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23話 危機一髪
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畳の部屋に男が一人。環から聖護と呼ばれていた男が胡座をかいて座っていた。その目線の先には、手を後ろに回され、身体中に護符が貼られた状態のしょうが横たわっていた。
「あ、気ぃついた?」
「……お、まえ、は」
「僕は聖護。環ちゃんの家で出会ったとき以来やね」
にこーっと笑う紅色の髪を持つ男がしょうを見下ろしている。桃の身体の中にいた時とは違う感覚に戸惑うしょうは、起き上がろうとお腹に力をいれたが力が入らず、少しだけ上げた身体も力なく床に倒れた。
「なにが、どう、なって、いる」
心無しか声にも力が入っていない。
「君にちょっと聞きたいことがあんねん。それで外に出させてもろうたんよ」
「無理矢理、契約を、外した、のか」
「そうやね」
先程から視界にチラチラと映る何かを鬱陶しそうに畳に擦り付けて取ろうとしているが、なかなか取れず、しょうの眉間に皺が寄っていく。
「堪忍なぁ。それ、最低限の会話だけ出来るようにしてんねん。っていうても君にはあまり効果はないみたいやけど」
「どういう、ことだ」
少しの怠さはあれどゆっくりとなら動けるのか、目の前の男に見下ろされるのが気に食わなかったのか、その場に座り、しょうは相手を睨んだ。
「さっきも言うた通り、それ付けられたら会話しか出来んはずなんやけど、君、外そうとしたやろ? 普通は出来へんねん」
聖護が言うには今しょうに付けられているものは護符で、本来は一つか二つで悪霊の力の源である魂を弱らせて悪事を働かせないようにするためのものだが、しょうにはそれが十枚ほど身体に付けてある。
「それで聞きたいことなんやけど、君、何故今も存在してられる?」
「知らないな。知っていたとしても、答える気は、ない」
拒否していたが、正直しょうにも理由は分かっていなかった。
「そっか、ないかぁ。ならしゃあない。仮の身体の中に入って式神として働いてもらわなあかんな」
「なぜ、そうなる」
聖護が襖の方を見て合図と同時に開き、木の人形を男2人が持ってくる。
「そこに、入る気は、ないぞ」
「けど、しゃーないんやわ。君、危険なんやもん」
「どこが危険だ。今まで見てただろ」
今までずっと目の前の男に監視され、行動を制限されていた時に、しょうは危険を冒すような真似をしたことはなかった。それでも聖護はしょうが危険だという。
「いろいろと理由はあるけど聞く?」
「素直に話すとは思えないが」
「僕は話す言うたら話すよ」
警戒しているしょうを前に、承諾もないまま話し始めた。
危険だと言う証拠は三つ。
一 いまだに存在出来ていること。
二 何も捕食せずに自我を保っていること
三 護符十枚でも弱くなっていないこと
「そういうわけやから。分かった?」
「勝手に話し始めて分かった?と言われてもな」
とにかく入ってもらうわと言い、無理矢理木の人形の中に押し込まれるしょうは、せめてもと抵抗した。抵抗といっても足を床につけ踏ん張っているだけである。
それも虚しく終わり、中に入れられた途端、今までとは比べ物にならない程の激痛が走った。人形の中は真っ暗にも関わらず、朝日を見た時のようにまぶしく感じるかのようにしょうの目に光が走り、なにか酸っぱいものが胃から這い上がってくる感覚が襲ってくる。
「ここから、出せ! 気持ちが、悪い!」
「壊れとるんやろうか?」
「そんなはずは……」
しょうが人形の中で抵抗しているのか左右にぎこちなく動いている。
「一番強いやつなんやけどな」
「息苦しい!」
しばらく横に動いていた人形が後ろに倒れ、そこから人形を壊して出てくる。その動きはまるで、人の腹を破り出てくる何かのようにも見えた。
「あ、気ぃついた?」
「……お、まえ、は」
「僕は聖護。環ちゃんの家で出会ったとき以来やね」
にこーっと笑う紅色の髪を持つ男がしょうを見下ろしている。桃の身体の中にいた時とは違う感覚に戸惑うしょうは、起き上がろうとお腹に力をいれたが力が入らず、少しだけ上げた身体も力なく床に倒れた。
「なにが、どう、なって、いる」
心無しか声にも力が入っていない。
「君にちょっと聞きたいことがあんねん。それで外に出させてもろうたんよ」
「無理矢理、契約を、外した、のか」
「そうやね」
先程から視界にチラチラと映る何かを鬱陶しそうに畳に擦り付けて取ろうとしているが、なかなか取れず、しょうの眉間に皺が寄っていく。
「堪忍なぁ。それ、最低限の会話だけ出来るようにしてんねん。っていうても君にはあまり効果はないみたいやけど」
「どういう、ことだ」
少しの怠さはあれどゆっくりとなら動けるのか、目の前の男に見下ろされるのが気に食わなかったのか、その場に座り、しょうは相手を睨んだ。
「さっきも言うた通り、それ付けられたら会話しか出来んはずなんやけど、君、外そうとしたやろ? 普通は出来へんねん」
聖護が言うには今しょうに付けられているものは護符で、本来は一つか二つで悪霊の力の源である魂を弱らせて悪事を働かせないようにするためのものだが、しょうにはそれが十枚ほど身体に付けてある。
「それで聞きたいことなんやけど、君、何故今も存在してられる?」
「知らないな。知っていたとしても、答える気は、ない」
拒否していたが、正直しょうにも理由は分かっていなかった。
「そっか、ないかぁ。ならしゃあない。仮の身体の中に入って式神として働いてもらわなあかんな」
「なぜ、そうなる」
聖護が襖の方を見て合図と同時に開き、木の人形を男2人が持ってくる。
「そこに、入る気は、ないぞ」
「けど、しゃーないんやわ。君、危険なんやもん」
「どこが危険だ。今まで見てただろ」
今までずっと目の前の男に監視され、行動を制限されていた時に、しょうは危険を冒すような真似をしたことはなかった。それでも聖護はしょうが危険だという。
「いろいろと理由はあるけど聞く?」
「素直に話すとは思えないが」
「僕は話す言うたら話すよ」
警戒しているしょうを前に、承諾もないまま話し始めた。
危険だと言う証拠は三つ。
一 いまだに存在出来ていること。
二 何も捕食せずに自我を保っていること
三 護符十枚でも弱くなっていないこと
「そういうわけやから。分かった?」
「勝手に話し始めて分かった?と言われてもな」
とにかく入ってもらうわと言い、無理矢理木の人形の中に押し込まれるしょうは、せめてもと抵抗した。抵抗といっても足を床につけ踏ん張っているだけである。
それも虚しく終わり、中に入れられた途端、今までとは比べ物にならない程の激痛が走った。人形の中は真っ暗にも関わらず、朝日を見た時のようにまぶしく感じるかのようにしょうの目に光が走り、なにか酸っぱいものが胃から這い上がってくる感覚が襲ってくる。
「ここから、出せ! 気持ちが、悪い!」
「壊れとるんやろうか?」
「そんなはずは……」
しょうが人形の中で抵抗しているのか左右にぎこちなく動いている。
「一番強いやつなんやけどな」
「息苦しい!」
しばらく横に動いていた人形が後ろに倒れ、そこから人形を壊して出てくる。その動きはまるで、人の腹を破り出てくる何かのようにも見えた。
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