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獣人の国『光陰相国』に春が訪れた。
花の盛りの王宮は、祭り好きの竜王陛下の計らいもあり酒宴が開かれる。
むせかえる程の花の香りに酒精が混ざり、客人を持て成す侍女も警備を行う兵士もほろ酔い状態。 王宮に集まった各地の領主は、ここぞとばかりに領地の特産品を披露する。
「我が領地の桃酒はいかがですか?」
「なかなか香りがいいですのぉ」
「うちの領地で作られているこの発酵魚との相性はどうでしょう」
「海瀬の、このような美しい花の宴に臭いものを持ち込むな。 折角の良い酒が台無しだ」
「永地とて海を頼りとしている土地柄、何を持ってきたと言うのだ」
「我の所は、乾燥魚を甘辛く煮込んだものよ」
「桃酒であれば、野菜が合うのではないか? 我が領地で作った酢漬け等どうだ」
酔っ払いながらも、自領地を盛り上げようと各領地の代表が頑張っていた。
「おや、岩森の……今年はお嬢さんと一緒なのですな」
光陰相国の西方にある巨大な岩山に住まう鳥の一族が特産物として出すのは、岩蜂蜜、燕の巣、花酒、岩蜂蜜につけた乾燥果実、そして万病薬。 万能薬である鳥薬は提供できる数は決して多くないため大金で取引される。
だが、今年は薬よりも岩森の領主が連れて来た娘に注目が集まった。
柔らかな白い髪。 華奢な体格は白く。 空を映し出したような大きな瞳は濡れている。 繊細で儚げ、風が吹けば飛んでしまいそうな愛らしい娘だった。
「この子は、村で一番の歌い手でだな。 酒宴を盛り上げる助力となればと連れて来た。 我が三番目の娘、風華だ」
名を呼ばれ、歌っていた風華は歌を止め、今にも溶けだしそうな微笑みを向け挨拶をする。
小鳥が歌うように美しく歌う儚げな姿、無言のまま微笑み挨拶をすれば、ヘラリと人々は頭を下げた。 酒の席で無礼講となった今、階級等関係等ない。
「では、お近づきの挨拶がわりに1曲」
そして小鳥は再び歌いだす。
美しい春の歌を歌えば、酒に騒いでいた者達は口を閉ざし、耳を傾けた。
花の盛りの王宮は、祭り好きの竜王陛下の計らいもあり酒宴が開かれる。
むせかえる程の花の香りに酒精が混ざり、客人を持て成す侍女も警備を行う兵士もほろ酔い状態。 王宮に集まった各地の領主は、ここぞとばかりに領地の特産品を披露する。
「我が領地の桃酒はいかがですか?」
「なかなか香りがいいですのぉ」
「うちの領地で作られているこの発酵魚との相性はどうでしょう」
「海瀬の、このような美しい花の宴に臭いものを持ち込むな。 折角の良い酒が台無しだ」
「永地とて海を頼りとしている土地柄、何を持ってきたと言うのだ」
「我の所は、乾燥魚を甘辛く煮込んだものよ」
「桃酒であれば、野菜が合うのではないか? 我が領地で作った酢漬け等どうだ」
酔っ払いながらも、自領地を盛り上げようと各領地の代表が頑張っていた。
「おや、岩森の……今年はお嬢さんと一緒なのですな」
光陰相国の西方にある巨大な岩山に住まう鳥の一族が特産物として出すのは、岩蜂蜜、燕の巣、花酒、岩蜂蜜につけた乾燥果実、そして万病薬。 万能薬である鳥薬は提供できる数は決して多くないため大金で取引される。
だが、今年は薬よりも岩森の領主が連れて来た娘に注目が集まった。
柔らかな白い髪。 華奢な体格は白く。 空を映し出したような大きな瞳は濡れている。 繊細で儚げ、風が吹けば飛んでしまいそうな愛らしい娘だった。
「この子は、村で一番の歌い手でだな。 酒宴を盛り上げる助力となればと連れて来た。 我が三番目の娘、風華だ」
名を呼ばれ、歌っていた風華は歌を止め、今にも溶けだしそうな微笑みを向け挨拶をする。
小鳥が歌うように美しく歌う儚げな姿、無言のまま微笑み挨拶をすれば、ヘラリと人々は頭を下げた。 酒の席で無礼講となった今、階級等関係等ない。
「では、お近づきの挨拶がわりに1曲」
そして小鳥は再び歌いだす。
美しい春の歌を歌えば、酒に騒いでいた者達は口を閉ざし、耳を傾けた。
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