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07.
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「最近、妙に殺気立っているようだが、どうかしたのかい?」
「何の事でしょう兄上。 私の事よりも山積みの書類を片付ける事に集中してください」
等と言うが……相手は皇帝陛下とその補佐官を務める兄達だ。
その身は玄冥同様に竜であり、勇ましさに定評があるだけでなく、玄冥と違い人当たりがよく、お茶目な部分も持ち合わせている。 やや快楽主義なところがどうにも好きになれないが、それでも末っ子の玄冥にしてみれば勝てる相手ではない。
「まぁまぁそういうなよ。 兄ちゃんに話してみな」
そう言って追い回される事3か月。
そして玄冥はとうとう負けて、その恋心を兄達に伝えた。
「何処の娘さんだい?」
「南方の鳥人です」
「うん、南方の鳥人の部族は、23は存在するし、春の祭りに招待をしているのは、領主だけではないからねぇ……家名すら聞いていなくて、春の祭りに会うだけの関係だって?」
それは困ったと3人の兄は、顔を付き合わせた。
だが、兄達には疑問が1つあった。 恋心どころか人嫌いで人を寄せ付けなかった弟が、男女の付き合いを理解しているかどうか? と言うものだ。
「贈り物はしているかい?」
「毎年、食事と酒、菓子とお茶は準備している」
「いやいや、そうではなくて、着物や装飾品だ」
「なぜ、ですか?」
「だよねぇ~~」
そう言いながらアハッハハハと顔を引きつらせ苦笑いをしたのは、3の兄だった。
「何を言いたいのか分かりませんが、勝手に納得しないでください」
「オマエと言う奴は、人は贈り物をする事で愛情を伝え、周囲に愛情を示し、それを身に着けさせる事でこの女性には大切な人がいるのだと周囲に知らしめる」
「その娘は、装飾品で身を飾っていなかったか?」
「……」
玄冥は黙り込む。
成人を迎えたと言っていた彼女は、春の花を見立てたピンクサンゴと真珠の髪飾りをしていた。 衣装もフワリとしたドレスは、胸と腰と尻を強調した煽情的なものだった。 色味も濃い色合いのものから、大人を示す淡い色合いを選んでいた。
鈴をつけた腕輪は、舞い歌う風華と共に良く歌っていた。
「……アレらは……誰かの物だと言う印なのか?」
約束と言えば、来年も春祭りを共に過ごそうと言う幼い頃からのものが続けられているだけで……男女の約束等語った事も無かった。
「どう、しよう……」
「来年にかけるしか……」
そんな事を言う兄の声はかきけされた。
「あぁ、そうだ……鳥人の村に火を放てば、風の強い山沿いに住んでいるのだから良く燃えて困るはずだ」
「な、にを言っているんだ?!」
兄達は困惑した様子を見せた。
日頃無口な弟に語らせ過ぎたかと後悔しそうになったが、とりあえずは話を聞こうと言う事になった。
「鳥人の領地を燃やしてどうするつもりなんだい?」
「焼きだされて住まいをなくせば、きっと助けを求めるはずだ。 いや、助けを求められてから動いては遅すぎる。 コチラから援助を申し出るくらいがいいかもしれないな」
「ちょっと待て!!」
3人の兄達が焦れば、玄冥は何故?! と、不思議そうに兄を見た。
「玄冥の思い人が、どれほど困難にあったとしても、オマエ自身が女性の扱い方を理解していないのでは意味がないのではないかな? 家を失くし、財産を失くし、だからと言ってオマエを頼ってくるような相手なのかい? 女心とは複雑なものだし、それに領主の娘であれば領地の不遇に政治的な婚姻を勧める事だってあるかもしれない。 安易な行動に走ってはいけない」
「なるほど……権力を見せつけて、彼女の親を脅せばいいと言うことですな。 流石兄上です」
「いや、そうではなく……とにかく女性の扱い方を覚えなさい……。 女性が何を望み、どのように扱うのか、それを覚えて来年の春には勝負を仕掛けるのです」
「兄上……私は、どうにも来年の春まで耐えられそうにないのですが……。 もし、彼女が婚約者を得ていたなら、私は嫉妬で婚約者を殺してしまうでしょう。 もし、彼女の肌に触れていたと言うなら……他の男が触れたその肌をはぎ取ってしまいたい……はぁ……」
憤りを抑えるように息をついた。
「だ、大丈夫かい?」
「はい、想像しただけで……気分が……」
いや……はい、ではないだろう。
瞳の色に狂気が宿りつつあって、兄達は慌てた。
人嫌いの末弟の恋心に焦った弟は、とにかく女性を知るようにと玄冥を説得した。 女性を知らずに自分を押し付けてはいけないよ。 女性は繊細なものだから……と……。
流石に、良い感じの婚約者がいた場合には、どうしようかと悩みもしたが、皇弟に不敬を働いたと処分してしまおうと……それしかないと諦めた。
有能とされた弟の厄介な部分に肝が冷えた兄達は、全力で弟を応援しながら次の春を待つのだった。
「何の事でしょう兄上。 私の事よりも山積みの書類を片付ける事に集中してください」
等と言うが……相手は皇帝陛下とその補佐官を務める兄達だ。
その身は玄冥同様に竜であり、勇ましさに定評があるだけでなく、玄冥と違い人当たりがよく、お茶目な部分も持ち合わせている。 やや快楽主義なところがどうにも好きになれないが、それでも末っ子の玄冥にしてみれば勝てる相手ではない。
「まぁまぁそういうなよ。 兄ちゃんに話してみな」
そう言って追い回される事3か月。
そして玄冥はとうとう負けて、その恋心を兄達に伝えた。
「何処の娘さんだい?」
「南方の鳥人です」
「うん、南方の鳥人の部族は、23は存在するし、春の祭りに招待をしているのは、領主だけではないからねぇ……家名すら聞いていなくて、春の祭りに会うだけの関係だって?」
それは困ったと3人の兄は、顔を付き合わせた。
だが、兄達には疑問が1つあった。 恋心どころか人嫌いで人を寄せ付けなかった弟が、男女の付き合いを理解しているかどうか? と言うものだ。
「贈り物はしているかい?」
「毎年、食事と酒、菓子とお茶は準備している」
「いやいや、そうではなくて、着物や装飾品だ」
「なぜ、ですか?」
「だよねぇ~~」
そう言いながらアハッハハハと顔を引きつらせ苦笑いをしたのは、3の兄だった。
「何を言いたいのか分かりませんが、勝手に納得しないでください」
「オマエと言う奴は、人は贈り物をする事で愛情を伝え、周囲に愛情を示し、それを身に着けさせる事でこの女性には大切な人がいるのだと周囲に知らしめる」
「その娘は、装飾品で身を飾っていなかったか?」
「……」
玄冥は黙り込む。
成人を迎えたと言っていた彼女は、春の花を見立てたピンクサンゴと真珠の髪飾りをしていた。 衣装もフワリとしたドレスは、胸と腰と尻を強調した煽情的なものだった。 色味も濃い色合いのものから、大人を示す淡い色合いを選んでいた。
鈴をつけた腕輪は、舞い歌う風華と共に良く歌っていた。
「……アレらは……誰かの物だと言う印なのか?」
約束と言えば、来年も春祭りを共に過ごそうと言う幼い頃からのものが続けられているだけで……男女の約束等語った事も無かった。
「どう、しよう……」
「来年にかけるしか……」
そんな事を言う兄の声はかきけされた。
「あぁ、そうだ……鳥人の村に火を放てば、風の強い山沿いに住んでいるのだから良く燃えて困るはずだ」
「な、にを言っているんだ?!」
兄達は困惑した様子を見せた。
日頃無口な弟に語らせ過ぎたかと後悔しそうになったが、とりあえずは話を聞こうと言う事になった。
「鳥人の領地を燃やしてどうするつもりなんだい?」
「焼きだされて住まいをなくせば、きっと助けを求めるはずだ。 いや、助けを求められてから動いては遅すぎる。 コチラから援助を申し出るくらいがいいかもしれないな」
「ちょっと待て!!」
3人の兄達が焦れば、玄冥は何故?! と、不思議そうに兄を見た。
「玄冥の思い人が、どれほど困難にあったとしても、オマエ自身が女性の扱い方を理解していないのでは意味がないのではないかな? 家を失くし、財産を失くし、だからと言ってオマエを頼ってくるような相手なのかい? 女心とは複雑なものだし、それに領主の娘であれば領地の不遇に政治的な婚姻を勧める事だってあるかもしれない。 安易な行動に走ってはいけない」
「なるほど……権力を見せつけて、彼女の親を脅せばいいと言うことですな。 流石兄上です」
「いや、そうではなく……とにかく女性の扱い方を覚えなさい……。 女性が何を望み、どのように扱うのか、それを覚えて来年の春には勝負を仕掛けるのです」
「兄上……私は、どうにも来年の春まで耐えられそうにないのですが……。 もし、彼女が婚約者を得ていたなら、私は嫉妬で婚約者を殺してしまうでしょう。 もし、彼女の肌に触れていたと言うなら……他の男が触れたその肌をはぎ取ってしまいたい……はぁ……」
憤りを抑えるように息をついた。
「だ、大丈夫かい?」
「はい、想像しただけで……気分が……」
いや……はい、ではないだろう。
瞳の色に狂気が宿りつつあって、兄達は慌てた。
人嫌いの末弟の恋心に焦った弟は、とにかく女性を知るようにと玄冥を説得した。 女性を知らずに自分を押し付けてはいけないよ。 女性は繊細なものだから……と……。
流石に、良い感じの婚約者がいた場合には、どうしようかと悩みもしたが、皇弟に不敬を働いたと処分してしまおうと……それしかないと諦めた。
有能とされた弟の厄介な部分に肝が冷えた兄達は、全力で弟を応援しながら次の春を待つのだった。
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