういうことだ」
「罪を償ったことで試練に合格したのです」
「試練?」
なんの事か分からず、聞き返すヨシュア。彼はただ異世界に行って好きなように旅をしていただけである。目の前にいる女神から罪を償うことと友人を1人だけでもいいから作れと言われたこと以外は、何も言われていない。終盤で助けてほしいとは言われたが、旅の途中で言われたことはなかった。
「試練は私が勝手にしたことです」
「……女神アテリア。今でもあなたに対して興味は薄れていないが、やはり神だからか少し強引だな」
「ええ。そして今ではあなたもその神になっているのですよ。今はまだ半神の状態ですが」
旅で疲れた体を癒そうとベッドに向かっているヨシュアの動きがアテリアの一言で止まる。ブリキのおもちゃのように振り返り、片眉を上げている。そして深いため息をついた。
「冗談はよしてくれ。私に一番似合ないものだ」
「冗談を私が言うと思いますか?」
真剣なまなざしを向けてくるアテリアに、ヨシュアは疲れた顔をする。彼女の目は嘘をついていなかった。驚愕の連続で疲れ切った彼は、ベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。そして、意識を失うかのように寝た。
「寝てしまいましたか。お話ししなくてはならないこともあったのですが、今はそっとしておきましょう」
ベッドに近づき、寝ているヨシュアの隣に腰掛けると、彼の優しく頭を撫でていた。彼が初めて世界の狭間に来た時と同じ状況だが、唯一違うのはアテリアの表情だった。初めはやんちゃな息子を愛おしく想う母親のようだったが、今では恋人を想う表情をしている。彼のどこに惚れたのかはアテリアしか知らないが、この世界に誘ったのは、恋人にするためだったのだろうことは明らかだった。
「私のエゴでありますが、必ず幸せにしますわ。貴方は納得しないでしょうけど」
そっとヨシュアの左手を取ると、薬指に口づけをする。白い空間にさらに白く淡い光が出来たかと思うと、銀色の指輪がはめられていた。
「人間界ではこれを結婚というらしいですね。貴方が生きていた時代よりも未来の世界のやり方ですが」
しばらくヨシュアの頭を撫でて、その空間を享受しながらアテリアは水晶玉を見ている。そこにはヨシュアによって文明が進んだ世界が映されていた。女神に惚れられているのも1つではあるが、人でありながら人を勇敢に、時には強引に導く様子はまるで神のようだった。その姿に魅了されたのも1つなのかもしれない。
恩には恩を。罰には罰を与えるヨシュアの考えは神そのものだ。
「どの神になるかは貴方が起きてからにしましょうか」
「自分の力が尋常じゃないこと理解しろよ。飛び蹴りで気絶って」
「これでもめちゃくちゃ制限してるよ」
「それでもか」
制限しまくった結果が飛び蹴りでの気絶。ヘルニーの力の片鱗を見たヨシュアは、気味悪そうな顔をしながら見つめた。視線に気づいたヘルニーが「なんだよー!」と頬を膨らませながら怒っていた。
ガルーラのところに戻った2人は報告をし、まだ無事だった建物に移動する。怪我はしていないものの家が無くなってしまった街の人たちは、お互い協力しながら家の中へと入って行った。
案内された家の中へ入ろうとしているヨシュアの耳に、馬の蹄の音が聞こえてくる。音の方向を見ると、存在をすっかり忘れていた彼の愛馬、アルヴァーノがものすごい勢いで走ってくるのが見えた。ただ少しだけ違和感があった。今まで無かったものがアルヴァーノの頭にある鋭利な角だ。頭を下に項垂れながらヨシュアの脇腹に突っ込み、カエルが潰されたような声を出しながらヨシュアは飛ばされた。
「今までと同じ愛情表現なのだろうが、加減はしてくれ……」
地面に倒れながら言うヨシュアの周りを不安そうに歩いている。半神になっているとはいえ、怪我だってするのだ。脇腹から血を流しながらゆっくりと起き上がり、心配している愛馬の背を撫でて、共に家の中へ入って行く。
夕食はあるものでしか食べられなかったが、今まで以上に飲んで騒いでをヨシュア達は繰り返し、月が真上に来るまで来てようやく落ち着いた。案内された部屋で2人と1頭は、そこで一日の疲れを癒すためにベッドに潜りこみ、即眠りについた。
「お疲れ、ヨシュア様」
斥候の姿ではないヘルニーがヨシュアの頭を一撫でし、その部屋から消えた。それを見ていたのはアルヴァーノのみだった。
「おかえりなさい」
「ここに戻ってくるとはな」
全ての罪を償い終えたヨシュアは異世界で眠っていた時に、創造主アテリアによって引き戻されていた。同じくアルヴァーノも。妙な浮遊感で彼は目覚めたが、愛馬はまだ呑気に寝ていた。まぶしさに眉間に皺を寄せて起き上がった彼は、異世界に行く前に来ていた場所にいることを一瞬で察した。
「次はどこに行けって言うんだ?」
「どこにも行く必要はないのですよ」
異世界にいく前、ヨシュアはベッドごと移動していたが、それがまだ世界の狭間に残っていた。ベッドの上にある毛布。2、3個置かれている枕。整えられたシーツ。何もかもが変わっていた。
「どういうことだ」
「罪を償ったことで試練に合格したのです」
「試練?」
なんの事か分からず、聞き返すヨシュア。彼はただ異世界に行って好きなように旅をしていただけである。目の前にいる女神から罪を償うことと友人を1人だけでもいいから作れと言われたこと以外は、何も言われていない。終盤で助けてほしいとは言われたが、旅の途中で言われたことはなかった。
「試練は私が勝手にしたことです」
「……女神アテリア。今でもあなたに対して興味は薄れていないが、やはり神だからか少し強引だな」
「ええ。そして今ではあなたもその神になっているのですよ。今はまだ半神の状態ですが」
旅で疲れた体を癒そうとベッドに向かっているヨシュアの動きがアテリアの一言で止まる。ブリキのおもちゃのように振り返り、片眉を上げている。そして深いため息をついた。
「冗談はよしてくれ。私に一番似合ないものだ」
「冗談を私が言うと思いますか?」
真剣なまなざしを向けてくるアテリアに、ヨシュアは疲れた顔をする。彼女の目は嘘をついていなかった。驚愕の連続で疲れ切った彼は、ベッドにうつ伏せで倒れ込んだ。そして、意識を失うかのように寝た。
「寝てしまいましたか。お話ししなくてはならないこともあったのですが、今はそっとしておきましょう」
ベッドに近づき、寝ているヨシュアの隣に腰掛けると、彼の優しく頭を撫でていた。彼が初めて世界の狭間に来た時と同じ状況だが、唯一違うのはアテリアの表情だった。初めはやんちゃな息子を愛おしく想う母親のようだったが、今では恋人を想う表情をしている。彼のどこに惚れたのかはアテリアしか知らないが、この世界に誘ったのは、恋人にするためだったのだろうことは明らかだった。
「私のエゴでありますが、必ず幸せにしますわ。貴方は納得しないでしょうけど」
そっとヨシュアの左手を取ると、薬指に口づけをする。白い空間にさらに白く淡い光が出来たかと思うと、銀色の指輪がはめられていた。
「人間界ではこれを結婚というらしいですね。貴方が生きていた時代よりも未来の世界のやり方ですが」
しばらくヨシュアの頭を撫でて、その空間を享受しながらアテリアは水晶玉を見ている。そこにはヨシュアによって文明が進んだ世界が映されていた。女神に惚れられているのも1つではあるが、人でありながら人を勇敢に、時には強引に導く様子はまるで神のようだった。その姿に魅了されたのも1つなのかもしれない。
恩には恩を。罰には罰を与えるヨシュアの考えは神そのものだ。
「どの神になるかは貴方が起きてからにしましょうか」
0
お気に入りに追加
18
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(7件)
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
冒険記録8 宝物を漁ってはいけませんを読んで
女神がどのように干渉してくるのかここまで謎であったが、初めに貰ったものの意味がここで分かる。
面白い世界だなと思うのは、一貫して他人が他人にあまり干渉を(興味)を示さないということ。もちろん悪い奴もいれば、いいヤツもいる。
全くの無関心というわけではない。
奪う者と奪われる者がいる世界だ。
しかしながら、良いこと悪いことに関して指摘しないということに、違和感がある。それは主体性を持ちすぎてない、平和な世界なのかもしれない。
もっとも、進歩していかない世界だと初めに知っているので、そう見えてしまうのかもしれないが。(意図的ではない可能性)
冒険記録9 あの女神に会うためにを読んで
これは意外な展開。
てっきり、この女性から魔法について聞くのかと思いきや!
転生、転移ものには神や女神が付き物のようだが、その神とそれ以降どんな関わり方をするのかは作者によったり、物語によったりすると思う。
中には、主人公が新しい世界で不慣れなうちは手助けしてくれたり、話せたり。中には全く出てこないということも。
なのでこの主人公が、会いたいと調べたところで会えるのかどうかは、全く予想がつかないのだ。
そしてこんな風に悪戯(計画?)を思い付き、この世界の人を巻き込むということは、少しづつこの世界の人たちに影響を与えているのだとわくわくした。
どうなるのか楽しみです。
冒険記録10 街へ入るを読んで
最初は、ん? と思ったが主人公の機転の良さになるほどと納得した。
一見伏線に感じないことも、伏線だったのかと驚く。
前回の場面で、主人公が何をする気か予想がつかなかったので、余計にそう感じた。
そして言葉使いが、段々と流暢になっていくのも良いなと思う。さすがにずっと同じ調子だとは思ってはいなかったが、描かれていない部分でも会話などをし、この世界での言葉が上達しているのではないか? と想像させる。
ここまでの間で、主人公が強いだけではなくとても機転が利き、その上賢い頭の良い人物なのだということが強く印象に残った。
そしてこの世界の人は、直ぐに人を信用してしまう人々なのかな? と感じた。
続き
【主人公の人となりや魅力】
ほとんど身一つ状態で知らない土地に飛ばされた主人公であるが、言葉が通じることにより機転を利かせ、窮地を乗り切っていく。
とても頭の回転の速い人物であり、何か起きた時には論理的に考え理解していく。
戦闘能力も高く、身軽で冷静。その体型から弱そうと勘違いされることが多数あり。だからこそ戦いのシーンはハラハラドキドキしてしまう。
まだ全てを理解しているわけではないが、探求心だけではなく遊び心もあるのではないかと感じている。
【物語の見どころ】
主人公は、異世界に行くまで殺人や強奪は当たり前のことだった。それでしか生計を立てられなかったのかもしれないし、それが性に合っていたのかもしれない。
だが、殺人も強奪も決して良いことではない。その罪の償いも含め、女神から異世界へ転移させられることとなった。
その中で、今まで自分とは無縁だったような善良な人々に出逢い、簡単に自分を信じてしまう彼らを心配さえするようになるのだ。
変えるためにこの世界へ飛ばされたが、彼自身も変わっていくのである。
そしてもう一つ、あらすじにある”旅をする中で異世界に呼ばれたわけ”。これを彼が知った時、物語は大きく動くのではないかと思う。
元海賊で極悪非道なことをしていた主人公は、異世界の彼らにどのような影響を及ぼすのか? そしてこの物語の結末はいかに?!
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか?
お奨めです。
レビュー全文
【物語は】
海賊である主人公が宴の日、ベッドごと何処かへ転送されるところから始まっていく。そして目を覚ました彼は、唐突に異世界へ送る”と言われるのだ。
彼が評価されているのはその”探求心の高さ”。
しかし、主人公にとってはそれは”人間として当たり前”のことであった。
だが、”世の中には何にも興味を示さない人間もいる”。彼はそういった人々のいる世界へ行き、彼らを救えと言われるのであった。
【自分で道を切り開いていく物語】
転生ものや女神などを仲介とした転移ものには、特別なスキルを授かったり、チートなどが多く存在するが、この物語で女神から授けられるのは”指輪とコミュニケーション能力”のみ。
これは例えるなら、全くその土地や国の文化などを知らない海外へ”語学のみ”で飛び込むようなものである。もちろん、地理さえ分からないしどんな食べ物があるのか? 身分などの制度があるのか? 地理はどうなのか? すらわからない場所へである。
ここでのコミュニケーション能力は”言葉が通じる”程度であり、性格が変わるというような方向性ではない。しかしながら彼は内気な性格と言うわけではないので、その辺も問題はないようだ。
この物語を読んでいると、意志の疎通が出来ることがどれだけ窮地を救うものであるのかということに気づかされる。