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25話 進化
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少しずつ外の騒ぎが大きくなっている。桃たちがいる部屋の前の廊下を刀を持った者達が慌しく行き来していた。そんな中、しょうも、桃の近くに座って外を眺めていた。
「外で何が起きてるんだろ」
「さぁな」
先程よりも少しだけ落ち着いたしょうは、外の様子を感じながら桃の会話に付き合っていた。今すぐにでも外に行きたい衝動に駆られつつ、しょうの服の裾を掴もうと必死に触っている桃の様子に行けずにもいた。
「桃ちゃん!」
「あ、環さん」
走ってきたのか、息を切らしながら桃を心配する環にまったりとした雰囲気を出しながら返事する。あまりにも外との差に呆けてしまう環。何か言いたいことがあるのかと、しょうが促したことで意識を戻し、怪我がないかを確認していた。
「心配するのはいいが、ついてきてたぞ」
しょうの手にはいつのまにか、芋虫のようにうごめく何かが握りしめられていた。あ、と声が出た環は謝った。桃が無事かどうか確認しに来たはずが、逆に危険な目に合わせてしまうところだった、と。それをどうにかしようと刀を抜く。
「ちょうどいい。これで腹を満たす」
「え、それを?」
「何か問題でも?」
しょうの手から逃げようと蠢く羽がついた芋虫のようなものを、気味悪そうに顔を歪めながら環は一歩後ろに下がった。あり得ない、なんて言葉を口にしながら。
「しょうは何持ってるの」
「み」
桃は見えていないのか、しょうが手に持っているものの正体を言おうとしていた言葉を、環が「何でもないよ!」と大声で言いながら遮り、近づいて桃の耳を塞いだ。
「た、環さん?」
「絶対にそれのこと言わないでね、しょう君」
「つまらねぇな」
ケラケラと笑うしょうにホッと息をつく環。なんの事か分からない桃は、頭の上ではてなマークでいっぱいだった。
「さて、ここに来たのは心配しに来ただけか?」
すっかり苛立ちがなくなったのか、手に持っているものを噛みちぎり、喰いながら促した。それを見た環は、胃の中から胃酸がせり上がってくるような感覚になる。あまりの気持ち悪さに顔を背けた。
「しょうくんに手伝ってほしくて」
いまだしょうの口の中にある芋虫のようなものから顔を逸らしながら、目でしょうを見つつ、頼んでいる。それを見ながら、食べ続けるしょうがジーッと環を見つめていた。
「なら、縛りを外せ」
「あれを?」
「そうだ」
1、環の中に入り、悪霊退治を手伝うこと。
2、環の指示に従うこと。
という縛りを無くせと、しょうは言う。それに環は頭を悩ませた。縛りを無くすということは、目の前にいる悪霊であるしょうを自由にしろと言っていることと変わらない。
「今すぐは決められない」
「じゃあ、無理だな。俺はここでこいつを守るしかない」
そう言って、その場に寝転び、環に背を向けた。
「……分かった! いいよ」
「ほぅ?」
もうどうにでもなれと言いたげに言葉を荒々しく言い放つ環に、ニヤリと笑い、起き上がって畳の部屋から出ていく。それに着いていこうとする桃の肩を掴んで畳み部屋に戻して座らせ、耳の近くに顔を持っていく。
「お前はそこにいろ。お前のだぁーい好きなぬいぐるみでもやるよ」
「え、あれを……?」
嫌な記憶があるのか眉を顰めて、距離を取る。
「安心しろ、あれじゃねぇよ」
「良かった」
「変ではあるがな」
何か言いたげに口を開く桃の口を手で塞ぎ、もう片方の手を自分の体の中に手を突っ込むと、そこから小さいクマのぬいぐるみを取り出した。
「あ、可愛い」
「とにかくそいつと一緒にいろ」
桃に向かって投げ捨てると、そいつはその場で浮いた。
「守りきれよ」
そう一言ぬいぐるみに言うと、外へと向かっていく。離れていくしょうの背中に「なにこれ!」と叫ぶ声が届くが、それを面白可笑しそうにしょうが笑い、呆れる環がいた。
「いつもあんなの持ってるの?」
「いや、さっき作った」
「つく……!」
驚く環を一瞥し、玄関へと向かう廊下を走っている。その途中でしょうに驚いた者たちが刀を抜こうとするも、気付いた時には遠くへ過ぎ去り、抜けずに呆然と突っ立つ姿が何度か見えた。
「さて、パーティの始まりだ」
凶悪な笑みを浮かべるその顔は、今まで以上に楽しそうで、興奮が抑えきれないのか口角が上がりっぱなしだった。もともといた現実と、昔の日本の様な世界とではどちらの妖怪が強いか。これから喰らうやつらはどれほど美味いのか。自分の力にどう作用してくるのか。
考えるだけでも涎が止まらないのか、拭くことも忘れてそのままの状態で玄関へと向かう足を1歩でも前にと、速めた。
既にその速度は、環が追いつけないほどの速さになっているとも知らずに。
「外で何が起きてるんだろ」
「さぁな」
先程よりも少しだけ落ち着いたしょうは、外の様子を感じながら桃の会話に付き合っていた。今すぐにでも外に行きたい衝動に駆られつつ、しょうの服の裾を掴もうと必死に触っている桃の様子に行けずにもいた。
「桃ちゃん!」
「あ、環さん」
走ってきたのか、息を切らしながら桃を心配する環にまったりとした雰囲気を出しながら返事する。あまりにも外との差に呆けてしまう環。何か言いたいことがあるのかと、しょうが促したことで意識を戻し、怪我がないかを確認していた。
「心配するのはいいが、ついてきてたぞ」
しょうの手にはいつのまにか、芋虫のようにうごめく何かが握りしめられていた。あ、と声が出た環は謝った。桃が無事かどうか確認しに来たはずが、逆に危険な目に合わせてしまうところだった、と。それをどうにかしようと刀を抜く。
「ちょうどいい。これで腹を満たす」
「え、それを?」
「何か問題でも?」
しょうの手から逃げようと蠢く羽がついた芋虫のようなものを、気味悪そうに顔を歪めながら環は一歩後ろに下がった。あり得ない、なんて言葉を口にしながら。
「しょうは何持ってるの」
「み」
桃は見えていないのか、しょうが手に持っているものの正体を言おうとしていた言葉を、環が「何でもないよ!」と大声で言いながら遮り、近づいて桃の耳を塞いだ。
「た、環さん?」
「絶対にそれのこと言わないでね、しょう君」
「つまらねぇな」
ケラケラと笑うしょうにホッと息をつく環。なんの事か分からない桃は、頭の上ではてなマークでいっぱいだった。
「さて、ここに来たのは心配しに来ただけか?」
すっかり苛立ちがなくなったのか、手に持っているものを噛みちぎり、喰いながら促した。それを見た環は、胃の中から胃酸がせり上がってくるような感覚になる。あまりの気持ち悪さに顔を背けた。
「しょうくんに手伝ってほしくて」
いまだしょうの口の中にある芋虫のようなものから顔を逸らしながら、目でしょうを見つつ、頼んでいる。それを見ながら、食べ続けるしょうがジーッと環を見つめていた。
「なら、縛りを外せ」
「あれを?」
「そうだ」
1、環の中に入り、悪霊退治を手伝うこと。
2、環の指示に従うこと。
という縛りを無くせと、しょうは言う。それに環は頭を悩ませた。縛りを無くすということは、目の前にいる悪霊であるしょうを自由にしろと言っていることと変わらない。
「今すぐは決められない」
「じゃあ、無理だな。俺はここでこいつを守るしかない」
そう言って、その場に寝転び、環に背を向けた。
「……分かった! いいよ」
「ほぅ?」
もうどうにでもなれと言いたげに言葉を荒々しく言い放つ環に、ニヤリと笑い、起き上がって畳の部屋から出ていく。それに着いていこうとする桃の肩を掴んで畳み部屋に戻して座らせ、耳の近くに顔を持っていく。
「お前はそこにいろ。お前のだぁーい好きなぬいぐるみでもやるよ」
「え、あれを……?」
嫌な記憶があるのか眉を顰めて、距離を取る。
「安心しろ、あれじゃねぇよ」
「良かった」
「変ではあるがな」
何か言いたげに口を開く桃の口を手で塞ぎ、もう片方の手を自分の体の中に手を突っ込むと、そこから小さいクマのぬいぐるみを取り出した。
「あ、可愛い」
「とにかくそいつと一緒にいろ」
桃に向かって投げ捨てると、そいつはその場で浮いた。
「守りきれよ」
そう一言ぬいぐるみに言うと、外へと向かっていく。離れていくしょうの背中に「なにこれ!」と叫ぶ声が届くが、それを面白可笑しそうにしょうが笑い、呆れる環がいた。
「いつもあんなの持ってるの?」
「いや、さっき作った」
「つく……!」
驚く環を一瞥し、玄関へと向かう廊下を走っている。その途中でしょうに驚いた者たちが刀を抜こうとするも、気付いた時には遠くへ過ぎ去り、抜けずに呆然と突っ立つ姿が何度か見えた。
「さて、パーティの始まりだ」
凶悪な笑みを浮かべるその顔は、今まで以上に楽しそうで、興奮が抑えきれないのか口角が上がりっぱなしだった。もともといた現実と、昔の日本の様な世界とではどちらの妖怪が強いか。これから喰らうやつらはどれほど美味いのか。自分の力にどう作用してくるのか。
考えるだけでも涎が止まらないのか、拭くことも忘れてそのままの状態で玄関へと向かう足を1歩でも前にと、速めた。
既にその速度は、環が追いつけないほどの速さになっているとも知らずに。
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