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4章
51話 悪魔となったもの
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「あれは、夢だったのか?」
体が浮いたような感覚と、目を瞑っていても入ってくる光で、戻ってこれたとのだと実感する。
「アーロ!」
「シルフか」
「大丈夫?」
心配と喜ぶ気持ちが混じったような声を出して、隣に来た。
それよりも気になることはリカロだ。 今こうやって私が生きているのは、奇跡に近い。
モンスターになるほど憎んでいるのなら、術中にはまっている間に殺せば良かったものを、何もせずに傍観していただけか。
「シルフ。私がなにかに覆われている間、あいつは何かしてきたか?」
「ううん、何も」
もしかしたら防いでいてくれていたのか? とも思ったが、それはないみたいだ。
ますます不思議だ。何故何もしなかったのか。
私だったら手を出している。殺すチャンスを手放しするつもりはないからな。
となると、精神を崩壊させる、又は生命力を奪った状態で勝とうとしていたのか?
愚かな。
「わざわざ待ってくれていたのか、優しいな。それで殺さないなんて事を私はしないが」
話せる余裕があるのは、どうかと思うが、襲いかかって来ないならその分考えられる時間も増える。
「どうした? まさかお前の攻撃があれだけだとは言わないよな? それだったら人間のまま怪物になった方がマシだったと思うぞ」
この間にスモークの準備を……。
しかし、先程から何も動きがないのが怪しすぎる。
しゃべるなりなんなりすればいいのに、何も反応がない。
この沈黙が恐ろしいが、こちらからは下手に動けないな。
煽りすぎも危険だろう。
さて、どうするべきか。
「しね!」
「お前を地面とキスさせてやってもいいが、どうする?」
挑発しすぎたかもしれんが、一応離れさせることは出来た。
アレシアを放り投げ、長く伸びた爪で私を切り裂こうとしている。
このまま避けても平気かもしれんが、ここは魔法がある世界。
振り下ろした後で何が起きるかわからないから警戒しておかなくては。
「シネしねシねしねしネ!」
「モンスターになって知能が下がったのか?」
手や足を使って、どうにか当てようとしているのだけは分かるのだが、何せんかすりもしない。
早めに終わらせた方がこちらの体力も減らさなくて済む。
そうするには銃を使うのが一番だが、跳弾して誰かに当たるかもしれない。
それだけは避けなくては。
シルフに避難させろと声をかければ、今はこっちに集中しているが、そちらに行く可能性も否定できない。
「皆をある程度の所まで下がらせたから思いっきりしていいよ」
「助かる」
こちらからは何も伝えていないが、シルフが察して後退させてくれたのは有り難い。
痒いところに手が届くとはまさにこのことだな。
やつの対処の仕方が人と同じと考えるならば頭を狙えばいいが、もし違った場合、真っ先に胸を狙うのが一番だろう。
当たる当たらないは別として。
とりあえずこの膠着したままの状況を何とかしなくては。
足場の踏み場がなくなってきた。
地面の抉れかたからして、相当な威力なのだろうな。
「サッサとしネ!」
「それ以外の言葉は思いつかないのか、リカロ。さすがに厭きてきたぞ」
瞬時に照準を合わせ頭を狙う。
避けられることも考えて慎重に。
「もう終わりにしようか」
抉れ過ぎて大きな穴が出来ている。
足元とリカロの攻撃に当たらないよう注意を払ってはいるが、そろそろ集中力が切れそうだ。
「さらばだ、元リーダー」
感情などなく、躊躇なく引き金を引く。
響いたのは、発砲音でも地面に倒れる音でもなかった。何かに遮られた音だった。
リカロが目の前で平然と立っている。
頭では無理だったか。なら、腹を狙うか。
「そんなもノじゃ、キカねェよ」
「……完全に悪魔となしたか」
銃が効かないことが分かった瞬間、リカロの口角が歪に上がった。
とりあえず全弾撃って油断させとくか。
万が一の為にと、残しておいた銀弾入りのマガジンを装填する。
それほど多く持っていないから、外す事は出来ん。
「あきラめロよ! おまエじゃオレにはかテねェ!」
「断る」
気分が高揚することで力が増すのか。
厄介だな。
人ではない雄叫び声を上げ、リカロを中心に強い風が舞う。
これが止むまで無闇に撃てん。
その余波で後ろに押される。
止んだ瞬間見たものは、もうリカロではなく、角が生え、翼を生やして飛んでいる悪魔そのものだった。
だが、どう変わろうとやることは1つだ。
奴の腹に1発入れる。
風が止んだ瞬間にぶち込んだ。この時が1番油断している時だからな。
「そんナものキか……」
「効いたみたいだな」
「な、ナンダこレ」
腹に撃った銀が、傷口から少しずつリカロの身体を侵食している。
ただの銀弾にそんな効果はないのだが、それで死ぬならそれでいい。
「触らん方がいいぞ」
中にある物を取り出そうと焦っているが、何もせずに侵食しているのを取ろうとしたところで、その手も同じ事になる。
「く、くるシい……」
「それはそうだろうな」
何せ、銀は悪魔や狼男に有効だと云われている物だ。それはこの世界でも変わらないらしい。
「今度こそさらばだ」
銀が奴の身体全体を覆い、少しずつ崩れ落ちていく。
復讐心を持つなってのは難しいことだ。
だが、どうしてそれで私を追い越そうなどと思わなかったのか。それだけが不思議だ。
体が浮いたような感覚と、目を瞑っていても入ってくる光で、戻ってこれたとのだと実感する。
「アーロ!」
「シルフか」
「大丈夫?」
心配と喜ぶ気持ちが混じったような声を出して、隣に来た。
それよりも気になることはリカロだ。 今こうやって私が生きているのは、奇跡に近い。
モンスターになるほど憎んでいるのなら、術中にはまっている間に殺せば良かったものを、何もせずに傍観していただけか。
「シルフ。私がなにかに覆われている間、あいつは何かしてきたか?」
「ううん、何も」
もしかしたら防いでいてくれていたのか? とも思ったが、それはないみたいだ。
ますます不思議だ。何故何もしなかったのか。
私だったら手を出している。殺すチャンスを手放しするつもりはないからな。
となると、精神を崩壊させる、又は生命力を奪った状態で勝とうとしていたのか?
愚かな。
「わざわざ待ってくれていたのか、優しいな。それで殺さないなんて事を私はしないが」
話せる余裕があるのは、どうかと思うが、襲いかかって来ないならその分考えられる時間も増える。
「どうした? まさかお前の攻撃があれだけだとは言わないよな? それだったら人間のまま怪物になった方がマシだったと思うぞ」
この間にスモークの準備を……。
しかし、先程から何も動きがないのが怪しすぎる。
しゃべるなりなんなりすればいいのに、何も反応がない。
この沈黙が恐ろしいが、こちらからは下手に動けないな。
煽りすぎも危険だろう。
さて、どうするべきか。
「しね!」
「お前を地面とキスさせてやってもいいが、どうする?」
挑発しすぎたかもしれんが、一応離れさせることは出来た。
アレシアを放り投げ、長く伸びた爪で私を切り裂こうとしている。
このまま避けても平気かもしれんが、ここは魔法がある世界。
振り下ろした後で何が起きるかわからないから警戒しておかなくては。
「シネしねシねしねしネ!」
「モンスターになって知能が下がったのか?」
手や足を使って、どうにか当てようとしているのだけは分かるのだが、何せんかすりもしない。
早めに終わらせた方がこちらの体力も減らさなくて済む。
そうするには銃を使うのが一番だが、跳弾して誰かに当たるかもしれない。
それだけは避けなくては。
シルフに避難させろと声をかければ、今はこっちに集中しているが、そちらに行く可能性も否定できない。
「皆をある程度の所まで下がらせたから思いっきりしていいよ」
「助かる」
こちらからは何も伝えていないが、シルフが察して後退させてくれたのは有り難い。
痒いところに手が届くとはまさにこのことだな。
やつの対処の仕方が人と同じと考えるならば頭を狙えばいいが、もし違った場合、真っ先に胸を狙うのが一番だろう。
当たる当たらないは別として。
とりあえずこの膠着したままの状況を何とかしなくては。
足場の踏み場がなくなってきた。
地面の抉れかたからして、相当な威力なのだろうな。
「サッサとしネ!」
「それ以外の言葉は思いつかないのか、リカロ。さすがに厭きてきたぞ」
瞬時に照準を合わせ頭を狙う。
避けられることも考えて慎重に。
「もう終わりにしようか」
抉れ過ぎて大きな穴が出来ている。
足元とリカロの攻撃に当たらないよう注意を払ってはいるが、そろそろ集中力が切れそうだ。
「さらばだ、元リーダー」
感情などなく、躊躇なく引き金を引く。
響いたのは、発砲音でも地面に倒れる音でもなかった。何かに遮られた音だった。
リカロが目の前で平然と立っている。
頭では無理だったか。なら、腹を狙うか。
「そんなもノじゃ、キカねェよ」
「……完全に悪魔となしたか」
銃が効かないことが分かった瞬間、リカロの口角が歪に上がった。
とりあえず全弾撃って油断させとくか。
万が一の為にと、残しておいた銀弾入りのマガジンを装填する。
それほど多く持っていないから、外す事は出来ん。
「あきラめロよ! おまエじゃオレにはかテねェ!」
「断る」
気分が高揚することで力が増すのか。
厄介だな。
人ではない雄叫び声を上げ、リカロを中心に強い風が舞う。
これが止むまで無闇に撃てん。
その余波で後ろに押される。
止んだ瞬間見たものは、もうリカロではなく、角が生え、翼を生やして飛んでいる悪魔そのものだった。
だが、どう変わろうとやることは1つだ。
奴の腹に1発入れる。
風が止んだ瞬間にぶち込んだ。この時が1番油断している時だからな。
「そんナものキか……」
「効いたみたいだな」
「な、ナンダこレ」
腹に撃った銀が、傷口から少しずつリカロの身体を侵食している。
ただの銀弾にそんな効果はないのだが、それで死ぬならそれでいい。
「触らん方がいいぞ」
中にある物を取り出そうと焦っているが、何もせずに侵食しているのを取ろうとしたところで、その手も同じ事になる。
「く、くるシい……」
「それはそうだろうな」
何せ、銀は悪魔や狼男に有効だと云われている物だ。それはこの世界でも変わらないらしい。
「今度こそさらばだ」
銀が奴の身体全体を覆い、少しずつ崩れ落ちていく。
復讐心を持つなってのは難しいことだ。
だが、どうしてそれで私を追い越そうなどと思わなかったのか。それだけが不思議だ。
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