【R18】虚ろう瞳は春に眠り恋に目を覚ます【完結】

迷い人

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06.

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 うとうとと咲き誇る花の中で眠る風華を見つけるのは玄冥の役目だった。

 愛おしいと言う思いは年々募っていく。

 既に妃を迎えていても良い年であるにもかかわらず、婚約者すらいない玄冥とて恋心を向ける相手を得れば、存在しないと思われていた雄としての欲が溢れ出す。

 春の季節、愛おしい風華を側に置き過ごせば心穏やかに幸福と、戦の時のような狂気が交互に訪れ、風華を怯えさせないように必死に自分を律していた。

 自分を律すると言うのは、なかなか難儀であるが、風華が側に居る幸福が何よりも勝っていた。

 泣きたいほどのぬくもり、幸せ。
 だが、祭りは3日で終わる。



 分かれと共に衝動が溢れ出た。



 抑えきれない思い。
 抑えきれない欲望。

 白い肌に触れたい。
 柔らかな肌のその滑らかさを確かめたい。
 甘い香りのするその身体を味わいたい。
 甘く切ない小鳥の泣き声を聞きたい。

 欲望に目の前がチカチカし、狂気に頭の中が奪われそうになり必死に耐えた。



 どうしよう……。

 風華の甘い香りは年々香しさを増していく。
 愛らしい顔立ちは、美しく花のように育っていた。

 柔らかな身体は煽情的に、柔らかそうな胸、美しく滑らかな曲線を描く腰のライン、形の良い尻を、雌として見ない者等いるだろうか? そう思えば心が苦しくなった。

 来年の春も2人で過ごせるだろうか?

 あれほどの美しく育った娘が、何時までも1人で居る訳が無い。 いずれ恋人ができ、婚約者を得て、結婚してしまうだろう。 そうなると祭りに顔を出す事もなくなり、2度と会えなくなるに違いない。

 祭りの時、風華は玄冥と一緒にいる時以外は周囲の人に願われ歌っていた。

 彼女の歌う歌は、春の歌、花の歌だけではなく、甘い恋の歌が増えていた。 幼く可愛らしい声は、透明感を持ち、甘く切なく耳に心地よさを増していた。 そんな恋の歌を聞けば、誰もが自分に向けられた恋心だと誤解するのではないだろうか? 玄冥は胸の痛みに顔をしかめる。

 風華に熱い視線を向ける者が増えれば、嫉妬で身を焦がし……欲情を宿した目で風華を見る者が居れば、その目を焼きつぶしたいと思うほどだった。

 白く繊細な肩に触れ抱き寄せる男がいれば、酒を勧めて酔わせようとする男がいれば、その腕は無用だと切り落としたかった。

 軽薄にも甘く誑かす男が居れば、舌を抜いて口を縫い合わせてやろうかと思った。



 そんな玄冥の変化に気づいたのは、彼の兄だった。
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