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3章
39話 雪山戦
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「さむーい!」
「大声を出さないでくれ。ばれてしまう」
不安は現実へと変わった。
原因は分からないが、異常事態が発生している。
雪山に入った時は、雪がただ降っているだけだったが、探している途中から吹雪へと変わってしまったのだ。
何年か雪山で依頼を受けたことはあったそうだが、これは初めてらしくヘイリーも慌てて、大声を出している。
「なんでー!」
「大声で言われても君が分からないのなら私にも分からん。ただ、必ずと言っていいほど原因がある。それを探ってみてはどうだ?」
「無理ー!」
寒さで判断能力が落ちていると考えたほうがよさそうだな。
先程から一言でしか返されていない。
「てか、何その白いやつ」
「偽装テープだ」
「よくわかんない」
白い空間に黒い物は違和感を持つ。
知性があるモンスターならこれを見て狙いに来るだろう。
そうならないためにも偽装しなくては。
本当は服全て変えたかったのだが、パーカー付きの上着はヘイリーに貸している。
「アーロのその布ってめちゃくちゃ暖かそう」
「これでもまだまだ寒い方だ。君のその恰好を見ていると私まで寒く感じる」
耳当てと帽子、手袋。そして厚めの布。
これでもまだ寒いということは氷点下まで下がっているということか。
迅速に終わらせた方がいいかもしれない。
「あ、いた」
「そんな都合よく……」
見つからないと言おうとしたのだが、王者であるかのようにゆっくりと歩きながら、私たちの目の前を通っていく。そんなことってあるのか?
気付かれる前に有利な場所へと言おうとしたら、ヘイリーが突撃していった。
何故そんな正面から行くんだ。
出鼻をくじかれたが、今からでも遅くはない。
自分にとって有利な場所を探すか。
「アイスベアーの弱点はどこだ?」
「目! でも、ある程度攻撃しないと。魔法とかも効きづらいよ」
アサルトライフルで体全体に攻撃はしているが、効いているのかが分からない。
ただ、金属同士がぶつかる音が雪山に響いているのだけは確かなようだ。
「目を狙えるか?」
「狙おうとすると爪が」
「これで試してみる価値はあるな」
体から目へと照準を合わせる。十分とはいえないが、弾の補充は出来ている。
だが、この後も無事に帰れるかどうかを考えると、配分を考えていた方がよさそうだな。
マガジンは後、3つ。スナイパーの弾は4。
ときどき私の方へ来るも、避けながら撃っていた。
偶然だと思うのだが、ヘイリーは銃の特性を理解しているような動きをしている。
そのおかげでこちらにも余裕が出来た。
撃ち続けて何分か。突如ガラスが割れたような音が響く。
この雪山にガラスはない。となると、魔法が解けたということか。
彼女も同じことを感じたようだ。
目に向けて槍を勢いよく突こうとしている。
あれだけ近い距離にいながら外すなんてことはないと信じたいが、絶対とは言えなかった。
「てりゃ!」
予想は外れた。
まっすぐのばした槍がアイスベアーの目に突き刺さる。
痛みでよろめいた隙に熊の反対側へ周り、もう1つの目を銃で撃ちぬいた。
1つやられても生きているのは恐ろしいものだな。
「ふぅー。手強かったー!」
「すぐこの場を離れたほうがよさそうだ」
「なんで?」
「雪崩が起きそうだ」
指差す方を見ると、雪が少しずつ崩れ落ちている。
今はまだ少ないが、いつ起きるかはわからない。
ちょっとした音で雪崩が起きないとも限らなかった。
「雪崩を見たことは?」
「ないかな」
「なら、すぐに去るべきだ」
大丈夫でしょと言って余裕をこいているヘイリーを腕を掴み、強制的にこの場を後にする。
「証拠となる耳、取ってないんだよ」
「……なるべく迅速に頼む」
雪山に衝撃を与えないように戻り、証拠を取るまで待った。
たいがい人は焦っている時にイライラしてしまうものだが、こういう時でも冷静でいられた。
狙撃手として何日も待っている甲斐があったな。
「もう大丈夫か?」
「大丈夫そう」
防寒用にと皮を剥ぎ、肉をさばいてシルフが前持っていた葉で包み、鞄の中へと入れた。
そういえば昇級試験の説明を受けている時から姿を見ていないが、どこに行ったのだろうか。
アレシアと一緒にいるのか? それならひとまずは安心だな。
「大声を出さないでくれ。ばれてしまう」
不安は現実へと変わった。
原因は分からないが、異常事態が発生している。
雪山に入った時は、雪がただ降っているだけだったが、探している途中から吹雪へと変わってしまったのだ。
何年か雪山で依頼を受けたことはあったそうだが、これは初めてらしくヘイリーも慌てて、大声を出している。
「なんでー!」
「大声で言われても君が分からないのなら私にも分からん。ただ、必ずと言っていいほど原因がある。それを探ってみてはどうだ?」
「無理ー!」
寒さで判断能力が落ちていると考えたほうがよさそうだな。
先程から一言でしか返されていない。
「てか、何その白いやつ」
「偽装テープだ」
「よくわかんない」
白い空間に黒い物は違和感を持つ。
知性があるモンスターならこれを見て狙いに来るだろう。
そうならないためにも偽装しなくては。
本当は服全て変えたかったのだが、パーカー付きの上着はヘイリーに貸している。
「アーロのその布ってめちゃくちゃ暖かそう」
「これでもまだまだ寒い方だ。君のその恰好を見ていると私まで寒く感じる」
耳当てと帽子、手袋。そして厚めの布。
これでもまだ寒いということは氷点下まで下がっているということか。
迅速に終わらせた方がいいかもしれない。
「あ、いた」
「そんな都合よく……」
見つからないと言おうとしたのだが、王者であるかのようにゆっくりと歩きながら、私たちの目の前を通っていく。そんなことってあるのか?
気付かれる前に有利な場所へと言おうとしたら、ヘイリーが突撃していった。
何故そんな正面から行くんだ。
出鼻をくじかれたが、今からでも遅くはない。
自分にとって有利な場所を探すか。
「アイスベアーの弱点はどこだ?」
「目! でも、ある程度攻撃しないと。魔法とかも効きづらいよ」
アサルトライフルで体全体に攻撃はしているが、効いているのかが分からない。
ただ、金属同士がぶつかる音が雪山に響いているのだけは確かなようだ。
「目を狙えるか?」
「狙おうとすると爪が」
「これで試してみる価値はあるな」
体から目へと照準を合わせる。十分とはいえないが、弾の補充は出来ている。
だが、この後も無事に帰れるかどうかを考えると、配分を考えていた方がよさそうだな。
マガジンは後、3つ。スナイパーの弾は4。
ときどき私の方へ来るも、避けながら撃っていた。
偶然だと思うのだが、ヘイリーは銃の特性を理解しているような動きをしている。
そのおかげでこちらにも余裕が出来た。
撃ち続けて何分か。突如ガラスが割れたような音が響く。
この雪山にガラスはない。となると、魔法が解けたということか。
彼女も同じことを感じたようだ。
目に向けて槍を勢いよく突こうとしている。
あれだけ近い距離にいながら外すなんてことはないと信じたいが、絶対とは言えなかった。
「てりゃ!」
予想は外れた。
まっすぐのばした槍がアイスベアーの目に突き刺さる。
痛みでよろめいた隙に熊の反対側へ周り、もう1つの目を銃で撃ちぬいた。
1つやられても生きているのは恐ろしいものだな。
「ふぅー。手強かったー!」
「すぐこの場を離れたほうがよさそうだ」
「なんで?」
「雪崩が起きそうだ」
指差す方を見ると、雪が少しずつ崩れ落ちている。
今はまだ少ないが、いつ起きるかはわからない。
ちょっとした音で雪崩が起きないとも限らなかった。
「雪崩を見たことは?」
「ないかな」
「なら、すぐに去るべきだ」
大丈夫でしょと言って余裕をこいているヘイリーを腕を掴み、強制的にこの場を後にする。
「証拠となる耳、取ってないんだよ」
「……なるべく迅速に頼む」
雪山に衝撃を与えないように戻り、証拠を取るまで待った。
たいがい人は焦っている時にイライラしてしまうものだが、こういう時でも冷静でいられた。
狙撃手として何日も待っている甲斐があったな。
「もう大丈夫か?」
「大丈夫そう」
防寒用にと皮を剥ぎ、肉をさばいてシルフが前持っていた葉で包み、鞄の中へと入れた。
そういえば昇級試験の説明を受けている時から姿を見ていないが、どこに行ったのだろうか。
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