【R18】彼等の愛は狂気を纏っている

迷い人

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終章

120.苛立ちを覚えた

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『ちがっ』

 雫の否定は晃の口づけで塞がれ、蕩けるまで口内は舐められ、雫の身体中が晃に撫でられた。 雫の……敏感な部分ばかりを反らしながら……。

『あきらぁ~』

 甘い声で懇願するように雫に晃を呼ぶ。
 名を呼ばれれば、晃の心は震えた。

 焦らして焦らして、イジメて、求めさせ、奪って……あらゆる欲が、晃の内側を駆け巡る。

 今すぐにでも、その内側へと入り込み、甘い声で啼かせたいと思いながらも、焦らされ嘆く雫が可愛くて……晃は溢れる蜜が流れる雫の太腿を撫で焦らす。

 もじもじと雫の腰が動き、晃の手にこすりつけようとすれば、控えめな胸を掌で押さえつけ、果実を摘まみ捻った。

「いけない子だ」

 痛みで顔をしかめながらも、涙を浮かべて雫は懇願する。

『もう、やだ……中があつくて……辛いの……』

 甘く懇願する雫の蕩けた声が、晃を捕らえてまとわりつく。

 束縛、執着……この子のものだけは……心地よくも愛おしい。

「仕方のない子だ」

 快楽の肉の芽にそっと触れれば、泣きだしそうな表情と共にビクッと震えた雫が晃にだきついてくる。

「辛いか?」

 問えば、首を横にふり耳元で甘えた声で囁かれた。

『もっと、触って』

 雫の懇願。
 甘い甘いお願い。

 晃は、耳元で笑いながら答えた。

「断る」

 クスクスと意地悪く笑った晃は、熱と甘い発情の香りに酔い、蜜を溢れさせる肉の花弁を指で押し広げ、自らの欲望で一気に貫いた。

『あぁあっ……』

 人の形をした雫の魂は、まるで晃を受け入れるために存在しているかのように、柔らかく温かく、そして求めて包み込みながらも、晃の欲望と熱を受け入れた雫は、快楽に甘く啼き声を漏らす。

 求めあう熱も、香りも、欲情も高まって行く。

 晃は……理性を忘れたかのように本能のままに、雫を組み敷き、なぶり、壊すように、自分を受け入れる甘い快楽の内側を凌辱していく。 擦りつけ、叩きつけ、混ざり合うような行為は、お互いの境界を失うかのように泣きたいほどに満たされていく。

 晃にとっては至福だったが……。

『ぁ、やっ、怖い……』

 雫は、恐れていた……。

 嫌われたらどうするんだ? そんな……常識めいた思いが微かに晃の中に過った。 だからと言って今更止まれるはずもなく、晃は雫を宥めるように抱きしめ、髪を撫で、耳元で囁いた。

「嫌か? 俺を拒むのか?」

 拒むと一言言えば……それこそ晃から遠慮の文字は消えただろう。 だが、雫は首を横にふり晃に抱き着いた。

『こ、わいだけ……』

 雫の中を自分の熱で埋めるように責めていた晃の動きが止まった。

「そうか」

 優しく甘やかすように背を撫で、口づける。

 なんて可愛らしい……俺の小鳥……晃のうちから思いが溢れるが、だからと言ってソレは親が子に向ける慈愛とは違い……何処までも身勝手な欲でしかない。

 甘く優しい手の動きとは別に、雫を貫く欲望は太さと硬さを増していく。

『ぁああっ』

 雫が甘く啼きながら震え、晃はその身体を抱きしめ、欲望を搾り取るかのように締め上げる雫を堪能した。

「雫……」

 晃が名を呼ぶ。

「俺を呼ぶんだ」

 甘く途切れる呼吸の隙間から、雫は幾度となく晃の名を呼んだ。

「あぁ……俺を呼べ……。 見失わないように……」



 まるで、それは暗示のようで……。





「晃、晃、身体が揺さぶり起こされた」

 またか……と言う思いがあった。

 だが、それ以上に何故こんなところにいるんだ? と、傍らに立っている男を晃は見上げる。

「良い夢を見ていたところ申し訳ない。 少し、大変な事が起こってしまって迎えに来た」

 そう告げたのは、藤原法一だった。

「こんなところまでか?」

 そこはまだ、新幹線の中だった。

「次の駅に車がある。 あと5分くらいですね」

 何時も晃を包み込むような穏やかな声は、今日ばかりは晃を苛立たせた。

「で、何があった?」

「こんなところで話す訳にはいかない」

 そう藤原に言われれば、強いもどかしさを感じた。
 苛立ちを覚えた。

「人の道理などどうでもいい」

「そういう訳にはいかない……うかつな事をすれば、都市が崩壊する。 晃一人の勝手でソレはできない」

 藤原は晃の隣の席に座り、耳元で囁くように語る。
 いつものように藤原の声は、深く落ち着いたヴィオラのようだったが……今日はやけに気持ちがざわつき不快に感じた。

「知るか」

「知ってください」

 晃の態度はどこまでも反抗的だが、藤原はただ笑うだけ。

 今の晃は、少し前までのように、藤原の言葉に、声色に、揺さぶられる様子はない。 そんな晃を藤原は嬉しそうに微笑み見つめてくる。

 不愉快だと晃は思った。

 寝たふりをするには時間も無くて、晃は藤原を睨みつけ立ち上がる。

「行くぞ」

「はい」

 静かに返される藤原の声は、どこか満足そうにすら思え……それもまた、晃を苛立たせた。
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