39 / 80
3章
38話 協力
しおりを挟む
しかし、話すべきなのだろうか?
これが複数でやる依頼だったなら、目の前の女性に協力を仰いで、同行するほうがいいかもしれない。
ヘイリーは土地勘がある。裏道を探している間にも、ここがどういう店で、何をしている場所かを説明してくれている。
だが、もしこの依頼が1人でするものだったら?……いや、それはないな。
それなら、一緒に行こうとしていたアレシアに、同行してはいけないなどと言わないはずだ。
もしかして、知らない土地で知らない相手にどれだけ協力を仰ぎ、どう対処するのかを試されている? それだったなら納得がいく。
アレシアを同行させなかったが、とくに人数は指定されていなかった。
注意事項は怪我、もしくは死亡させてはならないとだけだ。
監督するものがいないが、代わりに誰かが監視役になっているのだとしたら、どこかで見ているのかもしれない。
だが、それだと不明な点が出てくる。何のためにこんなことをさせているのか、だ。
ブロンズからアイアンへの昇級試験にしては、荷が重すぎる。
私なんかよりも、上手く出来るものは必ずいるはずだ。
確実に成功させたいなら、新人である私よりもその者に任せる方がいい。
わたしでもそうする。
「ねぇ」
「ん?」
「さっきから呼んでるのに、全然反応しないじゃん」
「すまない。少々考え事をな」
「何考えてたの?」
少しずつ話して、信用できるかどうかを試すか。一か八かだ。
「人探しに協力してもらおうかどうかを」
「別にいいよ。ただし、私の依頼を手伝ってくれたら協力してあげる」
「一つ上のならなんとか協力は出来る」
「んじゃ決まり」
裏道へ行こうとしていた私の腕を掴み、どこかへと連れていかれた。
いったいどこに行くんだ。門とは違う方向に走っている。
「ここで受けるよ」
付いた先は冒険者ギルドだった。街に冒険者がいることに驚きはしない。ここへ来る途中でも何人か見かけた。
だが、私が入った場所とは段違いの豪華さだった。
街の中に門があるのを不思議に思っていたが、こうやって分けられているとは。
なにか意味があるのだろうか。
「私は、何もしなくていいのか? 証明書だとか」
「必要ないに決まってるんじゃん。なにより、それが証明になる」
街の中に入る時もバンクルを見せるだけで良かったから、ここでも大丈夫らしい。
偽造とかを疑わないのだろうか。
どんな素材で作られているかのを登録した時に説明をされなかったから、もしかしたら私が知らないだけでこの世界の子供たちも知っている常識なのかもしれない。
「こんにちは、ヘイリーさん」
「この依頼、2人で受けてもいい?」
外観だけでなく、内観まで豪華だった。私が圧倒されている間に彼女が依頼書を取り、受付に渡していた。
依頼内容を確認しなければ。
「何人でも構いませんが、そちらの方は?」
「アーロだ。東の街の冒険者で、クラスはブロンズ」
「証明するものを」
腕につけているものを見せ、承認された。
依頼内容は、アイスベアーを討伐することだった。
名前からだいたいの想像はできるが、冬季戦となると少し厄介だ。
どこででも戦闘は出来るようにはしているが、手がかじかむ可能性もなくはない。
「んじゃ、行こうか」
「待て。何も着て行かないのか? 雪が降っている可能性もあるんだぞ。それに、食料も買わずに行くのか?」
身軽な格好をしているとはいっても、素肌が見えている防具のままでいけば凍傷になる可能性だってある。
それとも、なんだ。防寒できる術でも持っているのか?
「現地調達するよ。それとも、買ってくれるの?」
「そこまで買う金は持っていない」
「んじゃ、現地調達だね」
「……食料は仕方ないとしても、防寒具を着なければ」
「これがあるから大丈夫」
鎧の下に手を入れて、何かを探している。
鎧が動く音が何秒かして、取り出したのは石が付いたネックレスだった。
ただの石ではないのは確かなようだが、どうも区別は付きづらい。
聞くと、それは寒さを軽減する魔石とのことだった。どこ買えるのかと聞けば魔石店で買えるよ、と。
あの街にもあったのだろうか? いや、あったのだろう。私が興味なく、素通りしていただけだ。
今後のために頭の片隅にでも置いておこう。いつしか役に立つときもあるだろうからな。
「それだけだとしても、寒いことに変わりはないのでは」
「大丈夫! そこまで寒いところにはいかないし、いないから」
その言葉を聞いて不安に駆られるのは気のせいだろうか。
もし、予想以上に寒ければ、念のためと常に持っている防寒具を1つ貸すしかなさそうだ。
今のうちに貸しておいた方がいいのか?
安物で申し訳ないが、なけなしの金で防寒着を買おう。
凍傷になっても治療する道具は持っていない。
「少しでもいつもと違うと感じたら、何か言ってくれ。1つだけで申し訳ないが、防寒するものを貸す」
「心配性だな、アーロは」
笑ってはいるが、最悪の場合、指を切らないといけなくなる。
本当に何事もなく終わればそれで万々歳なのだが、私がこうやって不安になる時は、何かしらがいつも起きている。
本当に何も起きないでくれ。
これが複数でやる依頼だったなら、目の前の女性に協力を仰いで、同行するほうがいいかもしれない。
ヘイリーは土地勘がある。裏道を探している間にも、ここがどういう店で、何をしている場所かを説明してくれている。
だが、もしこの依頼が1人でするものだったら?……いや、それはないな。
それなら、一緒に行こうとしていたアレシアに、同行してはいけないなどと言わないはずだ。
もしかして、知らない土地で知らない相手にどれだけ協力を仰ぎ、どう対処するのかを試されている? それだったなら納得がいく。
アレシアを同行させなかったが、とくに人数は指定されていなかった。
注意事項は怪我、もしくは死亡させてはならないとだけだ。
監督するものがいないが、代わりに誰かが監視役になっているのだとしたら、どこかで見ているのかもしれない。
だが、それだと不明な点が出てくる。何のためにこんなことをさせているのか、だ。
ブロンズからアイアンへの昇級試験にしては、荷が重すぎる。
私なんかよりも、上手く出来るものは必ずいるはずだ。
確実に成功させたいなら、新人である私よりもその者に任せる方がいい。
わたしでもそうする。
「ねぇ」
「ん?」
「さっきから呼んでるのに、全然反応しないじゃん」
「すまない。少々考え事をな」
「何考えてたの?」
少しずつ話して、信用できるかどうかを試すか。一か八かだ。
「人探しに協力してもらおうかどうかを」
「別にいいよ。ただし、私の依頼を手伝ってくれたら協力してあげる」
「一つ上のならなんとか協力は出来る」
「んじゃ決まり」
裏道へ行こうとしていた私の腕を掴み、どこかへと連れていかれた。
いったいどこに行くんだ。門とは違う方向に走っている。
「ここで受けるよ」
付いた先は冒険者ギルドだった。街に冒険者がいることに驚きはしない。ここへ来る途中でも何人か見かけた。
だが、私が入った場所とは段違いの豪華さだった。
街の中に門があるのを不思議に思っていたが、こうやって分けられているとは。
なにか意味があるのだろうか。
「私は、何もしなくていいのか? 証明書だとか」
「必要ないに決まってるんじゃん。なにより、それが証明になる」
街の中に入る時もバンクルを見せるだけで良かったから、ここでも大丈夫らしい。
偽造とかを疑わないのだろうか。
どんな素材で作られているかのを登録した時に説明をされなかったから、もしかしたら私が知らないだけでこの世界の子供たちも知っている常識なのかもしれない。
「こんにちは、ヘイリーさん」
「この依頼、2人で受けてもいい?」
外観だけでなく、内観まで豪華だった。私が圧倒されている間に彼女が依頼書を取り、受付に渡していた。
依頼内容を確認しなければ。
「何人でも構いませんが、そちらの方は?」
「アーロだ。東の街の冒険者で、クラスはブロンズ」
「証明するものを」
腕につけているものを見せ、承認された。
依頼内容は、アイスベアーを討伐することだった。
名前からだいたいの想像はできるが、冬季戦となると少し厄介だ。
どこででも戦闘は出来るようにはしているが、手がかじかむ可能性もなくはない。
「んじゃ、行こうか」
「待て。何も着て行かないのか? 雪が降っている可能性もあるんだぞ。それに、食料も買わずに行くのか?」
身軽な格好をしているとはいっても、素肌が見えている防具のままでいけば凍傷になる可能性だってある。
それとも、なんだ。防寒できる術でも持っているのか?
「現地調達するよ。それとも、買ってくれるの?」
「そこまで買う金は持っていない」
「んじゃ、現地調達だね」
「……食料は仕方ないとしても、防寒具を着なければ」
「これがあるから大丈夫」
鎧の下に手を入れて、何かを探している。
鎧が動く音が何秒かして、取り出したのは石が付いたネックレスだった。
ただの石ではないのは確かなようだが、どうも区別は付きづらい。
聞くと、それは寒さを軽減する魔石とのことだった。どこ買えるのかと聞けば魔石店で買えるよ、と。
あの街にもあったのだろうか? いや、あったのだろう。私が興味なく、素通りしていただけだ。
今後のために頭の片隅にでも置いておこう。いつしか役に立つときもあるだろうからな。
「それだけだとしても、寒いことに変わりはないのでは」
「大丈夫! そこまで寒いところにはいかないし、いないから」
その言葉を聞いて不安に駆られるのは気のせいだろうか。
もし、予想以上に寒ければ、念のためと常に持っている防寒具を1つ貸すしかなさそうだ。
今のうちに貸しておいた方がいいのか?
安物で申し訳ないが、なけなしの金で防寒着を買おう。
凍傷になっても治療する道具は持っていない。
「少しでもいつもと違うと感じたら、何か言ってくれ。1つだけで申し訳ないが、防寒するものを貸す」
「心配性だな、アーロは」
笑ってはいるが、最悪の場合、指を切らないといけなくなる。
本当に何事もなく終わればそれで万々歳なのだが、私がこうやって不安になる時は、何かしらがいつも起きている。
本当に何も起きないでくれ。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる