【R18】彼等の愛は狂気を纏っている

迷い人

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6章

73.叫び

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「親良!!」

「呼びましたか? いやぁ~、初めて名前で呼びましたね」

 隣のベランダから顔を出す新見親良は、何処か嬉しそうだった。

「何が、どうなっているのか全然分からないのだが?! 何をどうしたい、俺をどうするつもりだ!!」

 飛ばされたカラスが戻って来て新見親良の頭に停まった。

「とりあえず落ち着きましょうか? 誰も、君に強要等していませんよ。 何時だって晃の意志を最優先しています。 アナタが最近仲良くしている女性を除いて」

「俺の行動の全てが、報告されていると?」

「いえ、藤原助教授の元に提供される担当者からの報告は、カラス達からの報告は違っていました。 ですから、早く連れ出したかったのです。 助教授へ提供された報告書だけなら、晃は外へ出られる状況ではありません」

 親良が語る担当者とは、茨田杉子の事だ。

「それを茨田杉子がやっていたと? 彼女にそんな権限があるようには思えないが? 彼女は……余り強い女性ではなかった。 何時だってからかわれ、多くの人間が彼女を都合よく利用し、欲望のはけ口にすらしていた。 何時だって泣いていたんだぞ!!」

 手すりを乗り越え、新見のいるベランダへと移動する。

「落ち着け」

 そう言って、煙草の箱を差し出してくる。 ペシッと煙草の箱を払いのけた。

「どうやって、俺を見張っていた。 最悪だ!! 四六時中見張られているなんて、やってられるか!! あぁ、分かった!! この町を出て行ってやるよ!! オマエが望んでいる通りな」

「そうですか、晃がそう決めたなら」

 静かに視線を伏せ、煙草を取り出し火をつける。
 晃はイラついたまま、新見の煙草を奪い取って深く吸った。

「なぜ、止めない……」

「俺は最初から止めていませんよ」

「なぜ、俺の行動が分かる?」

「繋がっているらしい……。 あの日、晃は……雫ちゃんの脳を口にしていた」



 忘れていた記憶が戻った。

 あの日、犯人を殺した後……守れなかった事に俺は泣いた……。 顏と頭部が吹き飛んだ雫を抱きしめ、口づけた……何度も、繰り返し、繰り返し、口づけ……その血を舐め、飛び散った脳に口づけ……食べた……。



 ああぁああああああああああああああ!!



 そっと……抱きしめられた……かのように感じた。

 なぜ、チビカラスが雫を抱くように言うのかを理解した……。 雫の魂が共にあるからなんだと……。
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