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1章
3話 現地調達と森の中に少女
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任務の前に腹ごしらえをしておこう。後、夕食の分もとっておかなくては。
「食えるモンスターを狩って難を凌ぐか」
この世界に来て一か月、意外にも食料に困ることはなかった。他の者たちと同じように野菜や肉を酒場で食うこともあったが、半月の間、食事にありつけるか分からない時は、こっそりとだが草食の魔物を狩って食っていた。
異常だと思われるかもしれないが、生きるためだ。仕方なしにやったこと。ただ、その魔物の見た目がいかついにも関わらず、肉がとんでもなく美味いのだ。
もしかしたら元の世界よりもいいかもしれない。
話が逸れたが、640m先にトキシン・ブルと呼ばれる魔物が集まっている。トキシンというと毒素という意味になるが、この世界に来てから初めて食料に困ったとき、知らずにその魔物を食ってしまい、死にかけたことがあった。
思い出してみても、あれはひどいものだった。頭痛に吐き気、めまいに吐血。徐々にではなく一気に来たときは本当に命の危険すら感じたな。
だが、今もしぶとく生きている。この毒でもそうだが、私自身異常だと思う。過去に何度か自分の中に毒が回ったにも関わらず生きているのだから。
「風向きは東。風速1ノット。影響なし」
さて、獲物が逃げないうちに仕留めなければ。先程からお腹が鳴っている。背負っている銃袋からレミントンⅯ24と呼ばれる狙撃銃を取り出し、サプレッサーを付け、うつ伏せの状態になってブルの頭に狙いを定めていく。
「撃った後も警戒しなくてはな」
ブルというと闘牛が頭の中に浮かぶが、こっちの世界のブルは闘牛に使われない。
足が早く、捕まえることは不可能だという。それにトキシン・ブルと呼ばれる魔物は、元いた世界のブルと違い、目で色を判断することが出来るらしく、見つかれば鋭い角で体を貫かれて、死ぬこともあると個々の世界の本に書かれていた。
「……よし、命中」
一頭の頭に当たったはいいものも、他のブルが警戒し始めた。幸い、こちらの存在にはまだ気付いていない。が、見つかるのも時間の問題だろう。
「考えものだな。ここでじっとしているか、場所を移動するか」
どちらに答えが転ぶとしても、準備するに超したことはない。逃げやすいように、片膝ついた状態にして座り、もう一頭に狙いを定めていく。
「やはり、後のものには退散してもらおう。そのほうが楽だ」
人間である私に、魔物の気持ちが分かるわけではない。
ただ、魔物や魔族たちの序列は、強いものが上に立つというシンプルな構成だ。それを利用し、どこからともなく自分たちの命を狙っているのが上位のものだと思わせれば、勝手に逃げていく。
こういうところは人間よりもわかりやすいから本当に助かる。
「風向きは同じく東。風速3ノット。多少修正あり」
深呼吸をし、対象に狙いを定め、息を止めて撃つ。
もう一頭が死んだ。
それに怖気ついたブルたちは逃げていく。助かるが、早く向かわねば。1頭目を仕留めた時、その上空で死んだ獲物を狙う鳥が旋回していた。
あれの名前は知らんが食えたものではない。
「それは渡さん。私のものだ」
次弾を装填し、急降下している鳥に照準を合わせ、発砲する。目的の物ではないが、金になるならば、取っておいて損はない。
「お前たちにとっては常識かもしれんが、私にとっては死活問題だ。……まったく」
一匹が落ちたことで驚いた鳥達が逃げていく。助かった。これを奪われてでもしたら、飢えで死にかねん。
「相変わらず臭いがきついな」
肉は美味いのだが、ブルが死んだとき、鼻に奥を刺激する匂いが放出される。それを嗅ぐと涙が自然と出てきてしまうのだ。泣きたいわけではないが、そうなってしまう。一度嗅いだ時、何かに似ているとその時思ったが、今思い出した。日本食のすしに入れてあるわさびと同じだ。
昔、司令官に騙されて口にした時、言葉にならない悲鳴を上げたことがあった。懐かしいものだ。
その後、騙した上官とはしばらく口を聞かなかったがな。
「さて、毒に気を付けなければ」
トキシン・ブルで食えないところは、毒が含まれている肝臓、そして骨と皮だ。それ以外を解体し、残った皮は魔物避けに利用させてもらおう。死んだあともしばらくこの匂いが続くおかげか、余計な戦いに巻き込まれずに済む。
「誰だ」
いざ解体しようとサバイバルナイフに手を付けた時、横の林から何かの気配を感じた。魔物ではない。これは、人の気配だ。
その方向を見ると、木を背にして隠れている人物がいたが、服の裾が見えている。
「姿を見せないならば、刺す」
ナイフをその方に向け、何者かが隠れている木の所を警戒する。出てくるものが殺意を向けてくるやつならば、容赦なく倒す。
「で、出ますから殺さないでください」
慌てたように木の陰から出てきた人物は少女だったが、出てきた瞬間ブルの匂いを嗅いでしまったのか、言葉にならない悲鳴を上げて、倒れた。
「食えるモンスターを狩って難を凌ぐか」
この世界に来て一か月、意外にも食料に困ることはなかった。他の者たちと同じように野菜や肉を酒場で食うこともあったが、半月の間、食事にありつけるか分からない時は、こっそりとだが草食の魔物を狩って食っていた。
異常だと思われるかもしれないが、生きるためだ。仕方なしにやったこと。ただ、その魔物の見た目がいかついにも関わらず、肉がとんでもなく美味いのだ。
もしかしたら元の世界よりもいいかもしれない。
話が逸れたが、640m先にトキシン・ブルと呼ばれる魔物が集まっている。トキシンというと毒素という意味になるが、この世界に来てから初めて食料に困ったとき、知らずにその魔物を食ってしまい、死にかけたことがあった。
思い出してみても、あれはひどいものだった。頭痛に吐き気、めまいに吐血。徐々にではなく一気に来たときは本当に命の危険すら感じたな。
だが、今もしぶとく生きている。この毒でもそうだが、私自身異常だと思う。過去に何度か自分の中に毒が回ったにも関わらず生きているのだから。
「風向きは東。風速1ノット。影響なし」
さて、獲物が逃げないうちに仕留めなければ。先程からお腹が鳴っている。背負っている銃袋からレミントンⅯ24と呼ばれる狙撃銃を取り出し、サプレッサーを付け、うつ伏せの状態になってブルの頭に狙いを定めていく。
「撃った後も警戒しなくてはな」
ブルというと闘牛が頭の中に浮かぶが、こっちの世界のブルは闘牛に使われない。
足が早く、捕まえることは不可能だという。それにトキシン・ブルと呼ばれる魔物は、元いた世界のブルと違い、目で色を判断することが出来るらしく、見つかれば鋭い角で体を貫かれて、死ぬこともあると個々の世界の本に書かれていた。
「……よし、命中」
一頭の頭に当たったはいいものも、他のブルが警戒し始めた。幸い、こちらの存在にはまだ気付いていない。が、見つかるのも時間の問題だろう。
「考えものだな。ここでじっとしているか、場所を移動するか」
どちらに答えが転ぶとしても、準備するに超したことはない。逃げやすいように、片膝ついた状態にして座り、もう一頭に狙いを定めていく。
「やはり、後のものには退散してもらおう。そのほうが楽だ」
人間である私に、魔物の気持ちが分かるわけではない。
ただ、魔物や魔族たちの序列は、強いものが上に立つというシンプルな構成だ。それを利用し、どこからともなく自分たちの命を狙っているのが上位のものだと思わせれば、勝手に逃げていく。
こういうところは人間よりもわかりやすいから本当に助かる。
「風向きは同じく東。風速3ノット。多少修正あり」
深呼吸をし、対象に狙いを定め、息を止めて撃つ。
もう一頭が死んだ。
それに怖気ついたブルたちは逃げていく。助かるが、早く向かわねば。1頭目を仕留めた時、その上空で死んだ獲物を狙う鳥が旋回していた。
あれの名前は知らんが食えたものではない。
「それは渡さん。私のものだ」
次弾を装填し、急降下している鳥に照準を合わせ、発砲する。目的の物ではないが、金になるならば、取っておいて損はない。
「お前たちにとっては常識かもしれんが、私にとっては死活問題だ。……まったく」
一匹が落ちたことで驚いた鳥達が逃げていく。助かった。これを奪われてでもしたら、飢えで死にかねん。
「相変わらず臭いがきついな」
肉は美味いのだが、ブルが死んだとき、鼻に奥を刺激する匂いが放出される。それを嗅ぐと涙が自然と出てきてしまうのだ。泣きたいわけではないが、そうなってしまう。一度嗅いだ時、何かに似ているとその時思ったが、今思い出した。日本食のすしに入れてあるわさびと同じだ。
昔、司令官に騙されて口にした時、言葉にならない悲鳴を上げたことがあった。懐かしいものだ。
その後、騙した上官とはしばらく口を聞かなかったがな。
「さて、毒に気を付けなければ」
トキシン・ブルで食えないところは、毒が含まれている肝臓、そして骨と皮だ。それ以外を解体し、残った皮は魔物避けに利用させてもらおう。死んだあともしばらくこの匂いが続くおかげか、余計な戦いに巻き込まれずに済む。
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「で、出ますから殺さないでください」
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