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1章
12話 戦闘相談
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話が一段落ついたとき、突然周りから拍手された。
しまった。ここが出店の中心部分だったことを忘れていた。
最近こういうことが多くなっている。気を付けなければ。
「感動しちまったよ、兄ちゃん」
「惚れたわ」
「かっこいい所を見せられちゃ、こっちも何かしてやりたくなるな」
褒め慣れてないせいか、頬が熱くなっている気がする。
気のせいかなのか耳も熱い。
顔に出ていないか心配になってきた。
「アーロさん、顔真っ赤です」
くすくすと笑うアレシアに、さらに顔が熱くなってきたが、泣いているよりかはいいだろう。
受け売りだとしても、役に立てたと思う。
「さっき、お金がないって聞こえてね。なら、うちのものを貰っておくれな」
「いやいや、うちの商品を!」
「俺の所のを持っていけ!」
自分の店から飛び出してきて、私の周りを囲み始めた。
こういうことに慣れていないせいか、少しだけ目が回る。
「有り難いが、それほど多くは持てないし、日持ちするものでなければ途中で腐らせてしまう」
「なら、これがぴったりだね」
ふくよかな女性が、何やら菓子パンの様なものを渡してきた。
見た目はクッキーなのだが、中央が膨らみ、そこからさわやかな匂いが漂ってくる。
この匂い、嗅いだことがある。どこだったか。
「どうだい?」
「有り難く頂戴する。金が入ったら、またここに来るとしよう」
「そんなのいいって!」
勢いよく背中を叩かれたが、せき込むほどではなかった。
「アレシア。話を戻すが、今のうちに日持ちするものを買ってくるといい。私はそこで待っていよう」
少し歩けば、出店の近くに噴水が設置されている。
そこに腰掛けながら戻ってくるのを待つ。
「い、一緒に来てください」
裾を掴み、先程のように俯いていた。
状況は同じだが、今度は声が上擦っていた。
「不安なら一緒に行くが」
「ふ、不安です」
「ならば行こう」
腕を掴まれ、いろいろなところを回った。
肉屋に小物屋、何故ここにあるのかわからんが、簡素な服屋もあった。
いろいろと相談していきながら選んだが、結局アレシアも私が受け取った物と同じやつを貰った。
買いたそうなものがあったが、金が足りなかったようだ。
あれから街を出て、草原へと向かった。
この先に目的の場所がある。ワイバーンが住み着く沼が。
「再確認だ。薬草の選別は君に任せる。ワイバーン討伐は私が援護する。それでいいな?」
「はい」
力強く頷いた。
さて、彼女が逃げてしまうことを想定して、これからは撃たなくては。初めての経験だ。
いつもは一人で静かにやればよかったが、今度はアレシアがいる。
敵に当て、彼女に当たらないようにするにはどうするべきだ?
彼女の思考を読む? いや、ただの人間にそんなことできるわけがない。
ならば、彼女の足の動きを見る? ダメだな。足を見ることに囚われ、自分が死ぬ。
言葉で落ち着かせるようにする? 無駄だ。相手が焦っていればいるほど他人の声は聞こえなくなる。
なら、どうする? 答えは1つだ。
彼女の背中を守りながら戦うしかない。
「アレシア。これからの戦いで怖くなったら逃げていい。だが、あまり遠くへは走っていくな。こいつが届く範囲には限界がある。これから沼へと行くが、逃げるならば沼周辺で逃げてほしい」
遠距離用のスナイパーライフルや突撃用のアサルトライフル。
どちらも威力はあるが、距離に限界がある。
射程外に行かれるとその強さも効果が薄くなる。
「え……で、でも、アーロさんだけ戦わせるのは」
「気にするな。怖いと言っている者に、無理矢理戦わせる気はない。それに、私と君はパーティーを組んでまだ一日しか立っていない。連携して戦いたいところだが、難しいと考えている。君がどういう戦い方をするのかそれすらもわからない」
「わ、私は槍を……」
「槍を?」
「持って、その場で回ります」
「そうか」
なるほど。彼らが彼女を置いていったのはこういうことか。
あまりにも戦闘に慣れていない。
自分の背負っている槍を取って構えたが、筋力が足りていないのかよろめいている。
よろめかなくても、若干重心が右に片寄っている。
「アレシア。その場で回るだけが槍の戦い方ではない。槍は刺突用の武器だ。構えて、相手と距離を作る。これ以上近づかせないように空間を強制的に作るんだ。それと筋力をあげろ。それ、重いだろ」
「な、なんでわかったんですか? これ、初めて鍛冶屋さんで買ったときに一番軽いって言われてたのに」
驚いた顔をしている。
専門ではない私でも分かるのは、過去に人と戦ってきたからだ。
名は忘れたが、師範である者が何を思ったのか、人を殺し始めたという知らせを受けて、その男と戦ったことがある。
遠距離で始末しようにも、勘が鋭く、避けられたことがあった。
そして、隠れている場所まで見つけられて近距離で戦ったのだが、師範と言われるだけはあって、距離が取りづらかったのを覚えている。
ただ、勉強にはなった。
槍を使わないとしても、距離の作り方と足の動き、そして呼吸。
どれもが参考になるものだった。
しまった。ここが出店の中心部分だったことを忘れていた。
最近こういうことが多くなっている。気を付けなければ。
「感動しちまったよ、兄ちゃん」
「惚れたわ」
「かっこいい所を見せられちゃ、こっちも何かしてやりたくなるな」
褒め慣れてないせいか、頬が熱くなっている気がする。
気のせいかなのか耳も熱い。
顔に出ていないか心配になってきた。
「アーロさん、顔真っ赤です」
くすくすと笑うアレシアに、さらに顔が熱くなってきたが、泣いているよりかはいいだろう。
受け売りだとしても、役に立てたと思う。
「さっき、お金がないって聞こえてね。なら、うちのものを貰っておくれな」
「いやいや、うちの商品を!」
「俺の所のを持っていけ!」
自分の店から飛び出してきて、私の周りを囲み始めた。
こういうことに慣れていないせいか、少しだけ目が回る。
「有り難いが、それほど多くは持てないし、日持ちするものでなければ途中で腐らせてしまう」
「なら、これがぴったりだね」
ふくよかな女性が、何やら菓子パンの様なものを渡してきた。
見た目はクッキーなのだが、中央が膨らみ、そこからさわやかな匂いが漂ってくる。
この匂い、嗅いだことがある。どこだったか。
「どうだい?」
「有り難く頂戴する。金が入ったら、またここに来るとしよう」
「そんなのいいって!」
勢いよく背中を叩かれたが、せき込むほどではなかった。
「アレシア。話を戻すが、今のうちに日持ちするものを買ってくるといい。私はそこで待っていよう」
少し歩けば、出店の近くに噴水が設置されている。
そこに腰掛けながら戻ってくるのを待つ。
「い、一緒に来てください」
裾を掴み、先程のように俯いていた。
状況は同じだが、今度は声が上擦っていた。
「不安なら一緒に行くが」
「ふ、不安です」
「ならば行こう」
腕を掴まれ、いろいろなところを回った。
肉屋に小物屋、何故ここにあるのかわからんが、簡素な服屋もあった。
いろいろと相談していきながら選んだが、結局アレシアも私が受け取った物と同じやつを貰った。
買いたそうなものがあったが、金が足りなかったようだ。
あれから街を出て、草原へと向かった。
この先に目的の場所がある。ワイバーンが住み着く沼が。
「再確認だ。薬草の選別は君に任せる。ワイバーン討伐は私が援護する。それでいいな?」
「はい」
力強く頷いた。
さて、彼女が逃げてしまうことを想定して、これからは撃たなくては。初めての経験だ。
いつもは一人で静かにやればよかったが、今度はアレシアがいる。
敵に当て、彼女に当たらないようにするにはどうするべきだ?
彼女の思考を読む? いや、ただの人間にそんなことできるわけがない。
ならば、彼女の足の動きを見る? ダメだな。足を見ることに囚われ、自分が死ぬ。
言葉で落ち着かせるようにする? 無駄だ。相手が焦っていればいるほど他人の声は聞こえなくなる。
なら、どうする? 答えは1つだ。
彼女の背中を守りながら戦うしかない。
「アレシア。これからの戦いで怖くなったら逃げていい。だが、あまり遠くへは走っていくな。こいつが届く範囲には限界がある。これから沼へと行くが、逃げるならば沼周辺で逃げてほしい」
遠距離用のスナイパーライフルや突撃用のアサルトライフル。
どちらも威力はあるが、距離に限界がある。
射程外に行かれるとその強さも効果が薄くなる。
「え……で、でも、アーロさんだけ戦わせるのは」
「気にするな。怖いと言っている者に、無理矢理戦わせる気はない。それに、私と君はパーティーを組んでまだ一日しか立っていない。連携して戦いたいところだが、難しいと考えている。君がどういう戦い方をするのかそれすらもわからない」
「わ、私は槍を……」
「槍を?」
「持って、その場で回ります」
「そうか」
なるほど。彼らが彼女を置いていったのはこういうことか。
あまりにも戦闘に慣れていない。
自分の背負っている槍を取って構えたが、筋力が足りていないのかよろめいている。
よろめかなくても、若干重心が右に片寄っている。
「アレシア。その場で回るだけが槍の戦い方ではない。槍は刺突用の武器だ。構えて、相手と距離を作る。これ以上近づかせないように空間を強制的に作るんだ。それと筋力をあげろ。それ、重いだろ」
「な、なんでわかったんですか? これ、初めて鍛冶屋さんで買ったときに一番軽いって言われてたのに」
驚いた顔をしている。
専門ではない私でも分かるのは、過去に人と戦ってきたからだ。
名は忘れたが、師範である者が何を思ったのか、人を殺し始めたという知らせを受けて、その男と戦ったことがある。
遠距離で始末しようにも、勘が鋭く、避けられたことがあった。
そして、隠れている場所まで見つけられて近距離で戦ったのだが、師範と言われるだけはあって、距離が取りづらかったのを覚えている。
ただ、勉強にはなった。
槍を使わないとしても、距離の作り方と足の動き、そして呼吸。
どれもが参考になるものだった。
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