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20話 自白
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「正直、君をどうすればいいのか分からないよ」
「俺とした縛り、覚えているか?」
・環の中に入り、悪霊退治を手伝うこと。
・環の指示に従うこと。
困っている環にしょうは、前言っていた縛りを再確認するために聞き、頷く環は内容を思い出し、二つの縛りを繰り返し言った。
「その二つを使って俺を監視するといい」
「君にとって不利な状況になるよね」
「そうだが、別に構わねぇよ。そこいらの人から悩みを食って栄養を取ればいいし、もしお前らが認めてくれるなら俺は堂々と仲間を食える。お前たちには有利だろ? 悪霊や妖怪がいなくなって俺を監視出来るのだから」
自ら傷を負いに来る悪霊を初めて見たのか、環は不思議そうな目で見ている。今、環がどんな目で見ているのかが分かったしょうはケラケラと楽しそうに笑っていた。
「それで君が強くなったりする?」
「どうだろうなァ」
はぐらかすしょうを見ながら刀に手を添える環。その鋭い視線は、はぐらかすなと言っていた。それに降参するかのようにしょうは両手を上げ、首を横に振る。
「落ち着けよ。さっきの答えだが、強くなることはある」
「それで人を襲う?」
「人にもよるが、ある」
その一言で更に警戒を強める環に、少しずつ上がっていく警戒度に焦り始めるしょう。環の手元を見ると、討猟刀をゆっくりと抜いていた。
「人にもよるって言ってるだろ。俺が狙うのは死罪にされるぐらいの罪人だけだ」
「ほんとに?」
「本当だ」
目を細め、疑いの目でジーッとしょうを見る環。
「もし嘘ついてたら、七日食べる事も寝る事も出来ない状態で私の中にいてもらうからね。訂正するなら今だよ」
「……女子供も食うこともある」
気まずそう顔をしながら環に自白する。まるでその様子は、いたずらをして怒られるわんぱく子供のように静かになるしょう。先程まで煽りに煽っていた時とは全く違う姿をしているしょうに、一番驚いていたのは内側にいる桃だった。
「今まで通りしないように。したのが分かった途端、中に入ってもらうからね」
「……分かった」
何故あれほど自分に不利な縛りを付けてしまったのか今更後悔しているしょうだったが、よくよく思い返してみれば、あれはしょうが一方的に付けた縛りだ。それなら環の中に入って消せばいい。そう考えたしょうは環の中に入っていく。
「あの、大丈夫です?」
しょうが桃の体からいなくなることで元の人格である桃が表に戻ってくる。しょうが自分の中に入ったのが分かったのだろう。一瞬だけ眉間に皺を寄せた環。何をしようとしているのかは分からないが、警戒している。
「桃ちゃんごめんね。怖かったでしょ」
「あ、い、いえ」
先程までの光景を内側から見ていたことを知っている環が、眉尻を下げながら桃に謝ってくる。しょうに向けてやっていることだとは桃自身も分かっていたが、しょうの目を通して見ていたことで、自分にも言っているような感覚になっていた桃だった。そのことに対して環は謝ったのだろう。
「しょう君?」
何かをしようとしているのが分かったのか、いつもよりも低い声を出して自分の内側にいるしょうを律そうと声をかけたが、返事がない。何かをされる前に対策を打とうと、環は深呼吸をする。すると、環の体の中が神聖な空気で満たされ、内側にいたしょうが苦痛に満ちた声を出して苦しみ始めた。
「や、やめろ……!」
(何をしようとしてたのかな?)
「なんでも、ない……!」
はぐらかそうとするしょうに対し、環はもう一度深呼吸をした。先程よりも苦しそうに唸るしょうにもう一度先程の質問を問いかけた。いつまでたっても答えないしょうに、止めを刺すかのようにもう一回内側に神聖な空気を入れる。外へ逃げることも出来ず、内側で声にならない苦痛の声を出して蹲まるしょう。
「いう、から、止めろ……!」
(何をしてたの?)
「縛りを、ないことに、しようと」
(それはもう無理だね。君がどうやって縛りをつけているのかは分からないけど、さっき私同意しちゃたし。君も同意したよね)
『不利な状況になるよね』と確認した環の言葉を思い出し、愚かなことをしたと悔やんだしょうは小さく舌打ちをする。不快な気分になるこの空間からさっさと出ようとしたが、何かに拒まれて出ることはできなかった。触っていると、微かに手の平が痺れている。それが、先程環が取り込んだ空気で作った壁だということが、しょうには分かった。
「おい!」
(はぐらかそうとした罰だよ。大丈夫。ご飯はちゃんとあげるから)
見えない壁を何度も殴って外に出ようとするが、確固たる意志でしょうを外に出さないようにしている。
「あまりにも理不尽すぎるだろ!」
(桃ちゃんにした理不尽はどう説明するのかな?)
「……悪かったよ」
苦虫を噛み潰したかのように唸りながら謝るしょうに、後で桃にも謝るようにと厳しく注意された。それよりもお腹が空いている事と、環の内側が聖域と同じような効果が発していることで、少しずつしょうの存在が薄くなり始めていた。
「頼む、環。ここから出してくれ」
(駄目)
「腹が減ってるんだ」
(それでも駄目だよ)
少しずつ自分という存在がなくなりかけていることに焦り、なんとか出してもらおうと懇願するも出してもらえず歯痒い思いをする。
「これ以上ここにいると自分の名前も思い出せないまま消えちまう……」
(どういうこと?)
「とにかくここから出してくれ……」
今までとは違う悲痛な声を出すしょうに驚き、警戒を少しだけ緩めてしまった。その隙に環の内側から抜け出し、桃の中へと戻っていく。慣れた空間に戻れたことで体中に出来た傷を癒すかのように深呼吸をし、自分を落ち着かせた。
神聖な空気が自分の体の中にも入っているのが分かるのか、しょうは床に這いつくばってその空気を吐き出すかのように何度も深呼吸をして入れ替えている。
すべてを吐き出すことで出来て落ち着いてきたのか、眠気がしょうを襲う。それに身を任せ、瞼を落として眠った。
「俺とした縛り、覚えているか?」
・環の中に入り、悪霊退治を手伝うこと。
・環の指示に従うこと。
困っている環にしょうは、前言っていた縛りを再確認するために聞き、頷く環は内容を思い出し、二つの縛りを繰り返し言った。
「その二つを使って俺を監視するといい」
「君にとって不利な状況になるよね」
「そうだが、別に構わねぇよ。そこいらの人から悩みを食って栄養を取ればいいし、もしお前らが認めてくれるなら俺は堂々と仲間を食える。お前たちには有利だろ? 悪霊や妖怪がいなくなって俺を監視出来るのだから」
自ら傷を負いに来る悪霊を初めて見たのか、環は不思議そうな目で見ている。今、環がどんな目で見ているのかが分かったしょうはケラケラと楽しそうに笑っていた。
「それで君が強くなったりする?」
「どうだろうなァ」
はぐらかすしょうを見ながら刀に手を添える環。その鋭い視線は、はぐらかすなと言っていた。それに降参するかのようにしょうは両手を上げ、首を横に振る。
「落ち着けよ。さっきの答えだが、強くなることはある」
「それで人を襲う?」
「人にもよるが、ある」
その一言で更に警戒を強める環に、少しずつ上がっていく警戒度に焦り始めるしょう。環の手元を見ると、討猟刀をゆっくりと抜いていた。
「人にもよるって言ってるだろ。俺が狙うのは死罪にされるぐらいの罪人だけだ」
「ほんとに?」
「本当だ」
目を細め、疑いの目でジーッとしょうを見る環。
「もし嘘ついてたら、七日食べる事も寝る事も出来ない状態で私の中にいてもらうからね。訂正するなら今だよ」
「……女子供も食うこともある」
気まずそう顔をしながら環に自白する。まるでその様子は、いたずらをして怒られるわんぱく子供のように静かになるしょう。先程まで煽りに煽っていた時とは全く違う姿をしているしょうに、一番驚いていたのは内側にいる桃だった。
「今まで通りしないように。したのが分かった途端、中に入ってもらうからね」
「……分かった」
何故あれほど自分に不利な縛りを付けてしまったのか今更後悔しているしょうだったが、よくよく思い返してみれば、あれはしょうが一方的に付けた縛りだ。それなら環の中に入って消せばいい。そう考えたしょうは環の中に入っていく。
「あの、大丈夫です?」
しょうが桃の体からいなくなることで元の人格である桃が表に戻ってくる。しょうが自分の中に入ったのが分かったのだろう。一瞬だけ眉間に皺を寄せた環。何をしようとしているのかは分からないが、警戒している。
「桃ちゃんごめんね。怖かったでしょ」
「あ、い、いえ」
先程までの光景を内側から見ていたことを知っている環が、眉尻を下げながら桃に謝ってくる。しょうに向けてやっていることだとは桃自身も分かっていたが、しょうの目を通して見ていたことで、自分にも言っているような感覚になっていた桃だった。そのことに対して環は謝ったのだろう。
「しょう君?」
何かをしようとしているのが分かったのか、いつもよりも低い声を出して自分の内側にいるしょうを律そうと声をかけたが、返事がない。何かをされる前に対策を打とうと、環は深呼吸をする。すると、環の体の中が神聖な空気で満たされ、内側にいたしょうが苦痛に満ちた声を出して苦しみ始めた。
「や、やめろ……!」
(何をしようとしてたのかな?)
「なんでも、ない……!」
はぐらかそうとするしょうに対し、環はもう一度深呼吸をした。先程よりも苦しそうに唸るしょうにもう一度先程の質問を問いかけた。いつまでたっても答えないしょうに、止めを刺すかのようにもう一回内側に神聖な空気を入れる。外へ逃げることも出来ず、内側で声にならない苦痛の声を出して蹲まるしょう。
「いう、から、止めろ……!」
(何をしてたの?)
「縛りを、ないことに、しようと」
(それはもう無理だね。君がどうやって縛りをつけているのかは分からないけど、さっき私同意しちゃたし。君も同意したよね)
『不利な状況になるよね』と確認した環の言葉を思い出し、愚かなことをしたと悔やんだしょうは小さく舌打ちをする。不快な気分になるこの空間からさっさと出ようとしたが、何かに拒まれて出ることはできなかった。触っていると、微かに手の平が痺れている。それが、先程環が取り込んだ空気で作った壁だということが、しょうには分かった。
「おい!」
(はぐらかそうとした罰だよ。大丈夫。ご飯はちゃんとあげるから)
見えない壁を何度も殴って外に出ようとするが、確固たる意志でしょうを外に出さないようにしている。
「あまりにも理不尽すぎるだろ!」
(桃ちゃんにした理不尽はどう説明するのかな?)
「……悪かったよ」
苦虫を噛み潰したかのように唸りながら謝るしょうに、後で桃にも謝るようにと厳しく注意された。それよりもお腹が空いている事と、環の内側が聖域と同じような効果が発していることで、少しずつしょうの存在が薄くなり始めていた。
「頼む、環。ここから出してくれ」
(駄目)
「腹が減ってるんだ」
(それでも駄目だよ)
少しずつ自分という存在がなくなりかけていることに焦り、なんとか出してもらおうと懇願するも出してもらえず歯痒い思いをする。
「これ以上ここにいると自分の名前も思い出せないまま消えちまう……」
(どういうこと?)
「とにかくここから出してくれ……」
今までとは違う悲痛な声を出すしょうに驚き、警戒を少しだけ緩めてしまった。その隙に環の内側から抜け出し、桃の中へと戻っていく。慣れた空間に戻れたことで体中に出来た傷を癒すかのように深呼吸をし、自分を落ち着かせた。
神聖な空気が自分の体の中にも入っているのが分かるのか、しょうは床に這いつくばってその空気を吐き出すかのように何度も深呼吸をして入れ替えている。
すべてを吐き出すことで出来て落ち着いてきたのか、眠気がしょうを襲う。それに身を任せ、瞼を落として眠った。
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