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1章
2話 依頼受注
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辞めたはいいが、今の私は無一文に近い。まずしなくてはいけないことは、生活するための資金を集めること。
そのためにギルドに行かなくては。
そこで一人で出来る依頼を探そう。
「こんにちはアーロさん」
「カリナか。どうも。この依頼だが受けることは可能だろうか」
ギルドに着き、掲示板を見ていると、ガルグイユ10頭の討伐依頼が一件あった。こちらに来て最初に戸惑ったのは、ガルグイユがガーゴイルと呼ばれていたことだ。呼び方が違うのは元の世界でもあったことだが、慣れるまでは少し時間がかかりそうだ。
そして、そのガルグイユの金は1頭あたり、50エル。
この街に初めて来たとき、街並みは中世後期のようにも見えたのだが、むこうとここじゃお金の単位が違った。街の人の服は資料と似ているのだがな。
英国の単位はポンドだが、この世界の単位は一文字違いの日本エンと同じように考えたほうがいいだろう。ポンド換算なんてしていたら余計に分からなくなる。
ブロンズである私のよりは少し上だが、アイアンクラスだとこれくらいが妥当なのかもな。その依頼書には一人でも可能と書かれているが、少し困ったことがある。
「ガーゴイル討伐の依頼を受けることはできますけど、本当にするんですか?」
掲示板から剥がした依頼を受付嬢のカリナに渡すと、それを見た彼女が心配そうに私を見上げている。
そうだ。彼女が心配するこの依頼。とにかくガルグイユの数が多いということだ。
一人でもとは書かれていたが、私が元居たパーティーよりも、統率がとれている同ランクの他冒険者達が苦戦するほどなのだ。
一頭のガルグイユを倒すだけなら簡単な事。ただ、同族で連携をとっている奴らを討伐するとなると、難易度は倍近く高くなる。
攻撃に成功したと思っても外していることが多い。そのせいで苦戦するパーティーが後を絶たないのだ。
「数は多いほうが助かる。今、金が無くてな」
ただ、あいつらに関しての対処法を私はすでに知っている。
「アーロさん、確かパーティーに入っていましたよね? そこで分け前とかなかったんですか?」
「辞めた。真面目すぎると文句を言われてな。それに、半月前から金を出すのに渋られていた」
「そんな……」
口元を手で抑え、哀れみの表情で私を見ている。
「気にする必要はない。少なくても最低限の生活は出来る」
「それはそれで心配です……」
「心配ない。それで、この依頼は受けられるのか?」
眉尻を下げているが、本当に心配ないのだ。
元の世界では半月以上金がない生活をしてきたことだってある。
それを10年間も続けていたら、意外と慣れるものだ。
「出来ますけど、本当に大丈夫ですか?」
「ああ」
「……分かりました。ただ、無事に戻ってきてください。何日掛かってでもいいですから」
許可印を依頼書に押し、机の引き出しから分厚い本を取り出し、誰がどの依頼を受けたかを記帳している。
そうすることで事故防止になる、と受付嬢が昔話してくれた。
「では、お気をつけて」
心配そうな声だが、それでも元気よくお辞儀をした受付嬢を目に焼き付けた私は、無事に戻ろうと心の中で誓った。
そのためにギルドに行かなくては。
そこで一人で出来る依頼を探そう。
「こんにちはアーロさん」
「カリナか。どうも。この依頼だが受けることは可能だろうか」
ギルドに着き、掲示板を見ていると、ガルグイユ10頭の討伐依頼が一件あった。こちらに来て最初に戸惑ったのは、ガルグイユがガーゴイルと呼ばれていたことだ。呼び方が違うのは元の世界でもあったことだが、慣れるまでは少し時間がかかりそうだ。
そして、そのガルグイユの金は1頭あたり、50エル。
この街に初めて来たとき、街並みは中世後期のようにも見えたのだが、むこうとここじゃお金の単位が違った。街の人の服は資料と似ているのだがな。
英国の単位はポンドだが、この世界の単位は一文字違いの日本エンと同じように考えたほうがいいだろう。ポンド換算なんてしていたら余計に分からなくなる。
ブロンズである私のよりは少し上だが、アイアンクラスだとこれくらいが妥当なのかもな。その依頼書には一人でも可能と書かれているが、少し困ったことがある。
「ガーゴイル討伐の依頼を受けることはできますけど、本当にするんですか?」
掲示板から剥がした依頼を受付嬢のカリナに渡すと、それを見た彼女が心配そうに私を見上げている。
そうだ。彼女が心配するこの依頼。とにかくガルグイユの数が多いということだ。
一人でもとは書かれていたが、私が元居たパーティーよりも、統率がとれている同ランクの他冒険者達が苦戦するほどなのだ。
一頭のガルグイユを倒すだけなら簡単な事。ただ、同族で連携をとっている奴らを討伐するとなると、難易度は倍近く高くなる。
攻撃に成功したと思っても外していることが多い。そのせいで苦戦するパーティーが後を絶たないのだ。
「数は多いほうが助かる。今、金が無くてな」
ただ、あいつらに関しての対処法を私はすでに知っている。
「アーロさん、確かパーティーに入っていましたよね? そこで分け前とかなかったんですか?」
「辞めた。真面目すぎると文句を言われてな。それに、半月前から金を出すのに渋られていた」
「そんな……」
口元を手で抑え、哀れみの表情で私を見ている。
「気にする必要はない。少なくても最低限の生活は出来る」
「それはそれで心配です……」
「心配ない。それで、この依頼は受けられるのか?」
眉尻を下げているが、本当に心配ないのだ。
元の世界では半月以上金がない生活をしてきたことだってある。
それを10年間も続けていたら、意外と慣れるものだ。
「出来ますけど、本当に大丈夫ですか?」
「ああ」
「……分かりました。ただ、無事に戻ってきてください。何日掛かってでもいいですから」
許可印を依頼書に押し、机の引き出しから分厚い本を取り出し、誰がどの依頼を受けたかを記帳している。
そうすることで事故防止になる、と受付嬢が昔話してくれた。
「では、お気をつけて」
心配そうな声だが、それでも元気よくお辞儀をした受付嬢を目に焼き付けた私は、無事に戻ろうと心の中で誓った。
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