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5章
76話 夜襲
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焼いていた肉をヘイリーに渡し、皆が食べ終わったのを確認した。そのまま布1枚地面にひいて寝てもらうことになったが、怪我をしている少年には薄い布をもう1枚用意した。それくらいは許してあげるとエルフの少女に言われて、ようやく触れることが出来たか。
皆が眠りにつこうとしているところから私は少しだけ離れた場所に移動しよう。
「かわろうか?」
「いや、大丈夫だ」
皆が寝静まり、しばらく時間が過ぎた頃、眠れなかったのかヘイリーが私の隣に移動してくる。
「アーロいつも見張りしてくれるから」
「慣れている者がした方が安全だろ」
「確かにそうだね」
持っていた布を自分の肩にかけ、隣に座るヘイリー。落ち着いてはいるのだが、妙に緊張して雰囲気をまとっている。
「お話しない?」
「……なんのだ」
「なんでも」
そこから話題が来ることもなく、静かな時間が流れる。
「それにしても最初は1人だけだったが、数が増えたものだな」
「急になに?」
突如私が話し始めたことに意味が分からないと首を傾げながらヘイリーが見つめてくる。
「女性に囲まれながら戦うことになるとは思いもしなかった」
私は発する言葉の意味をまだ分かっていないヘイリー。そのまま口にしたら、隠れている奴らにバレてしまう。なんとか気付いて欲しいが。
「アレシア、シルフ、ヘイリー、エルフの少女と少年の計6人。ヘイリー、私の方に顔を向けてくれないか?」
急にどうしたんだと驚きながら素直に私に顔を向けたヘイリーに、私は目だけ動かして周りを見る。その視線に気付き、顔を向けようとした彼女の顔を両手で抑え、自分の顔を近づけた。
「……子供にはまだきつくて、激しいことを静かにしないか?」
「……そうだね」
目を少し見開いたが、私が言いたいことにやっと気付いたヘイリーは、即興劇に付き合ってくれた。賭けに等しかったが乗ってくれてよかった。このまま気づかなかったらどうしようかと思っていたところだ。
「まずはどうする?」
「うーん。声を出さないやり方とかある?」
「ああ」
油断している気配が周りからしてくる。このまま続けよう。
「念の為にこれを持っていくとしよう」
「邪魔されるといやだし、私もこれ持って行っていい?」
私の左ももにつけてあるナイフホルスターからナイフを取ると、ヘイリーが立ち上がる。私もついて行こうと、鞄からピストルとサプレッサーを取り出し、つけた。
「こいつでは完全に音が消えないが、声でかき消せばいいか」
「これ、音出ないよね?」
ヘイリーは腕に馴染ませるようにナイフをいろんな方向に振っている。さて、準備完了だな。移動用の松明もいらないだろう。アレシア達とは近すぎず遠すぎずな場所でやればいい。何かあった時護れない。さて、まずはどいつからやるか。
「あんまり近いと声で気付かれちゃうね」
「ああ。なるべく抑えてくれよ?」
最後まで騙すために彼女をアレシアにもやったように片手で持ち上げ、人が隠れていないところへと移動する。急だったからかヘイリーがバランスを崩しかけていたが、なんとか落ちずに済んでいる。さすがだな。
「最初はどうするの?」
「そうだな。いきなり突くか」
「ん」
周りに誰もいないことを確認し、ヘイリーをゆっくりと地面に降ろす。私たちが移動していると同時に相手も静かに動き、こちらを狙っていた。実際にはしないがふりだけでもしておくか。ヘイリーの服に手をかけた瞬間、矢が私の頭目掛けて飛んでくる。矢を掴み、矢じりを相手の頭めがけて投げ返す。
どさりと倒れた音が聞こえたと同時にヘイリーから離れ、敵が隠れているであろう場所に向かう。それはヘイリーも同じくだった。
「この……!」
ここからは誰にも、一言も喋らす気は、ない。
叫ぼうとした1人の口を押さえ、側頭部に一発。それで終わる。死体にもう興味はない。
剣で近づいて私を斬ろうとしているが、暗闇、木と木の間では十分に振り回すことは出来ない。
夜戦慣れていないな、こいつら。
血がかからないようにしなくては。
心臓に一発。確実に。
風を斬る音が聞こえると同時に、私の顔目掛けて鎌が飛んでくる。狭いところで音がするということは、鎌の扱いに慣れているということになる。
月の光が当たっていようがいないが、音を聞けば避けることは容易い。そして、その先に行けば操っている者が見えてくる。
こちらは音もたてず近寄る。落ちた葉を踏めば聞こえてしまうが、地面に出ている木の根を踏んで移動すれば聞かれることもない。
突如として現れた私に驚き、鎖を自分の手元に戻そうとしている。そんな時間をやるほど優しくはない。
地面に落ちている鎖を踏みつけて体重をかける。
全体重をかけられた鎖は動かない。それに焦っている間に敵の頭に撃つ。
敵は全員で6人だったか。こっちは3人倒した。ヘイリーは終わっただろうか。
「アーロ、無事?」
木々の間から草を踏み抜く音が近づいてくる。敵ではない。どうやらヘイリーも無事倒し終わったみたいだな。
「ああ。君も大丈夫そうだな」
「慣れるのにちょっと時間かかったけど何とかね」
近づいてくる音とは違う何か引きづっている音も聞こえるのは気のせいか? 血濡れのナイフを返され、振って血を落としホルスターに戻す。
皆が眠りにつこうとしているところから私は少しだけ離れた場所に移動しよう。
「かわろうか?」
「いや、大丈夫だ」
皆が寝静まり、しばらく時間が過ぎた頃、眠れなかったのかヘイリーが私の隣に移動してくる。
「アーロいつも見張りしてくれるから」
「慣れている者がした方が安全だろ」
「確かにそうだね」
持っていた布を自分の肩にかけ、隣に座るヘイリー。落ち着いてはいるのだが、妙に緊張して雰囲気をまとっている。
「お話しない?」
「……なんのだ」
「なんでも」
そこから話題が来ることもなく、静かな時間が流れる。
「それにしても最初は1人だけだったが、数が増えたものだな」
「急になに?」
突如私が話し始めたことに意味が分からないと首を傾げながらヘイリーが見つめてくる。
「女性に囲まれながら戦うことになるとは思いもしなかった」
私は発する言葉の意味をまだ分かっていないヘイリー。そのまま口にしたら、隠れている奴らにバレてしまう。なんとか気付いて欲しいが。
「アレシア、シルフ、ヘイリー、エルフの少女と少年の計6人。ヘイリー、私の方に顔を向けてくれないか?」
急にどうしたんだと驚きながら素直に私に顔を向けたヘイリーに、私は目だけ動かして周りを見る。その視線に気付き、顔を向けようとした彼女の顔を両手で抑え、自分の顔を近づけた。
「……子供にはまだきつくて、激しいことを静かにしないか?」
「……そうだね」
目を少し見開いたが、私が言いたいことにやっと気付いたヘイリーは、即興劇に付き合ってくれた。賭けに等しかったが乗ってくれてよかった。このまま気づかなかったらどうしようかと思っていたところだ。
「まずはどうする?」
「うーん。声を出さないやり方とかある?」
「ああ」
油断している気配が周りからしてくる。このまま続けよう。
「念の為にこれを持っていくとしよう」
「邪魔されるといやだし、私もこれ持って行っていい?」
私の左ももにつけてあるナイフホルスターからナイフを取ると、ヘイリーが立ち上がる。私もついて行こうと、鞄からピストルとサプレッサーを取り出し、つけた。
「こいつでは完全に音が消えないが、声でかき消せばいいか」
「これ、音出ないよね?」
ヘイリーは腕に馴染ませるようにナイフをいろんな方向に振っている。さて、準備完了だな。移動用の松明もいらないだろう。アレシア達とは近すぎず遠すぎずな場所でやればいい。何かあった時護れない。さて、まずはどいつからやるか。
「あんまり近いと声で気付かれちゃうね」
「ああ。なるべく抑えてくれよ?」
最後まで騙すために彼女をアレシアにもやったように片手で持ち上げ、人が隠れていないところへと移動する。急だったからかヘイリーがバランスを崩しかけていたが、なんとか落ちずに済んでいる。さすがだな。
「最初はどうするの?」
「そうだな。いきなり突くか」
「ん」
周りに誰もいないことを確認し、ヘイリーをゆっくりと地面に降ろす。私たちが移動していると同時に相手も静かに動き、こちらを狙っていた。実際にはしないがふりだけでもしておくか。ヘイリーの服に手をかけた瞬間、矢が私の頭目掛けて飛んでくる。矢を掴み、矢じりを相手の頭めがけて投げ返す。
どさりと倒れた音が聞こえたと同時にヘイリーから離れ、敵が隠れているであろう場所に向かう。それはヘイリーも同じくだった。
「この……!」
ここからは誰にも、一言も喋らす気は、ない。
叫ぼうとした1人の口を押さえ、側頭部に一発。それで終わる。死体にもう興味はない。
剣で近づいて私を斬ろうとしているが、暗闇、木と木の間では十分に振り回すことは出来ない。
夜戦慣れていないな、こいつら。
血がかからないようにしなくては。
心臓に一発。確実に。
風を斬る音が聞こえると同時に、私の顔目掛けて鎌が飛んでくる。狭いところで音がするということは、鎌の扱いに慣れているということになる。
月の光が当たっていようがいないが、音を聞けば避けることは容易い。そして、その先に行けば操っている者が見えてくる。
こちらは音もたてず近寄る。落ちた葉を踏めば聞こえてしまうが、地面に出ている木の根を踏んで移動すれば聞かれることもない。
突如として現れた私に驚き、鎖を自分の手元に戻そうとしている。そんな時間をやるほど優しくはない。
地面に落ちている鎖を踏みつけて体重をかける。
全体重をかけられた鎖は動かない。それに焦っている間に敵の頭に撃つ。
敵は全員で6人だったか。こっちは3人倒した。ヘイリーは終わっただろうか。
「アーロ、無事?」
木々の間から草を踏み抜く音が近づいてくる。敵ではない。どうやらヘイリーも無事倒し終わったみたいだな。
「ああ。君も大丈夫そうだな」
「慣れるのにちょっと時間かかったけど何とかね」
近づいてくる音とは違う何か引きづっている音も聞こえるのは気のせいか? 血濡れのナイフを返され、振って血を落としホルスターに戻す。
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