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第1章 旅
冒険記録7.相棒との出会い
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「あ、あんた、一体何者なんだ」
「タダの、たびびとダ」
先程のヨシュアの戦い方に驚きを隠せない護衛の男が問いかける。その質問にヨシュアは答えをはぐらかした。
村で会った冒険者たちの時でもそうだったが、ここには海賊という存在がいないのかもしれない。もしくは、知られていない。そう考えるヨシュアだった。
仮に海賊がいたとしよう。もし、そうであれば、従来の盗賊と同じようにこの場で殺されるか、本人の利用価値があるのなら奴隷として売られるかどちらかであった。
「それデ、さっきノ、コタエは?」
「と言いますと、何を差し出すかという事でしょうか?」
「アア。モウたすけタあとダガ、コノままムショウでサヨナラは、したくナイからナ」
先程の戦闘からまだ背中が痛むのか、時々さすったり体を伸ばしたりしている。加減を間違えて、時々苦痛の声を漏らすヨシュアだった。
「何を……」
「それホド、ナヤムことカ?」
悩んでいる貴族の女を不思議そうにヨシュアは見る。先ほどから彼の視界の先にチラチラと映っている、金の装飾がされた馬車が道端に停止していた。
貴族というものは昔から金が好きなもの。謝礼といえば金銀財宝だろうと考えているヨシュアだが、この世界はもしかしたら違うのかもしれない。
「……では、お礼としてお金と住む場所を提供します」
「Hmm……」
考え抜いて導き出した貴族の女の答えがその二つだった。それに対して今度はヨシュアが悩む番であった。
「……かねはタスカル。ダガ、すむバショは、みてみないと、わからナイな」
だが、貴族の女とは反対にヨシュアの答えは早かった。
「そういえば、自己紹介が遅れてしまいました。私の名前はジュリー・マクシーラ・アニスと申します。助けてくれた貴方の名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「わたしの名ハ、ヨシュアだ」
自己紹介を終えたヨシュアは、盗賊たちが使っていた馬車に宝物がないかと向かいだす。裏に回ると、夕焼けをそのまま体に移したような馬が白色の首輪をしてその場にとどまっていた。
「……オマエさん、カワッタいろ、しているナ」
興味というよりも不思議さでいっぱいになりながら近づこうとするが、後ろを着いてきたジュリー達が馬を見て、緊迫した声を上げてヨシュアを止めた。
「その馬は人を嫌い、魔力を持った人が近づくと暴れだす危険な生き物です!」
「キケン? ドコからどうみても、すこしカワッテイルだけのうまにシカ、ミエナイガ」
ヨシュアの目からすると、珍しい色をしているだけだが、ジュリーたちはこの馬のことを知っているのか、警戒している。
「なハあるノカ?」
「肌の色は違いますが、赤色の目をしているのでぺリルで間違いないかと」
「危険ネェ……」
自分の顎を撫でながら珍しそうに見るヨシュアに、ぺリルと呼ばれた馬は首を高く上げ、じっと見つめながら警戒していた。
「まずは、テキイがナイことをみせないとナ」
「近づいたら危険なんですよ!?」
「キケンだからこそ、キョウミがわく」
自分は無害だと証明する様に、腰に下げてあるカットラスやピストルを外していく。それでもまだ耳を立てて警戒しているのは、人がよほど嫌いなのだろう。
「もう、ナニも、もってイナイぞ」
ロングコートを脱ぎ、その場で手を広げながら背中を見せたりする。敵意が無いことを理解したのか、少しだけ警戒がほぐれ、ヨシュアだけを見ていた。
「イマから、ちかづくゾ」
横までゆっくりと近づき、自分の手の甲を馬の鼻に近づけた。警戒しながらも匂いを嗅いでいるぺリルをジーッと見つめて様子を窺っている。
馬についての説明をされたことがある者なら分かるだろうが、いきなり馬の体を触ることは禁止されている。例え、警戒していた馬が最初から近づくことを許していても、いきなり触れば、警戒心がより強くなり、また初めからしなければならないからだ。
ペリルがヨシュアの手の甲を嗅いでいる時間は長かったが、それだけ馬が警戒しているのが目に見えた。
「あなた……本当に何者なんです?」
「さっきもイッタが、ただのたびびとダ。わたしには、コノうまが、どれほどキケンなそんざいか、わからナイ。ただ、じゅうらいトおなじように、せっしただけダ」
自分に対して馬の雰囲気が柔らかくなったのを感じたのか、首の付け根を優しく撫でていた。その様子を見たジュリー達は驚いている。
極端に人を嫌う馬がヨシュアにだけ警戒心を解いている姿を見て、口々に「ありえない」などと発しながら。
「ありえナイなんてことハ、ナイ。タダ、こいつガいじょうナまでニ、ケイカイしていたのは、コノくびわもだが、カコのだれかガらんぼうなアツカイを、したから ダ」
馬の首の付け根を撫でながら、ジュリー達の疑問にヨシュアが答える。
「さて、コイツをはずしたいんダガ、トリカタがわからん……」
一見普通の首輪に見える。変わったところといえば錠前がついていることだ。
「……ためしてみるカ」
ヨシュアが首輪に触ろうとすると、ぺリルが首を左右に動かし始めた。
「イヤか?」
触られるのが嫌だったのかと手を遠ざけるが、手が離れた途端、今度は上下に動かし始めた。
「なんだ、どうしタ?」
触ろうとすれば首を横に振り、手を遠ざければ縦に振る。何か言いたことがあるのだろうが、人の様に言葉を話せるわけではない馬に思考を巡らすしかないヨシュアだった。
「コレにさわられるのはイヤか?」
もしかしたらと思ったヨシュアは、首輪を指さして問いかけた。問い掛けられた馬は、ヨシュアの問いに答えるようにイヤじゃない、と首を横に振った。
「さわってもダイジョブなら、とりたいのダガ……」
触ろうとすれば、また首を横に振る。
「……ドウすればイイんだ?」
「あ、あの……」
どうしたものかと悩むヨシュアに、恐る恐る声をかけるジュリー。
「その首輪は初めて見た物なのですが、魔力の流れからして、魔法を使わないと外せないとかではないでしょうか?」
「……そうナノか?」
アドバイスを聞き、馬に問いかけるヨシュア。その言葉を肯定するように頷いた。
「スマン、きづかなかっタ……」
そうだとは知らず、触ろうとしていたことに反省し、馬の首元に抱き着いて申し訳なさそうに項垂れた。しばらくその状態のままでいたが、次にしなければならないことが見つかったのか、顔を上げ、馬を見る。
「いまからコイツをはずすタメに、オンナをちかくによぶが、かまわナイか?」
首輪を指さし、次にジュリーを指さす。そう言った途端、耳を後ろにピタリと付け、不満そうに鋭い目つきになる。
「だが、わたしではコレをはずせナイ」
「まほうとやらがわからナイからナ」と言うと、ため息は付かなかったが、馬は仕方なさそうな顔をした。
「近づいても、よろしいのですか?」
「とりあえずは、イイらしい」
さっきから武器を持ったまま警戒していた護衛に武器を収めるよう指示し、ジュリーはゆっくりと近づいた。そして、先程ヨシュアがしていたことと同じように、横に立ち、手を馬の鼻の近くに寄せたが、顔を逸らしている。
「今から外しますね」
懐から金の装飾がされている木の杖を取り出すと、錠前に向かって呪文を唱え始めた。その間暴れない様にと、ヨシュアが馬の首の付け根を撫でている。それからどれほど経ったか、錠前が外れ、重い音を立てて草原に落ちた。
「アリガとよ」
「い、いえ……。これくらい、命を、助けて、貰った、お礼、です」
外れたことにヨシュアは感謝する。よほど集中していたのだろう。ジュリーはゆっくりと地面に座ると、肩で息をし始めた。
「さて、オマエさんのなまえだが……わたしがきめていいカ?」
そう問い掛け、馬は頷く。
ぺリル。
それがこの世界で呼ばれていた馬の種族名だ。
例え肌の色が違っていたとしても、これからもずっと種族名で呼ぶのが嫌なヨシュアは、名前を付けることにする。村にいる時に、リアから学んだ言葉でちょうどいい言葉があったのだ。
「ナは、アルヴァーノ。ゆうやけ、といういみらしい。オマエさんにピッタリだろ?」
誇らしそうに笑い、アルヴァ―ノの首の付け根を撫でている。
「それほど、うれしかったカ!」
ヨシュアが与えた名前を気に入ったのか、尻尾を高く振り、軽やかな足取りで草原を駆け回ったり、後ろ脚で地面を蹴る仕草をしている。
暫くはしゃぎ、満足したのかヨシュアの所に戻ってきた。
「タダの、たびびとダ」
先程のヨシュアの戦い方に驚きを隠せない護衛の男が問いかける。その質問にヨシュアは答えをはぐらかした。
村で会った冒険者たちの時でもそうだったが、ここには海賊という存在がいないのかもしれない。もしくは、知られていない。そう考えるヨシュアだった。
仮に海賊がいたとしよう。もし、そうであれば、従来の盗賊と同じようにこの場で殺されるか、本人の利用価値があるのなら奴隷として売られるかどちらかであった。
「それデ、さっきノ、コタエは?」
「と言いますと、何を差し出すかという事でしょうか?」
「アア。モウたすけタあとダガ、コノままムショウでサヨナラは、したくナイからナ」
先程の戦闘からまだ背中が痛むのか、時々さすったり体を伸ばしたりしている。加減を間違えて、時々苦痛の声を漏らすヨシュアだった。
「何を……」
「それホド、ナヤムことカ?」
悩んでいる貴族の女を不思議そうにヨシュアは見る。先ほどから彼の視界の先にチラチラと映っている、金の装飾がされた馬車が道端に停止していた。
貴族というものは昔から金が好きなもの。謝礼といえば金銀財宝だろうと考えているヨシュアだが、この世界はもしかしたら違うのかもしれない。
「……では、お礼としてお金と住む場所を提供します」
「Hmm……」
考え抜いて導き出した貴族の女の答えがその二つだった。それに対して今度はヨシュアが悩む番であった。
「……かねはタスカル。ダガ、すむバショは、みてみないと、わからナイな」
だが、貴族の女とは反対にヨシュアの答えは早かった。
「そういえば、自己紹介が遅れてしまいました。私の名前はジュリー・マクシーラ・アニスと申します。助けてくれた貴方の名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「わたしの名ハ、ヨシュアだ」
自己紹介を終えたヨシュアは、盗賊たちが使っていた馬車に宝物がないかと向かいだす。裏に回ると、夕焼けをそのまま体に移したような馬が白色の首輪をしてその場にとどまっていた。
「……オマエさん、カワッタいろ、しているナ」
興味というよりも不思議さでいっぱいになりながら近づこうとするが、後ろを着いてきたジュリー達が馬を見て、緊迫した声を上げてヨシュアを止めた。
「その馬は人を嫌い、魔力を持った人が近づくと暴れだす危険な生き物です!」
「キケン? ドコからどうみても、すこしカワッテイルだけのうまにシカ、ミエナイガ」
ヨシュアの目からすると、珍しい色をしているだけだが、ジュリーたちはこの馬のことを知っているのか、警戒している。
「なハあるノカ?」
「肌の色は違いますが、赤色の目をしているのでぺリルで間違いないかと」
「危険ネェ……」
自分の顎を撫でながら珍しそうに見るヨシュアに、ぺリルと呼ばれた馬は首を高く上げ、じっと見つめながら警戒していた。
「まずは、テキイがナイことをみせないとナ」
「近づいたら危険なんですよ!?」
「キケンだからこそ、キョウミがわく」
自分は無害だと証明する様に、腰に下げてあるカットラスやピストルを外していく。それでもまだ耳を立てて警戒しているのは、人がよほど嫌いなのだろう。
「もう、ナニも、もってイナイぞ」
ロングコートを脱ぎ、その場で手を広げながら背中を見せたりする。敵意が無いことを理解したのか、少しだけ警戒がほぐれ、ヨシュアだけを見ていた。
「イマから、ちかづくゾ」
横までゆっくりと近づき、自分の手の甲を馬の鼻に近づけた。警戒しながらも匂いを嗅いでいるぺリルをジーッと見つめて様子を窺っている。
馬についての説明をされたことがある者なら分かるだろうが、いきなり馬の体を触ることは禁止されている。例え、警戒していた馬が最初から近づくことを許していても、いきなり触れば、警戒心がより強くなり、また初めからしなければならないからだ。
ペリルがヨシュアの手の甲を嗅いでいる時間は長かったが、それだけ馬が警戒しているのが目に見えた。
「あなた……本当に何者なんです?」
「さっきもイッタが、ただのたびびとダ。わたしには、コノうまが、どれほどキケンなそんざいか、わからナイ。ただ、じゅうらいトおなじように、せっしただけダ」
自分に対して馬の雰囲気が柔らかくなったのを感じたのか、首の付け根を優しく撫でていた。その様子を見たジュリー達は驚いている。
極端に人を嫌う馬がヨシュアにだけ警戒心を解いている姿を見て、口々に「ありえない」などと発しながら。
「ありえナイなんてことハ、ナイ。タダ、こいつガいじょうナまでニ、ケイカイしていたのは、コノくびわもだが、カコのだれかガらんぼうなアツカイを、したから ダ」
馬の首の付け根を撫でながら、ジュリー達の疑問にヨシュアが答える。
「さて、コイツをはずしたいんダガ、トリカタがわからん……」
一見普通の首輪に見える。変わったところといえば錠前がついていることだ。
「……ためしてみるカ」
ヨシュアが首輪に触ろうとすると、ぺリルが首を左右に動かし始めた。
「イヤか?」
触られるのが嫌だったのかと手を遠ざけるが、手が離れた途端、今度は上下に動かし始めた。
「なんだ、どうしタ?」
触ろうとすれば首を横に振り、手を遠ざければ縦に振る。何か言いたことがあるのだろうが、人の様に言葉を話せるわけではない馬に思考を巡らすしかないヨシュアだった。
「コレにさわられるのはイヤか?」
もしかしたらと思ったヨシュアは、首輪を指さして問いかけた。問い掛けられた馬は、ヨシュアの問いに答えるようにイヤじゃない、と首を横に振った。
「さわってもダイジョブなら、とりたいのダガ……」
触ろうとすれば、また首を横に振る。
「……ドウすればイイんだ?」
「あ、あの……」
どうしたものかと悩むヨシュアに、恐る恐る声をかけるジュリー。
「その首輪は初めて見た物なのですが、魔力の流れからして、魔法を使わないと外せないとかではないでしょうか?」
「……そうナノか?」
アドバイスを聞き、馬に問いかけるヨシュア。その言葉を肯定するように頷いた。
「スマン、きづかなかっタ……」
そうだとは知らず、触ろうとしていたことに反省し、馬の首元に抱き着いて申し訳なさそうに項垂れた。しばらくその状態のままでいたが、次にしなければならないことが見つかったのか、顔を上げ、馬を見る。
「いまからコイツをはずすタメに、オンナをちかくによぶが、かまわナイか?」
首輪を指さし、次にジュリーを指さす。そう言った途端、耳を後ろにピタリと付け、不満そうに鋭い目つきになる。
「だが、わたしではコレをはずせナイ」
「まほうとやらがわからナイからナ」と言うと、ため息は付かなかったが、馬は仕方なさそうな顔をした。
「近づいても、よろしいのですか?」
「とりあえずは、イイらしい」
さっきから武器を持ったまま警戒していた護衛に武器を収めるよう指示し、ジュリーはゆっくりと近づいた。そして、先程ヨシュアがしていたことと同じように、横に立ち、手を馬の鼻の近くに寄せたが、顔を逸らしている。
「今から外しますね」
懐から金の装飾がされている木の杖を取り出すと、錠前に向かって呪文を唱え始めた。その間暴れない様にと、ヨシュアが馬の首の付け根を撫でている。それからどれほど経ったか、錠前が外れ、重い音を立てて草原に落ちた。
「アリガとよ」
「い、いえ……。これくらい、命を、助けて、貰った、お礼、です」
外れたことにヨシュアは感謝する。よほど集中していたのだろう。ジュリーはゆっくりと地面に座ると、肩で息をし始めた。
「さて、オマエさんのなまえだが……わたしがきめていいカ?」
そう問い掛け、馬は頷く。
ぺリル。
それがこの世界で呼ばれていた馬の種族名だ。
例え肌の色が違っていたとしても、これからもずっと種族名で呼ぶのが嫌なヨシュアは、名前を付けることにする。村にいる時に、リアから学んだ言葉でちょうどいい言葉があったのだ。
「ナは、アルヴァーノ。ゆうやけ、といういみらしい。オマエさんにピッタリだろ?」
誇らしそうに笑い、アルヴァ―ノの首の付け根を撫でている。
「それほど、うれしかったカ!」
ヨシュアが与えた名前を気に入ったのか、尻尾を高く振り、軽やかな足取りで草原を駆け回ったり、後ろ脚で地面を蹴る仕草をしている。
暫くはしゃぎ、満足したのかヨシュアの所に戻ってきた。
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