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4章
49話 逆の立場にもなる
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モンスターなどの頂点に立つと云われている存在。それが
魔王。
まだ確証を得たわけではない。ただ、そんな気がしているだけだ。
そして用が済んだのか、あれほど出していた威圧感を無くすと同時に、時も動き始めた。
「大丈夫か? じっと固まっていたが」
「心配ない」
何故、奴は私を育てるような事をする。
戦うのを楽しみにしているとも言ったが、他にも理由がありそうな気がしてならない。
まぁ、いい。そのわけは後で考えよう。
今は、目の前のことに集中しなくては。
「どう対処すればいい。ああなった原因は私にある。元仲間として、その責任を負わなくてはならない」
「モンスター化した人は初めて見る。我々もどうするべきか迷っているのだ」
もし、何かの声を聞いて変化してしまったのならば、呪いならば解呪。もしくは、私が知らない何かで解決するのか。
「どうするべきだ、シルフ」
「ああなっちゃったら、死なせることしか出来ないよ。下っ端って扱いだけど、傘下に入っちゃったから」
無慈悲なものだな。人として産まれ、怪物となって死ぬしかないなんて。
いくら、嫌いだとは言っても、最後は人として死なせてあげたいとすら思えてくる。
「あれは呪いなのか? もしそれなら解呪は出来ないのか?」
「うーん、それとはまた違うかな。どちらかというと異形化かな。解くことは出来ないことはないけど、あれと同等か、それ以上の魔力を持っている人が必要かな」
ここにいる魔法使い達の実力はどれくらいだ? 奴と同じならば、抑えることが出来るかもしれない。
だが、もし、出来なかったら? 覚悟を決めて、私がやるしかないのか?
「ここにはあれと同等の力を持った人はいないから、解呪は無理だね。それに、君と戦いたいみたいだよ」
ハッキリと無理だと言われてしまった。
どうやら、覚悟を決めるしかないようだ。
シルフが指を差し、そこから私の方へ手を向けてくる。視線を表しているのか? あいつの。
いまだに何かを呟いている。先程から感じる違和感。それが何なのかはわからない。
ただ、あれこれ考えても今はどうにもならない。
「確認したいのだが、私が始末してもいいのだな?」
「ああ、頼む。そこのお嬢さんが言うように、我々では太刀打ち出来ない」
「……分かった」
大事になる前に終わらせよう。
「……リカロを討伐する」
「死なないでね」
近衛兵たちに打つ手なし。
ならば仕方ない。
恨みを私に向けているのならば、それを自らの手で解こう。
「……」
迷いは不要。やるなら徹底的にだ。
私が来ていることはすでにばれているが、そのまま突っ込む気はない。
ここからあいつまでの距離は、約5メートルか。狙撃するにしては短すぎる。
それでもやらないよりはましだろう。
人質を取っているということは、そこから動く気はないと考えよう。
どうにか誘き出して、人がいない場所で殺るしかない。
今のあいつがどう変化しているのかは分からない。下手に手を出そうものなら、アレシアに傷が付く。
「……困ったものだな」
ここまで困った状況は初めてだな。それでも、奴から彼女を離さなくては。
少しだけ距離を取ろう。そして、そこから撃つ。
「あ……」
「そこカら、うごクな」
その場から移動しようとしたことで、彼女の首に手をかけているリカロが、少しだけ力を込めた。
今まで戦って来たやつらよりかは、あいつから脅威を感じない。
だが、人質を取られていることで、自身の動きが制限されてしまう。
「おリてコイ、おクびょウもの」
「まぁ、待て。対策を考えているところだ」
言っていることが無茶苦茶だな。
おそらく、それで私を混乱させようとしているのだろう。
先にアレシアの救出が先だな。奴の視界を奪うにはスモークが1番だ。今、持っているだろうか?
腰にあるポーチに手を伸ばし、確認する。よかった、2つある。
奴の目が良くなりすぎてなければいいが。
「うごクなといってイるだろう!!」
「……そう、急かすな」
なんだ、今のは。口から光線を吐き出したぞ……。
避けるのが遅ければ、後ろにある岩のように私の首が切断されていたところだった。
奴の我慢もそろそろ限界のようだ。その上私が少し動いただけであの怒り方だ。
これ以上ここで、いろいろと考えていない方がいいかもしれない。
動くなと言っているのに、降りてこいと言っている意味。
それは、さんざん私に馬鹿にされた復讐なのだろう。
言葉で私を混乱させ、その上人質を取っていることで、立場が優位になったと思っている。
実際、今は奴の方が力も上だ。
だが、それがどうした? そんなもの今まで何度でも相手してきた。
だがまぁ、奴が降りてこいというのなら、しばらくはそれに従ってみるか。
何が起きるかは分からんが、警戒と逃げる準備だけはしておいた方がいいだろう。
「ほら、降りたぞ」
「ばかめ」
「きゃあああ!」
「アーロ!!」
何が起きたのかはわからないが、嘲笑と悲鳴が聞こえ、一瞬で視界が黒くなった。
これは周りが暗いのか? それとも私の目が見えなくなってしまったのか?
分からないが、注意だけはしておかなくては。
魔王。
まだ確証を得たわけではない。ただ、そんな気がしているだけだ。
そして用が済んだのか、あれほど出していた威圧感を無くすと同時に、時も動き始めた。
「大丈夫か? じっと固まっていたが」
「心配ない」
何故、奴は私を育てるような事をする。
戦うのを楽しみにしているとも言ったが、他にも理由がありそうな気がしてならない。
まぁ、いい。そのわけは後で考えよう。
今は、目の前のことに集中しなくては。
「どう対処すればいい。ああなった原因は私にある。元仲間として、その責任を負わなくてはならない」
「モンスター化した人は初めて見る。我々もどうするべきか迷っているのだ」
もし、何かの声を聞いて変化してしまったのならば、呪いならば解呪。もしくは、私が知らない何かで解決するのか。
「どうするべきだ、シルフ」
「ああなっちゃったら、死なせることしか出来ないよ。下っ端って扱いだけど、傘下に入っちゃったから」
無慈悲なものだな。人として産まれ、怪物となって死ぬしかないなんて。
いくら、嫌いだとは言っても、最後は人として死なせてあげたいとすら思えてくる。
「あれは呪いなのか? もしそれなら解呪は出来ないのか?」
「うーん、それとはまた違うかな。どちらかというと異形化かな。解くことは出来ないことはないけど、あれと同等か、それ以上の魔力を持っている人が必要かな」
ここにいる魔法使い達の実力はどれくらいだ? 奴と同じならば、抑えることが出来るかもしれない。
だが、もし、出来なかったら? 覚悟を決めて、私がやるしかないのか?
「ここにはあれと同等の力を持った人はいないから、解呪は無理だね。それに、君と戦いたいみたいだよ」
ハッキリと無理だと言われてしまった。
どうやら、覚悟を決めるしかないようだ。
シルフが指を差し、そこから私の方へ手を向けてくる。視線を表しているのか? あいつの。
いまだに何かを呟いている。先程から感じる違和感。それが何なのかはわからない。
ただ、あれこれ考えても今はどうにもならない。
「確認したいのだが、私が始末してもいいのだな?」
「ああ、頼む。そこのお嬢さんが言うように、我々では太刀打ち出来ない」
「……分かった」
大事になる前に終わらせよう。
「……リカロを討伐する」
「死なないでね」
近衛兵たちに打つ手なし。
ならば仕方ない。
恨みを私に向けているのならば、それを自らの手で解こう。
「……」
迷いは不要。やるなら徹底的にだ。
私が来ていることはすでにばれているが、そのまま突っ込む気はない。
ここからあいつまでの距離は、約5メートルか。狙撃するにしては短すぎる。
それでもやらないよりはましだろう。
人質を取っているということは、そこから動く気はないと考えよう。
どうにか誘き出して、人がいない場所で殺るしかない。
今のあいつがどう変化しているのかは分からない。下手に手を出そうものなら、アレシアに傷が付く。
「……困ったものだな」
ここまで困った状況は初めてだな。それでも、奴から彼女を離さなくては。
少しだけ距離を取ろう。そして、そこから撃つ。
「あ……」
「そこカら、うごクな」
その場から移動しようとしたことで、彼女の首に手をかけているリカロが、少しだけ力を込めた。
今まで戦って来たやつらよりかは、あいつから脅威を感じない。
だが、人質を取られていることで、自身の動きが制限されてしまう。
「おリてコイ、おクびょウもの」
「まぁ、待て。対策を考えているところだ」
言っていることが無茶苦茶だな。
おそらく、それで私を混乱させようとしているのだろう。
先にアレシアの救出が先だな。奴の視界を奪うにはスモークが1番だ。今、持っているだろうか?
腰にあるポーチに手を伸ばし、確認する。よかった、2つある。
奴の目が良くなりすぎてなければいいが。
「うごクなといってイるだろう!!」
「……そう、急かすな」
なんだ、今のは。口から光線を吐き出したぞ……。
避けるのが遅ければ、後ろにある岩のように私の首が切断されていたところだった。
奴の我慢もそろそろ限界のようだ。その上私が少し動いただけであの怒り方だ。
これ以上ここで、いろいろと考えていない方がいいかもしれない。
動くなと言っているのに、降りてこいと言っている意味。
それは、さんざん私に馬鹿にされた復讐なのだろう。
言葉で私を混乱させ、その上人質を取っていることで、立場が優位になったと思っている。
実際、今は奴の方が力も上だ。
だが、それがどうした? そんなもの今まで何度でも相手してきた。
だがまぁ、奴が降りてこいというのなら、しばらくはそれに従ってみるか。
何が起きるかは分からんが、警戒と逃げる準備だけはしておいた方がいいだろう。
「ほら、降りたぞ」
「ばかめ」
「きゃあああ!」
「アーロ!!」
何が起きたのかはわからないが、嘲笑と悲鳴が聞こえ、一瞬で視界が黒くなった。
これは周りが暗いのか? それとも私の目が見えなくなってしまったのか?
分からないが、注意だけはしておかなくては。
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