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5章
65話 拒否権などない
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「依頼と、新しいバンクルですね」
「ああ」
「先にお渡ししておきますね。古い方は私にください」
ついに一つクラスが上がる。早いか遅いかで言えば早い方らしい。アレシア情報だが。
地道だがその方が目立たない、と言いたいところなのだが、別の意味でも今目立ってしまっている。
男たちから視線。あれは羨望と嫉妬の眼差しだろうな。
私の周りには女性が二人と男装女子というべきか? 者が一人。意図してこうなったわけではないのだが、結果的にハーレム状態になってしまっている。
もう一つは同じクラスの冒険者たちからだ。先程の野蛮人への意趣返しをしたことへのだろうか?
今度は自分たちでやり返して欲しいが、それはまだまだ先かもな。
「こ、これでいいんだよね?」
「そうよ」
なにやらカリナが不安そうに隣の受付嬢に話しかけている。いったいどうしたんだ。
「あの、アーロさん。怒らないでくださいね」
恐る恐る私にバンクルを渡してくる。いったい何に対して怒るのやら。
「……」
「す、すみません!」
「ありゃ、これって」
唖然とするとはこういうことをいうのだな、という客観的な感想しか私の頭の中には浮かばなかった。
確か、ブロンズの次はアイアンだったはずなのだが、渡された物はミスリルだ。
三つ飛ばしするなんて聞いていないぞ。
「言葉が出ないってことを、今、体で表現しているね、アーロ」
「……すまんが、冗談は今一切耳に入らん」
シルフがフフッと笑っているが洒落にならん。
私は、最初のギルド試験監督官にもヘイリーにも伝えたはずなのだが、それは伝わっていなかったのか?
もしかして最終的な決定権はダリクがいるところなのか? なら、私の伝え損ねだな。
しかし、何故これほど上がる?
晴れたとはいっても一度疑いをかけられていたはずだ。こんな急に上げて、大丈夫なのだろうか。
それとも他に理由が?
「本当にすみません!」
「……受付嬢が悪いわけではない。とりあえず訳を聞いても?」
「は、はい!」
バンクルと共に紙を渡されていて、直接的に書いてはいなかったが、クラスを上げたことでより監視がしやすくなるということ、そして国からの依頼も受けろ、ということか。
まさか国が介入してくるとは。ここでも同じことやらされるなんてな。
「拒否は?」
「認めないそうです」
深いため息が出る。こんなことで葛藤などしたくなかったのだが、仕方がない。より強い魔物を調査するためだと割り切ろう。そうでなければ、私の精神が崩壊する。確実に。
「了解したと伝えてくれ」
「分かりました」
ブロンズのバンクルを受付嬢に渡し、新しい方を付けた。クラスが上がることは嬉しいのだが、複雑な心境だ。
とりあえず、気持ちを切り替えよう。これから依頼を受理してもらわなければ。
「護衛任務ですね。依頼者は向かいの所に住んでいますのでそちらに向かってください」
「分かった」
これほど任務に対して気が重くなることは久しぶりな気がする。元の世界で最初にモンスター討伐をしたとき以来だろうか。あの時よりかは強くなったが、それでもこんな気持ちになるとは。
「新しいのもらったって」
「ああ。大声で言うなよ」
受注が終わり、アレシア達が待つ机に向かった。
ヘイリーが体を起こしているということは、もうお腹の張りはなくなったようだな。
「おめでとうございます!」
「おめでとう」
二人に昇級したことを言うと、目を輝かせながら拍手するアレシアとは違い、一瞬で目が死んだヘイリー。
彼女のその様子を見ると不安になるのは、気のせいではないみたいだ。
これから過酷なこと多くなると予感している。
受けたことを今更ながら後悔した。
「……ちなみにだが、拒否権なんかはあったか?」
「あったよ」
どうやら私の方がきついことになっていたようだ。
自制心がないわけではないのだが、今後会うであろう国のお偉いさんに手を出さないようにしなくてはな。
拒否できなかったことを伝えると、驚きとともに肩に手を置かれ、慰められた。
上級と呼ばれる冒険者は全員こうなのかと聞くと、そうではないらしい。
力が飛びぬけている者、冒険者をしていて監視が必要な者が対象らしい。今回、私は後者に当たる。
国からの依頼を受ける者の数は、私を含めて八人。他六人が誰かは秘密だそうだ。
この話を誰にも聞かれないように、ヘイリーが私の耳元に近づいて話してくれた。
「お二人とも大丈夫ですか?」
同時にため息をついたことで眉尻を下げているアレシアに、ヘイリーが元気よく返事した。
気持ちの切り替えを早くする仕方を今度教えてもらうか。私は戦闘以外のことだとどうも苦手だしな。
「さっそく行こうか! 依頼者の所に」
レッツゴー! と言いながらギルドを元気よく出ていくヘイリーに続き、アレシアも恥ずかしがりながらだが、小さい声で言って出ていった。良い具合に感化されているな。
「アーロも言う?」なんてシルフが笑いながら聞いてくるが、一切しない。恥ずかしい思いをする位なら、言わない方がいい。ノリが悪いなんて言われても絶対にせん。
「ああ」
「先にお渡ししておきますね。古い方は私にください」
ついに一つクラスが上がる。早いか遅いかで言えば早い方らしい。アレシア情報だが。
地道だがその方が目立たない、と言いたいところなのだが、別の意味でも今目立ってしまっている。
男たちから視線。あれは羨望と嫉妬の眼差しだろうな。
私の周りには女性が二人と男装女子というべきか? 者が一人。意図してこうなったわけではないのだが、結果的にハーレム状態になってしまっている。
もう一つは同じクラスの冒険者たちからだ。先程の野蛮人への意趣返しをしたことへのだろうか?
今度は自分たちでやり返して欲しいが、それはまだまだ先かもな。
「こ、これでいいんだよね?」
「そうよ」
なにやらカリナが不安そうに隣の受付嬢に話しかけている。いったいどうしたんだ。
「あの、アーロさん。怒らないでくださいね」
恐る恐る私にバンクルを渡してくる。いったい何に対して怒るのやら。
「……」
「す、すみません!」
「ありゃ、これって」
唖然とするとはこういうことをいうのだな、という客観的な感想しか私の頭の中には浮かばなかった。
確か、ブロンズの次はアイアンだったはずなのだが、渡された物はミスリルだ。
三つ飛ばしするなんて聞いていないぞ。
「言葉が出ないってことを、今、体で表現しているね、アーロ」
「……すまんが、冗談は今一切耳に入らん」
シルフがフフッと笑っているが洒落にならん。
私は、最初のギルド試験監督官にもヘイリーにも伝えたはずなのだが、それは伝わっていなかったのか?
もしかして最終的な決定権はダリクがいるところなのか? なら、私の伝え損ねだな。
しかし、何故これほど上がる?
晴れたとはいっても一度疑いをかけられていたはずだ。こんな急に上げて、大丈夫なのだろうか。
それとも他に理由が?
「本当にすみません!」
「……受付嬢が悪いわけではない。とりあえず訳を聞いても?」
「は、はい!」
バンクルと共に紙を渡されていて、直接的に書いてはいなかったが、クラスを上げたことでより監視がしやすくなるということ、そして国からの依頼も受けろ、ということか。
まさか国が介入してくるとは。ここでも同じことやらされるなんてな。
「拒否は?」
「認めないそうです」
深いため息が出る。こんなことで葛藤などしたくなかったのだが、仕方がない。より強い魔物を調査するためだと割り切ろう。そうでなければ、私の精神が崩壊する。確実に。
「了解したと伝えてくれ」
「分かりました」
ブロンズのバンクルを受付嬢に渡し、新しい方を付けた。クラスが上がることは嬉しいのだが、複雑な心境だ。
とりあえず、気持ちを切り替えよう。これから依頼を受理してもらわなければ。
「護衛任務ですね。依頼者は向かいの所に住んでいますのでそちらに向かってください」
「分かった」
これほど任務に対して気が重くなることは久しぶりな気がする。元の世界で最初にモンスター討伐をしたとき以来だろうか。あの時よりかは強くなったが、それでもこんな気持ちになるとは。
「新しいのもらったって」
「ああ。大声で言うなよ」
受注が終わり、アレシア達が待つ机に向かった。
ヘイリーが体を起こしているということは、もうお腹の張りはなくなったようだな。
「おめでとうございます!」
「おめでとう」
二人に昇級したことを言うと、目を輝かせながら拍手するアレシアとは違い、一瞬で目が死んだヘイリー。
彼女のその様子を見ると不安になるのは、気のせいではないみたいだ。
これから過酷なこと多くなると予感している。
受けたことを今更ながら後悔した。
「……ちなみにだが、拒否権なんかはあったか?」
「あったよ」
どうやら私の方がきついことになっていたようだ。
自制心がないわけではないのだが、今後会うであろう国のお偉いさんに手を出さないようにしなくてはな。
拒否できなかったことを伝えると、驚きとともに肩に手を置かれ、慰められた。
上級と呼ばれる冒険者は全員こうなのかと聞くと、そうではないらしい。
力が飛びぬけている者、冒険者をしていて監視が必要な者が対象らしい。今回、私は後者に当たる。
国からの依頼を受ける者の数は、私を含めて八人。他六人が誰かは秘密だそうだ。
この話を誰にも聞かれないように、ヘイリーが私の耳元に近づいて話してくれた。
「お二人とも大丈夫ですか?」
同時にため息をついたことで眉尻を下げているアレシアに、ヘイリーが元気よく返事した。
気持ちの切り替えを早くする仕方を今度教えてもらうか。私は戦闘以外のことだとどうも苦手だしな。
「さっそく行こうか! 依頼者の所に」
レッツゴー! と言いながらギルドを元気よく出ていくヘイリーに続き、アレシアも恥ずかしがりながらだが、小さい声で言って出ていった。良い具合に感化されているな。
「アーロも言う?」なんてシルフが笑いながら聞いてくるが、一切しない。恥ずかしい思いをする位なら、言わない方がいい。ノリが悪いなんて言われても絶対にせん。
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