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1章
1話 脱退
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安宿の室内で向かい合うように、私とパーティメンバーがいる。あちらはベッドに3人で腰掛け、私は手荷物を足元に置いた状態で立っている。今からあることを告げるために、荷物を昨夜纏めていたのだ。
「ここで共に活動するのは無理だ。辞める」
この世界に転移してきてから1ヶ月。私は今日、『天使の加護』というパーティーから抜ける。
原因はメンバーとの性格の不一致だ。他にもいろいろとあるのだが、1番の要因は先程言った通り、性格の不一致。メンバーに対し、危ないところを何度か注意していたのだが、半月もしたら文句を言うようになった。うるさいだの余計なことをいうなだのと。それに我慢が出来ず、今日付けで辞めることにした。
「好きにしろよ。お前じゃどうせ生き残れないだろ」
「アーロ、あんたは真面目すぎて疲れるのよ」
私に向かって指を差し、眉間に皺を寄せながら睨むリーダーで剣士であるリカロ。リーダーの腕に胸を当てながら同じく見てくるムエタイ使いのディーネ。
特にリカロがひどかった。剣士は最前線で戦う者。それゆえに命の危険が常に伴うものだ。
ずっと黙っているが、リカロを挟むようにディーネとは反対側に座っている仲間のサーナに防御魔法をかけてもらっていたとはいえ、考えなしに斬り捨てて行くのだ。命知らず過ぎる。
もし魔法が切れたらどうするつもりだったんだ。
ディーネに関しては、戦闘に参加しないのに女性だからという理由で私の分の上乗せで金だけ貰っていた。おかげで私が今持っているお金は、この世界で一番安い食料でさえ買えないほどだ。
最初そのことを知った時はディーネとリカロを殴ってやろうかと思ったのだが、しなかった。自分の拳が凶器になりえることを知っているからだ。辞めるきっかけのひとつになった今ではもうどうでもいいがな。
それ以上語るとストレスで自分がおかしくなる。
「命知らずな君たちに言われる筋合いはない。それに、君は不真面目すぎる」
私が反対にリカロとディーネにそれぞれに目線を向けると、リカロは更に深く眉間に皺を寄せた。が、所詮相手は子供で私よりも年下。ただ睨んでいるだけじゃ恐怖など感じるわけがない。
「これから先、何があろうと手助けなどしない」
リカロが反抗心で私を睨んでいるならば、これ以上自分に関わるなら殺される覚悟でいろ、という意思を込めて元メンバーを睨みかえした。それを無意識で感じたのか、全員の肩が跳ね上がり、ディーネは震えている。それを見て、少しだけ気分が晴れたがもうどうでもいい。
仲間ではないのだから。
こいつらから借りたものは1つもない。昨夜纏めた自分の荷物を持ってギルドに向かうとしよう。生活する為に。
怒り任せにドアは閉めなかったが、木で出来ているレバー型のドアノブがバキッと音を立てて潰れた。
賠償はあいつらにしてもらうか。
「ここで共に活動するのは無理だ。辞める」
この世界に転移してきてから1ヶ月。私は今日、『天使の加護』というパーティーから抜ける。
原因はメンバーとの性格の不一致だ。他にもいろいろとあるのだが、1番の要因は先程言った通り、性格の不一致。メンバーに対し、危ないところを何度か注意していたのだが、半月もしたら文句を言うようになった。うるさいだの余計なことをいうなだのと。それに我慢が出来ず、今日付けで辞めることにした。
「好きにしろよ。お前じゃどうせ生き残れないだろ」
「アーロ、あんたは真面目すぎて疲れるのよ」
私に向かって指を差し、眉間に皺を寄せながら睨むリーダーで剣士であるリカロ。リーダーの腕に胸を当てながら同じく見てくるムエタイ使いのディーネ。
特にリカロがひどかった。剣士は最前線で戦う者。それゆえに命の危険が常に伴うものだ。
ずっと黙っているが、リカロを挟むようにディーネとは反対側に座っている仲間のサーナに防御魔法をかけてもらっていたとはいえ、考えなしに斬り捨てて行くのだ。命知らず過ぎる。
もし魔法が切れたらどうするつもりだったんだ。
ディーネに関しては、戦闘に参加しないのに女性だからという理由で私の分の上乗せで金だけ貰っていた。おかげで私が今持っているお金は、この世界で一番安い食料でさえ買えないほどだ。
最初そのことを知った時はディーネとリカロを殴ってやろうかと思ったのだが、しなかった。自分の拳が凶器になりえることを知っているからだ。辞めるきっかけのひとつになった今ではもうどうでもいいがな。
それ以上語るとストレスで自分がおかしくなる。
「命知らずな君たちに言われる筋合いはない。それに、君は不真面目すぎる」
私が反対にリカロとディーネにそれぞれに目線を向けると、リカロは更に深く眉間に皺を寄せた。が、所詮相手は子供で私よりも年下。ただ睨んでいるだけじゃ恐怖など感じるわけがない。
「これから先、何があろうと手助けなどしない」
リカロが反抗心で私を睨んでいるならば、これ以上自分に関わるなら殺される覚悟でいろ、という意思を込めて元メンバーを睨みかえした。それを無意識で感じたのか、全員の肩が跳ね上がり、ディーネは震えている。それを見て、少しだけ気分が晴れたがもうどうでもいい。
仲間ではないのだから。
こいつらから借りたものは1つもない。昨夜纏めた自分の荷物を持ってギルドに向かうとしよう。生活する為に。
怒り任せにドアは閉めなかったが、木で出来ているレバー型のドアノブがバキッと音を立てて潰れた。
賠償はあいつらにしてもらうか。
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