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6章
73.叫び
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「親良!!」
「呼びましたか? いやぁ~、初めて名前で呼びましたね」
隣のベランダから顔を出す新見親良は、何処か嬉しそうだった。
「何が、どうなっているのか全然分からないのだが?! 何をどうしたい、俺をどうするつもりだ!!」
飛ばされたカラスが戻って来て新見親良の頭に停まった。
「とりあえず落ち着きましょうか? 誰も、君に強要等していませんよ。 何時だって晃の意志を最優先しています。 アナタが最近仲良くしている女性を除いて」
「俺の行動の全てが、報告されていると?」
「いえ、藤原助教授の元に提供される担当者からの報告は、カラス達からの報告は違っていました。 ですから、早く連れ出したかったのです。 助教授へ提供された報告書だけなら、晃は外へ出られる状況ではありません」
親良が語る担当者とは、茨田杉子の事だ。
「それを茨田杉子がやっていたと? 彼女にそんな権限があるようには思えないが? 彼女は……余り強い女性ではなかった。 何時だってからかわれ、多くの人間が彼女を都合よく利用し、欲望のはけ口にすらしていた。 何時だって泣いていたんだぞ!!」
手すりを乗り越え、新見のいるベランダへと移動する。
「落ち着け」
そう言って、煙草の箱を差し出してくる。 ペシッと煙草の箱を払いのけた。
「どうやって、俺を見張っていた。 最悪だ!! 四六時中見張られているなんて、やってられるか!! あぁ、分かった!! この町を出て行ってやるよ!! オマエが望んでいる通りな」
「そうですか、晃がそう決めたなら」
静かに視線を伏せ、煙草を取り出し火をつける。
晃はイラついたまま、新見の煙草を奪い取って深く吸った。
「なぜ、止めない……」
「俺は最初から止めていませんよ」
「なぜ、俺の行動が分かる?」
「繋がっているらしい……。 あの日、晃は……雫ちゃんの脳を口にしていた」
忘れていた記憶が戻った。
あの日、犯人を殺した後……守れなかった事に俺は泣いた……。 顏と頭部が吹き飛んだ雫を抱きしめ、口づけた……何度も、繰り返し、繰り返し、口づけ……その血を舐め、飛び散った脳に口づけ……食べた……。
ああぁああああああああああああああ!!
そっと……抱きしめられた……かのように感じた。
なぜ、チビカラスが雫を抱くように言うのかを理解した……。 雫の魂が共にあるからなんだと……。
「呼びましたか? いやぁ~、初めて名前で呼びましたね」
隣のベランダから顔を出す新見親良は、何処か嬉しそうだった。
「何が、どうなっているのか全然分からないのだが?! 何をどうしたい、俺をどうするつもりだ!!」
飛ばされたカラスが戻って来て新見親良の頭に停まった。
「とりあえず落ち着きましょうか? 誰も、君に強要等していませんよ。 何時だって晃の意志を最優先しています。 アナタが最近仲良くしている女性を除いて」
「俺の行動の全てが、報告されていると?」
「いえ、藤原助教授の元に提供される担当者からの報告は、カラス達からの報告は違っていました。 ですから、早く連れ出したかったのです。 助教授へ提供された報告書だけなら、晃は外へ出られる状況ではありません」
親良が語る担当者とは、茨田杉子の事だ。
「それを茨田杉子がやっていたと? 彼女にそんな権限があるようには思えないが? 彼女は……余り強い女性ではなかった。 何時だってからかわれ、多くの人間が彼女を都合よく利用し、欲望のはけ口にすらしていた。 何時だって泣いていたんだぞ!!」
手すりを乗り越え、新見のいるベランダへと移動する。
「落ち着け」
そう言って、煙草の箱を差し出してくる。 ペシッと煙草の箱を払いのけた。
「どうやって、俺を見張っていた。 最悪だ!! 四六時中見張られているなんて、やってられるか!! あぁ、分かった!! この町を出て行ってやるよ!! オマエが望んでいる通りな」
「そうですか、晃がそう決めたなら」
静かに視線を伏せ、煙草を取り出し火をつける。
晃はイラついたまま、新見の煙草を奪い取って深く吸った。
「なぜ、止めない……」
「俺は最初から止めていませんよ」
「なぜ、俺の行動が分かる?」
「繋がっているらしい……。 あの日、晃は……雫ちゃんの脳を口にしていた」
忘れていた記憶が戻った。
あの日、犯人を殺した後……守れなかった事に俺は泣いた……。 顏と頭部が吹き飛んだ雫を抱きしめ、口づけた……何度も、繰り返し、繰り返し、口づけ……その血を舐め、飛び散った脳に口づけ……食べた……。
ああぁああああああああああああああ!!
そっと……抱きしめられた……かのように感じた。
なぜ、チビカラスが雫を抱くように言うのかを理解した……。 雫の魂が共にあるからなんだと……。
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