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8章
93.呑気な報告会
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覆面パトカーの中でも利用される車両。
揺れの少ない安全運転で、新見親良は運転をする。
「向こうを出る前に、助教授から連絡が来たのですが……」
そう話だそうとする声を、少年のような声が遮った。
「雫さんを怒らせたってどういう事!! 今、意識不明なんだよね?」
助手席に座っているのが誰かと思えば、三輪颯太であった。
「戻っていたんだな。 おかえり」
「もうズイブン前に戻ってますよ! 今更です今更!! 何、刑務所に入れられているんですか、正当防衛を言い切れば良かったでしょう」
勢いよく話す颯太の言葉に耳を傾けていれば、雫を怒らせた事に怒っているのか、晃を案じていて怒っているのか分からないように聞こえて、晃は声に出さず笑いながら、手を伸ばし颯太の頭を撫でた。
「ちょ、何するんだよ。 折角セットしたのに」
なんてキャンキャンと子犬のように吠えていれば、親良も面白がって颯太の頭を撫で始めた。
「危ないから、ちゃんと運転してよね!!」
「颯太は元気そうで何よりだ。 ここ1月の事だが……」
と晃は言葉にするが、実のところ刑務所内での出来事を話す気は無かった。
アレは……正気とは言い切れない……それに、抵抗があるのも事実だった。 そして、さてどうしようかと溜息をつけば、颯太は少しだけ拗ねたように言う。
「別に必要ないよ。 親良から聞いてるし……」
拗ねる様子を見て、晃は苦笑する。
「雫も、そんな感じだったぞ」
「何ソレ、余り嬉しくないんだけど!! ってか、頭大丈夫なの?! 意識不明の雫さんと会話しているなんて」
「元気だな」
「なんだよソレ、むかつくんだけど?」
「そう言えば、岬加奈子の姉について調べていたんだよな?」
「そう、本庄エリィと加奈子の関連性を調査してきたんです。 えっと、岬加奈子には年の離れた腹違いの姉がいます。 姉の方の母親は、北欧出身の金髪、薄い空色の瞳……本庄エリィと一致しています」
「姉と言っていた方は黒髪だったが?」
「染めていたんじゃないかな? ソレはともかく、加奈子が3歳の頃、当時13歳になったエリィは交通事故を偽り加奈子を殺そうとしたんです。 まだ13歳の子供がやる事件、更生の余地ありと考えるよりも、人々はただ恐怖したそうですよ」
「まぁ、仕方がないなぁ……」
スマホ内に記録していた颯太は、幼い頃のエリィの写真を晃に見せた。 仲良さそうな加奈子とエリィの姿がある。
「あ~~何歳だっけ?」
「13」
「13で、妹殺しとわねぇ~。 恐ろしい恐ろしい。
口先だけの会話が交わされた。」
「加奈子は、母親の家庭菜園を狙ってくる虫や、小動物を、殺した事で、虫も殺せない彼女の母は娘の異常に気付いた後言っています」
「それは、気の毒に」
母と娘、どちらが? と問われるなら双方だろう。
「小さな物の命を奪う加奈子の行動を、彼女の母は受け入れられなかったと言います。 でも……実際には、加奈子は死への欲求を絵にする事で押さえていて、実際に虫や小動物を殺してはいなかったと言う噂もありました。 妹のふりをして虫や動物を殺していたのはエリィだったのでは? エリィを見たと言う声もありました」
「それだけ聞けば、加奈子が親元を離れる理由はないのでは? 強引に柑子市でひきとったのか?」
「いいえ、死を予言する3歳児なんて、かなり不気味だよ。 原因はソレ」
と言うのが、颯太の報告だった。
一方、晃と雫の近況に関しては、血肉を食らったとは伝えず、晃が雫の血を浴びたと表現を抑えて伝えたらしい。
「まぁ、報告はそんなところ。 エリィが家族に執着するのは、子供の頃からのようだね。 それにしても加奈子はどんな気持ちで姉と一緒にいるのかな? それより、雫さんが怒っているってどういう事?」
と問われた晃は、造形殺人事件内容をフンワリと説明をする。 ようするに血肉を食らった事を抜いた説明だ。
「何処に雫さんは怒っているの?」
「だから(ごにょごにょごにょ)」
「きこえなぁ~~い!!」
「余り青少年向けじゃない夢を見ていたのをバレた!!」
「……そっか……うん、なんか、ご愁傷様」
大人しく引く颯太だった。
俺は肩を竦め、今、現在の状況確認を親良に求める。
「それで、車は何処に向かっているんだ? 地理はまだ詳しくはないが、警備部のマンションとも、皎一さんの屋敷とも違うよな?」
何より背後から、監察課にあたる部署の車がついて来ていた。
「えぇ、違います。 行先は、研究所を閉鎖した後、茨田杉子の兄が研究のために利用していた、彼等の実家側にある廃屋です」
そう晃は答えた。
揺れの少ない安全運転で、新見親良は運転をする。
「向こうを出る前に、助教授から連絡が来たのですが……」
そう話だそうとする声を、少年のような声が遮った。
「雫さんを怒らせたってどういう事!! 今、意識不明なんだよね?」
助手席に座っているのが誰かと思えば、三輪颯太であった。
「戻っていたんだな。 おかえり」
「もうズイブン前に戻ってますよ! 今更です今更!! 何、刑務所に入れられているんですか、正当防衛を言い切れば良かったでしょう」
勢いよく話す颯太の言葉に耳を傾けていれば、雫を怒らせた事に怒っているのか、晃を案じていて怒っているのか分からないように聞こえて、晃は声に出さず笑いながら、手を伸ばし颯太の頭を撫でた。
「ちょ、何するんだよ。 折角セットしたのに」
なんてキャンキャンと子犬のように吠えていれば、親良も面白がって颯太の頭を撫で始めた。
「危ないから、ちゃんと運転してよね!!」
「颯太は元気そうで何よりだ。 ここ1月の事だが……」
と晃は言葉にするが、実のところ刑務所内での出来事を話す気は無かった。
アレは……正気とは言い切れない……それに、抵抗があるのも事実だった。 そして、さてどうしようかと溜息をつけば、颯太は少しだけ拗ねたように言う。
「別に必要ないよ。 親良から聞いてるし……」
拗ねる様子を見て、晃は苦笑する。
「雫も、そんな感じだったぞ」
「何ソレ、余り嬉しくないんだけど!! ってか、頭大丈夫なの?! 意識不明の雫さんと会話しているなんて」
「元気だな」
「なんだよソレ、むかつくんだけど?」
「そう言えば、岬加奈子の姉について調べていたんだよな?」
「そう、本庄エリィと加奈子の関連性を調査してきたんです。 えっと、岬加奈子には年の離れた腹違いの姉がいます。 姉の方の母親は、北欧出身の金髪、薄い空色の瞳……本庄エリィと一致しています」
「姉と言っていた方は黒髪だったが?」
「染めていたんじゃないかな? ソレはともかく、加奈子が3歳の頃、当時13歳になったエリィは交通事故を偽り加奈子を殺そうとしたんです。 まだ13歳の子供がやる事件、更生の余地ありと考えるよりも、人々はただ恐怖したそうですよ」
「まぁ、仕方がないなぁ……」
スマホ内に記録していた颯太は、幼い頃のエリィの写真を晃に見せた。 仲良さそうな加奈子とエリィの姿がある。
「あ~~何歳だっけ?」
「13」
「13で、妹殺しとわねぇ~。 恐ろしい恐ろしい。
口先だけの会話が交わされた。」
「加奈子は、母親の家庭菜園を狙ってくる虫や、小動物を、殺した事で、虫も殺せない彼女の母は娘の異常に気付いた後言っています」
「それは、気の毒に」
母と娘、どちらが? と問われるなら双方だろう。
「小さな物の命を奪う加奈子の行動を、彼女の母は受け入れられなかったと言います。 でも……実際には、加奈子は死への欲求を絵にする事で押さえていて、実際に虫や小動物を殺してはいなかったと言う噂もありました。 妹のふりをして虫や動物を殺していたのはエリィだったのでは? エリィを見たと言う声もありました」
「それだけ聞けば、加奈子が親元を離れる理由はないのでは? 強引に柑子市でひきとったのか?」
「いいえ、死を予言する3歳児なんて、かなり不気味だよ。 原因はソレ」
と言うのが、颯太の報告だった。
一方、晃と雫の近況に関しては、血肉を食らったとは伝えず、晃が雫の血を浴びたと表現を抑えて伝えたらしい。
「まぁ、報告はそんなところ。 エリィが家族に執着するのは、子供の頃からのようだね。 それにしても加奈子はどんな気持ちで姉と一緒にいるのかな? それより、雫さんが怒っているってどういう事?」
と問われた晃は、造形殺人事件内容をフンワリと説明をする。 ようするに血肉を食らった事を抜いた説明だ。
「何処に雫さんは怒っているの?」
「だから(ごにょごにょごにょ)」
「きこえなぁ~~い!!」
「余り青少年向けじゃない夢を見ていたのをバレた!!」
「……そっか……うん、なんか、ご愁傷様」
大人しく引く颯太だった。
俺は肩を竦め、今、現在の状況確認を親良に求める。
「それで、車は何処に向かっているんだ? 地理はまだ詳しくはないが、警備部のマンションとも、皎一さんの屋敷とも違うよな?」
何より背後から、監察課にあたる部署の車がついて来ていた。
「えぇ、違います。 行先は、研究所を閉鎖した後、茨田杉子の兄が研究のために利用していた、彼等の実家側にある廃屋です」
そう晃は答えた。
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